若竹ウェブ句会 選句報告

第11回若竹ウェブ句会(2021年5月募集)

★談話室について
夏雲システムで選句結果が公開されると、「句一覧」、「得点順」、「作者別」、「 談話室」という4つのボタンが現れます。この談話室では、投句された俳句について自由に質問や意見交換を行うことができます。第十一回若竹ウェブ句会の談話室にも、今回初めて投句された蒼鳩薫さんからの挨拶がありました。これから少しずつ多くの方が投稿され、従来の句会と同じように、選句後のおしゃべりも楽しめたらと思っています。引き続きよろしくお願いいたします。


(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)

5点句 手作りのジャム瓶透けて夏きざす       こう子
(百代特選) ジャム作りは季節と共に。苺の旬も終わり近く、手作りジャムを瓶に詰めてかざしたら、夏の気配が透けてみえた。実体験として、共感を覚えます。
(みな子入選) ジャム瓶の透ける感じに初夏を感じる。
(蒼鳩 薫入選) どんなジャムか興味津々だが、瓶が透けてくるころ味もよくなり、また、夏になるころなのだろう。爽やかで透明感のある、ジャムの出来上がりへの期待感が、夏への期待感と相まって楽しい。
入選 彰・康子
5点句 クレシェンド風が指揮する麦の秋        百代
(みな子入選) 風によって麦の穂がなびく様子がよくわかる。
入選 けい香・すーちゃん・佳楓・冬青
4点句 オスプレイの音の真下に牛洗ふ         佳楓
(すーちゃん特選) 脅威の構図。垂直に離着陸できホバリングも可能なオスプレイと、その直ぐ下で農耕牛の汗を流してやる人。軍機の落とす影や轟音は命あるものを危険にさらし恐怖を与える。現実の景というより象徴性寓意をこめた一句。
入選 帰心・こう子・純子
4点句 万緑や拳回して泣く赤子            佳楓
(彰特選) 泣くことは赤ん坊の意思表示ですが、「拳回して」が愉快で印象的です。万緑の季節、きっと健やかな赤ちゃんでしょう。
(けい香特選)コメント無し
(蒼鳩 薫入選)万緑という季語と元気のよい赤ん坊の取り合せが面白い。
入選 帰心
4点句 竹切りて野の花生けし利休の忌        けい香
(蒼鳩 薫特選) 茶道のことは詳しくないが、侘び寂びのことと聞く。野の竹を切って花瓶とし、清楚な野の花を活け、利休を偲ぶことが忌日にふさわしいと思った。
(百代入選) 青竹が有り、竹を伐り、細工する技を持ち、作った竹の花筒に野の花を生けて迎えた利休忌に一服ですか。羨ましく思いながらいただきました。
入選 帰心・こう子
4点句 青嵐竹百幹を統べにけり          蒼鳩 薫
(冬青特選) 竹林が激しい風に大きく揺れる様を壮大に描いていて良い。
入選 すーちゃん・百代・佳楓
4点句 独り居に慣れて気任せ古茶新茶         百代
(蒼鳩 薫入選)一人となった今日、人生を肯定的に受け入れ、なすがままに生きようとする、作者の気持ちが、一杯のお茶から感じられる。香り豊かな新茶だろうと思う。
入選 帰心・佳楓・オリーブ
3点句 瑠璃色の切子グラスや夏を飲む        こう子
(ビビサン特選)句の第一印象としては本当にきれいな句だと思いました。鮮やかな瑠璃色が映えます。また下5の夏を飲むと表現されたところにも、作者のセンスの良さが表れていると思います。
(純子特選)お気に入りのグラスでしょうか。繊細なグラスで豪快に夏を飲むと読みとれて良かったです。
入選 けい香
3点句 土俵場の残る境内春落ち葉           純子
(百代入選)先の連休に、一時期住んでいた豊田市を次男と三十余年ぶりに訪ねたところ、昔遊んだと言う鎮守の杜に、まさにこの句のような風景があり、感慨に浸ったところです。
入選 冬青・康子
3点句 藤房の静かに揺れて日に透けて        みな子
(蒼鳩 薫入選) 藤の花は華やかさがあるが、作者には思い出深いものであろう。なにかしら、静謐な諦観のようなものを感じる。美しい句である。
入選 ビビサン・オリーブ
3点句 オリーブの花ほおづえが似合う君      オリーブ
入選 すーちゃん・けい香・康子
3点句 ジューシーに揚がる豚カツ麦の秋        佳楓
入選 冬青・純子・こう子
2点句 風光るサスペンダーは真田紐       すーちゃん
(みな子特選)真田紐(さなだひも)を使ったサスペンダーの粋なところが素晴らしい。風光るも明るい。
入選 佳楓
2点句 ガラス粉のやうなうぶ毛や今年竹        冬青
入選 康子・オリーブ
2点句 色違ひ交換の種蒔きにけり           純子
入選 百代・ビビサン
2点句 半地下の窓とりどりの初夏の脚         冬青
(みな子入選)半地下から見上げる明るい脚の様子が見えてくる。
入選 彰
2点句 春愁の身を職安の窓口へ            帰心
(佳楓特選)春愁の身をいかにされたかと案じましたが、職安の窓口とは意外でしたが、そうだ、今のコロナ禍では、さまざまな理由で、職を失う方がたが、沢山おられますよね。職安の窓口に身を預けるが良かったです。
入選 ビビサン
2点句 黒塀に花街の名残かきつばた          百代
入選 彰・ビビサン
1点句 海坂(うなさか)を見つめる老や潮干待つ     彰
(康子特選)海坂という言葉に惹かれて頂きました。大きな干潟が現れるのを待つ老人の、おおどかな景が浮かびます。
1点句 折々に諭す言葉や若緑            けい香
(帰心特選)たしかに枝から伸びる若緑(松の芯)は、人を諭すときに垂直に突き立てる人差し指のように見える。しかも松の芯は何本も伸び出ている。それが「折々に」という措辞とみごとに響きあっている。
1点句 万緑や菜食主義の独裁者         すーちゃん
(こう子特選)菜食主義の独裁者の表現が面白いと思いました。イメージとして独裁者は強くて肉食系を想像しますが菜食主義の独裁者とは… 誰のことかしら?
1点句 蕃茄熟す溢れるほどの種秘めて       ビビサン
(オリーブ特選) オリーブ密やかでありながら、同時に情熱的なエネルギー、内なる宇宙の美しさを感じます。
1点句 下校の児歩く姿や葱坊主            泥舟
入選 けい香
1点句 予約成るワクチン接種針槐(はりえんじゅ)    彰
入選 純子
1点句 肩すれすれ水面すれすれ燕とぶ       ビビサン
(みな子入選)燕の元気よさと人間を恐れない感じが、肩すらすら水面すれすれに感じられる。
1点句 乾パンの疾うに古びて春深む          康子
入選 純子
1点句 叱られてまた叱られて名草の芽        けい香
入選 彰
1点句 青楓寺寺由緒誇りけり             冬青
入選 すーちゃん
1点句 フェンス越しアスパラガスのもう二尺      純子
入選 オリーブ
1点句 軽暖の散歩シューズはお揃ひで         帰心
入選 こう子

〈俳句気まぐれエッセイ② オスとメス 〉   今泉 かの子
今年は蕗の薹をよく採った。二回だけだが、百個以上。自分が好きだからというより、今年はほしいという人がたまたまいて、送ったりした。採り出すと次々に見つかり、案外おもしろい。
以前、蕗の薹にも雌雄があると、隣家の奥方に教えて貰った。先が黄色っぽくて丸いのがオス、白っぽいのがメスらしいが、判別はどうも自信がない。とはいえ、そこは気にしない。気にするのは、蕾の太り具合と開き具合。
蕗の薹と同じ地下茎をもつ、兄弟のような蕗は、五月に入ってから採る。山の家の友人、ともちゃんは「蕗を引く」という。今年はカッターを使って蕗を引いた。力を使わなくてもスッと切れる。蕗の葉に囲まれながら太い茎を見つけては次々と。これまた案外おもしろい。
最近、この蕗にも雌雄があると知った。これは種類の違いを例えているらしい。茎の芯に穴が空いていて、太めのシャキシャキ君がオス。根が赤っぽく灰汁(アク)が強い、もくもくちゃんがメス。
雌雄の違いはあれど、いずれもおいしい。山の香、山の味である。
ひとすぢを貫き通す蕗を煮る          かの子



