若竹ウェブ句会 選句報告

第23回若竹ウェブ句会(2022年5月募集)

(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)
今回も、夏雲システムのエラー発生が修復されていない為、以前と若干違う編集結果になっています。

7点句 おほかたは老化と合点花は葉に    荒 一葉
特選 いろんな面での不都合も、年齢の所為とは身も蓋もない結論だが大方はそれで得心がゆく。花は葉に、否応なく時間は経つ。(燕太)
特選 そうですよね。今年、傘寿の私にはドキリとさせられるお句でした。私もついつい都合が悪いことは、年のせいにして自分を甘やかしております。合点の特選句です。有り難うございました。(佳楓)
入選 老いを素直に受け入れている穏やかな心を、思わせます。時の移ろいを感じさせる季語が、とても良い。(康子)
入選 帰心・彰・百代・ケン

6点句 天井に日の斑遊ばす代田かな    すーちゃん
特選 田植準備のできた様子が「日の斑遊ばす」の措辞で確かな描写になった(荒 一葉)
特選 太陽の光が代田に反射して、天井でいくつも揺らめいているような楽しい句だと思います。(康子)
特選 農家の家の間近に代田があるのでしょう。開け放った部屋の天井に代田の光を反射して揺れているのが懐かしく美しいなと思いました。(蒼鳩 薫)
入選 家の隣の代田の照り返しが天井に日の斑を遊ばせる。涼やかな景である。(みな子)
入選 私も、代田や植田の句を沢山詠んで来ましたが、いつも、風、とか彩とかの景色ばかりで、(天井に日の斑ばす) 迄は詠めませんでした。素晴らしいお句、有り難うございました。(佳楓)
入選 垣内孝雄

6点句 ベンヂンの小瓶はほのと昭和の日  すーちゃん
特選 昔、着物を脱いだら、すぐにベンジンを布に湿して、襟などに付いた、見えるか見えない汚れを押さえた記憶が、ツンとした匂いと共に蘇りました。(百代)
特選 若い時を過ごした戦後の昭和という時代。決して平和ボケであったとは思わない。(彰)
入選 帰心・ビビサン・燕太・こう子

5点句 バス停に白が溢るる更衣         燕太
特選 バスを待つ高校生たちのフレッシュな夏の制服姿が、「白が溢るる」の措辞から鮮やかに浮かんできます。(帰心)
入選 中七の表現が、夏服に替わった様子をとても鮮やかにしてます。(康子)
入選 彰・冬青・こう子

4点句 諸子焼く比良と比叡を仰ぎ見て    垣内孝雄
入選 琵琶湖の淡水魚、美味い諸子の佃煮を食べたことがあります。焼きながら食べる諸子は素朴で風情があっていいなと思いました。(蒼鳩 薫)
入選 彰・すーちゃん・佳楓

3点句 麦埃あびて信濃の道祖神         佳楓
入選 麦打ちの「景」が浮かびます。(垣内孝雄)
入選 麦埃を被っても、村人の営みに微笑んでいるような景ですね。(康子)
入選 帰心

3点句 廃屋や勢い余る松の芯          冬青
特選 これも、いまの日本の現実かなあと思います。空き家問題が取り沙汰されて久しいですが、これといった解決策も見いだせぬまま、松の芯だけが、まっすぐ、まっすぐ天を突く。切り取り方が見事です。(ビビサン)
入選 帰心・荒 一葉

3点句 修羅場めく厨よ蠅の一匹に        康子
入選 修羅場とはまた大袈裟だが、俳句はそのぐらい大袈裟な方がよいのかも。(燕太)
入選 特選の次に秀逸句と思いました。その場の景色がぅわ~っと浮かびました。(佳楓)
入選 ケン

3点句 看板のBの窪みに雀の子         康子
特選 看板を見ると、ちょうどBの字の凹みに雀の子がいる。Bの窪みイコール雀の子というのが良い。(みな子)
入選 燕太・百代

2点句 樟若葉日露戰役從軍碑           彰
特選 昔、ロシアとの戦がありました。(垣内孝雄)
入選 ビビサン

2点句 久に会ふ短髪の娘や聖五月        帰心
入選 髪を切った娘さん、夏らしくて良いですね。(垣内孝雄)
入選 娘さんの若き溌剌とした短髪の姿が聖五月に合っている。(みな子)

2点句 生も死も同じ数だけ松落葉      荒 一葉
入選 ビビサン・こう子

2点句 ペディキュアの色は水色夏浅し      百代
入選 荒 一葉・こう子

2点句 大湖にうかぶ小島や遠霞       垣内孝雄
入選 琵琶湖の風景の竹生島を想像しました。のどかで静かな琵琶湖が美しいですね。(蒼鳩 薫)
入選 彰

2点句 夏雲や翅あるもののメタリック    蒼鳩 薫
特選 青空に湧き立つくっきりとした夏の雲と硬質なものとの取り合せ。昆虫の薄い翅が光に輝いて金属のきらめきを放っているようにも、飛行機の銀色の翼が返すメタリックな光のようにも。シャープさが際立つ一句。(すーちゃん)
入選 荒 一葉

2点句 解数のごとく薇(ぜんまい)開きけり  蒼鳩 薫
入選 百代・冬青

2点句 海凪ぎてご赦免花の笑む岬        佳楓
入選 百代・ケン

1点句 豆飯の小を頼んで焼き鯖で       みな子
入選 すーちゃん

1点句 潮満ち来若葉の風に夕月夜(ゆふづくよ)   彰
入選 取り合わせに共感。(垣内孝雄)

1点句 芹の水ひかりの綾となりにけり    垣内孝雄
入選 やわらかな芹の薄緑と川の流れが相まって美しいなと思いました。(蒼鳩 薫)

1点句 雄渾の「燕の巣有り」秘境駅        百代
入選 公共の建物などでの燕の営巣は迷惑だが、相手が燕では寛大に処するほかない。注意を促す張り紙の字が雄渾とは笑わせる。(燕太)

1点句 尺蠖奔る祖国復帰闘争碑         佳楓
特選 早いものですね。沖縄返還から五十年。地道が一番ですね。しゃくとり虫のように。(ケン)

1点句 啓蟄や轟く空は早三月          ケン
入選 早くウクライナの空が美しく晴れて、壮大な向日葵畑や、緑の麦畑を見たいものです。(佳楓)

1点句 山羊小屋に羊も居りて草刈機      こう子
入選 冬青

1点句 ライオンの欠伸うつりて風光る      百代
入選 いかにも長閑な明るさが感じられる。(みな子)

1点句 ラジオからアバの特集柿若葉       帰心
入選 荒 一葉

1点句 夏めくやクルスきらりと胸の谷    荒 一葉
特選 何とも夏らしい句だと思いました。Tシャツやタンクトップを着る季節になり、胸や二の腕も露わに…。きらりと光ったクルスが眩しく見えてきそうです。(こう子)

1点句 摘果する枇杷の実三つまでと決め    こう子
入選 受粉したそのままだと、小粒のまま育って美味くありませんね。三つ残して摘果すると理解しました。大粒で甘い枇杷の実ができそうですね。(蒼鳩 薫)

1点句 蝌蚪に足恥づかしながら尾をつけて    燕太
特選 おたまじゃくしがカエルに変態する時の様子がユーモラスに描写されている。(冬青)

1点句 踏まれても摘まれても菫はすみれ   蒼鳩 薫
入選 すーちゃん

1点句 行く春の廃鶏すでに瞬かず        燕太
入選 すーちゃん

1点句 川中に咲くは万朶の針槐(はりえんじゅ) みな子
入選 中洲にも、おそらくは川岸にも、白い針槐の花が見渡す限り続く、そんな美しい景が目に浮かびます。(康子)

1点句 火祭りの禊の浜の汐干かな        帰心
入選 ビビサン

1点句 落葉から松の芽吹く矢作(やはぎ)の分水嶺  彰
入選 冬青

1点句 刺ある枝ゆるりと巻きて花あけび     冬青
入選 花あけびの蔓の様子がよくわかる。(みな子)

 

〈俳句気まぐれエッセイ⑭  危険 〉   今泉 かの子
二か月ほど前になるが、初めて救急車に乗った。立派な文化施設の一室、句会終了後のことである。椅子から立ち上がり一歩踏み出そうとした瞬間、体が飛んだ。固定されていたホワイトボードの脚につまずいただけなのだが、なんせ慌てていた。会終了後の予定が迫っているわ、即返信が必要なメールが来るわ。スマホを片手に、もう一方の手には大きなバッグを抱えて、一瞬宙を飛んだ。「ああ…」と思ったら、いきなりガツン。キャビネットの平面に頭を思いっきり打ちつけた。
幸い居合わせたしっかり者の句友が、傷口を手で圧迫。うまく止血されたものの、それなりの量の出血があったのではないかと思う。私本人は、もう迷惑千万なことを引き起こしてしまったので、ずっと「どうもすみません、ホント申し訳ないです。」などと言い続けていた。
救急隊員が到着し、「今まで入院したことは?」「お産のときです。」「コロナの接種は?」などの確認にも普通に受け答えしていたので、ストレッチャーに乗らず、普通に歩いて行った。救急車に乗る時になって、ストレッチャーに乗らないと、救急車に乗れないとわかり、乗車。「付き添いの方は?」と言われたときに、すぐさま「私が」と手をあげてくれた友も同乗、直ぐそばの病院へ向かった。
病院で処置を待つ間、一番気にかかっていたことは、吉野へ行けるだろうか、ということだった。二週間後の四月、吉野には、加古宗也主宰の第三基目の句碑開きが予定されていた。先生が言うところの「びっくり仰天」の驚くべき展開で、句碑建立に至ったそうである。その詳細はここでは省くが、吉野は元々憧れの聖地。何としても行きたい所である。付き添ってくれた友達は、あっさり「大丈夫でしょ。一緒に行こ。」といってくれた。
今のところ、異常もなく、平穏無事に過ぎているが、全くどこに危険が潜んでいるかわからない。

深吉野のさくら見てきて眠られず        かの子

 

 



第22回若竹ウェブ句会(2022年4月募集)

(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)
今回も、まだ夏雲システムのエラー発生が修復されてないため、前々回と若干違う編集結果になっています。

6点句 食む蚕(こ)無き故郷扶桑の桑若葉     百代
特選  今は、桑若葉だけが元気な故郷、作者は遠い昔に思いを馳せているのでしょう。桑の葉を食べる蚕がいない、その音もない。桑若葉が引き立ちます。それはとても、淋しいことだけど。(ビビサン)
入選 人間の営みと自然の営みのズレの哀歌(荒 一葉)
入選 毎年、桑の若葉は茂るのに、もうお蚕様を飼う家が無いなんて…。なんだか切ない現実ですね。(康子)
入選 こちらでも桑畑はなくなったものの土手の隅などに桑の木は見られます。天井裏部屋のようなところでの養蚕も記憶の隅に。(彰)
入選 蒼鳩 薫・冬青

5点句 継ぐ子らのなき峡の田や山桜     荒 一葉
特選 大きな大きな山桜を想像します。過疎化の村の中にあっても、春が来れば毎年大きくなっていく山桜。綺麗に律儀に咲いているのが愛おしいですね。(こう子)
入選 蒼鳩 薫・帰心・冬青・彰

5点句 水郷の風を自在につばくらめ       佳楓
特選 広い水郷地帯を、羽根をたわませ、水平に、急回転も自由自在に飛び回る燕の姿がいいなと思いました。(蒼鳩 薫)
特選 燕が湖の風を自在に斬るのが目に浮かびますね。(ケン)
入選 「風を自在に」に修辞の良さを思う。(垣内孝雄)
入選 燕の自由に飛ぶ様子がわかる。(みな子)
入選 ビビサン

4点句 戦なき空の深さや告天使         ケン
特選 空高く告天使が飛ぶ平和な世であって欲しい(荒 一葉)
入選 今のウクライナ、ロシア戦を思うに、毎日胸が痛みます。ウクライナの空は低く焦げ臭く、鳥の囀りさえ無いことでしょう‼️早く平和が戻ることを祈るばかりです。(佳楓)
入選 蒼鳩 薫・ビビサン

3点句 この人も右耳遠し春の空         康子
特選 「この人」も私も耳に不自由はあるけれど、お互い元気でいようね、という気持ちが「春の空」という明るい季語に込められています。元気がもらえる句です。(帰心)
特選 年老いて、認知機能が少しずつ衰えて行くが、そんな不安の中に他の人に類似点を見つけた時のつかの間感情を上手く表現されている。(冬青)
入選 こう子

3点句 街道に沿うて伊良湖の花菜風     蒼鳩 薫
特選 季語の「花菜風」が美しく、伊良湖の情景が鮮やかに目に浮かびます。(百代)
入選 きれいな句ですね。(垣内孝雄)
入選 彰

3点句 荒磯の波をかぶりて若布刈      蒼鳩 薫
入選 波しぶきを浴びて、ダイナミックに若布刈りをする様子が浮かびます。潮の香りもしてきます。(康子)
入選 ビビサン・こう子

3点句 近江富士借景にして魞挿せり       佳楓
入選 雄大な琵琶湖の景ですね。見たことはありませんが、こうした伝統的な漁法の長く続きますように。(康子)
入選 百代・ケン

3点句 人間はみんな嘘つき花は散る     ビビサン
特選 「嘘つき」「散る」と負のイメージの言葉を使いながら、風に向かって踏ん張る姿勢が感じられる。(彰)
入選 嘘つきな人間にも散る花にも感じる無常(荒 一葉)
入選 ズバリ詠まれましたね~!本当にどきり!!とさせられました。(佳楓)

3点句 口あいて見し破(や)れ寺の花ふぶき    帰心
入選 思わず口をぽかんとあけて見惚れてている美しい花吹雪がわかる。(みな子)
入選 呆然と見とれている作者の姿が浮かびます。手入れされてないお寺を背景に花ふぶきが際立ちます。(康子)
入選 冬青

3点句 新調は半衿のみの花衣        ビビサン
特選 「半衿」のおしゃれは和服の極意。(垣内孝雄)
特選 コロナ下のため控え目にというお気持ちでしょうか。「花衣」という雅びな季語に惹かれました。(康子)
入選 花衣は変わり映えしないものでも、心意気としてせめて半襟は新しくして花見に出かけたいと私も思う。(みな子)

3点句 ふらここや捻れて揺れるアイデンティティ 百代
特選 「アイデンティティー」なる言葉を初めて知りました。
調べました。哲学的な難しい説明は出来かねますが、作者自身の自己の存在の揺れ、迷い、とふらここの揺れや捻れに、ご自身を重ねて詠まれたのに、同感!(佳楓)
入選 「捩れて揺れる」が言い得て妙(荒 一葉)
入選 ケン

2点句 大桜寺門の低き女寺          こう子
入選 「寺門の低き」に惹かれる。(垣内孝雄)
入選 百代

2点句 ままごとのスープにうかぶねぎぼうず  こう子
入選 兎に角楽しい。(彰)
入選 帰心

2点句 波に浮く島の桜の色薄し          彰
入選 百代・帰心

2点句 てふてふの翅閉じゐるや石の上    垣内孝雄
入選 百代・ケン

2点句 幾星霜の仮設住宅燕来る         ケン
入選 あの東日本大震災から十年が過ぎたと言うのに、未だに仮設住宅に住まわれておられる方がたのご心痛に、思いが馳せます。「燕来る」の季語がなんとも嬉しい限りです。(佳楓)
入選 こう子

2点句 玄関に分葱の束の置き土産        冬青
入選 多分、黙ってそっと置いて行かれる程の、お付き合いなのでしょうね。羨ましい限りですねぇ。(佳楓)
入選 蒼鳩 薫

