市川栄司 句集「江戸手拭」
春風や江戸手拭に鯨の眼
市川栄司さんの第二句集『江戸手拭』は、栄司さんが長年大切にしてきた「江戸の粋」と「京の情緒」を軸に構成されている。
大都会の、それも庶民によって育てられ守り抜かれてきた「日本の美」がこうして、手元で再生されることの愉しさはじつに贅沢なことだといってよい。
加古宗也(帯文より)
珠玉十句(加古宗也選)
きちと巻く胸乳の晒し三社祭
一八や谷中に今も摺物師
切火打ち朝顔市の始まれり
大羽子板寄席のもぎり場ふさぎけり
春風や江戸手拭に鯨の眼
蚊遣豚六区に今も詰将棋
追羽子や八坂の塔の覗く路地
老いてなほ艶ある女形寒椿
一力の門借りてをり春驟雨
おしら仏ひしめく堂宇五月闇