第10回若竹ウェブ句会(2021年4月募集)

若竹ウェブ句会も、新規参加者が毎月あり、少しずつ軌道に乗ってきた感じがしています。不慣れな方には、電話や対面で操作法を確認してきましたが、夏雲システムのおかげで、句会自体は管理人がノータッチで進行しています。人数制限はありませんので、引き続き、乞うご参加です。

また、今まで三句投句、五句選でやってきましたが、今後、兼題設定や選の在り方についての検討、さらに若竹行事との関連イベント等も視野に入れていけたらと考えています。皆さん、どうぞご意見をお寄せください。


(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)

5点 先生の笛海へ鳴り磯遊び           ビビサン
(百代特選)海辺の小学校の野外活動でしょうか。引率の先生が吹く「はじめ」の合図の笛が海風に乗り、我先に駆け出して磯遊びに興ずる子らの弾けっぷりが目に見えるようです。
(みな子特選)海へ鳴りが良い。明るい海に向かう解放感がある
入選 彰・佳楓・すーちゃん

4点 表札に英字の名前エリカ咲く          こう子
入選 帰心・ビビサン・彰・けい香

4点 啓蟄の土蹴り上げて逆上がり           佳楓
(みな子入選)啓蟄の日らしい、生き生きとした逆上がりだと思う。
入選 ビビサン・けい香・彰・みな子

4点 茶畑を託すと決める春の霜            純子
(ビビサン特選)茶畑を長年守ってこられた方の代替わりの決心でしょうか?  切なくもあり、淋しくもあり、安堵でもあり、春の霜に心情を託されたことが成功していると思いました。
(こう子特選)時ならぬ春の霜が降り、自身の身の退き際を決心すると言う句。人は現役を辞する時が必ず来ます。その時の感情がよく詠まれていると思います。
入選 百代・すーちゃん

4点 春光にかざす傘寿の生命線            佳楓
(康子特選)あと何年寿命があるかしらと、春の光に手をかざしてみる、そんな作者のやさしい景が浮かびます。
(みな子入選)若々しさを感じる。年をとるのもよいものだと思える。
入選 けい香・こう子・みな子

3点 夫逝きて鋤き残されし葱坊主           百代
(佳楓特選)鋤き残されし と言う表現が、何とも切なく御主人に先立たれた、作者の悲しみと残された葱坊主の寂しさが重なって表現されていて、余韻に浸る御句でした。鋤き残されたのは、実は作者自身だったのですよね。
入選 帰心・康子

3点 縮緬のごとき水面や春の雨            康子
(葉月特選)春の雨の様子を縮緬に例えられた辺りが同感できるのでいただきました。
入選 帰心・佳楓

3点 一枝は地にも触れたり糸桜           こう子
(帰心特選)糸桜(枝垂桜)は、寿命の長い桜。その横溢する生命力を「地にも触れたり」という措辞で見事に表現されています。
入選 ビビサン・康子

2点 古稀まじかまだ理想追う松の芯         けい香
(純子特選)松の芯と、変わる事なく理想を追い続けているという事が素晴らしいと感じました。古稀という具体的なのもいいと思いました。
入選 彰

2点 溶けるよな潮に身浸し浅蜊掻く           彰
入選 ビビサン・佳楓

2点 宇宙船現れそうな月朧            ビビサン
(みな子入選)ぼんやりとした朧の中に、現れた宇宙船もぼんやりと切実感がないのが良い。
入選 康子・みな子

2点 目借時洗い残しの碗二つ             帰心
入選 康子・純子

2点 保護者もういらぬ子となり桜東風       ビビサン
入選 百代・こう子

2点 診察は二分春一番を来て             佳楓
入選 純子・すーちゃん

1点 又夢の中と想へば花の中             冬青
(彰特選)いつも良い夢を見られるようですね。私は現実の世界は平穏ですが、夢でしばしば昔のしくじりにはっと目を覚まします。獏を飼わねば。

1点 山笑う浜のラジオに波の音            泥舟
(すーちゃん特選)浜に置いてあるラジオから波の音が聞こえてくる、確かにありそう、でも取り合わされて感じる意外性。本物の音が聞こえる場に機器を通しての音が聞こえ、楽しい。季語が大きな景を生んで、おおらかな感じがまたグッド!

1点 春夕焼三本脚の猫囲む              純子
入選 すーちゃん

1点 ひとひらのさくらダビデの礫かな      すーちゃん
入選 みな子
(みな子入選)花びらが礫となるイメージが良い。花びらが飛んでいくのが。

1点 千年の楠目を見張る芽吹きかな          冬青
入選 こう子

1点 鳥来たりそこのみはらり桜散り          康子
入選 百代

1点 老ふうふ容姿似かよふ花の昼           康子
入選 百代

1点 清明や抹茶茶碗にうしほの句           帰心
入選 佳楓

1点 錠剤の三粒手にあり夕燕            こう子
入選 けい香

1点 轟(どめき)駅の一本桜花盛り         みな子
入選 帰心

1点 灰汁かすか水に残して独活白し          百代
入選 こう子

1点 色見本三枚届き水ぬるむ          すーちゃん
入選 純子

〈俳句気まぐれエッセイ① 藤の花〉      今泉 かの子
今年は藤も早かった。三月末には房がふくらんで、あちらこちらへ伸びていた。植物というより幼虫めいて。四月上旬にはまこと天晴れな咲きっぷり。然るに、クマ蜂の羽音が聞こえない。毎年うるさいほどなのに、小さな異変。花が乾き出した頃になってやって来た。食い違うタイミング。そして四月末、庭には花殻がびっしり。小さな虫の殻のように散り零れた。
藤棚をゆらゆらくぐる妻の影       秋順 
藤棚の下の暗さが、動きのゆれと相俟ってミステリアスな影にしているようで、愛妻家ですね、と申し上げたら、数年前に他界されたという。
藤棚の下には、植物とも動物とも違う、異世界の藤の精がいてもいいと思う。



第9回若竹ウェブ句会(2021年3月募集)

第八回ウェブ句会の談話室の一部ご紹介
今回は、夏雲システム利用の第八回「談話室」において、帰心さんと彰さんのやりとりの一部をご紹介し、確認されたことを報告します。
☆投句された全句の表示について
彰さんより
〈結果公開で点の入らなかった句もすべて表示すべきか、という件ですが、結果公開画面のメニューバーに「句一覧・得点順・談話室」があり、その右上の「エクスポート」をクリックして「印刷用清記表を表示:作者名あり」をクリックで全ての句が表示されます。私の場合ですが、点の入らなかった句が人目にさらされるのはちょっと…という感じを持ちます。逆にできの悪い子ほどかわいいという気持ちもないわけはありません。だから、ちょっと手間をかければ全句がわかるという現在の状態でいいのではないかと思います。〉
☆その他の機能について
帰心さんより
〈「エクスポート」を開くと、上の方に「会報」があり、これをクリックすると句会の結果をきれいにレイアウトした「会報」がPdfで見ることができますね。(ダウンロードも可)。この機能もなかなかのスグレモノですね。〉
☆談話室開設について
各回の句会が「結果公開中」になってから、その句会に付属の談話室が開設される。(「投句期間中」や「選句期間中」に談話室で会話が交わされると、投句者の推定等で選句の公平性に影響を与える恐れを配慮してのことと納得)


(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)