2点句 春の雲マネキンの目は動かない    ビビサン
入選 帰心・こう子

1点句 清明や歯の無き父の笑顔皺        帰心
入選 皺多き温和な笑顔の父が見える(荒 一葉)

1点句 桃の花小学校の裏通り        垣内孝雄
入選 ビビサン

1点句 黒髪に桜花五ひらの髪飾り      蒼鳩 薫
特選 花びら五つの髪飾りが、どんな豪華なものにも負けないものだと思う。髪と花びらの色のコントラストも美しい。(みな子)

1点句 櫓の音の軋むがほどに葭青む       佳楓
入選 ケン

1点句 春の地震(なゐ)呆(ほう)け気味なる吾(あ)へ平手      帰心
入選 冬青

1点句 千の風吹いて散りけり万の花     荒 一葉
入選 「千の風」と「万の花」の織り成す世界。(垣内孝雄)

1点句 放棄地を紫に染めほとけのざ       冬青
入選 荒れた放棄地もほとけのざのお陰で紫色になったのが慰めとなる。(みな子)

〈俳句気まぐれエッセイ⑬ 草原の民 〉   今泉 かの子
俳人協会の三月のカレンダーは〈たがやして耕して子を抱いて寝る 寿子〉であった。キリトリ線で切り離しながら、何かしみじみと感じた。鬼城の〈生きかはり死にかはりして打つ田かな〉も思い浮かんだ。鍬をふるい地を耕して、命をつないできた農耕の歴史。そのことを一種、美徳のように思ってきたが、それは、風土に培われてきたもので、全く違う価値観もあったと、今さらながら気づかされたことがあった。
はるかな古代、草原は人が生存しにくいところだった。一望の平地は狩猟が難しく、木の実も採れない。そこで、草原に群生する羊とともに人も移動することにした。草原に生きる民にとって、生えっぱなしの草があるところが生きてゆく場所。自然に境などないように、草原の民は、自然とともに生きてきた。司馬遼太郎の著書によれば、遊牧民にとって、草原は土壌を風から守る生きた皮であり、草の根が土壌をひきしめている。その土を農耕の民は鍬で粉砕、ひっくり返してしまう。そしてひとたび表土が吹き飛ばされれば、二度と草原は戻らないという。つまり、遊牧民にとって羊が食む草は、必要な大地の恵。中国とモンゴルも、大地をめぐる草原と農耕の攻防の歴史だったようだ。
そもそも日本は、大草原などない山国。今は耕作放棄地が広がり、あまりピンとこないかもしれないが、それでも、空と草原だけの茫洋たる世界を想像すると、晴れ晴れとした気分になる。移動が必定の暮らしは、物も荷物になるから多くは蓄えない。それは自ずと必要以上に、物を欲しない生き方である。風土による民族の歴史の違いはあるけれど、その欲のない生き方は憧れである。
田水張る里に轟くバイク音         かの子

 



第21回若竹ウェブ句会(2022年3月募集)

(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)
今回も、まだ夏雲システムのエラー発生が修復されてないため、前々回と若干違う編集結果になっています。

9点 啓蟄の花屋に水の匂ひして            佳楓
特選 「水の匂ひ」の措辞が秀逸です。啓蟄は、冬ごもりしていた虫だけではなく、花屋の花々も、さらに、その花々の命を支える水も生き生きとしてくる時なのでしょう。(帰心)
特選 花屋の店先に感じたのは、花の匂いではなく、水の匂い。あえかに匂う水を感受した作者、その繊細な感覚を通して、仲春の気息が伝わってきます。(すーちゃん)
特選 「水の匂ひ」が感じられる時候となりました。(垣内孝雄)
入選 花だけでなく、水の匂いまで…。感性の鋭い句ですね。(康子)
入選 啓蟄の日というので、花屋さんの水の匂いをことさら感じた。(みな子)
入選 蒼鳩 薫  こう子  荒 一葉  ビビサン

7点 まんさくの花の一途や女寺           こう子
入選 帰心 蒼鳩 薫 百代 彰 冬青 荒 一葉 ビビサン

5点 鳴き声はパステルカラー春の鳥        蒼鳩 薫
特選 春になれば さまざまな鳥たちが囀り出します。その声を パステルカラーと表現したところに、この句の核があると思いました。巧みな感じがいいと思い特選にしました。(ビビサン)
入選 春らしさを鳥の声に感じられる。(みな子)
入選 こう子 冬青 佳楓

4点 鶴引きて風いろ変はる淡海かな          佳楓
入選 中七が味わい深い。(垣内孝雄)
入選 すーちゃん 冬青 ケン

3点 啓蟄や下校の子らの足遅し            百代
特選 子供の目は鋭くて、変わったこと、目新しいことがあれば、すぐに捕らえて、足が止まります。啓蟄の頃ともなれば、そこここに春の息吹きを捕らえて、足が遅くなる様子が、上手く描かれています。(冬青)
入選 取り合わせの面白さ。(垣内孝雄)
入選 子らの興味を引くものが出てくる頃、自然に道草もするのでしょう。(康子)

3点 四番まで歌ってからよ雛ケーキ         こう子
特選 「うれしいひなまつり」でしょうか。幼子が一生懸命歌っている様子がほほえましい。(康子)
入選 帰心 ケン

3点 如月の光の中へ首すくめ           蒼鳩 薫
特選 旧暦二月(如月・衣更着)は日脚は伸びるがまだまだ、特に今年の余寒には首をすくめるという実感。(彰)
特選 二月の光はすでに春の日に、まだ寒さは厳しいものがある。寒さに首をすくめながらも光の中に歩み入る。(みな子)
入選 「首すくめ」に窺える如月。(垣内孝雄)

3点 影もなき荒れし番屋や鰊群来           ケン
入選 さびれた番屋と群なす鰊の対比が良いと思う。また、鰊が一斉に産卵し、海が放卵放精により乳白色に染まる様子が壮観です。(康子)
入選 蒼鳩 薫 佳楓

3点 立つてよいしよ座つてよいしよ永き日よ      康子
特選 「よ」のリズムの軽快さ、平凡な日常の描写が的確。(荒 一葉)
入選 全く私と同じ生活を詠んで下さいました。立つたび座るたびに、掛け声が必ず出てしまうのです。「永き日」の季語が上手く効いていると思います。 妣にそっくりになって来るこの頃です。(佳楓)
入選 つくづく身にしみますね。季語もピッタリだと思います。(ケン)

3点 湖風に角組む蘆の気負ひかな           佳楓
入選 早春の角ぐむ蘆の感じがいいなと思いました。(蒼鳩 薫)
入選 記憶の片隅にこびりついた荘八の「徳川家康 葦かびの巻」が、俳句を知り「葦牙(あしかび)」、今また「角組む蘆」を知るわが大河。(彰)
入選 百代

3点 春愁や微かに険のあるメール           帰心
特選 ほんの些細な心のひっかかりを「微かな険」と上手く表現されていると思いました。また、春になって楽しいはずなのにその小さな「険」のせいで素直に春を満喫出来ないでいる様子と読ませて頂きました。経験ありです。(こう子)
入選 冬青 荒 一葉

2点 万年も生くるは御免亀の鳴く         荒 一葉
入選 すーちゃん ビビサン

2点 写メールにピースサインの初遍路         百代
入選 お若い方の「遍路」も良いものですね。(垣内孝雄)
入選 明るい句ですね。これからの長い道中を応援したくなります。(康子)

2点 アクセント無しで呼びたき菫かな          彰
入選 何も強調することのないノーアクセントで呼びたいほどの、小さなそして確かな存在を菫の花に感じる。(みな子)
入選 すーちゃん

2点 回廊に日のうす暗き白牡丹          垣内孝雄
特選 百代
入選 ケン

2点 長き名をやつと覚えて二月尽           康子
入選 帰心 ビビサン

2点 星溶かす核を見据える春の鷲           ケン
入選 毎日の、胸痛むウクライナ、ロシア戦に、この頃ついに、老いの胸が熱くなり、涙が出て仕方ありません。核のボタンを春の鷲が鋭い眼でじっと睨んでいます。秀逸句と思います。(佳楓)
入選 荒 一葉

2点 鳥交る定家葛の長き蔓              帰心
特選 鳥の恋と定家と式子内親王との恋のいわれを持つ定家葛との取り合わせが素晴らしいと思いました。(蒼鳩 薫)
入選 「定家葛の花」は仲夏の季語とする記もあるが、長き蔓にこそ定家の内親王への呪縛を象徴するもので「鳥交る」が生きてくるのでしょう。(彰)

1点 国と国縺れに縺れ春寒し           ビビサン
入選 帰心

1点 芋植ゑて元肥ほどこす借り畑         垣内孝雄
入選 すーちゃん

1点 海賊の人形を出す春の店          すーちゃん
入選 百代

1点 釣り石に願ふ親子や道真忌            ケン
入選 百代

1点 幹に角突き立てたるか夜の鹿        すーちゃん
入選 彰

1点 風になるために雲雀は揚がりけり       ビビサン
入選 佳楓

1点 盆梅の人の丈ほど艶やかに           みな子
入選 こう子

1点 微睡(まどろ)みてジムノペディや春の風邪  蒼鳩 薫
入選 静かな曲が、春風邪にはぴったりなのだろう。(みな子)

1点 見て飽きずなほ見てをりぬ桜かな       荒 一葉
入選 ケン

 

〈俳句気まぐれエッセイ⑫ 猫事情 〉  今泉 かの子
私の住む名古屋の家の辺りには、二,三匹の地域猫がいるようだ。時折、庭で姿をみかける。ご近所に篤志家がいて、きちんと去勢、避妊をしているらしい。野良猫と区別するため、ハート型の耳である。
また、奥三河の山の家の界隈でも、地域猫として生きる猫がいる。こちらも田畑を自由に歩き、好きな所で寝る。我が家を含め、猫好きな家に顔を出せば、食料は確保されている。時にはネズミや小鳥をハンティングする野性も具わっている、たくましい猫だ。
実は、地域猫の現状は、地域によっていろいろ。賛否が分かれる。人の多い街なかでは、弊害も出ていると聞いた。が、過疎の地では、共通話題としてコミュニケーションに、ひと役買っている。
以前いた雄のシロ(白いので勝手にそう呼んでいた)は、体の大きいボス猫だった。通るルートが決まっているようで、近所の人が「どこそこでみた」という情報を集めると、意外にそのテリトリーの広いことがわかり、感心?した。また、向こうっ気が強いのか、三、四日顔を出さないと思ったら、ひどい傷を負って登場したりした。腫れて片目がつぶれかけていたこともあった。足の筋肉がえぐれるほどの傷で、まともに足がつけないこともあった。山の師匠が云うには、猫どうしの喧嘩ではなく、ハクビシン等、山のけものと戦ったんだろうということだった。戦わずに、逃げることだってできたのではないかと内心思うが、シロの矜持か、譲れない事情があったのかもしれない。少し毛並みがやつれてきたかなと思っていたら、あっけなく、交通事故で死んでしまった。
その後、ふさふさ毛のゾロ(怪傑ゾロ似)が、代わって現れるようになった。そこへ、また新しい白茶の猫がやってきたが、ゾロがいるとこちらに近寄ることはなかった。
あるとき、名古屋から久々に山の家に来てみると、入口のウッドデッキに、赤黒いシミが着いていた。そのとき以来、ゾロは姿を現すことはなく、白茶が頻繁に顔を見せるようになった。ここできっと二匹のバトルが繰り広げられたのだろう。想像するだに、おそろしい。が、それは猫の世界のこと。自然と隣り合わせで生きる世界の、普通のできことなのだろう、と思う。
逆に、家猫として室内で暮らす猫はいたって平和で安全である。寿命も長い。自由と野性を制限された代わりに、キュートな存在としてヒトの寵愛を受け、一生を終える。
どちらが幸せか、わからない。それは比べられないと思う。が、ヒトに保護され生きる猫も、ヒトのあずかり知らぬ世界で生きる猫も、人と同様、命は一つ。かけがえのない生を生きている。
芥もろとも雪解川きらめける       かの子

 



第20回若竹ウェブ句会(2022年2月募集)

(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)
今回は、夏雲システムにエラーが発生したため、前回と若干違う編集結果になっています。

6点 楢の木に菌打つ音や春寒し         冬青
特選 林の中か、あるいは農家の庭先か、椎茸の菌を打つ音と思いました。木の槌で打つのでしょうか。手袋を通しても早春の寒さで指が悴んでくるような感じを想像しました。(蒼鳩 薫)
特選 コメントなし(百代)
入選 椎茸を栽培は菌を打つことから。(垣内孝雄)
入選 こう子 すーちゃん 佳楓

5点 雪もよひ貨物列車の長き音          康子
入選 子どもの頃、東海道線の貨物列車の貨車を数えて遊びました。線路のつなぎ目を車輪が過ぎるとき、ガタンゴトンと音がしますが、それを数えても貨車の長さが分かりますね。季語の「雪もよひ」がいいなと思いました。(蒼鳩 薫)
入選 長き音とは「デデン デデン・・・・」と列車編成が長いと読みました。記憶の中の機関車は顔にいっぱい雪をつけて。(彰)
入選 百代  こう子 すーちゃん

5点  冬日陰直葬といふ別れをす         こう子
特選 「直葬」の醸し出す別れ。(垣内孝雄)
特選 今のコロナ禍のお別れだからでしょうか。旅立つ人に、この世の最後の言葉を掛けることさえ出来ないとは、何とも、哀しすぎるお別れですよね。ご心中お察し申し上げます。(佳楓)
入選 ちょっとさみしいけど今の世ですね。(ケン)
入選  帰心  すーちゃん

4点  大寒やホームに啜るかけうどん       蒼鳩 薫
入選 「駅」のそば・うどんの美味、なおさら大寒には。(垣内孝雄)
入選 鼻の頭を赤くして、立ち食いしてる様子が目に浮かびます。寒い時は熱いものが何よりですね。(康子)
入選 百代  こう子

4点 投稿のはがきは春の切手貼る         彰
特選 「春の切手」の措辞に、春の到来を喜ぶ作者の弾んだ心を感じます。(帰心)
特選 投稿先は、新聞それとも雑誌かな。ひょっとして俳句コーナーかな。季語に合わせて、春の風景か花の切手を選んだのかな。楽しく明るい句です。(康子)
入選  こう子  冬青

3点 冬の山道きりきりと竹のこゑ        帰心
特選 竹藪下を行けば上空の寒い風に吹かれ、竹は「きりきり」と軋む。里山歩きでそんな声を聞く。(彰)
入選  すーちゃん ビビサン

3点  麦を踏む千歩至れば詩をひとつ       蒼鳩 薫
特選  千歩至れば詩が一つ生まれるのは、とてもいいです。(みな子)
入選  佳楓 ビビサン

3点 老木の天地ふるはせ蘖ゆる           佳楓
特選 老木は桜でしょうかね。コロナ禍のなか小さな芽が天地をふるわす力強い命ですね、何か気持ちが晴ればれします。ほんとにいい句ですね、素晴らしいと思います。ありがとうございます。私もガンバリマス。(ケン)
入選 中七の修辞に惹かれる。(垣内孝雄)
入選 老木のひこばえの偉大さを思う。(みな子)

3点  節分会放物線は幾重にも            百代
入選 豆まきの表現がおもしろい。大勢が豆をまく様子が伝わってきます。(康子)
入選 帰心 佳楓

3点  豆まきの済みて柔和な鬼の面         こう子
特選 冬を締め括る大事な行事、その行事が済み、あの鬼の面ですら、柔和になったと感じる作者。明日からのことを思い、安堵されているのでしょう。暦の上の春だとわかっていても、わずかでも春へ進んだ心理描写が見事。(ビビサン)
入選  鬼の面を柔和に感じるのは豆まきの後。意外と鬼の面の表情は柔らかい感じがある。(みな子)
入選 百代

