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自註 加古宗也集 刊行

自註現代俳句シリーズ・12期 42

加古宗也集

公益社団法人 俳人協会

平成31年4月20日、「自註現代俳句シリーズ 加古宗也集」が発行されました。昭和52年より平成18年までの約30年間の作句の中から300句を自選、自註されたものです。

<あとがきより>
この自註シリーズは初学の頃から平成十八年までの作品を主に既刊四句集から抽出して註を付した。
考えてみれば、これまでおびただしい数の俳句を選び、選評してきたが、自作に註を付す機会は意外に少なかったことにあらためて驚いている。そして、註を付しながら、じつに楽しい時間を過すことができた。作句の現場・作句の動機などが鮮明に思い出されて、何度も心が熱くなった。私の主宰する「若竹」も、三年程前に一〇〇〇号を達成することができた。その後は余徳という思いで、日々の作句を楽しんでいる。
平成三十年六月 守石荘にて
加古 宗也
<以下、300句の中から抄出>

麦踏んで麦の青さに吹かれけり
むぎふんでむぎのあおさにふかれけり

昭和55年作
私の原風景の一つといっていい。麦踏は春霜を踏み砕き、強い麦を育てるために欠かせない作業。広びろとした麦畑の青さは生命力そのものだ。

撥ね飛ばす一枚恋の歌がるた
はねとばすいちまいこいのうたがるた

昭和59年作
大方の評者が、恋人の争奪戦に譬え、私を勝者として下さった。まあ、それもいいかと思った。

源流に歩を向け荻の声を聞く
げんりゅうにほをむけおぎのこえをきく

平成5年作
水上温泉郷での作。利根の源流に向かってゆっくり歩いてみた。秋風が荻の葉を鳴らした。

明日は鬼城忌われは赤城の湯に浸る
あすはきじょうきわれはあかぎのゆに浸る

平成7年作
村上鬼城顕彰全国俳句大会出席のため、毎年鬼城忌には上州(群馬)入りする。この年は赤城山の忠治館に宿泊した。

地の力花心に集め寒牡丹
ちのちからかしんにあつめかんぼたん

平成15年作
寒牡丹の美しさは生命を絞り出すようなところにある。即ち、地の力を花心に見せているのだ。