5点 春塵を払いひとつの迷い断つ         ビビサン
入選 けい香・みな子・帰心・こう子・康子

5点 草の名の遅れ出でけり老いの春         冬 青
(康子特選)名前が遅れて出てくるのは、よくわかります。でも、思い出した時のスッキリ感は、良いじゃありませんか。老いの春を、ゆったり楽しみましょう。心に響く句です。
(百代入選)この草はさて何という名前だったか。とっさに出てこなくても、後から思い出せて良かった。温かさが感じられる句です。
入選 けい香・彰・すーちゃん・百代

4点 満ち潮の力に乗せて浅蜊籠           こう子
(純子特選)浅蜊籠を潮の力で引き上げる漁師さんの様子が浮かびます。
入選 みな子・帰心・冬青

4点 表裏タグ確かむる苗木市            百 代
(こう子特選)木に付いているタグは、絶対表裏確かめますよね。自分自身の動作の記憶として、また苗木市での皆さんの行動として、その景色がはっきりと浮かび上がります。ほんの一瞬を切り取られていて共感いたしました。
(ビビサン特選)苗木に付けられているタグには 値段の他、育て方のアドバイスなども書かれているのでしょう。中7の作者の動作から市の様子が見えてきます。
入選 帰心・康子

4点 埋め尽くす寄せ書きの文字鳥雲に        帰 心
(けい香特選)送別の寄書きでしょうか、埋め尽くす文字にその方への情愛が感じられます。季語も的確で、元気でね、又会いましょうの気持ちが染々伝わってきます。
(すーちゃん特選)寄せ書きの言葉は、思い出や感謝、餞など人と確かに繋がっていた温もりを感じるもの。その文字は雲間に見える小さな鳥の影と重なり、やがて鳥はいつか見えなくなります。残された広い空と寂しさが漂う余韻の一句。
(彰特選)遠い昔の卒業の寄せ書きを思い出します。それぞれの志が雲間に飛んで行って、いろんな人生を歩んだことでしょう。
入選 ビビサン

3点 燥(はしゃ)ぐ娘(こ)のテニスラリーや初雲雀  泥 舟
入選 けい香・すーちゃん・康子

3点 かるた部のポニーテールやうららけし    すーちゃん
入選 帰心・こう子・彰

3点 たよりなき四肢で駆け出す春の駒       ビビサ
(百代特選)産まれたばかりで四肢もまだたよりない仔馬が、立ち上がりざまにもう駆け出そうとしている。走るために生まれてきた馬が目指す先に、開かれた希望が見えるようです。
入選 こう子・冬青

2点 背に気配紅き椿の落ちにけり          康 子
(みな子特選)自分の後ろに椿が落ちた一瞬をとらえた句。それも赤い椿だったという。大きな赤い椿がゆっくり落ちていくのを、振り返って見ている作者が見えてくる。
(百代入選)背に何かの気配がして振り向いた目の先に赤い椿の花が落ちていたという、感覚で捉えられた一瞬の情景が鮮やかに浮かびます。

2点 遥かなる祖先の声や春の海           けい香
入選 彰・ビビサン

2点 棟上げの木の香ふくいく立春大吉        冬 青
入選 康子・純子

2点 見つめ合うことなき日々や内裏雛       ビビサン
入選 すーちゃん・冬青

2点 海外へ送り状書く雛の市            こう子
入選 純子・ビビサン

2点 啓蟄のこゑ寅さんの啖呵売           帰 心
入選 こう子・純子

2点 JAF(ジャフ)呼びて仰ぎ見る枝木の芽張る   彰
(冬青特選)気持ちが動転して周りが見えなかったのに、JAF と連絡がとれ、ほっとした目に映った鮮やかな木の芽が、上手く表現されている。
入選 みな子

2点 春寒の眼科待ち合い三時間           みな子
入選 けい香・百代
(百代入選)春先の眼科はいつにも増して混雑する。待合室に3時間もいて外に出たら、ぶり返した寒さがさぞ身にしみたことでしょうね。

1点 初音かな奈良広陵町馬見北           百 代
入選 彰

1点 乙女椿や主菓子(おもがし)も其の色に     帰 心
入選 純子

1点 あたたかな雨の夕暮あいらぶゆ         けい香
入選 すーちゃん

1点 囀(さえず)りや子供素早くかくれんぼ     泥 舟
入選 みな子

1点 薄氷のえびせんべいの固さかな         康 子
(百代入選)入選薄氷に足を乗せたら、パリンと音を立てて氷が割れた。その氷はえびせんべいの固さだったというたとえに、子どもの頃の情景が懐かしく思い出されました。

1点 靴箱の靴出してをり道は春         すーちゃん
入選 ビビサン

1点 凄まじや嬰も泣き出す猫の恋          けい香
(帰心特選)特選赤ちゃんには、動物の声、まして恋猫の声への「免疫」など、まだありません。いろいろな声、音への免疫ができていくことを「成長」と呼ぶのですね。

1点 堀を気ままに潜って浮いて春の鴨        みな子
(冬青入選)見ている人も泳いでいる鴨ものびやかに春を楽しんでいる!

 



第8回若竹ウェブ句会(2021年2月募集)

ウェブ句会について二月末時点でのご報告。八回目を迎えたこれまでの登録人数は約二十人。新しく加わる人も毎月いる反面、うまく加われない人も出てしまいました。新しく導入した「夏雲システム」は、スマートフォンの操作に不慣れな人にとっては、ハードルが高いものになってしまったようです。投句がうまくできず、来月チャレンジ、と先送りされたり、また、投句はできても選句ができず、見送られたり。ここで改めて、ポイントを確認します。

★参加にあたっての必要な操作。詳細は個人設定をする方法(見本例)参照

  1. 夏雲システムに自分のメールアドレスを登録する。
  2. 自分のスマートフォンやタブレットで、夏雲システムから送信されるメールの受信を許可する。(メールの返信が来ない場合は、スマホ等の設定で受信拒否となっている場合があります。)

最初の立ち上がりは手間取るかもしれませんが、一度設定できれば、あとはスムーズに参加できます。また、談話室では意見交換もできます。多くの皆さんとともに育てていきたいと思っています(困ったら、今泉かの子までご連絡ください。)。


〈得点結果〉特選1点入選1点で集計。(@はすーちゃんのコメント)

6点 色増えてゆく如月の花時計          ビビサン
@花時計の針にしめされる時刻と、土台の花の開いていく経過時間と。時の流れの一点と帯のような時間枠。気、更に来るも自ずと重なる二月です。外気に冷たさはあるものの、少しずつまばゆさを増してゆく、二月の光の華やかさを感じます。

5点 太巻きを齧りて冬を締め括る         ビビサン
@今年の恵方は丙(ひのえ)。恵方へ体を向けて、巻き寿司を無言で食べると、縁起がよいとか。きっと作者も、南南東の方角を向き、福を巻き込む恵方巻きを召し上がったのでしょう。「締め括る」に、節分の日のけじめのような思いを感じます。

4点 子犬くる寒の憂いを蹴散らして         純 子
(彰特選)寒の憂いは作者、元気に走ってくる子犬がその憂いを蹴散らしてくれると理解しました。子犬の足の動きのかわいらしさが目に浮かびます。
(康子特選)重苦しい空気を、明るくしてくれる愛らしい子犬の様子が伝わってきます。「蹴散らして」が一気に変わる感じで良いですね。 

4点 段ボールの秘密基地とや春めいて        こう子
@集められた段ボールは、ただの段ボールにあらず。ここは、何かが始まる、何かが動き出す、子ども等の活動拠点。「とや」のおぼろげな言い回しと「春めいて」の春らしい気配になる感じが微妙に呼応しています。子どもの頃の懐かしい記憶が蘇りました。