2点  しら梅や京の老舗の匂玉           垣内孝雄
入選 しら梅と匂玉の取り合わせが古都京の風情、老舗の風情に合っていていいなと思いました。(蒼鳩 薫)
入選 白い梅の清らかさと芳香、花の丸さも、匂玉に重なるように思います。(康子)

2点  遠山の御嶽(おんたけ)白し土手青む        彰
特選 遠近と色の対比が見事に一句の中に織り込まれている。(冬青)
入選 私もほぼ毎日、御嶽を見ています。遠くに御嶽の冠雪を見ながらの散歩。足元の小径の草の青みゆく色合い。遠近と色の取り合わせがいいなと思いました。(蒼鳩 薫)

2点  名所まで足をのばして梅二月          ビビサン
入選 「梅二月」が活きた句。(垣内孝雄)
入選  ケン

2点  春立つや濃き墨象(ぼくしょう)の潔く     みな子
特選 「墨象」に篠田桃紅さんを思いました。白い余白に引き立てられた墨の色、形。万物の始動する季節への湧き立つような気持ちとともに、新たな気概も感じます。(すーちゃん)
入選  百代

2点 疫病禍の果て無き闇へ豆打たな           佳楓
入選 帰心 ケン

2点  母編むや父へ遺すと毛糸帽           こう子
入選 父のために毛糸帽を編んでいる母。遺すということの尊さを思う。(みな子)
入選 ビビサン

2点 遠山の襞てらてらと魚は氷に           佳楓
入選 ケン ビビサン

2点 空壕に菜の花咲いて一月尽           みな子
入選 冬青 彰

2点 おしくらまんぢゆうシヤンプーはエメロン     帰心
特選 すごく面白いなと思いました。一読した時は、えっどういうこと?と思いましたが、何回も読むうちに私にもシャンプーの香りがしてきました。エメロンも懐かしかったです。(こう子)
入選 ぎゅうぎゅう押し合ってる中を、ふとエメロンシャンプーの香りがした。わが家と同じシャンプーを使ってるのは、だあれ?(康子)

1点 飽きるほどオリンピック観て春炬燵      ビビサン
入選 冬青

1点 恋猫の尻尾ふりふり塀伝ひ          蒼鳩 薫
入選 彰

1点 白川のひかりやはらぐ京の春         垣内孝雄
入選 半世紀も前こと北白川○○町に住むとふ知人ゐたり。時流れ変はらぬ古都、春は巡り来。(彰)

1点 雪の橋渡る恐怖や一休忌             ケン
入選 佳楓

1点 掘り炬燵ここに有つたかダイヤの9        帰心
入選 冬青

1点 梅便りナイトキャップに古梅酒          百代
入選  梅の便りを古い梅酒を寝酒に飲みながら読んでいる。春の夜を感じる。(みな子)

1点 お年酒や卒寿の母の恋もよう           ケン
入選 帰心

1点 大寒の石磴凛として高し             康子

入選 どこの石燈でしょうか。大寒とゆるぎない石の燈が響き合っていいなと思いました。私は渡し場の石燈を想像しました。昔は灯台の役目も負っていたかもしれないと思いました。(蒼鳩 薫)
※石磴は石の段、または石のある坂路。(広辞苑より)談話室でのやりとりを通して、作者、選者ともに了解済み。

 

〈俳句気まぐれエッセイ⑪ 年賀状 〉   今泉 かの子
今年もまた、年賀状は少なくなった。今年限りで卒業、と記されている賀状もあり、次第に枚数は減ってきている。それも時代の流れ、特にさびしいというほどではないが、その中にどうしても外せない大事な一枚がある。
小学校時代の担任、中村都祁子(ときこ)先生からの一枚である。当時、新任として山奥の小学校へ赴任された、ぴちぴちの先生だった、と思う。時間フィルターがかかり、断定できないが、ぱっちりとした目と赤い頬が記憶にある。読み聞かせてくれたのは、松谷みよ子の「龍の子太郎」。その続きが待ち遠しく、毎日先生が読んでくれる数ページを、私だけでなく、クラスみんなが楽しみにしていた。それは当時、国際アンデルセン賞など各賞を獲得したばかりの、最先端の?児童文学だった。
先生との年賀状は、ずっと今まで続いていたわけではない。私とのやりとりが途絶えても、なぜか母とは続いていた(らしい)。私とのブランクは母が埋めていた。母が亡くなってから、母からの年賀状が「毎年楽しみだった。」と書いてくれた。数年前、拙句集「背なでて」を差し上げた際には「ず~っと会ってないけど、ず~っと繋がってる」と書いてくれた。
先生は、今、渥美在住。「あかばねひらがなの会」代表として活躍されたり、また、合奏団「トライアングル」でチェロを担当されたり、ご健在である。もちろん、コロナ禍でもコロナでなくても「ず~っと会ってないけど、ず~っと繋がってる」も、健在である。
早春は土手を歩いて来たりけり       かの子

 



第19回若竹ウェブ句会(2022年1月募集)

(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)
今回も、夏雲システムの「結果のエクスポート」の設定を生かした編集結果になっています。

6点句 母の余命父には言えず年明くる         こう子
特選 佳楓 入選 百代・彰・冬青・すーちゃん・ビビサン
特選 一度して、胸にぐっと込み上げる物がありました。お父さまも多分高齢で心身共に弱っておられることと、読ませて頂きました。今日言おう、明日言ってしまおう、と思っておられる内に、お正月が来てしまったのですね(佳楓)

5点句 ひわひわと生き長らへて古女噛む         佳楓
特選 垣内孝雄・ケン 入選 蒼鳩 薫・康子・すーちゃん
特選 「ひわひわ」、オノマトペが活きた句。(垣内孝雄)
特選 いいね〜。大病もせずになんとか生きてごまめ噛む、ほっこりするね。句のリズムも本当にいいですね。(ケン)
入選 オノマトペの「ひわひわ」が効いていますね。なかなか思いつかないですね。また古女を「ごまめ」と読む読み方も勉強になりました。(蒼鳩 薫)
「ひわひわと」が絶妙で、弱々しくもしぶとい感じが伝わってきます。(康子)

5点句 冬ざれや鎖(さ)されしままの展望台       帰心
入選 百代・ケン・みな子・冬青・こう子
入選 冬ざれを強く感じるのは、鎖されたまま、人気のない展望台だ。(みな子)

4点句 書初やためらいもなく一画目         ビビサン
入選 帰心・康子・佳楓・こう子
入選 堂々とした勢いの良い筆致なのでしょう。(康子)

4点句 湯に浸れば顎(あぎと)に柚子の寄り来たる    帰心
特選 彰 入選 蒼鳩 薫・ケン・ビビサン
特選 映画「八墓村」で鍾乳洞内のある地点を「りゅうのあぎと」として聞き、調べつくして「あご」のことであると知りました。この句ではほのぼのとした感じで使われています。(彰)
入選 冬至には私も柚子風呂に浸かりました。なるほどと俳諧味に共感しました。(蒼鳩 薫)

3点句 雪花絞りの藍鮮やかに冬の晴れ         みな子
入選 蒼鳩 薫・彰・康子
入選 鮮やかな有松の雪花絞りの青と冬晴れが響き合っていると思いました。(蒼鳩 薫)
青空に藍の雪花が翻り、さぞかし美しい景だろうと想像します。(康子)

3点句 喰積の真中にどしり玉子焼            康子
特選 みな子 入選 垣内孝雄・帰心
特選 卵焼きの大好きな家だろう。喰積のメインが玉子焼き。どしりがよい。重量感のある堂々とした玉子焼きだ。(みな子)
入選 買うにしても、こさえるにしてもお正月の玉子焼は美味しいですね。「真中にどしり」共感です。(垣内孝雄)

3点句 正月や苦なき楽なき薬のむ            ケン
入選 帰心・こう子・佳楓

3点句 さがり花辺野古の風に狂ひ咲く          佳楓
特選 康子 入選 ケン・彰
特選 さがり花の一夜限りの儚さと、辺野古の海の長き闘いの対比、そして季語から、この闘いが夏も冬もさらに一年中あると示唆されているようです。(康子)

3点句 七草の仕上げは塩のひとつまみ       すーちゃん
入選 垣内孝雄・ケン・こう子
入選 粥の味は塩が決め手、さぞかし美味しい七草粥が出来たことでしょう。(垣内孝雄)

3点句 なかったことにして手袋を外す       すーちゃん
特選 こう子・ビビサン 入選 彰
特選 あったことは何かしら? 作者の気持ちの切替え方が「手袋を外す」で上手く表現されていると思いました。(こう子)
特選 句の前半は具体的なことは何も書かれておらず、後半の手袋を外す動作によって、読者の側に想像がゆだねられ、奥行きのある世界が広がります。作者の心中が ちらちら見え隠れするところに魅力を感じ特選にしました(ビビサン)

2点句 古びたる街の教会雪明り           垣内孝雄
入選 蒼鳩 薫・ビビサン
入選 クリスマスイブの夜を想像しました。雪明りに立つ教会は風情があるなと思いました。(蒼鳩 薫)

2点句 冬茜車窓は影の街映す             みな子
特選 帰心 すーちゃん
特選 「街の影」でなく「影の街」と表現されたところが秀逸。影絵のような幻想的な情景が目に浮かびました。(帰心)
特選 車窓に映された「影の街」の美しさとともに、空の鮮やかさも感じます。冬茜に浮かび上がる束の間、幻想的なシーンのようです。(すーちゃん)

2点句 いくそたびかはすげんまん返り花       垣内孝雄
特選 蒼鳩 薫 入選 すーちゃん
特選 幼かった頃、好きな子と結婚を約束したのかもしれません。甘酸っぱいロマンが季語返り花と響き合っていいなと思いました。もしかしたら、その子と結ばれ、思い出にふけっているのかなとも思いました。(蒼鳩 薫)

2点句 天つ日やピンピンコロリを抜参る         ケン
入選 垣内孝雄 佳楓

入選 天寿を安らかに全うしたいは皆の願い。(垣内孝雄)
入選 ピンピンコロリなる言葉を忘れかけていました。ピンピンコロリ地蔵やぴんころ地蔵が長野県にあるようですね、有り難うございました。寝たきりで、長く生きる事を「ネンネンコロリ」 と言うそうです。(佳楓)

2点句 をさまりて鶴首壺の寒椿           垣内孝雄
特選 百代 入選 みな子

特選 新年を寿ぐもてなしの心遣いを、設えに感じ、句にも感じられて嬉しくいただきました。(百代)
入選 この寒椿は、赤か白かと思ってしまう。私的には白であってほしい。(みな子)

2点句 霜焼けし小菊ひと束(たば)厠窓          彰
入選 百代・帰心

1点句 元朝や古里の宮異界めく             百代
特選 普段は清らかなだけの場所の神社に、元旦の朝は年神様の存在が感じられ、人々も神妙に振る舞っている様子が、上手く表現されています。(冬青

1点句 凍てし夜のパイプオルガン音澄みぬ      蒼鳩 薫
入選 しみじみとパイプオルガンの曲を聞いている。教会の中か。寒さと澄んだバイブオルガンの音が響き合う。(みな子

1点句 百歳の義父の声聞く冬うらら           康子
入選 冬うららに包まれたなどかさ安らぎ。(垣内孝雄

1点句 すわ雪じゃ一人吟行敢行す            康子
入選 「すわ雪じゃ」の上五の思い切った感嘆詞の使い方にビックリ致しました。作者の弾む気持ちが、この感嘆詞に、全て表現されていて、気持ちの良い秀句だと私には読み取れました。(佳楓

1点句 先ず三つ赤丸付けし初暦             百代
入選 楽しい予定に丸を付ける笑顔の作者が浮かびます。(康子

1点句 しちさい七彩のステンドグラス初明り     蒼鳩 薫
入選 ステンドグラスを通した初明かりの美しさを見たいものだ。(みな子

1点句 叩かれて地軸を廻す喧嘩独楽           佳楓
入選 すーちゃん

1点句 虎落笛ルールブックを捨てたき日         帰心
入選 ビビサン

1点句 心辺(ば)へよき人達と枯木山           彰
入選 冬青

1点句 発電所の煙り真横や寒に入る          こう子
入選 冬青

〈俳句気まぐれエッセイ➉ 出会い 〉    今泉 かの子
小さなレストランで私は夫と二人、簡単なランチをとっていた。少し離れたところに、日本人らしい四,五人のグループが談笑しながらテーブルを囲んでいるのが見えた。そのグループがばらばらと席を立って、店から出ていくのを見るともなく見ていた。最後の一人がこちらへ体を向けドアを閉めた。その瞬間、私は「あれっ、ヨシオ君?」といきなり直感した。
ヨシオ君は、小、中学校の同級生。が、中学を卒業して一度も会ったことがなく、以来すでに十年以上の時が経っていた。しかも、場所はスイスのジュネーブ。そんな、こんな所にいるはずはない、と思いながら、どうしても確認したくなって、店を出て追いかけた。(一応、夫にはことわって。)
果たして、それは芳生君だった。彼は欧州に滞在中の芸術家なのだった。中学時代からすでに「画伯」と呼ばれていた。時のブランクや距離感を超えたこの出会い。小説ならさしずめロマンスへ発展する展開である。小説ではないので、過去の不思議なエピソードとして幕は閉じ、いたって平和に時は流れた。
その後、古井戸芳生氏は名古屋市の助成を受けてロンドン(大英博物館)にて滞在制作。県内はもちろん、銀座の画廊等で個展を開催。精力的に活動しているらしい。また、勝川駅近くに「カフェド ラ フルイド」という食と芸術を拠点とした店もある。
現在、志賀高原ロマン美術館で「古井戸芳生展」が開催されている。四月三日まで。テーマは「《新》表現の樹木」。興味のある方や近くまで出かけられた方は、是非一度足を運んでほしい。
そこには、時空を超えた出会いが待っているかもしれない。
田口線車輪にあそぶ冬の蝶         かの子

 



第18回若竹ウェブ句会(2021年12月募集)

(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)
今回も、夏雲システムの「結果のエクスポート」の設定を生かした編集結果になっています。

6点句 逝く時はシリウス行きの特急で         佳楓
入選 垣内孝雄・蒼鳩 薫・ケン・すーちゃん・康子・みな子
入選 「願い」として、共鳴・共感できる句。「特急で」が深いですね。(垣内孝雄)
入選 詩的な表現がいいなと思いました。夢が広がりました。私もそんな風にリクライニングシートに、未だに読んでいない日本や世界の文学全集を乗せて。(蒼鳩 薫)
入選 ユニークな発想が面白いと思います。私も乗車希望します。(康子)
入選 シリウス行きの特急に乗るように死ぬという潔さが良いと思う。(みな子)

5点句 真正面に富士見て歩く冬日和         みな子
特選 康子・ビビサン 入選 垣内孝雄・冬青・こう子
特選 真っ直ぐに延びる日向の道を、明るく前を向いて歩く姿が、目に浮かびます。(康子)
特選 富士山と対峙しながら歩く、それだけで 自分がまっすぐになれて、エネルギーが満ちてくる。それが、冬日和なら、なおのこと。上五の「真正面に」とあえて表現したところに、作者の意気込みを感じました。(ビビサン)
入選 「真正面」に前向きな姿勢が見える。「真正面」ではなく「真向い」「正面」で良いのでは。(垣内孝雄)

4点句 冬銀河ぽつりと村の診療所         垣内孝雄
特選 彰 入選 ゆうま・百代・康子
特選 街灯りの拡がりと目の衰えから私が見える星は三つくらい。田舎での幼時、母の背に負われ医者さんからの帰る夜、冬銀河はきっと煌めいた。(彰)
入選 大きな冬銀河と小さな診療所の対比が良いと思います。(康子)

4点句 岩陰に沸かす珈琲山眠る          蒼鳩 薫
特選 百代 入選 帰心・彰・みな子
特選 山男か山ガールか、寒風を避けて岩陰でコーヒーを立てながら何を思うのでしょう。季語「山眠る」と一体の情景が目に浮かびます。(百代)
入選 山の中で山の水で淹れるコーヒーのうまさは格別だったと思い出す。寒いときはなおさらだと思う。(みな子)

4点句 着ぶくれて地域応援商品券           帰心
特選 垣内孝雄・蒼鳩 薫 入選 ケン・すーちゃん
特選 「着ぶくれ」と「地域応援商品券」との取り合わせが絶妙。(垣内孝雄)
特選 着ぶくれて買い物をする庶民の生活を詠んだところが生活感があふれていいなと思いました。商品券、私の地域にも来ないかなー。(蒼鳩 薫)

4点句 肩掛けのだんだんずれて車椅子        こう子
入選 蒼鳩 薫・帰心・ケン・佳楓
入選 車椅子を必要とする方は、肩掛けもずれて大変なことと思います。車椅子を押している方の御句かもしれません。お体ご自愛下さいね。(蒼鳩 薫)
入選 車椅子の方は、両方の手が、塞がり不自由な事と思います。一読して、許可を得て、肩掛けを元の位置に戻して差し上げたく思いました。失礼が有りましたら、お許し下さいませね。(佳楓)

4点句 落武者の如く潜むや通し鮎         ケン
特選 佳楓・みな子 入選 こう子・康子
特選 (通し鮎)と言う季語を初めて知りました。調べましたが、まだ例句が無いとのことです。例句が無いと言うことが不思議ですねぇ􀀀 上語の落武者が、通し鮎の生態を上手く表現していると思いました。(佳楓)
入選 「通し鮎」は冬の季語と初めて知った。例句はなかった。ひっそりとした鮎を落武者と言ったのが良い。(みな子)
入選 越冬する鮎の密かに身を隠しじっとしている様が、落武者に重なるような気がします。(康子)

4点句 印刷に出すほどもなく賀状書く         百代
入選 蒼鳩 薫・帰心・こう子・ビビサン
入選 御句と理由は異なるかもしれませんが、私も最近そのようにしています。(蒼鳩 薫)

3点句 外は木枯しパリパリの芋けんぴ      すーちゃん
特選 帰心 入選 佳楓・みな子
特選 「パリパリ」と「けんぴ」の語に含まれる「乾いた音(p、k)」が、季語「木枯し」と心地よく響きあっています。私も先日、句友から頂戴した芋けんぴを美味しくいただきました。(帰心)
入選 ポキッと折れる、芋けんぴ、木枯しの季語と上手く響きあって、美味しそうです。(佳楓)
入選 外の寒さと口の中のパリパリという歯触りの良さが対照的。(みな子)

3点句 ちちはは父母の居し部屋の午後白障子       彰
入選 こう子・佳楓・ビビサン

3点句 冬の雨児のやうに抱くエコバッグ        帰心
特選 こう子 入選 彰・康子
特選 「児のやうに抱く」の比喩がとても面白いと思いました。冷たい雨の降る冬の日の買い物。卵でも入っていたら尚更のこと、誰でも経験したことのある仕草ですよね。上手く表現されていると思いました。(こう子)
入選 冷たい雨に濡れないように抱えるバッグ。それがエコバッグであればこそ、子どもを抱く形になりますね。(康子)

3点句 開戦忌かはたれ時を始発便           佳楓
特選 ケン 入選 垣内孝雄・帰心
特選 戦争がなかったら今の日本は自由の国じゃなく軍国主義のままなのか? とは言え開戦後の大きな犠牲は身に沁みますね。難しい季語なのに上手に詠んでいると思います。(ケン)
入選「開戦忌」ではなく「開戦日」に。(垣内孝雄)

2点句 口数の減りし少女や冬雀           こう子
入選 ゆうま・ケン

2点句 幼な子の固き拳に竜の玉            百代
入選 彰・冬青

2点句 こけ厚く詰まりし空き巣山眠る         冬青
入選 蒼鳩 薫・百代
入選 巣には確かに雛を育てた親鳥の営みがあり、今は山に抱かれ静かに苔むしている。春にはきっとたくさんの新しい巣がつくられますように。(蒼鳩 薫)

2点句 バスの来ぬバス停残る小春かな        ゆうま
特選 冬青 入選 ビビサン
特選 人もバスも来なくなったのに人とバスを待つバス停に優しい日差し。素晴らしい叙情です。(冬青)

2点句 凍空や三分はかる砂時計          垣内孝雄
特選 ゆうま 入選 百代
特選 「凍空」と「砂時計」の取り合わせが面白い。(ゆうま)

1点句 語り部の老ひし猟夫や虎落笛          ケン
入選 「虎落笛」が語り部の様と内容を想像させる。語る内容を想像させる。「老ひし」は「老いし」では、間違っていたらすいません。(垣内孝雄

1点句 山手入れ黄葉して山返しけり          冬青
入選 すーちゃん

1点句 切ることに快楽のあり竹を伐る         冬青
入選 佳楓

1点句 素っ気なきひと女にも笑顔冬あたたか      帰心
入選 冬青

1点句 もうけして戻らない日々落葉掻        ゆうま
入選 ビビサン

1点句 快晴の富士を遥かに茶の咲いて        みな子
特選 青空に映える雄大な富士を遠景に、黄色の小さな茶の花を近景に、気持ちのよい景色が広がっています。この景色の中に身を置いて、作者もきっとのんびりとした心もちで、旅をたのしんでいるのでしょう。(すーちゃん

1点句 おのずから視線は外へ風花す        ビビサン
入選 家の中から青空を舞う風花をつい見てしまう、その感じがよくわかる。(みな子

1点句 出汁をとる匂いの中の年の市        ビビサン
入選 冬青

1点句 飛び起きて俳句メモする寒夜かな       こう子
入選 彰

1点句 霜のこゑ生前葬をなせる人         垣内孝雄
入選 すーちゃん

1点句 冬立つやボート乗り場の杭朽ちて        康子
入選 ゆうま

〈俳句気まぐれエッセイ⑨ 柚子 〉      今泉 かの子
昨日は冬至だった。娘の焼いたかぼちゃパンを食べ、一応、柚子風呂にも入った。一応というのは、柚子湯というにはおこがましい、傷みが目立つ、表皮を剥いたものを浮かべた湯なのである。あの美しい黄色をたっぷり浮かべて、一句をものしようとしたときもあったが、近頃は実利を重んじる。剥いた皮は冷凍して、必要な時に鍋やうどん、椀の吸い口にするのだ。
かつては、料理上手な叔母と百個くらいの柚子に味噌と砂糖をしこたま入れ、柚子味噌を作ったこともあった。弱火でかき混ぜながらじっくり煮ていると、味噌の色がだんだんと濃くなり、味も全体になじんで、いい感じの練り味噌になってきたのがわかる。熱い味噌のたれが手に飛んで、軽いやけどのように赤く残ったことも懐かしい。そういえば、柚子の種で化粧水を作ったこともあった。
今年採れた柚子はバケツに約五杯。ご近所さんや料理好きな友、句友等、皆さんへ差し上げている。だいたい、どの人にも喜んでもらえることが多い。
先だって男性三人との小さな集まりがあり、「柚子はどうですか。」と申し上げたところ、しばし、沈黙。「あの、風呂へ入れるやつですよね。」と確認され、三人とも押し黙ったまま。時間にしてみれば、数秒だったと思うが、沈黙をかき消すように、なんとかかんとか言って、あわてて引っ込めた。それはそうだ。それも、ありだ。興味のない人には、不必要。
柚子湯に因んで、ツイッターに投稿された画像があると聞き、覗いてみた。清潔感のある白い浴槽に、なにか黄色の細長い容器のような物が浮かんでいた。よくみると、刻み柚子のチューブだった。それもあり、かな。それはない、かな。
柚子とるやひとすぢ甲に滲む傷           かの子

 

 



第17回若竹ウェブ句会(2021年11月募集)

(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)
今回も、夏雲システムの「結果のエクスポート」の設定を生かした編集結果になっています。

6点句 苦も楽も半分ずつや藷蒸かす          佳楓
特選 ケン・こう子 入選 垣内孝雄・蒼鳩 薫・ビビサン・康子
特選 コロナ禍も昔も力を合わせなんとなく生きてきた仲良き夫婦。蒸かし藷もハンブッコ、ほんのりしていいね。(ケン)
特選 ほっこりとした情景が浮かびます。苦楽を共にした老夫婦。蒸した藷もまた半分こづつ、とても心に沁みる俳句だと思いました。(こう子)
入選 苦あって楽あり、楽あって苦あり、「藷蒸かす」に前向きさが窺える(垣内孝雄)
入選 来し方を振り返ってみると、なるほどな〜と思いました。じんわりと肩の力が抜け、しみじみとした共感が湧いてきました。子供の頃は最高のおやつでした。主食の日もあったかな〜。(蒼鳩 薫)
入選 蒸かしたお芋をふたつに割れば、大きい方と小さい方がある。大きい方が「苦」で小さい方が「楽」かな、なんて思いを巡らす。そんな穏やかな時の流れを感じます。(康子)

5点句 やはらかき母の腕や衣被           垣内孝雄
入選 ケン・帰心・蒼鳩 薫・康子・こう子
入選 こんじょうのいまがしあわせきぬかつぎ、が脳裏に浮かびますね。母の腕まくりの白い肌と衣被と合いますね。(ケン)
入選 幼かった頃、母の腕に抱かれて眠ったことをおぼろに思い出しました。衣被の柔らかさと母の腕の柔らかさが響き合っていると思いました。(蒼鳩 薫)
入選 母の腕の白さと柔らかさ、そして衣被の白さと軟らかさが響きあって、懐かしさを覚える句です。(康子)

4点句 秋寒やけふ保護犬の譲渡会            帰心
入選 垣内孝雄・蒼鳩 薫・彰・こう子
入選 犬や猫を捨ててはいけません。飼主が見つかる事を祈るのみです。(垣内孝雄)
入選 私も捨てられていたという犬を引き取ったことがあります。よくなついて、17年生きました。晩年、動けなくなってからは私の掌から柔らかくした餌を食べていました。そのときの感触は今もなつかしい思い出です。(蒼鳩 薫)
入選 寒さと不安で震える犬たちが目に浮かびました。より多くの里親が見つかるよう。(彰)
入選 犬の譲渡会には行ったことはありませんが、この句を読んだ時、保護犬の寂しそうな何か訴えているような目が浮かんできました。「けふ」が秋寒であることがそうさせているのですね。(こう子)

4点句 暗闇を泡立ててゐる轡虫           蒼鳩 薫
特選 垣内孝雄 入選 康子・佳楓・みな子
特選 「がちやがちや」と聞こえる轡虫の声、まさしくメレンゲをつくる際の音を思うと同時に「闇を泡立てる」に修辞を感じる。(垣内孝雄)
入選 「暗闇を泡立てる」とは、面白い表現ですね。あのガチャガチャという鳴き声は、ちょうど泡立て器が金属のボールに触れる時の音に似てるような気がします。(康子)
入選 「泡立ててゐる」がよい。暗闇の中の轡虫の動きが伝わってくる。(みな子)

4点句 つはぶきや水満たしゆく夜の井戸      すーちゃん
特選 百代・彰 入選 垣内孝雄・帰心
特選 夜の湿った闇の底にひともと、足元を照らす灯りのように咲く石蕗の花。情景が目に浮かび、皮膚にも感じられるようです。(百代)
特選 夜の間に水位回復してゆく懐かしい井戸、石蕗の花は年とって好きになった。俳句歳時記に「石蕗の花」と拘る解説に、「つはぶきはだんまりの花嫌ひな花/三橋鷹女」の例句。最後に花あるからか。(彰)
入選 まるで夜、生きているかの井戸。つばぶきの黄が闇にうかぶ。(垣内孝雄)

3点句 掘るほどに大地の湿り八つ頭         垣内孝雄
入選 百代・ビビサン・康子
入選 深く掘るほど湿り気を帯びた土の色が、濃さを増してゆく様子が感じられます。収穫の秋ですね。(康子)

3点句 読了の本抱きしめる良夜かな           康子
入選 垣内孝雄・帰心・蒼鳩 薫
入選 さどかし感動された本なのでしょう。読み手は「本」に思いを馳せる。(垣内孝雄)
入選 ドストエフスキーとか、長編で、上下巻とか何巻もある小説でしょうか。私にはあまり体験がなくて恥ずかしいですが、読了したときは、本を思わず抱きしめたくなる気持ちに共感しました。(蒼鳩 薫)

3点句 晴れがましや今日紋付で鶲(ひたき) 来る      彰
入選 冬青・佳楓・ケン
入選 紋付き姿で鳥がやって来ると言う表現が、面白く、秀逸句だと思いました。(佳楓)

3点句 スティホーム解かれ黄落期を歩く       ビビサン
特選 帰心・佳楓 入選 冬青
特選 上五の字余り、中七下五の句またがりに、作者の心の解放感を感じます。黄色く色づいたイチョウを眺めながら並木をゆっくりと歩く作者の眼差しまで見えてきます。(帰心)
特選 長かったコロナ禍の、小屋の中の兎のような暮らしから、解放されました。外は今黄落期です。折しもご夫婦揃って人生の黄落期をしみじみと味わいつつ、落ち葉を踏みしめておられる景が浮かびました。(佳楓)

2点句 晨風の殺気に崩る椋の群れ            ケン
特選 すーちゃん 入選 佳楓
特選 晨風(しんぷう)とは、ハヤブサの異名と初めて知りました。その響きも緊迫した気配を誘引しているようですね。一瞬をとらえた生き物の動きに、生死を分ける大自然の営みの一端を見る思いがしました。(すーちゃん)

2点句 おひたしは長さ二糎秋の夕           康子
入選 すーちゃん・彰

2点句 町内の訃報回覧暮早し              百代
入選 すーちゃん・ビビサン

2点句 いいですね医師の笑顔と小春日と        こう子
特選 冬青 入選 彰
特選 日々身体の好調不調に曝されている老年期にとって、「医師のいいですね。」は、小春日和に相当する幸せ。(冬青)

2点句 枯蘆や浦の在家の能登瓦           垣内孝雄
特選 蒼鳩 薫 入選 ケン
特選 日本海の能登の厳しい冬。積雪。浦の家々の重厚な能登瓦。枯蘆がすごく利いているなあと思いました。(蒼鳩 薫)

2点句 清水の舞台下より紅葉づれり           佳楓
入選 冬青・みな子
入選 まさに清水寺の舞台の下から紅葉が始まっている。これからが見頃という感じ。そういえば、舞台の下に彼岸花が咲いていたことがあったなあ。(みな子)

2点句 シャクシャクとりゅうきゅう食ぶや龍馬の忌    ケン
特選 みな子 入選 すーちゃん
特選 りゅうきゆうとは大分の方の料理で、魚の切り身をタレにつけこんだものとか。シャクシャクと音をたてて豪快に食べるのも龍馬の忌日に合っていると思う。(みな子)