3点 厚氷裏に動けるもののあり           こう子    
(オリーブ特選)単に情景が浮かぶだけでなく、何かの暗喩や象徴かなど想像力がかきたてられます。

3点 水餅の味のことなど母と午後          帰 心
(涼特選)ほのぼのとした空間を見事に捉えられた佳句ですね。

2点 冬日向ふたごふたくみ足八つ          康 子
(けい香特選)題材の面白さとリズムが良いと思います。季語の冬日向が句全体を温かく包んで幸福な気分になれる句ですね。
(すーちゃん特選)数詞の並ぶ楽しさ、リズムの良さを感じます。冬の陽射しの温もりと読んだ響きの柔らかさも呼応しているようです。赤ちゃんを日向ぼっこさせながら、その成長を確かめているような母親、家族の姿が浮かびました。

2点 日だまりを住みかに撰び花アロエ        けい香
(こう子特選)アロエの花の咲いている光景が浮かんできます。多年草のアロエはいつも同じ場所の日だまりに毎年咲くのでしょうね。

2点 うららけし外出阻む見えぬもの         冬 青

2点 立春を過ぎて陽射しの強気かな         こう子

2点 捨て鉢で自転車を漕ぐ春の闇         オリーブ   

2点 点滴の傷を数へて春愁ふ            ひさこ

2点 凍て雲よ手術近づきわななく手         ひさこ
(ビビサン特選)下五のわななく手 この表現に作者の心中がよく表れていると思います。凍て雲に向かいこれからの手術に心を寄せて、未来への期待と不安と・・・大丈夫だよ、励ます回りの声まで聞こえてきそうです。

2点 老いてなお紅き唇冬薔薇            けい香

2点 語り部の住まひし小屋の雪庇かな         涼
(帰心特選)「語り部」「小屋」「雪庇」ーこれだけで何かドラマが生まれそう。優しいけれど芯のある声の細身の方、食事は、一汁二菜…. とかどんどん情景が浮かんできます。

2点 春耕や有機鋤き込み平らかに           彰
(純子特選)コメントがありませんでした。

1点 チョコレート携えひらり春ショール      オリーブ
(みな子特選)春らしい軽やかな句、チョコレートをバレンタインに用意している心の弾みが感じられる。ひらりも軽やかでいい。

1点 魚氷に上る指輪ケースにビーズの輪     すーちゃん

1点 ひらひらの転生蝶は生まれ来る        ビビサン

1点 雪降れり傘を斜めに歯科通ひ          康 子

1点 店頭の消毒ボトル春を待つ           ひさこ

1点 家の音家の匂いや春まぢか           けい香

1点 一二(いちにい)と鶺鴒発(た)つや春の空   泥 舟

1点 パンデミック人の世の事落葉かき        冬 青

1点 ぶらんこの揺れる一寸先は闇         オリーブ

 



第7回若竹ウェブ句会(2021年1月募集)

〈得点結果〉特選1点入選1点で集計。(@はすーちゃんのコメント)

6点 古手ぬぐい裂いて白菜結はへけり     こう子 
(純子特選)古手ぬぐいが良かったと思います。情景が見えるようです。

5点 冬の夜や句は鶴の機(はた)織るように   彰
(みな子特選)真面目な作句の姿勢がよく出ている。鶴が自分の羽根を織り込むように、自分の中の何かを生かしたいという。
(オリーブ特選)自分の思いや経験を一つずつ紡いで作る作句を、自分の羽を抜いて布を織る鶴の機織りになぞらえるセンスが素敵です。羽を抜く痛みも想起され、季語とマッチしていると思います。

4点 列島をまんまと抱え大寒波        こう子
(ひさこ特選)「まんまんと抱え」という表現方法が、とてもユニークで、いいと思います。今の季節にピッタリです。
(ビビサン特選)中七のまんまと抱え、この表現に魅力を感じ特選にしました。寒波に悲鳴を上げているのは人間の都合、冬将軍の笑い声が聞こえてくるような句だと思いました。

4点 初夢や会いたき猫は現れず        みな子
(彰特選)「会いたき猫」がいかなる猫か気になります。その後の夢で現れたでしょうか。

4点 一塊の土叩きつけ窯始         ビビサン
(涼特選)ダイナミックな表現ですね。

4点 居眠りも特技のひとつ暖炉燃ゆ     ビビサン
@リラックスした気分と適度な暖かさがまどろみを誘います。こんな風に穏やかに心を開放できるのは、やはり「特技のひとつ」。肯定的なとらえ方と赤々と燃える暖炉と。気持ちの良い空間に、時は緩やかに流れています。

4点 侘助や同じ話の繰り返し         康 子
@侘助は葉も花も小ぶりな椿の一品種。繰り返される同じ話。聞くたびに繰り返される同じ思い。全開しない咲き方が魅力の花ですが、その名前の響きのせいか、掲句からはさびしいような、何か心もとない印象も受けます。                                  

3点 何か買って帰るしかなし寒の街      みな子
(帰心特選)身も心も縮こまっている寒中の帰途。思考は停止状態。家には何も食べるものがなく、まさに「何か買って帰るしかなし」。さあ、何を買おうか?―とぼんやり歩いている。うーん、こんな日、確かにある!

3点 ささくれる心を癒す焚火かな        涼
@焚火の炎は生きもの。風にゆらめき、時に高く時に暗く。その移ろう様を見ていると、心もいつの間にかほぐれて…。

2点 春待つや聞き取りにくし母の声      容 子    
(こう子特選)コロナ禍の現在、ガラス越しだとか、仕切り板越しだとか、またマスクを皆付けている状態では、老人との会話は、聞き取りにくいことでしょう。早く元の会話が出来ることを春を待つに重ねている句と読みました。

2点 薔薇の芽や心躍りし頃のこと      オリーブ
(容子特選)この句を読んだ誰もが、心の中の「心躍りし頃」の引出しを久々に開けてみたのではないでしょうか。そんな読後の「ちょっと嬉しい余韻」に浸れる句。

2点 芹なずな七草の名ですきなのは       彰

2点 初詣客を誘ふいなり寿司         ひさこ

2点 入院の覚悟を決める冬の雨        容 子

1点 傷み激し任天堂の歌がるた       ビビサン
(康子特選)毎年、お正月に家族揃ってのかるた取りによる経年劣化か、または、競技用かるたの激しさ故か、はたまた、片付け物をしていて奥から古いかるたを見つけたのか…想像の膨らむ一句です。

1点 蝋梅の香も伝へたし絵手紙で       容 子

1点 からからと笑う女(ひと)いて蜜柑剥く  純 子

1点 ラデツキーの手拍子の無きニューイヤー  康 子

1点 初写真いつも真中(まなか)は孫二人   ひさこ

1点 コロナ禍の句会思案や冬ざるる      帰 心

1点 冴返る爪先立ちのアイライン      オリーブ

1点 ゴミ捨てに出て知る寒気の重さかな     彰

 



第6回若竹ウェブ句会(2020年12月募集)

〈メッセージ紹介〉 
投句について寄せられた声を紹介します。

  • 義士の日や鳥居利右衛門吉良の義士

「長篠の戦いで磔にされた鳥居強右衛門は、吉良の義士なのでしょうか」というご質問を頂きましたが、これは、「利」と「強」の取違いとすぐ判明しました。が、この利右衛門について、作者の彰さんより詳細なメールを頂きました。

鳥居利右衛門については「上野介の忠臣蔵」(清水義範著文芸春秋社刊)に拠ります。この本は主に清水一学(宮迫村の百姓)について書かれたもので、鳥居利右衛門は岡山村の士分のものの息子とあります。この小説によれば二人は華蔵寺の和尚に見こまれて同時期に吉良家江戸屋敷に出仕したようで歳の差は利右衛門が4歳くらい上とありますが、利右衛門が討入りでなくなった時、役職「用人」で熟年期だったようです。また「利」と「理」が混在していますが一般的に後者で、正しくは前者のようです。

ということでした。作者は、吉良びいきということではないそうですが、鳥居理右衛門につながる家系だと信じる人と偶然知り合いになったことから作句に至ったとのことでした。

  • 気象士の棒の振幅寒波くる

「下五「寒波来る」→「寒波急」とした方が、臨場感や気象士の動きなど、読み手は想像しやすいのではないだろか。」というご意見が届きました。確かに「急」の漢字が句末にくることで生まれる緊張感も効果のひとつです。

この声に対して、「くる」としたのは「下五については漢字が続き、印象が固くなるのを避けたい」ということでした。作者なりの意図があり、選ばれた表現だったようです。ご意見をお寄せ頂き、ありがとうございました。

  • 悴む手悴む心によりそいて

解釈の仕方について「傷つき悴む心に寄り添う句、それとも実際に悴む子の手を擦り暖めている句なのだろうか」という声がありました。季語「悴む」は「寒さのために身も心もすべてのものが縮こまった状態」どちらにも解釈は可能でしょう。読み手によって、ひろがる幅をもった句なのでしょう。


(三句投句、五句選。内、一句特選でコメント記載@はすーちゃんのコメント)

〈得点結果〉特選1点入選1点で集計。

6点 気象士の棒の振幅寒波くる          涼
@気象予報士の持つ指示棒の動きと、波のように周期的に押し寄せる寒気団の動き。気圧配置図を指す棒のふり幅の視覚的な動きから、急激に襲う感覚的な寒さに連想が及ぶ。

5点 「またね」から続く話や藪柑子      けい香
(彰特選)電話でしょうか、顔を合わせてでしょうか。話が続けたくなる人と居ることは幸せですね。

5点 もしや母有袋類か日向ぼこ       オリーブ
(けい香特選)何度読んでもクスリと笑ってしまいました。アニメの世界のようで母君が有袋類に変化していく様子が見えるようです。日向ぼこで現実に戻れて良かったです!?
(はーちゃん特選)有袋類と発想されたのが楽しく笑ってしまいました。眼差しに暖かさを感じます。

4点 はらわたはこのような色鵙の贄     ビビサン
(晶子特選)観察力が鋭く、危うげなことを微妙に巧みに表現している。

4点 毛糸編む過ぎ去りし日々埋めるごと    か な
@毛糸を編みながら、蘇る遠い日々の記憶。編み棒(針)を動かす手から毛糸が形となっていくように、また思い出も暖かく作者の胸に紡がれていく。

3点 初鏡わたしのためのハイヒール     オリーブ
(ビビサン特選)自分をしっかりと持った女性の句だと思いました。自分の足に合った靴にはなかなか巡り合えないもの。このハイヒールはオーダーメイドかも。初鏡との取り合わせも効果を最大限に引き出しているように思えます。

3点 銀色の冬芽健やか通学路          晶子
(帰心特選)健やかに冬芽の育つ通学路には、同じように健やかに育つ児童たちが歩いていくのでしょう。希望溢れる一コマ。

3点 雑踏のマスクにマスク紛れ込む     ビビサン
@顔の下半分を隠すマスクは表情が見えにくく、感情がわかりにくいもの。マの韻が効果的に配置され、句の背後にマスクがもつ仮面の意味も感じられる。

3点 寒木瓜の朱さに負けぬ恋心        けい香
@花の少ない冬に、ひときわ目につく寒木瓜の花。白や絞りなど鮮やかな色が多いが、恋心の強さを表すのはやはり赤をもってして。冷たい風にも負けない恋心。

2点 短日や農夫スコップを畑に立て      泥 舟    
(涼特選)ミレーの風景画を想起致しました。とても素敵な句ですね。
(康子特選)もう少し畑仕事がしたいのに、もう日暮れ。農夫の嘆きとため息が聞こえてきそうです。

2点 悴む手悴む心によりそいて        けい香
(ひさこ特選)「悴む手」「悴む心」のリフレインの効果はいいと思う。全体的にリズミカルで寒い季節に合っていると思いました。

2点 夫好む煮くずれ大根ポンと出す      ひさこ
(容子特選)言葉は少なくとも「ポンと出す」ところに愛情と、長い年月を経た夫婦の関係性が見えて面白い。「煮崩れ大根」は私も好き。

2点 冬の空同調圧力てふ重み         帰 心
(オリーブ特選)日常生活で感じる様々な同調圧力に、寒々しく乾燥した冬の空が相俟って、共感を覚えます。

2点 湯タンポを陣取る猫の重重し     はーちゃん
(こう子特選)猫のふてぶてしい様子がよく詠まれていると思います。年をとった丸々と太った何にも動じない猫が見えてきます。

2点 寒暁を車内明るきバス走る        康 子

2点 石蕗咲や遺書を書いたと母の言ふ     容 子

2点 山茶花の散り乱れては地の色へ      康 子

2点 ひとりゐの身に入むハービーハンコック  帰 心

2点 しつけ切る形見のはさみ七五三      こう子

2点 稲妻やちゃんと口論させて欲し      帰 心

1点 小春日や試しバリカンまず父で      容 子
(みな子特選)暖かい冬の日に、バリカンを使い始めるのに、まず父の頭を使って試すというのどかな情景が浮かぶ。

1点 木の葉散る少し遅めの朝ごはん      こう子

1点 十一月尽満月大きくほんのりと      みな子

1点 箸持つも億劫となり冬籠        オリーブ

1点 鳴り止まぬサイレンは何処霜の朝     容 子

1点 また一人帰らぬ旅へ冬初め        康 子

1点 晩節てふ言葉の重み牡丹焚き       か な

1点 クリスマスはやぶさ2(ツー)の玉手箱  ひさこ

1点 わんぱくは落ち葉蹴散らし反抗す    ビビサン

1点 婆ひとり日めくりめくる冬座敷      ひさこ

 



第5回若竹ウェブ句会(2020年11月募集)

先月(十月)の〈別れなのさっと一刷毛秋の色〉涼さんの俳句の解釈について、さまざまな声をいただきました。

  1. 「別れなの」は「分れなんです」という女性が自分自身に言い聞かせている感じ、その気持ち。上五、中七、下五がそれぞれ独立したような三段切れになっている。
  2. 「別れなの」は第三者が「もう別れた方がいいよ」という意味の「別れな」に「の」がついている。
  3. 「別れしな」の意味の「し」が省略された形で、別れ際という意味。
  4. 「別れなのさ」で切れて、その気持ちの流れで「一刷毛(ひとはけ)」につながる。

といろいろなご意見があり、涼さんに確認したところ、作者の意図としては、1の意味で作句されたそうです。「秋の色」は秋景色、秋の風光を賞美する意で使われている季語。中七の「さっと一刷毛」は、実は掛け軸の滝の勢いからイメージされたそうです。皆さん、ご意見ありがとうございました。


今回(十一月)の選句も互選で行いました。
(三句投句、五句選。内、一句特選でコメント記載)
得点結果 特選1点入選1点で集計。
@は、すーちゃんのコメント。

9点 冬ざれや心に抜けぬ刃あり        けい香
(こう子特選)この刃をぬいたら最後…ということ人生の中にはままあると思います。そしてそれは抜かれぬまま心の奥にしまわれる。端的に心の内の一塊を詠まれた句だと思いました。また、この刃は刺さったままの抜くことの出来ない刃なのかと鑑賞いたしました。どちらにもとれますかね。

7点 蜜柑むく幼の爪の薄きこと        けい香
(涼特選)優しく鋭い観察眼になによりも惹かれました

6点 包丁のすぱりと切れる初冬かな        涼
(みな子特選)すぱりとという切れ味の良さが 初冬の緊張感とあっていると、思います。
(桜子特選)すぱりが効いていると思います。

6点 なにもかも無きことにせし焚火かな    ぶっち
(彰特選)日記や手紙を燃しているのか、炎に新たな決意を確かめているのか。

4点 神無月あさぎまだらを追う旅路    はーちゃん
(容子特選)時には海を越えて長旅をする「あさぎまだら」。見つけたらとてもラッキーで、その群れを追いかけたい気持ちも分かる。もしかしたら神様もあさぎまだらを追って出雲まで旅したのだろうか?季語「神無月」が、あさぎまだらをより神秘的にしている。
(オリーブ特選)ミステリアスで詩的な雰囲気が季語と響きあっていて美しいと思います。