1点句 碧空や視界に百の烏瓜              康子
入選 百の烏瓜とは見事な景色。それも青空の下。朱と青の対照が美しい。(みな子

1点句 間を取りて行列長し寒暮かな           冬青
入選 すーちゃん

1点句 墓じまひ近づく墓に冬の虫            佳楓
特選 迷いに迷い、ようやく決断されたのしょう。作者が抱える事情に思いをはせて、この句を読みました。下5の 冬の虫、句の味を引き出していると思い特選にしました。(ビビサン

1点句 七五三障がい施設の子らのこと        ビビサン
入選 百代

1点句 金木犀もう一度咲き十月尽           みな子
入選 帰心

1点句 カタカナの印鑑を選る文化の日       すーちゃん
入選 佳楓

1点句 枯野踏み分けて荒神碑の新た            彰
入選 百代

1点句 片付けを急かされ子等の暮早し         こう子
入選 冬青

1点句 猫の爪抜けて透けゆく十三夜        すーちゃん
入選 猫の爪というささやかなものが十三夜の中で透き通っていく。幻想的。(みな子

1点句 今年も又「これで終わり」の新米来         冬青
入選 ケン

1点句 老犬やたる弛むリードに暮早し          百代
入選 こう子

1点句 春慶の文箱へ一葉散りもみぢ          蒼鳩 薫
特選 春慶塗の木目に、はらりと落ちたもみじが一際美しさを放っている、そんな景が見えてきます。(康子

1点句 秋の森光の揺らぎ黄蝶かな            冬青
入選 春はもとより「夏・秋・冬の蝶」蝶の季語はバラエティに富む。私も見た、穏やかな光浴び黄蝶飛び交うのを。(

1点句 ふたつ折り願いの一票秋の霜            彰
入選 ビビサン

俳句気まぐれエッセイ⑧つるうめもどき〉   今泉 かの子
ツルウメモドキが好きである。晩秋、熟した実からのぞく赤や橙色の種は、明るい色どりでまことかわいらしい。
その赤い実のついた枝を壁に飾るべく、実の付き具合や枝ぶりを考えて、たわませたり、数本束ねたり。自分の好きなようにあれこれするのが、毎年の秋のたのしみの一つである。壁の小さな空間をデザインするようで、時間を忘れてしまう。
それにしても「もどき」とは、まがいものっぽい名前である。歳時記の「うめもどき(梅擬)」には「その美しさを梅になぞらえているのであろう。」とあるが、贔屓目からか、なんだか少しかわいそうな感じもする。その梅擬が、つる性を帯びての蔓うめもどき。まるで亜流の亜流みたいなネーミングだけれど、梅擬の赤い実は、時間がたつと黒っぽくなって、蔓梅擬ほどの鮮やかさはない。もともと、梅擬はモチノキ科、蔓梅擬はニシキギ科。違うのも当然ではある。
数年前、たまたま差し上げた方から、若葉が出てきたと聞いて驚いた。水に挿していたらしい。いろいろな楽しみ方があるものだと思う。また、一年経ってお役御免となった枝を庭木に挿しておいたら、鳥がついばんでいた。カチカチの古い実でも食べられるのだ。
色の鮮やかさを誇るツルウメモドキだが、使うあてのない場合は、けっこうな厄介者。落ちた実はいたる所で芽を出し、辺りの草木に絡みつく。その蔓もなかなかしぶとい。また、壁に飾ってもぽろぽろと実や殻が落ちて、余分な仕事を増やしてしまう。
それでも何より、蔓梅擬をマイフェイバリットとしているのは、勝手な思い込みとしか言いようがないが、私にとって「蓬莱の玉の枝」だから。「蓬莱の玉の枝」とは、『竹取物語』のかぐや姫が、求婚をことわるために出した難題の一つ。蓬莱山は不老不死の霊山。そこにある金、銀、真珠からなる木の枝である。くらもちの皇子が珊瑚で実を作らせたという説もあり、記憶の挿絵は、蔓梅擬に近いものだった。でもやはり、自分で作り上げた昔話の一場面のイメージが、刷り込まれているのかもしれない。これこそ「もどき」ではある。
蓬莱の玉の枝もどきつるもどき        かの子



第16回若竹ウェブ句会(2021年10月募集)

今月(十月)の句会に出句された〈甲冑の眼窩の闇のしとどかな〉の「しとど」について二つの見方が句評にありました。①「しとど」と「いとど」(カマドウマ)をうっかり間違われたのでは?②アオジではないかと推察。アオジの雄は、目の周りが黒く、「甲冑の眼窩の闇」と重なるような気がする…その後、作者ご本人から①であったと回答がありました。確かに「しとど」は辞典や歳時記には巫鳥の漢字で秋の季語、あおじと載っています。打鍵ミスではありましたが、そこから思わぬご意見が出され、新しく知り得た言葉となりました。

第十六回若竹ウェブ句会(二〇二一年十月募集)
(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)
今回は、夏雲システムの「結果のエクスポート」の設定を生かした編集結果になっています。

6点句 擂るほどに土の匂ひやとろろ汁        こう子
特選 垣内孝雄・佳楓・ビビサン
天然の自然薯はまさしく「土の匂ひ」が、高価ですが味わってみたいもの  です。(垣内孝雄)
山芋を擂り鉢で、ゴリゴリ擂って行くうちに何となく匂って来るものが有ります。まさに、それは山に育った山芋の土の匂いなんですね。主婦なのに、気が付きませんでした。有り難うございました。(佳楓)
夕飯の支度でしょうか。擂鉢と擂粉木を使う音まで聞こえてきます。仕上がりが近づくほどに、土の匂いも立ち上がり、聴覚、嗅覚に訴えてくる句だと思いました。(ビビサン)
入選 帰心・みな子・蒼鳩 薫
とろろを摺るときの匂いはいやなものではなく、土の匂いというものに懐かしさを感じる。(みな子)
子どもの頃、母の手伝いで、卸し金だったか、とろろを擂ったことがあります。それにだし汁を掛けながら擂粉木を回したような記憶があります。あれはきっと土の匂いだったかもしれません。(蒼鳩 薫)

5点句 自転車の荷台に寝る子星月夜         こう子
特選 みな子 
夜空一面の星たちと、自転車の荷台に眠り込んだ子どもの対比が鮮やか。よほど眠たかったんだろうね。(みな子)
入選 蒼鳩 薫・彰・冬青・すーちゃん
預けていた子を引き取りに行ったのでしょうか。病院帰りかな。自分の幼かった頃のことも思い出しました。満天の星空、ノスタルジーも感じました。(蒼鳩 薫)

4点句 宣言明けキッチンカーの秋日和         康子
特選 冬青・すーちゃん 
コロナ宣言明けで、人々が、久し振りに出てきた広場へやって来たキッチンカー。良い匂いに誘われて人びとのサイフもゆるび、穏やかな時が流れている。(冬青)
やっとキッチンカーも出動可能、秋の好日にも恵まれた弾む感じが、バランスよく配されたカ行音の響きと共に伝わりました。移動販売の場所に広がる開かれた空間や穏やかな日差し。秋のよき日を感じます。(すーちゃん)
入選 帰心・こう子

4点句 鵙高音しっかりせよと刺す如く         葉月
入選 帰心・垣内孝雄・冬青・こう子
「刺す如く」聞く鵙高嶺「しっかりせよ」に明日はある。(垣内孝雄)

4点句 亀虫を木桶で掬ひ露天風呂          こう子
特選 彰・康子
本物の露天風呂ならではのカメムシ。ワイルドです。(彰)
露天風呂に落ちた亀虫も、浸かっている作者も驚いたことでしょう。アッという間に掬い出された亀虫。一瞬の光景がうまく切り取られていると思います。(康子)
入選 蒼鳩 薫・百代
露天風呂に、紅葉なら風情もありますが、亀虫では手でつかむわけにもいかず、桶で掬いますね。実感がこもっているなあと思いました。亀虫も救われたと思いました。(蒼鳩 薫)

3点句 スケボーの少年酔芙蓉はピンク         康子
特選 百代 
少年が無心にスケボーを操るしなやかな時間の経過が、ピンクに色変わりした酔芙蓉と相まって儚くも美しく、自由律と響き合っているように感じました。(百代)
入選 みな子・ビビサン
酔芙蓉がピンクになるのは何時頃なのか。午後かな。スケボーの少年と酔芙蓉の対比がよい。(みな子)

3点句 大阿蘇の風の谷間を鳥渡る           佳楓
入選 彰・百代・ビビサン

3点句 木の実落つ径をお通夜の行き帰り      垣内孝雄
入選 みな子・彰・百代
道に落ちた木の実を見つつ通夜に行き帰る。「木の実落つ」でぶっと切れる感じも通夜にふさわしい気がする? (みな子)

3点句 登高やうねりを見せて千枚田          佳楓
入選 ケン・すーちゃん・康子
登高の季語知りませんでした。勉強になります。(ケン)
高い山に登れば、眼下に広がる千枚田。風が吹き稲田が大きく波うつ景が浮かびます。とても雄大な句です。(康子)

2点句 甲冑の眼窩の闇のしとどかな          ケン
入選 佳楓・康子
このままでも、無季の句として、特選にしたいところですが、作者は(しとど) と(いとど) (かまどうま) をうっかり間違はれたのでは?と思いましたが、間違いでしたらお許しを、深みのある句と思いました。(佳楓)
この「しとど」は、アオジではないかと推察しました。アオジの雄は、目の周りが黒く、「甲冑の眼窩の闇」と重なるような気がします。しとどから甲冑への発想の飛ばし方に驚きです。(康子)

2点句 久方の秋刀魚の煙も懐かしき          葉月
入選 ケン・佳楓
今年も高値のサンマ。久々に脂ののった太いサンマを焼いたんだね。脂がぼっと燃える光景が目から浮かびます。旨そう。痩せたサンマじゃ煙りも出ません。(ケン)
この頃は、秋刀魚も高くなかなか秋刀魚の煙を、嗅ぐことも無くなりましたねぇ。良く分かります。上五の(久方の) を、平仮名の(ひさかたの) にされた方が風情があるのでは? と私は、思いました。失礼しました。(佳楓)

2点句 新聞に秋の香包み届きけり           ケン
入選 彰・こう子
新聞「紙」に山の幸を包んでいるのか、新聞に秋の香り高い記事が載って届いたのか、どちらも良い。(彰)

2点句 風音に続きどんぐり落ちる音          冬青
入選 康子・ビビサン
一陣の風が吹き、枯れ葉の上に次々とどんぐりの落ちる音がする。そして、それを拾い集める子どもたちの楽しそうな声まで聞こえてきます。(康子)

2点句 蛇笏忌をいざなふ秋の鉄風鈴          佳楓
特選 ケン 
飯田蛇笏高貴な句を詠む人だよね。まさか季語になっているとわ全然知りませんでした。勉強になります。ありがとうございます。秋の鉄風鈴と頑固そうな蛇笏何か響きがいいですね。(ケン)
入選 すーちゃん

2点句 食パンをわたし新米もらひけり      すーちゃん
入選 みな子・康子
食べ物のやりとりに豊の秋を感じる。新米のうまさは、ことさらなものだ。(みな子)
たぶん手作りであろう食パンと、この季節ならではの新米との物々交換。そして、他の文字は平仮名表記なので主食同士が強調され良い句だと思います。(康子)

2点句 斑鳩の里に照り映ゆ吊るし柿          百代
入選 蒼鳩 薫・佳楓
夥しい吊るし柿が夕日を浴びているのは壮観ですね。斑鳩の地名が日本の生活文化の良さを表し、詩情豊かだなと思いました。(蒼鳩 薫)

1点句 新田のバス停過ぎて天高し          みな子
入選 垣内孝雄
「新田」と「天高し」が響き合う確かな句。(垣内孝雄)

1点句 秋の雨電車三本並走し            みな子
入選 垣内孝雄
秋の雨の中、偶然三本の電車が並走するのを見たのであろう。読み手は心象も含め、思いを膨らませる。(垣内孝雄)

1点句 はにかみし少女の胸に赤い羽根         百代
入選 垣内孝雄
募金をした少女に「赤い羽根」、「はにかみし」が初々しい。(垣内孝雄)

1点句 坂ふたつ越ゆも逃げたり秋没日(あきいりひ)   彰
特選 蒼鳩 薫
あの坂を登ったら、まだ美しい夕日が見られると思い、日没を追い掛けた記憶を思い出しました。(蒼鳩 薫)

1点句 きざはしを上れぬ日あり菊の花         康子
特選 こう子
恥ずかしいですが、「きざはし」という言葉を初めて知りました。だんだん寒くなつていくこの頃、こんな日もあることでしょう。下五菊の花で癒やされました。(こう子)

1点句 人数分松茸届く句会場          すーちゃん
入選 帰心
この句会にぜひ入会したいです(笑)。(帰心)

1点句 日の差して菊人形の生き生きと        みな子
入選 ビビサン

1点句 青北風や磯笛高き波白し            ケン
入選 佳楓
青北風(あおぎた) と言う季語を、初めて知りました。有り難うございました。(佳楓)

1点句 灯火親し積読の山崩しつつ           帰心
入選 こう子

1点句 花魁の道行ゆるり曼殊沙華         蒼鳩 薫
特選 帰心
別名「捨て子花」とも言われる曼珠沙華は、花の色も強烈で生命力の強い花―それが、花魁の姿と響きあっています。掲句を読んで、映画「吉原炎上」の花魁道中のシーンを思い出しました。(帰心)

1点句 マハの目はゴヤの目を射るラフランス    蒼鳩 薫
入選 すーちゃん

〈俳句気まぐれエッセイ⑦ 猫のパンチ〉    今泉 かの子
「オペラ座の怪人」「キャッツ」などを手がけ、世界的にも有名なアンドリュー・ロイド・ウェーバー。大作曲家なので、もう遠い過去の人と思っていたら、なんとまだ七十三歳。めちゃくちゃお若い。といっても私より数年、年上ではある。そのウェーバーが英国からニューヨークへ渡る際、セラピー犬として愛犬を機内に同乗させてほしい、と航空会社へ要望。無事、一緒に搭乗した、というニュースを見た。幸せな犬、幸せな飼い主と思う。
しかし、一般の犬や猫は貨物と同じ扱いで、檻に入れられ数時間はじっと我慢である。パンチも、アメリカから日本にやってきた猫。「猫パンチ」ではなく、猫のパンチである。もともと人になつかず、予防接種も薬でおとなしくさせてなんとか注射できたほど。狂犬病ワクチンも二回して、飼い主と一緒の便で日本に来るはずだった。が、手違いで米国に数か月、一匹だけ留め置かれていた。やっと算段がついたのだが、なんと、アメリカからフランクフルトへ連れていかれ一泊、そこから成田へ。その間、水は氷で与えられていたらしい。夫が頼まれて引き取りに行ったのは、成田空港の中の貨物上屋(うわや)と呼ばれる場。華やかな表の顔とは違う物流の行き交うゾーンである。検疫のチェックを受け、やっとアメリカ人の飼い主と対面できたらしい。十数年をともに過ごした猫は、異国にいる飼い主にとって、りっぱなセラピー猫。日本で長生きしてほしい。
授かりしものや夜長のひとつ灯に         かの子

 



第15回若竹ウェブ句会(2021年9月募集)

今月のウェブ句会は新しい方二名の登録がありました。お一人は栃木県より。入会のきっかけは鬼城に惹かれて、または楽しそうだから、とそれぞれ。自身も含めて永く続けていけたらと思っています。今月は鬼城の「心耳」や富田木歩についての句評も見られ、九月に因んだ句会となりました。
引き続き多くの方の投句をお待ちしています。