3点 子を打ちし我の記憶に雪しまく      こう子
(はーちゃん特選)句で表現できる事が、沢山ある事を知りました。若かった頃を思い、胸に響きます。

3点 紋付で形(なり)は着流し尉鶲(じょうびたき)  彰
(ひさこ特選)「紋付で」からは、古風な着物を。「形は着流し」は、若侍かと想像してたら、「ジョウビタキ」という鳥だという事が分かりました。とても面白いと思いました。

3点 女子駅伝胸元薄し秋澄めり        晶 子
(ぶっち特選)スポーツの秋、さわやかな様子が目に浮かびます。

3点 寒いねとスマートフォンに囁けり       涼
@俵万智の〈「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ〉は今から三十年以上前の歌。今やスマートフォンに話しかければ「寒いですね。私もカバーを重ね着したいです。」なぞと答えてくれる時代。今を映す現代の一句。

3点 ひよが実をこぼして殖える小さき庭    けい香
@〈鵯のこぼし去りぬる実のあかき 蕪村〉〈鵯は実を人は煙草をこぼし去る 岩岡中正〉は、ひよどりが実をこぼした場面を詠んだ句。掲句はそのこぼした実から、さらに時間的経過を含んだ意味内容。うるさいほどの鵯の鳴き声と、「こぼして殖える」のにぎやかさとの重なりも背後に感じられる。

2点 秋蝶や石段駆ける若き足         康 子
(晶子特選)石段を舞台に下り行くものと上がり行く者を上手く表現している。

2点 あやすのは夜なきする猫虎落笛     オリーブ
@虎落笛は、冬の烈風が柵などに吹きつけてヒューヒューと発する笛のような音をいう。猫も人も同じ。この猫はまだ幼く、母を恋うているのだろう。母のいない子猫に寄り添う作者。冬の夜の厳しい風の音にいっそう切なさが募る。

2点 水散らし羽音の重き冬雀         康 子
@冬の明るい陽ざしの中、水浴びをしているのか、水飛沫は光に輝くも、その羽音に重さを感じた作者。繊細な感覚でとらえた一句。

2点 健診に抱く子の重み涼新た      はーちゃん
@いつも抱いている子の重みを明確な数字で確認する健診。子の成長を再確認し、実感するとともに、秋になって新たに感じる、しみじみとした涼しさ。

2点 俯いた誰そ彼時の冬帽子        オリーブ
@夕方の、人の顔を見分けがたくなってきた頃、下を向いた人影に冬帽子の輪郭が、はっきりと目に映ったのだろう。寒さを防ぐ冬帽子のシルエットが夕闇に浮かんでいる。

2点 じたばたと医者に行く道秋桜       容 子
@医者へ行く必要をみとめながら、避けていたという状況だったのだろうか。「じたばた」から、抵抗むなしく、医者へ行くことにし、あわてながら道を急ぐ、そんな様子が浮かぶ。秋桜も風にやや乱れ咲いているのだろう。

2点 暫くは風音しきり冬庵            涼
@風音に耳を傾けているしばらくの間、そして、今は静かな時が流れる冬の庵。風音を言いながら、静かさを詠んだ一作。

1点 我が庭のひととき萩の黄葉して      みな子
(康子特選)柔らかな秋の日差しの中に、萩の葉が黄色く映えて揺れる。まるでスポットライトが当たっているよう。心安らぐ素敵な一句です。

1点 家史に足す何事も無く冬初め         彰
(けい香特選)何事もないのが平穏というもの、作者さんもその幸福に満足していると思います。冬初めの季語に人生も感じられて、私も斯くありたいと思いました。

1点 秋日和ホームの庭に肉の香よ     はーちゃん
(帰心特選)コロナ禍で、ホームに入所している方々は家族の面会ができない。そうした方々にせめてバーベキューで楽しんでいただこうと、スタッフの方が肉を焼いている。洗濯物を届けに来た家族の方に、その肉の焼ける香りは届く。その香りを嗅ぎながら、入所しているおじいちゃんの笑顔を思い浮かべている―そんな光景が目に浮かんできました。

1点 端布(はぎれ)だけマスク手作り母に似て ひさこ
(すいは特選)受け継ぐという温かさを感じました。

1点 枯れ色の蟷螂に寄る兄弟         香 苗

1点 ワイファイの迅さ心に秋のこゑ      帰 心

1点 秋の宵娘はウクレレを聞かせけり     帰 心

1点 仙台のトンネル抜けて薄道        みな子

1点 ブルームーン月には魔女の影のあり    晶 子

1点 寝酒から誘われ烏賊焼く午前2時    オリーブ

1点 便利さの存在遠し秋の暮         康 子

1点 藤落ち葉混じり園児の砂あそび      こう子

1点 はさみ研ぐ術後の庭師鳥渡る       ひさこ

1点 冬日浴ぶジーパンの裾あげ水辺      香 苗

 



第4回若竹ウェブ句会(2020年10月募集)

オリーブさんより、下記のようなメッセージを頂きました。
★メッセージ紹介
互選の試みは、他の参加者の意見を知ることができて面白かったです。質問ですが、投句する句は時節にあった季語を用いたものに限定すべきでしょうか。
☆ご質問に対して
できるだけその季節に合った季語の方が良いと思います。当季雑詠(その季節の事物、事象について自由に詠む)が基本ですが、唯、季節の移ろいにより、季語も前後して、またがる時節はありますね。


今回(10月)の選句も互選で行いました。
(三句投句、五句選。内、一句特選でコメント記載)
得点結果 特選1点入選1点で集計。@は、すーのコメント。
(配点について、一般的に特選も入選も1点というご意見を頂き、今回はそのように集計しました。また、何かご意見がありましたら、声をお寄せください。)

7点 夜干し衣や月の光を吸ふて白      こう子
(涼特選)「月」が三秋に渉る季語であることを知りました。
「吸ふて白」が絶妙ですね。

5点 紐解くは最期の言葉秋惜しむ      オリーブ
(はーちゃん特選)意味を調べている内に思い出す人がいました。秋惜しむが紐解く、最後の言葉にかかっていいなと思いました。

5点 夜なべして見つめる無数の謀      オリーブ
@如何なる状況か。書類の束を前に、或いは古文書解読か。深謀遠慮のたくらみ事に作者の夜なべ仕事は長くなりそうだ。

5点 掌の骨壺小さし秋あかね        桜 子
@掌に乗せられるほどの小ささが、命のはかなさのようで、哀切さが滲む。秋あかねの小さくも素朴なイメージと共鳴。

4点 天高し棒をくわえて戻る犬       由美子
(こう子特選)秋の高い空から、走り回り作者の元へ戻ってくる犬へ照準を合わせ、次にその口に銜えた棒にズームされていく動きが、とても面白いと思いました。

3点 雀にも剛の者あり秋の朝        康 子
(オリーブ特選)人間から見るとか弱く小さい雀でも、雀社会の中では強者弱者があり、どんな生き物にも生き抜く逞しさがあることを感じられました。

3点 味噌汁の香り深まり秋黴入       こう子
(すいは特選)さりげない日常にみる季節の移ろい。思わず鼻呼吸。
@秋黴入は、あきついりと読む「秋黴雨」だろうか。

3点 魔女帽子こわごわ載せるハロウィン   由美子
@明るい楽しさの裏にある魔女への恐れをユーモラスに詠む。

3点 老蝶の茶色き翅に光受け        桜 子
@冬へと向かう秋蝶の行く末と、光を受けている命の輝き。

2点 自転車の母待つ姉妹夕月夜       こう子
(けい香特選)月の出る頃まで母を待つ幼き姉妹がいとおしく、秋の哀愁も感じられて好きな句です。
(桜子特選)情感も情景描写も素敵です!

2点 別れなのさっと一刷毛秋の色      涼
(彰特選)潔くて爽やかで、とても気に入りました。「一刷毛」は「一刷き」かとも。でも、これがいいのだと思います。

2点 半袖に木犀の香の痛みかな       彰
@半袖の身に木犀の芳香を「痛み」ととらえる独自の感性。

2点 秋涼や忘れたことは書いてあり     涼
@失念を補ってくれたのは自らの手控えか、秋涼の心地よさ。

2点 敬老日されどエプロン店支度      すいは
@敬老日とはいえ、身ごしらえして店を切り盛りする活力。

2点 高齢の集ひて唱歌乱れ萩        康 子
@高齢者の歌う様子を巧みにとらえた。季語の斡旋が見事。

1点 天高く父を超えたる靴サイズ      はーちゃん
(由美子特選)子どもは、親を追い越していく。成長と親の願いとが絡み合っている。天高くの季語を上手く生かした句になっている。

1点 穴惑ひズームの操作手こずれり     帰 心
(晶子特選)スマートホンに苦戦している様と季語が上手く合わされている。

1点 園庭や缶ぽっくりの運動会       康 子
(帰心特選)園児の運動会、本当にかわいいですよね。「ぽっくり」という語の、のどかな響きが「園庭」とマッチしていて、ほのぼのとした気持ちで、わが子を眺めている親御さんの眼差しまでも浮かんできます。

1点 尾花道ふと口ずさむ童唄        けい香
(康子特選)ススキが生い茂る細道をずっと歩くと、いつの
間にか♪この道はいつか来た道♪なんて口ずさんでいたり
して…。

1点 追われても何も終わらず休暇明け    オリーブ
@夏期休暇中にも仕事をしていたのか、山積の課題に徒労感。

1点 プロペラの音懐かしき秋の蒼      涼
@かつての記憶を思い出させるプロペラの音。「蒼」は秋空の蒼か。

1点 木の実降るトトロの森を夢に見し    けい香
@トトロの木の実は一夜で巨木になって…不思議の森の物語。

1点 秋夕焼五時のチャイムで帰る子ら    けい香
@黄昏時の子らの上に広がる、短くも美しい秋の夕焼け空。

1点 娘の作る月見団子に抹茶味       帰 心
@お茶処、西尾ならではの月見団子、団らんのひととき。

1点 別子山岩肌撫でるコカマキリ      すいは
@固い岩肌を撫でるような子かまきりの、いたいけな様子。

★すいはさんよりのメッセージ
別子山は新居浜市にある住友銅山の跡で、かつては大変多くの労働者が行き交いました。
@メッセージ有難うございました。愛媛県宇摩郡の別子山村は、今はもう新居浜市に合併されているのですね。
☆お詫び
今回、すいはさんの句「別子山」を「別所山」と間違えていました。大変失礼いたしました。送られてきた俳句は、コピー&ペーストして一覧表にするのが基本ですが、本句は打鍵し、誤ったまま送信してしまいました。心よりお詫びいたします。申し訳ありませんでした。以後気をつけたいと思います。また、皆さんにお願いですが、今後誤りに気づかれたときには、教えて頂けると助かります。



第三回若竹ウェブ句会(2020年9月募集)

今回(九月)の選句は互選で行いました。
(三句投句、三句選。内、一句特選でコメントはあってもなくても自由)

得点結果 今回は特選2点入選1点で集計しました。は、すーちゃんのコメント

8点 単線の車輌傾き曼珠沙華       こう子

(康子特選)列車がカーブに差し掛かり車窓から、線路沿いに咲く真っ赤な曼珠沙華が、目に浮かびます。
(みな子特選)単線の電車がカーブに差し掛かり、傾いて通っていく、そこに曼珠沙華が咲いている情景が見えてくる。
(晶子特選)(由美子特選)

4点 街灯りずっと離れて月明かり      由美子

(ぶっち特選)地上と天空、人工と自然、二つの対比した世界。お互いに自らの持ち場で、各々明るい光を放っている。

3点 蜉蝣や彼方見通すみどりの瞳             オリーブ

(桜子特選)短い命の蜉蝣のはかなさと、遠くを見つめている「みどりの瞳」の透明感、そのひとすじの眼差し。

3点 脳膜に焼き付く景や夜光虫       こう子

(ゆり特選)「脳膜に」の詠い出しの強さから伝わる刺激的な光景。命の不思議、光の幻想性。この大いなる自然。

 3点 ロッカーを開けてちりんと墓参り   桜 子

(こう子特選最後まで読んで驚く、種明かしのような構成である。今どきの墓参りの様子を効果的に伝える一句だ。

 3点 下校児の道草誘う犬子草          こう子

(彰特選)人に犬派、猫派があるように、同じ草を犬子草とも、猫じゃらしとも呼ぶ。共に遊んでほしいかのように揺れる狗尾草。

3点 父とこの同じ眼差しかぶと虫     晶 子

「こ」は「子」か。かぶと虫の魅力に父子ともに虜となっている。強い角、輝かしいボディ、逞しくも美しい虫なのだ。

2点 在りし父白シャツに替え押印す     ゆ り

(帰心特選)お父様の生真面目さ、誠実さが伝わってきます。

2点 昼も夜もおやつにも食ぶちらし鮓    ゆ り

(オリーブ特選)晴れの日限定の特別な食べ物のはずが、まさかおやつにまで⁈という驚きで笑ってしまいました。大好物なのか、食べ切れない程の量だったのか、大人数で食べる予定が変更になってしまったのか、色々と想像が広がります。

2点 猫の手を借りて夫に触れる秋     オリーブ

猫の手が単にかわいいだけでなく、切なさも秘める。

2点 秋の雨ぱっと開かぬ手の痛み     康 子

秋雨の冷えた空気感を最初に感じる手指。実感の一句。

 2点 オーボエは誰に聴かすや夏木立    由美子

柔らかな音色が青々とした木立を渡っていく心地よさ。

2点 産み月の白ワンピース風揺るる    ゆ り

季語は白ワンピース。命を宿した臨月の身に白さが際立つ。

1点 稲妻の妻になりたる稲穂美し      

稲は雷の発光と交わって実を孕むという言い伝えの一句。

 1点 朝な朝なひいふうみいと牽牛花    康 子

朝ごとに咲く朝顔を一つ一つ数えあげる、やわらかな響き。

 1点 稲妻に泣いて負われて宮の森      

幼少の頃の記憶か、童謡の聞こえてくるような郷愁が漂う。

 1点 青瓢ぼんきゅっぼんとぶら下がり   桜 子

リズムのよい中七の擬態語が瓢箪の見事さを表し、愉快。

 1点 二学期の正門検温の関所       帰 心

二学期が季語。コロナ禍の教育現場の朝の景を言い得て妙。
〈帰心さまよりのメッセージ〉
私の勤務校では、コロナ禍の中、対面授業が解禁となったのは、8月末でした。正門を入る学生たちは、立哨の先生によって検温を受けたのち、教室に入ります。先日は、雨の中傘を差しながら同僚が立哨をしていました。心の中で手を合わせました。



第二回若竹ウェブ句会(2020年8月募集)

特選句

放物線の生き物めいてその噴水      みな子

自由に形を変えることができる水に、命があるかのような動き、姿を見たのでしょう。空中へ噴出された水が、下の水面に着くまでの限られたわずかな時間。噴水にある美しさや涼しさをこえた「生き物めいて」の措辞が秀逸です。「その噴水」と取り立てて指し示す感じに、驚きと若干のおそれのようなものも感じます。命の無いものに命の動き、輝きを見てとった佳句です。