第十五回若竹ウェブ句会(二〇二一年九月募集)
(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)
5点 晩学に躓くばかりすいっちょん           佳楓
(すーちゃん特選)上五中七に共感。そして下五に救われます。少々の行き違いや思わぬミスがあったとしても、重く受け止めず、そこを軽くかわして行ける強さを下五の響きに感じます。♪後から馬おい追いついての如く、晩節の学びも。
(ケン特選)すいっちょん、いい響きだね。このコロナ禍ほっとする季語だね。
(こう子特選)晩年になってからの勉強に、頭がついてきません。何度も同じことを調べたり、感動した句を覚えようにも記憶する力がありません。掲句はまさに、ぴったりと今の私の腑に落ちる句でした。「すいっちょん」が好きです。
入選 帰心・彰

5点 忘れ物して来たような夏の果            冬青
(みな子入選)夏の終わりの感じがよくわかる。何か忘れてきたような。
(彰入選)何を忘れてきたのかわからないので、良しとします。
入選 帰心・すーちゃん・佳楓

4点 裏木戸の開かず閉まらず秋黴雨           康子
(冬青特選)秋梅雨入りの頃の何もかも停滞した日常の憂鬱をコンパクトに表現している。
(蒼鳩 薫入選)秋の長雨の湿気に家具や家の中が黴たりして、鬱陶しい。建付けもしかり。「開かず閉まらず」が要を得て面白いと思いました。
入選 純子・ビビサン

4点 リハビリの日々の効き目や木歩の忌         帰心 
(佳楓特選)富田木歩は、大正期の俳人ですね。高熱の為両足が麻痺し生涯歩行不能となる。自分で作った木の足に頼る生活で句作を始めるも、27才にて亡。作者はリハビリに行ける足があるだけ幸せと思う作者の心境に特選。
(みな子入選)リハビリの効き目が身にしみる。木歩の忌日ともなればなおさらに。
(蒼鳩 薫入選)足の不自由な富田木歩は歩くことに強い願望を持っていたとのこと。リハビリと木歩忌をとり合わせたところが面白いと思いました。一日も早いご回復をお祈りします。
入選 ケン

4点 月代や子らと暮らしたころのこと        ビビサン
(蒼鳩 薫入選)来し方を振り返りながら山入端に目を遣る。静かな時間が流れていく。しみじみとしたいい句だなあと思いました。
(康子入選)最初は「さかやき」と読んでしまい江戸時代かと。「つきしろ」でした。ぼんやりとした淡い明るさに、ふと昔を思い出す。子らと過ごした楽しかったこと、にぎやかだったことなどが、よみがえってきます。
(彰入選)最初は月代を「さかやき」読んでしまいました。変に思って調べ「つきしろ」という言葉との初めての出合いです。
入選 こう子

4点 山城を揺する三河の威銃               佳楓
入選 百代・こう子・彰・ビビサン

3点 鬼城忌の心耳に応ふ秋のこゑ            佳楓
(蒼鳩 薫特選)村上鬼城の座右の銘は「心耳」とのこと。耳が不自由でもあったからかもしれない。心を研ぎ澄まして聴く心耳という言葉を知りました。「応ふ」が面白く、奥の深い句だなあと思いました。
入選 ケン・純子

3点 大花野行くてのひらは風まみれ         ビビサン
(帰心特選)風の吹く日に大花野を歩く作者。「風まみれ」の措辞で、その景が一気に立ち上がりますー揺れる花々も、気持ちのよい風を受けて歩く作者の姿も。
入選 佳楓・純子

3点 羽根休め岩に溶けたる塩蜻蛉            泥舟
(みな子入選)塩蜻蛉の休み方は擬態ともいえる。
入選 帰心・純子

2点 山並みの形もつ石や水の秋           垣内孝雄
(百代特選)澄み渡る景色が目に浮かび、心が洗われるようです。
入選 ビビサン

2点 新涼や読むも返すも指ひとつ            康子
(ビビサン特選)読書の頁を繰るときの風景でしょうか、「読むも」は、次の頁へ進むとき、「返すも」は、前の頁へ戻り何かを確認したいとき、指の所作から新涼を感じとった作者。些細なことから巧く一句に仕立てられたと思います。
入選 こう子

2点 秋灯し鉛筆削れば木の匂い           ビビサン
(彰特選)最近使わなくなった鉛筆。使うとすれば2B、シャープペンは折れるので嫌いです。鉛筆メーカーは意識しているのか、確かに新鮮な匂いでした。
(康子入選)秋の夜長の書き物でしょうか。鉛筆の軸木の軟らかさや、微かな香りも伝わってきます。

2点 外されぬ「売地」の看板秋あかね         こう子
(葉月特選)コメントなし
入選 ケン

2点 秋の向日葵うつむいて種太らせて         みな子
入選 すーちゃん・百代

2点 いつのまに選手交替法師蝉             葉月
(垣内孝雄入選)法師蝉の声に気付かなかった作者、秋の日のさりげない出来事。
入選 こう子

2点 新涼の葉書結びはシンシアリー        すーちゃん
入選 帰心・ケン

2点 踊り背に下駄音ふたつ消えにけり          ケン
(佳楓入選)踊りの途中より下駄音がすっと消えて行く、あ〜これから恋の物語が始まるのですねえ! 昔、むか〜しを思い出しました。
(康子入選)「上五」で、まだ続く楽しそうな盆踊りを後にする様子がわかります。下駄の音をさせて抜けるのは親子でしょう。夜も更けてきたので、駄々をこねる子の手を引いて帰宅したのでしょう。

2点 天高し雲も高くて三河の野            みな子
入選 冬青・ビビサン

2点 登りつめ寄るべ無き蔓秋暑し            冬青
入選 すーちゃん・百代

2点 山暮れて色なき風の信濃川             ケン
(蒼鳩 薫入選)美しい信濃の情景が浮かんできました。白く光る信濃川が悠然と流れ、人と自然が一体となっているような感じがいいなあと思いました。
入選 佳

1点 秋深し蒸し羊羹の湯気甘し            こう子
(純子特選)深まる秋に、甘い湯気とは。美味しそうな温かい情景がうかびます。

1点 新豆腐子の馳走なり美濃の国            冬青
(康子特選)採れたての大豆と長良川の清らかな水で作られたであろう豆腐は、格別の味わいがあるでしょう。自然に恵まれて育った子の何よりのご馳走だと思います。

1点 はしなくも忌明け挨拶秋扇              彰
(垣内孝雄特選)時の流れが「秋扇」に集約されている。

1点 秋の日の尾の先回し眠る猫           蒼鳩 薫
(みな子特選)あたたかな秋の日に尾も回して丸くなって眠る猫の様子がよくわかる。

1点 農園へひょいと重ねるサングラス          純子
(康子入選)まだ日中は日差しの強い農園へ、慣れた手つきでサングラスをする作者、そして「さぁ、もうひと踏ん張り」の声も聞こえてきそうです。

1点 月の色して棉の花慎ましく            みな子
入選 冬青

1点 花野来て春樹の井戸を探しけり         蒼鳩 薫
入選 すーちゃん

1点 大屋根に天水桶や天高し              百代
(垣内孝雄入選)「大屋根」と「天水桶」に「天高し」が醸し出す景に共感です。

1点 高野槙井戸底深く天高し              百代
入選 葉月

1点 秋暑し棍棒となるズッキーニ         すーちゃん
(みな子入選)育ち過ぎたズッキーニの様子がよくわかる。

1点 草刈機唸り彼方に護衛艦              帰心
(垣内孝雄入選)草刈機の「唸り」と護衛艦との対比、平和の中の「あやうさ」を読む。

〈俳句気まぐれエッセイ⑥ ウージの森〉    今泉 かの子
昔は句会帰りにカラオケによく行った。そこで句友と二人、最後に熱唱するのは「島唄」だった。もちろん沖縄の歌とは知っていた。しばらくして、ウージはサトウキビのことと知った。それからしばらくして歌詞の「千代にさよなら」とは砂糖黍畑の下のガマ(自然洞窟)で自決、永遠の別れの意と知った。
つい最近になって知ったこと。この「ウージの…」の下りは、作詞作曲された宮沢和史氏によれば、「島唄はレとラがない沖縄音階で作ったが、その部分だけは本土の音階に戻した。二人は本土の犠牲になったのだから。」歌詞と曲調のこの必然。悲憤とも、慰霊ともなって。唄が発表されてから約三十年となる。知らないでいた三十年。
オスプレイの音の真下に牛洗ふ         佳楓
以前、このウェブ句会で頂いた句。「脅威の構図」としながら、「現実の景というより象徴性寓意が込められている」と書いた。後になって、作者は沖縄にしばらく居住されていた方と知った。実景だったことに驚いた。
沖縄南部の土地はお国のために死んでいった遺骨が数多く眠っている。今、その土砂を辺野古基地の埋め立てに使う計画があるという。せめて収集をと、鈍(のろ)い身ながら、それは切に切に願う。

 



第14回若竹ウェブ句会(2021年8月募集)

★第十三回談話室(七月募集)より 
今回は、季語の本意や意味内容との距離感、所謂つきすぎについて、そして自句自解と合わせて他者に鑑賞されて広がる世界等、俳句について様々な角度からやりとりがありました。また、夏雲システムについての確認もありました。詠み手と読み手で完成、あるいは広がる世界、しかもそれは一つに限定されない、俳句は豊かな器なのだと思います。
引き続き多くの方の投句をお待ちしています。

★第十四回若竹ウェブ句会(二〇二一年八月募集)
(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)
5点 花蕎麦や信濃は風の湧くところ           佳楓
(純子特選)白いそばの花が、雄大な自然の風にそよいでいる感じが美しい句です。
(ビビサン特選)映像が本当にきれいに描かれていると思いました。句の仕立て方としてはシンプルそのものですが、風の湧くところ、実に巧い表現だと感心しました。
入選 すーちゃん・冬青・葉月
4点 巾着の縫ひ目の揃ふ盛夏かな            純子
(みな子入選)巾着を縫う針目が揃ったというのは、ずっとやっていたのだと思う。暑い中やり続けることの大切さを感じる。やっと縫い目が揃ったのは盛夏。
入選 彰・帰心・百代
4点 日焼けして妹と拾ひしシーグラス        蒼鳩 薫
(康子入選)夏の浜辺で、妹さんときれいなシーグラスを競って拾う楽しそうな様子が伝わってきます。
入選 彰・百代・すーちゃん
(作者より)シーグラスは浜辺に打ち上げられた彩とりどりの瓶の欠片で、角がとれてまるくなっています。
4点 引退の機関車展示夏深む            ビビサン
(康子入選)「引退」と「夏深む」の季語が響き合って良い句だと思います。
入選 すーちゃん・冬青・純子
4点 焼きたてのパンの温もり迎盆            純子
入選 帰心・こう子・百代・ビビサン
3点 酒好きな家系に嫁ぎ盂蘭盆会          ビビサン
(こう子特選)酒好きな家に嫁いで来て、いつしか自分も酒好きになった。教えてくれた家族も、今はなく、お盆に帰ってきたら一緒に飲みましょう。と言っているように読みました。とても暖かい句だと思いました。
入選 帰心・葉月
3点 つくづくと敗戦の日の法師蝉            佳楓
(彰特選)終戦でなく「敗戦」としたのが意味深い。
(みな子入選)敗戦の日につくつく法師がなくのをつくづくと聞いている。
入選 ビビサン
3点 日盛りやゆっくり廻るミキサー車          純子
(百代特選)夏の日盛りに、ものみな気だるげな様子が、ゆっくり廻るミキサー車のドラムに象徴されている。視点が素晴らしいと思いました。
(蒼鳩 薫入選)真夏の昼の不快指数は萎えてしまいそうで我慢も限界に達する。しかし、工事現場でも、道路でもゆったりと、堂々とドラムを回し続けているミキサー車。日盛りに動いている一番元気なのがミキサー車かもしれない。
入選 すーちゃん
3点 入り口と違ふ出口や木下闇          すーちゃん
(蒼鳩 薫入選)普通は入り口と出口は同じなのに、それが違うと別世界に迷い込んだようで戸惑いと不安を感じる。ここはどこなのだろう。木下闇の季語が面白い。想像が広がる。
入選 こう子・佳楓
3点 溶き卵ジューと流してお盆明け           百代
(蒼鳩 薫入選)俳句というと、伝統的、文語というイメージが強い。でも、口語もいい。俳句は自由なんだという気分にさせてくれる。作者の瑞々しい感性が感じられる。解き放たれた気分になる。
(みな子入選)お盆明けの朝の感じがよくわかる。卵焼きの美味しそうな出来具合も想像できる。
(康子入選)「中七」が気持ち良い。これでお盆の行事から開放されて、ホッとする感じがしました。
2点 天井をさまよふ司書の捕虫網         すーちゃん
(帰心特選)図書館に蝉が入り込んで鳴き出した。司書さんが、蝉を捕まえようとするが、蝉はすばしっこくてなかなか捕まらない―俳味あふれる世界が、この17音で一気に広がる。
(康子特選)図書館に何か小さな虫が飛び込んで来たのでしょうか。ゆっくり捕虫網を動かす司書さんの姿が浮かんできます。
2点 今日も又変わらぬ暮らし百日紅           冬青
(蒼鳩 薫特選)来し方を振り返ってみれば、いつもと同じ生活、暮らしが一番心安らぐ。淡々と過ぎて行く暮らし。作者の優しく静かな眼差しと感性が感じられる。百日紅の花と溶け合っているように思う。
入選 彰
2点 夕焼空影絵となりぬ西の町              彰
(冬青特選)夕方家の前の道路から西を見るとこの景色です。1日が終わりほっとした気持ちと過ぎ行く季節の感傷が上手く表現されています。
入選 百代
2点 ねじればなよのなかなべてかけちがひ        帰心
入選 佳楓・純子
2点 満天の星座数へてバルコニー          蒼鳩 薫
(みな子入選)このバルコニーは特別な場所だと思う。満天の星座が見えるバルコニー。美しい星空が見えてくる。
入選 ビビサン
2点 秋夕焼ピアノ楽譜に残るメモ          蒼鳩 薫
入選 彰・こう子
2点 梅干すや寝ても覚めても香の中に          康子
入選 こう子・佳楓
1点 蜘蛛の囲の水出し文字のごとく出づ         帰心
(みな子特選)見えなかった蜘蛛の囲が水がかかってくっきりと見えたということを水出し文字のようにと言っていると思う。
1点 蘇鉄の花高々とまたさびさびと          みな子
(すーちゃん特選)蘇鉄の花は雌雄で花は全く異なるようですが、どちらにしても希少とか。堂々としていながら、ちょっと異様な花の風情を畳みかけるように詠まれています。
1点 駐車せしビルは軍艦炎天下          すーちゃん
(佳楓特選)現在のスーパーの駐車場は、まさに外から見ると巨大な軍艦の様に見えますね〜まさに、この地球の大地に浮かんだ、炎天下の巨大な軍艦と、見たてられた、所に同感致しました。
敗戦忌はすぐですねぇ‼
1点 里帰り出産を待つ夏座敷              百代
入選 帰心
1点 曲がってるよ届く胡瓜の大き山           葉月 
(入選康子)曲がってても味は同じ胡瓜。むしろ自然の形で、愛着がわきます。たくさん届いたんですね。
1点 片陰は主のふところや大聖堂(カテドラル)     帰心
入選 純子
1点 打ち水やいずまい正し古屋敷            冬青
入選 佳楓
1点 ひろしま忌強い日射しが目に痛し          葉月
入選 ビビサン
1点 新涼の転た寝にある風の道             佳楓
入選 純子
1点 音合わせして蝉時雨蝉時雨           ビビサン
(入選蒼鳩 薫)蝉時雨。一匹二匹と鳴き始め、そして、一斉に。オーケストラがコンサートマスターからオーボエそしてフルメンバーへ広がっていく様子もそうなんだなあと。作者の視点がいい。破調とリフレインが面白い。
1点 やる気出せ背を押すけふの蟬時雨          康子
入選 葉月

〈俳句気まぐれエッセイ⑤ おふれがき〉     今泉 かの子
前の大河ドラマは「麒麟がくる」であったが、我が家の門にはキリンがいる。油断してぼんやりしていると、ロバになっていたりする。細い首から葉っぱが伸びて太くなり、顔の造作もあいまいになるのだ。全体に、もわっとしてきて、さしずめメタボなキリン。夫がガシガシ刈り込むと、またスリムに蘇る。リバウンドの繰り返しは、家の主と同じである。それでも、もう十数年のつきあいになる。
この数年、心ふさぐのはそのキリンの足元や門の辺りに犬のおしっこがかけられていること。門の前は約二mの歩道があり、道路側に電柱も立っているが、こちらの門側に向かって。しかも敷地内に。朝刊を取りに出て、その痕跡を見ると、まこと気分が萎える。時折は固形物まで。それは♪大きなものから小さなものまで、生きてる力やお犬様パワーである。愛犬家のマナー違反の所業に、犬猫の嫌いな臭いの粉を撒いたり、地面にチョークで日付をかいたり、策は講じてきたけれど、今一つだった。
そこで一計、昔の三角屋根がついた立て札、あの禁令等を記した高札をキリンの足元に立てて貰った。
「ここはお犬殿の排尿排便する場にあらず。愛犬奉行」
ミニ版の高札なれど、次の朝から門の辺りのプミラ(観葉植物)に濡れた跡は見えず、効果はてきめん。さすが、お触書と感じ入った。
きっと、キリン君も喜んでいると思っている。
秋澄むやキリンの像に尾のできて          かの子

 



第13回若竹ウェブ句会(2021年7月募集)

第十二回談話室(六月募集)
少しずつ談話室でのやりとりがふえ、六月の投稿回数は三十回に及びました。数字としての句会結果だけでなく、句評の解釈や確認、またそれに付随した話題など広く意見交換できることも、深まりとしてたのしいところ。談話室は、結果公開中となってから、毎回開設されるシステムです。その句会に投句していなくても、ウェブ句会の参加者であれば、ご覧になることができます。どうぞ、一度気軽に覗いてみて下さい。引き続き多くの方の投句もお待ちしています。

★第十三回若竹ウェブ句会(二〇二一年七月募集)
(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)
6点 手作りの太き竹串山女魚焼く           こう子
(ビビサン特選)古民家の民宿でしょうか。都会では味わえない素朴な感じに好感が持てました。竹串のようすから句が始まり、最後は山女魚を焼いている景で終わる。下五の動詞で句が引き締まりました。
(蒼鳩 薫入選)渓流の音を聞きながらの釣り。日を浴びて銀色に輝くヤマメをあたりの竹を切り、串にして河原で焼く。野趣満載の格別の味だ。箸さえも作ったかもしれない。
入選 帰心・百代・冬青・葉月
5点 朝市の寡黙な店主真桑瓜              純子
(彰特選)丹精込めて育てたものを自分で朝市に並べる。店主の顔と真桑瓜が重なります。きっとおいしい瓜です。
(冬青特選)寡黙な店主とごろりと並べられたまくわうりの間合いが微笑ましい。
(蒼鳩 薫入選)黄色い真桑瓜。懐かしい。店主は瓜の作り手の農家の主かもしれない。寡黙さのなかに実直な農夫の姿が思い浮かぶ。陽の光をたっぷり浴びた甘い真桑瓜だろう。
(百代入選)思わず「その真桑瓜、ひと山ください!」と手が出そうです。
入選 ビビサン
4点 とんばうの先に来てをり見晴らし台         冬青
(蒼鳩 薫入選)小高い見晴台は、シオカラトンボやムギワラトンボが飛び交う絶好の場所だ。作者は蜻蛉に目を遣り汗を拭き、水を飲み、深呼吸をし、何を見ているのだろう。自然と一体になり、楽しそうだ。
(みな子入選)見晴らし台には作者よりトンボの、方が、先にいた。あと人影は無し。
入選 すーちゃん・ビビサン
3点 鎌持てばかまきりの真似男の子           冬青
(葉月特選)息子も孫も曾孫も男の子は同じ様な様子を見せてくれました、楽しく読みました。
入選 こう子・彰
3点 相談の空気をまぜる扇風機           ビビサン
(帰心特選)相談する側、される側の間に少し重い空気が立ち込めている中、扇風機はさながら仲介役のように、二人に風を交互に送っています。「空気をまぜる」の措辞が秀逸です。
(康子特選)何人かで車座になり相談してる所に扇風機が回っている様子、そして「中七」の「まぜる」が面白い表現だと思いました。
(佳楓入選)俳味のある、私の好きな句です。秀逸の欄があれば、秀逸に押したい句です。死に掛かっている季語が生まれ帰った思いがしました。有り難うございました。
3点 夏シャツやリュックをひょいと斜め掛け       帰心
(蒼鳩 薫特選)軽装でリュックに弁当と水筒と雨具とそれと図鑑とか双眼鏡とか、句帳など入れて出かけるのだろう。野山の散策に慣れている感じがする。「ひょいと斜め掛け」が面白い。季語が生きている。
(百代入選)身のこなしも軽やかな後ろ姿のイケメン?  それともアスリート系女子?  涼やかな余韻に想像が広がります。
入選 すーちゃん
3点 短夜や元気に歩く夢ばかり             葉月
入選 帰心・康子・佳楓
2点 ビー玉を追ふ喉仏涼一過              百代
(佳楓特選)実は眼でビー玉を追っているに、喉仏がビー玉を追いかけている、という表現力の凄さ、それに伴いラムネを一口飲んだ後の喉元の涼しさを(涼一過) と、簡潔に詠まれた技法は素晴らしいと思いました。
入選 こう子
2点 命毛を奮ひ立たせて夏書かな            佳楓
(純子特選)もしかして書道部かと想像しました。夏の書の情景が浮かぶ様です。
入選 こう子
2点 ででむしやチューブ歯磨き絞り切る         帰心
(こう子特選)ででむしとチューブ歯磨きの取り合わせ、すごく面白いと思いました。しかも最後の最後絞り切ってやっと歯ブラシの上に乗った歯磨き粉の出具合とででむしの動きが重なりました。
入選 すーちゃん
2点 蝦蛄取りの籠ごと入れる船生簀          こう子
入選 康子・佳楓
2点 不揃ひの植田波湧く棚田かな            佳楓
入選 葉月・純子
2点 冷奴木綿か絹か揉めており             葉月
(蒼鳩 薫入選)冷奴。絹ごしか木綿か夫婦で揉めているのだろう。薬味は庭の紫蘇か茗荷にしようか。微笑ましい夫婦の会話。仲を取り持って、半分ずつ両方食べてみたらどうだろう。
入選 帰心
2点 ほほえみにほほえみ返す梅雨晴間          康子
入選 帰心・ビビサン
2点 七夕やまだ見ぬ孫の歩き初む           こう子
入選 彰・純子
2点 雲海に吾も入る備中松山城             百代
入選 冬青・康子
2点 雷雨去り小亀ぽつんと道の上           みな子
入選 彰・百代
1点 短夜や又雨音に起こされて             葉月
(百代特選)短夜に又雨音、切なさとはかなさが胸に迫ります。
1点 天金の「フィッツジェラルド」麦の秋      蒼鳩 薫
(すーちゃん特選)「天金」はここでは立派な洋書なのでしょう。「フィッツジェラルド」を確認してみると「ギャッツビー」等、豊かさを謳歌するアメリカを華麗な文体で描いた作家とのこと。黄金色に輝く、広大な麦畑を想像しました。
(作者より)小説「ライ麦畑でつかまえて」をイメージして作りましたが、作者はフィッツジェラルドではなくて、サリンジャーでしたね。反省。
1点 梅雨一日浪花千栄子の声を聴く           康子
(みな子特選)梅雨の一日ゆっくり浪花千栄子の声で何かの話を、聞いている。懐かしい声で、明るくてざっくはらんな口調で、いかにも、関西のおばちゃん、しかも下品ではない。
1点 いつの間に祭囃子やペン先で          蒼鳩 薫
(みな子入選)祭囃子のリズムをついとってしまう、心のうきうきが感じられる。
(作者より)「ペン先で」の「で」が散文的で説明的ですね。「ペンの先」と名詞止めにした方が良いかなと迷いました。
1点 ざりがに取り熱中の子ら草茂る           冬青
入選 こう子
1点 小半酒(こなからざけ)下の沢までほたる見に  すーちゃん
入選 純子
1点 梅雨湿る大歳時記の除籍印          すーちゃん
入選 佳楓
1点 白無垢の帯流れ落つ那智の滝            百代
入選 ビビサン
1点 園舎まで橋の子つばめ遊びに来        すーちゃん
(みな子入選)橋と園舎の近さが、感じられる。子燕の勢いが、よい。
1点 鳶高く夏の青さに羽根広げ             泥舟
(みな子入選)夏の青空高く、鳶が羽を広げてのびのびと飛んでいる。
1点 河骨やタワークレーンは天に伸ぶ          帰心
入選 すーちゃん
1点 どの子にも親は平等夏つばめ          ビビサン
入選 彰
1点 半夏雨いいこと無いと零(ごぼ)す友         彰
入選 康子
〈俳句気まぐれエッセイ④ 大島選手〉     今泉 かの子
ドラゴンズの大島康徳選手が、六月三十日に亡くなった。癌だった。プロ野球に詳しいわけではないが、大島選手の顔は知っていた。
四月から中日新聞「この道」を執筆され、亡くなってからもしばらく、連載は続いていた。いつも元気と負けん気印。が、癌とは共存しつつ「勝つことではなく、負けないこと。」大事なのは、自分らしく癌と向き合うこと、と書かれていた。
また「人生の目的って何だろう。」問いかけのあと、「良き理解者に巡り合えるかどうか(中略)自分という人間を知って、受け入れてくれる人と出会うことができるかどうか」と続いて、家族の存在について触れられていた。人によっては友人、同僚それぞれだろうとも。
当たり前だが、人は人とつながって生きている。
最期は家族に見守られ、段々と呼吸がゆっくりになり、そのまま静かに旅立たれたという。「見送る私たちを最後まで笑顔でいさせてくれるなんて…なんて強くて優しくて見事な旅立ち方なんでしょう。」とブログには綴られていた。それが自分らしく向き合った末期の姿。きっと、大島選手ご自身も家族の良き理解者だったのだろう。
身近な存在の大切さが殊に思われるコロナの状況、連載は七月十六日まで続き、八十八回が最終回だった。
ほうたるの今宵われへと寄り来る          かの子



第12回若竹ウェブ句会(2021年6月募集)

★談話室より
たまたま六月のウェブ句会に出された俳句①と、似たような句が六月二十日付の中日俳壇に掲載②されていました。

  • 雨粒の隙間を縫うて夏燕
  • 夏つばめ雨の隙間を翔(か)けゆけり

私も以前、友達と吟行した際、二人で同じような俳句を作った経験があり、驚いたことがあります。今回は、「雨」「隙間」「夏つばめ」と同じ言葉を入れながら、①は燕の雨の中でも華麗に飛ぶ巧さを②はその飛翔の力強さを詠んでいます。
子育てに懸命な親燕の姿をどうとらえるのか、その詠みぶりによって、句の味わいが微妙に違ってくると実感しました。


(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)

5点 ホームへの入居の便り山法師           純子
(蒼鳩 薫特選)旧友がホームへ入居されたのであろうか。ご本人からの便りか、あるいはご家族からの便りか。清廉な山法師の花の季語が効いていると思う。
(冬青特選)潔く生きて来られた方からのついの住処の知らせ受けて外を見ると、山法師の花が凛と咲いていた。心境を巧く表現。
入選 けい香・こう子・康子
4点 枇杷の実へ掛ける袋もびわの色       すーちゃん
(康子特選)袋かけの袋は、新聞紙とか白い紙のイメージでしたが、びわ色とは新鮮な驚きです。果樹園の明るさも伝わってきます。
(みな子入選)袋もびわの色というのがなるほどと思う。
入選 帰心・ビビサン
4点 はまなすやひとり少年ボール打つ       蒼鳩 薫
入選 彰・けい香・こう子・康子
3点 蹴躓き螢の闇に入り込む             佳楓
(帰心特選)俳味あるファンタジーの世界―楽しい!
(彰特選)幻想的で、なにか物語が始まりそうな気配。
(百代特選)オットット的な上五「蹴躓き」の可笑しみから一転して、ただならぬ気配を感じさせる「螢の闇」に入り込むという情景描写に、つい先日蛍狩をしたばかりの私は、ドキドキが蘇り、深く共感させられました。
3点 新馬鈴薯(しんじゃが)や命の窪みほの仄紅し    彰
(佳楓特選)新じゃがの所々にある窪みを、ほの紅い命の窪み と詠まれた作者の観察力と、表現力に感心させられました。何時も目にしているのに、私は今迄詠めませんでした。じゃがバターにすると美味しそうですねぇ。
入選 純子・けい香
3点 蓮浮葉さんすうテスト丸いくつ          帰心
(こう子特選)かしこまらず自然なところがいいなあと思いました。私には小学3年生の孫がおりまして、やっぱりテストの丸は気になります。蓮の葉の増えるこの頃、丸も増えるといいなあと思います。蓮浮葉が可愛らしく感じます。
入選 すーちゃん・純子
3点 ハモニカの息を合わせて夏木立          純子
(けい香特選)懐かしい風景を想いだしました。木の教室で皆でハモニカの合奏練習。夏休み前の暑い日。でも夏木立から吹く風が心地よくて…想像が膨らみます。
入選 百代・佳楓
3点 草むしり外科医の如く爪洗ふ           康子
(葉月特選)コメント無し
(蒼鳩 薫入選)根を詰めての草むしり。日課にしているのかもしれない。草のアクが爪に沁み込んで汚れてしまう。なかなか汚れが落ちない。外科医の比喩が面白い。
入選 帰心
3点 能講師きちりときめて夏袴            葉月
入選 冬青・こう子・けい香
3点 てんぐさの蘊蓄聞きて心太          ビビサン
入選 百代・佳楓・葉月
3点 浅沙咲き水面に灯り五つ六つ          こう子
(みな子入選)夕暮れか、浅沙の花の鮮やかさと灯りが対照的である。
入選 冬青・彰
3点 梅花藻や黒衣の針魚(はりよ)すいとは捌(は)け 百代
(蒼鳩 薫入選)醒ヶ井の梅花藻であろうか。梅花藻とハリヨの生息する場所。あるいは、大垣かもしれない。擬人法や、すいと捌けの措辞がハリヨの特徴をよくとらえている。
(みな子入選)川の流れが澄んでいて、梅花藻の花が鮮やかで、黒い小魚が泳ぐ様子も勢いがある。
入選 冬青
2点 老鶯や墓地に異国の二人連れ          こう子
(純子特選)異国からのお墓参りは念願かなっての事と思われます。美しい鶯の鳴き声が聞こえてきそうです。
(蒼鳩 薫入選)老鶯の鳴く墓地。自然環境の残る墓地だろう。異国の二人連れ。老年か、恋人同士か。いろいろ想像が膨らみドラマが展開しそうである。
2点 Gパンのほつれ踊らす青嵐            佳楓
(みな子特選)Gパンのほつれが踊るようだという、気持ちよく吹く青嵐がよくわかる。
入選 ビビサン
2点 夕焼や止まりしままのビル時計         けい香
(蒼鳩 薫入選)夕焼けを明日への希望ではなく、斜陽の会社のビルと重ね合わせたのだろう。止まったままの時計が切なく哀しい。
入選 こう子
2点 花菖蒲かなたに油絵のやうに           帰心
(みな子入選)遠くの花菖蒲の様子が油絵のようにぼんやりと見えて来る。
入選 すーちゃん
2点 本陣跡繰り返し来る夏燕            みな子
入選 ビビサン・すーちゃん
2点 ちいとづつこと運びたる皐月かな          彰
(百代入選)独り言のようであり、あるいは、例えば、頑張っているのに思うように成果があがっていないと焦る若輩者への大先輩の励ましのようでもある。「ちいとづつ」に年輪を感じます。
入選 佳楓
2点 抽斗の留守をあづかる油虫          蒼鳩 薫
入選 ビビサン・彰
2点 全長一瞬はつなつの新幹線           みな子
入選 すーちゃん・康子
2点 目高の子斯くも小さきの生きてをり        冬青
入選 康子・純子
1点 ビニル仕切り人ゆらゆらと梅雨の店        冬青
(すーちゃん特選)一読、梅雨の雨の質感が伝わりました。ビニルの、湿度を通さないつるつるした感じや、ビニル越しの人影のゆらめくように見える様子。梅雨の雨に降り込められている
店内が不思議な異世界のようにも感じました。
1点 雨粒の隙間を縫うて夏燕           蒼鳩 薫
(ビビサン特選)梅雨どきの燕のようすがよく描かれていると思います。「雨粒の隙間」とは、これ以上の表現はないように思えます。子育てに励む燕の姿に、前向きになれそうな自分がいます。
1点 瞑すれば光いや増す宵蛍             百代
入選 葉月
1点 乗り換えに買ふや壺屋の稲荷寿司      すーちゃん
入選 純子
1点 笛の音やしばし佇む菖蒲園            康子
入選 帰心
1点 慰霊の日の猩猩緋色の西日かな          佳楓
(彰入選)「慰霊」の行事や施設が、戦で散った軍人の美化や殉国の賛美ではなく、純粋な追悼と反省、平和への誓いの日であるべきと考えます。この句で知った沖縄戦慰霊の日はそうであると信じますが。
1点 囀りの高さを竸ひ森深し             冬青
入選 佳楓
1点 風清し今張り替えし網戸より          こう子
入選 葉月
1点 曾祖母は安政生まれ梅雨の星           康子
入選 百代
1点 青鷺や周り一面波も無く             泥舟
入選 冬青
1点 霧晴れてパノラマとなるお花畠         けい香
入選 帰心