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初盆で悲しみ新た無二の友        尚 枝

今年は大切な友の初盆。不在を再確認させられる悲しみ。かけがえのない友への追悼の一句です。そのつらさはあるものの、その友との思い出は作者の胸に確とあるのでしょう。「で」は「なので」という因果を思わせるので、「の」や「に」などの違う助詞を考えてみるのもよいかもしれませんね。

蜂の巣を知らぬ仏の立ち話        尚 枝

恐ろしい蜂の巣に気づかずに立ち話をしているのは、人とも、人のような仏像とも。慣用句「知らぬが仏」は、「当人だけが知らずに平気でいるさまをあわれみ、あざけっていう語」と広辞苑にありますが、きっとそんな意味合いでつかわれたのではないでしょう。作者ご自身のかつての一場面なのかもしれません。蜂の巣があると気づかないうちは仏のように?穏やかに立ち話をしていたのに、近くにあるとわかった途端、あわてふためいているのかもしれません。また、本当の仏像ととれば、蜂の巣など知らぬ存ぜぬの立ち話。立ち話をしているように並ばれた仏さまの力には、蜂も太刀打ちできないのかもしれませんね。

草刈りで見つけし百合の咲くを待つ    尚 枝

草刈りをしていたら百合を発見。見つけた百合の開花を待つ気持ちが一句に込められています。大きさや色合いなどどんな様子の百合だったのか、知りたくなりました。

血縁の見知らぬ人と水喧嘩       オリーブ

水利をめぐっての諍いが今もまだ続いているのです。「水喧嘩」は、耕作放棄地が増えている昨今の現状から、あまり使われなくなった季語のように思っていました。権利を主張し合うのも、それが血縁関係となれば、更にややこしくなってしまうのでしょう。農耕民族といわれる日本人の、今に続く水喧嘩の一句。

濁水のうわべを浚う会話かな      オリーブ

「溝浚え」の季語を元に作句されたのか、それとも無季の句でしょうか。いずれにしろ、実質の伴わない会話、不毛なやりとりの場面のようです。本音と建前の社会の一端を見る思いがします。

地につかぬ赤子の裸足突いてみる    オリーブ

突いてみたのは裸足の足のどの部分でしょうか?「地につかぬ」から、まだ歩いたことのない赤子の足の裏でしょうか?遊び心なのか、そこには裸足である無防備の怖さも感じます。

七月の豹紋蝶に出会う道         みな子

七月のある日、道端に出会った豹柄のような蝶。豹紋蝶の出現で歩いているその道も、作者にとって印象に残る道になったでしょう。出会ったときの新鮮な驚きが伝わります。

飲んで食べ尿して糞(ふん)しはつあき来 みな子

まさにそのとおりです。循環器である生体は、それを繰り返し、また新しい秋がやってきました。

梅雨明けや朝日を浴びてシャンプーす   ぶっち

一読、長梅雨からやっと開放された気分の良さが伝わります。朝の爽快感と共に、朝日にシャンプーの水しぶきが光っています。「浴びて」が朝日にもシャンプーの飛沫にも。今年は特に長梅雨だったこともあり、梅雨明け実感の一句。

結社誌の曝書ベランダの壮観       帰 心

八音、九音の構成による句またがりの対句表現。曝書と壮観の漢語も一句の調べを引き締めています。ベランダも夏の季語ですが、ここでは、曝書が主の季語となるのでしょう。

蝉しぐれ体操の腕空に上ぐ        帰 心

懸命に鳴く蝉声の空へ腕を上げ、こちらも元気よく体操です。蝉しぐれの中へ近づくように腕を伸ばします。

日傘差す女子高生の景にも慣れ      帰 心

おしゃれに敏感な女子高生ですが、熱中症で死者が出る現代、日傘もおしゃれだけではなくなりました。コロナ禍の近頃は、ソーシャルディスタンスのために使われることもあるようです。


先月(七月)の〈念珠へと育て御寺(みてら)の青胡桃〉について作者の帰心さんよりメッセージを頂きました。
★メッセージの紹介
西尾市吉良町に蓮で有名な教蓮寺がある。この寺のご住職は植物の事がとてもお詳しいので、何度も足を運び、いろいろな話を聞かせていただいている。ひとつば、風蘭、菩提樹と見て回ったのち、青胡桃が目に留まった。「この胡桃から毎年念珠を作っています」というご住職のお話に、植物と宗教が一本につながった。たわわに実った胡桃を見て、すてきな念珠ができるのだろうと思った。(「育て」は、他動詞連用形の意味で詠みました)
とのことです。この「育て」のあとには、軽い切れがあって、「いつか念珠となるべく育てていて」のように受け取ることができますね。
丁寧なコメント、ありがとうございました。



第一回若竹ウェブ句会(2020年7月募集)

特選句三句

はつなつのアリウムの花くっきりと        みな子

「はつなつ」の清々しい響きが鮮明な花の姿を呼び起こしてくるようです。アリウムはネギ科、丸いボンボンのようなかわいい花。

 

シタールの音や菩提樹の花弁より          帰心

シタールは金属製の爪ではじいて鳴らす北インドの弦楽器。菩提樹は中国原産。五弁花で芳香をもちます。一句全体に異国の響きや情緒が漂います。

 

梅雨曇りどうにもならぬことがある       オリーブ

暗い梅雨どきの曇り空、加えてコロナの厄災、また人生の一つの局面に、こんなつぶやきが出たのでしょう。共感とともに季語のもつ鬱とした雰囲気、状況に即して詠まれた一句。

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切実にアイスクリームねだる猫         オリーブ

猫もアイスクリームの美味しさに目覚めてしまったのでしょうか。猫もほしがるアイスの魅力。切実にねだる様子を映像化してみると、詠み手に伝わりやすくなります。

 

若竹のような四つ足駆け回る          オリーブ

上へと伸びる竹の垂直方向に対して水平方向の元気な動き。若竹は季語なので比喩としてではなく、若竹の青々とした元気の良さ、清新さを主眼とした作句に挑戦してみては。

 

半夏雨半月ぶりに猫撫でる            ぶっち

半夏雨(はんげあめ)は時候の季語「半夏生」の七月二日頃に降る雨。物忌みや、この日に降ると大雨が続くとの謂れなど含みをもった季語。中七から伝わる猫との微妙な距離感。

 

夕立の西日が照らす水溜まり      はらぺこあおむし

夕立から西日が差すまでの長い時間枠を俳句に詠むのは、なかなか難しい。夕立も西日も夏の季語なので、主従をはっきりさせるとより良くなりそう。水溜まりへの着眼点はグッド。

 

紫の薔薇の二輪を卓上に             みな子

「薔薇の二輪を」と「二輪の薔薇を」との差異。作者は前者を選択。紫の薔薇の色が鮮明です。どちらが良いというのではなく、繰り返し読んでしっくりくる、気に入るという、自分なりの言葉に対する感覚を確認してみるのもよいかも。

 

アカシアの花のちらほら小公園          みな子

のんびりと散策でもしているような中七。アカシアはハリエンジュともいわれ、白い蝶の集まりのような花房です。花の咲き加減と小さめの公園。辺りには芳しい香りも漂って。

 

念珠へと育て御寺の青胡桃             帰心

「育て」の受け止め方。人によって、育っていけと受け取る場合と、現在育てていてと受け取る場合と。自動詞「育つ」の命令形か、他動詞「育てる」の連用形か。読み手によって様々な解釈を呼ぶ句です。青胡桃の中に秘められた核に思いを託しているのでしょうか。

 

風を聴く心風蘭仰ぎ見る              帰心

風蘭は白い花だけでなく葉や根まで様々な楽しみ方ができ、乾燥にも強い蘭。「風を聴く心」は実は作者の父上との絆を表す特別な言葉。「仰ぎ見る」から風蘭の位置が上にあるだけでなく、そこに敬愛の感情も。粛然とした精神世界を感じます。

 

皆さま、ご投句ありがとうございました!

次回も是非お待ちしております。

(今回のウェブ句会選担当:すーちゃん)