〈俳句気まぐれエッセイ③ 魚島 〉      今泉 かの子
先だって伊勢の方からお便りを頂いた。そこに「魚島ってご存知ですか。」とあった。浅学非才の身、もちろん初めて聞いた言葉である。しかも季語という。ひしめいた魚で海面が盛り上がり、島のように見えることを言うらしい。歳時記には「不気味な感じ」との記述もあった。ちょっと怖そうな感じではある。
が、頂いた便りには、魚島に押し上げられた釣り舟は、いつ転覆するかわからないものの、怖くはなく、さらに「魚に守られている感覚です」とあった。幼少期から船に乗り、海に近いところに暮らしているからこその感覚だろうか。山家育ちには羨ましい限りである。
でも、よく考えてみると、私も山ふところの中で、山の恩恵に与っている。大いなるものに守られている。いつかそんな感慨をもてる日が来るだろうか。便りの最後に「私は今日八十になりました。」と書かれていた。何だか、励まされているような気がした。
やまびこを待つ耳二つ風薫る             かの子



第11回若竹ウェブ句会(2021年5月募集)

★談話室について
夏雲システムで選句結果が公開されると、「句一覧」、「得点順」、「作者別」、「 談話室」という4つのボタンが現れます。この談話室では、投句された俳句について自由に質問や意見交換を行うことができます。第十一回若竹ウェブ句会の談話室にも、今回初めて投句された蒼鳩薫さんからの挨拶がありました。これから少しずつ多くの方が投稿され、従来の句会と同じように、選句後のおしゃべりも楽しめたらと思っています。引き続きよろしくお願いいたします。


(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)

5点句 手作りのジャム瓶透けて夏きざす       こう子
(百代特選) ジャム作りは季節と共に。苺の旬も終わり近く、手作りジャムを瓶に詰めてかざしたら、夏の気配が透けてみえた。実体験として、共感を覚えます。
(みな子入選) ジャム瓶の透ける感じに初夏を感じる。
(蒼鳩 薫入選) どんなジャムか興味津々だが、瓶が透けてくるころ味もよくなり、また、夏になるころなのだろう。爽やかで透明感のある、ジャムの出来上がりへの期待感が、夏への期待感と相まって楽しい。
入選 彰・康子
5点句 クレシェンド風が指揮する麦の秋        百代
(みな子入選) 風によって麦の穂がなびく様子がよくわかる。
入選 けい香・すーちゃん・佳楓・冬青
4点句 オスプレイの音の真下に牛洗ふ         佳楓
(すーちゃん特選) 脅威の構図。垂直に離着陸できホバリングも可能なオスプレイと、その直ぐ下で農耕牛の汗を流してやる人。軍機の落とす影や轟音は命あるものを危険にさらし恐怖を与える。現実の景というより象徴性寓意をこめた一句。
入選 帰心・こう子・純子
4点句 万緑や拳回して泣く赤子            佳楓
(彰特選) 泣くことは赤ん坊の意思表示ですが、「拳回して」が愉快で印象的です。万緑の季節、きっと健やかな赤ちゃんでしょう。
(けい香特選)コメント無し
(蒼鳩 薫入選)万緑という季語と元気のよい赤ん坊の取り合せが面白い。
入選 帰心
4点句 竹切りて野の花生けし利休の忌        けい香
(蒼鳩 薫特選) 茶道のことは詳しくないが、侘び寂びのことと聞く。野の竹を切って花瓶とし、清楚な野の花を活け、利休を偲ぶことが忌日にふさわしいと思った。
(百代入選) 青竹が有り、竹を伐り、細工する技を持ち、作った竹の花筒に野の花を生けて迎えた利休忌に一服ですか。羨ましく思いながらいただきました。
入選 帰心・こう子
4点句 青嵐竹百幹を統べにけり          蒼鳩 薫
(冬青特選) 竹林が激しい風に大きく揺れる様を壮大に描いていて良い。
入選 すーちゃん・百代・佳楓
4点句 独り居に慣れて気任せ古茶新茶         百代
(蒼鳩 薫入選)一人となった今日、人生を肯定的に受け入れ、なすがままに生きようとする、作者の気持ちが、一杯のお茶から感じられる。香り豊かな新茶だろうと思う。
入選 帰心・佳楓・オリーブ
3点句 瑠璃色の切子グラスや夏を飲む        こう子
(ビビサン特選)句の第一印象としては本当にきれいな句だと思いました。鮮やかな瑠璃色が映えます。また下5の夏を飲むと表現されたところにも、作者のセンスの良さが表れていると思います。
(純子特選)お気に入りのグラスでしょうか。繊細なグラスで豪快に夏を飲むと読みとれて良かったです。
入選 けい香
3点句 土俵場の残る境内春落ち葉           純子
(百代入選)先の連休に、一時期住んでいた豊田市を次男と三十余年ぶりに訪ねたところ、昔遊んだと言う鎮守の杜に、まさにこの句のような風景があり、感慨に浸ったところです。
入選 冬青・康子
3点句 藤房の静かに揺れて日に透けて        みな子
(蒼鳩 薫入選) 藤の花は華やかさがあるが、作者には思い出深いものであろう。なにかしら、静謐な諦観のようなものを感じる。美しい句である。
入選 ビビサン・オリーブ
3点句 オリーブの花ほおづえが似合う君      オリーブ
入選 すーちゃん・けい香・康子
3点句 ジューシーに揚がる豚カツ麦の秋        佳楓
入選 冬青・純子・こう子
2点句 風光るサスペンダーは真田紐       すーちゃん
(みな子特選)真田紐(さなだひも)を使ったサスペンダーの粋なところが素晴らしい。風光るも明るい。
入選 佳楓
2点句 ガラス粉のやうなうぶ毛や今年竹        冬青
入選 康子・オリーブ
2点句 色違ひ交換の種蒔きにけり           純子
入選 百代・ビビサン
2点句 半地下の窓とりどりの初夏の脚         冬青
(みな子入選)半地下から見上げる明るい脚の様子が見えてくる。
入選 彰
2点句 春愁の身を職安の窓口へ            帰心
(佳楓特選)春愁の身をいかにされたかと案じましたが、職安の窓口とは意外でしたが、そうだ、今のコロナ禍では、さまざまな理由で、職を失う方がたが、沢山おられますよね。職安の窓口に身を預けるが良かったです。
入選 ビビサン
2点句 黒塀に花街の名残かきつばた          百代
入選 彰・ビビサン
1点句 海坂(うなさか)を見つめる老や潮干待つ     彰
(康子特選)海坂という言葉に惹かれて頂きました。大きな干潟が現れるのを待つ老人の、おおどかな景が浮かびます。
1点句 折々に諭す言葉や若緑            けい香
(帰心特選)たしかに枝から伸びる若緑(松の芯)は、人を諭すときに垂直に突き立てる人差し指のように見える。しかも松の芯は何本も伸び出ている。それが「折々に」という措辞とみごとに響きあっている。
1点句 万緑や菜食主義の独裁者         すーちゃん
(こう子特選)菜食主義の独裁者の表現が面白いと思いました。イメージとして独裁者は強くて肉食系を想像しますが菜食主義の独裁者とは… 誰のことかしら?
1点句 蕃茄熟す溢れるほどの種秘めて       ビビサン
(オリーブ特選) オリーブ密やかでありながら、同時に情熱的なエネルギー、内なる宇宙の美しさを感じます。
1点句 下校の児歩く姿や葱坊主            泥舟
入選 けい香
1点句 予約成るワクチン接種針槐(はりえんじゅ)    彰
入選 純子
1点句 肩すれすれ水面すれすれ燕とぶ       ビビサン
(みな子入選)燕の元気よさと人間を恐れない感じが、肩すらすら水面すれすれに感じられる。
1点句 乾パンの疾うに古びて春深む          康子
入選 純子
1点句 叱られてまた叱られて名草の芽        けい香
入選 彰
1点句 青楓寺寺由緒誇りけり             冬青
入選 すーちゃん
1点句 フェンス越しアスパラガスのもう二尺      純子
入選 オリーブ
1点句 軽暖の散歩シューズはお揃ひで         帰心
入選 こう子

〈俳句気まぐれエッセイ② オスとメス 〉   今泉 かの子
今年は蕗の薹をよく採った。二回だけだが、百個以上。自分が好きだからというより、今年はほしいという人がたまたまいて、送ったりした。採り出すと次々に見つかり、案外おもしろい。
以前、蕗の薹にも雌雄があると、隣家の奥方に教えて貰った。先が黄色っぽくて丸いのがオス、白っぽいのがメスらしいが、判別はどうも自信がない。とはいえ、そこは気にしない。気にするのは、蕾の太り具合と開き具合。
蕗の薹と同じ地下茎をもつ、兄弟のような蕗は、五月に入ってから採る。山の家の友人、ともちゃんは「蕗を引く」という。今年はカッターを使って蕗を引いた。力を使わなくてもスッと切れる。蕗の葉に囲まれながら太い茎を見つけては次々と。これまた案外おもしろい。
最近、この蕗にも雌雄があると知った。これは種類の違いを例えているらしい。茎の芯に穴が空いていて、太めのシャキシャキ君がオス。根が赤っぽく灰汁(アク)が強い、もくもくちゃんがメス。
雌雄の違いはあれど、いずれもおいしい。山の香、山の味である。
ひとすぢを貫き通す蕗を煮る             かの子



第10回若竹ウェブ句会(2021年4月募集)

若竹ウェブ句会も、新規参加者が毎月あり、少しずつ軌道に乗ってきた感じがしています。不慣れな方には、電話や対面で操作法を確認してきましたが、夏雲システムのおかげで、句会自体は管理人がノータッチで進行しています。人数制限はありませんので、引き続き、乞うご参加です。

また、今まで三句投句、五句選でやってきましたが、今後、兼題設定や選の在り方についての検討、さらに若竹行事との関連イベント等も視野に入れていけたらと考えています。皆さん、どうぞご意見をお寄せください。


(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)

5点 先生の笛海へ鳴り磯遊び           ビビサン
(百代特選)海辺の小学校の野外活動でしょうか。引率の先生が吹く「はじめ」の合図の笛が海風に乗り、我先に駆け出して磯遊びに興ずる子らの弾けっぷりが目に見えるようです。
(みな子特選)海へ鳴りが良い。明るい海に向かう解放感がある
入選 彰・佳楓・すーちゃん

4点 表札に英字の名前エリカ咲く          こう子
入選 帰心・ビビサン・彰・けい香

4点 啓蟄の土蹴り上げて逆上がり           佳楓
(みな子入選)啓蟄の日らしい、生き生きとした逆上がりだと思う。
入選 ビビサン・けい香・彰・みな子

4点 茶畑を託すと決める春の霜            純子
(ビビサン特選)茶畑を長年守ってこられた方の代替わりの決心でしょうか?  切なくもあり、淋しくもあり、安堵でもあり、春の霜に心情を託されたことが成功していると思いました。
(こう子特選)時ならぬ春の霜が降り、自身の身の退き際を決心すると言う句。人は現役を辞する時が必ず来ます。その時の感情がよく詠まれていると思います。
入選 百代・すーちゃん

4点 春光にかざす傘寿の生命線            佳楓
(康子特選)あと何年寿命があるかしらと、春の光に手をかざしてみる、そんな作者のやさしい景が浮かびます。
(みな子入選)若々しさを感じる。年をとるのもよいものだと思える。
入選 けい香・こう子・みな子

3点 夫逝きて鋤き残されし葱坊主           百代
(佳楓特選)鋤き残されし と言う表現が、何とも切なく御主人に先立たれた、作者の悲しみと残された葱坊主の寂しさが重なって表現されていて、余韻に浸る御句でした。鋤き残されたのは、実は作者自身だったのですよね。
入選 帰心・康子

3点 縮緬のごとき水面や春の雨            康子
(葉月特選)春の雨の様子を縮緬に例えられた辺りが同感できるのでいただきました。
入選 帰心・佳楓

3点 一枝は地にも触れたり糸桜           こう子
(帰心特選)糸桜(枝垂桜)は、寿命の長い桜。その横溢する生命力を「地にも触れたり」という措辞で見事に表現されています。
入選 ビビサン・康子

2点 古稀まじかまだ理想追う松の芯         けい香
(純子特選)松の芯と、変わる事なく理想を追い続けているという事が素晴らしいと感じました。古稀という具体的なのもいいと思いました。
入選 彰

2点 溶けるよな潮に身浸し浅蜊掻く           彰
入選 ビビサン・佳楓

2点 宇宙船現れそうな月朧            ビビサン
(みな子入選)ぼんやりとした朧の中に、現れた宇宙船もぼんやりと切実感がないのが良い。
入選 康子・みな子

2点 目借時洗い残しの碗二つ             帰心
入選 康子・純子

2点 保護者もういらぬ子となり桜東風       ビビサン
入選 百代・こう子

2点 診察は二分春一番を来て             佳楓
入選 純子・すーちゃん

1点 又夢の中と想へば花の中             冬青
(彰特選)いつも良い夢を見られるようですね。私は現実の世界は平穏ですが、夢でしばしば昔のしくじりにはっと目を覚まします。獏を飼わねば。

1点 山笑う浜のラジオに波の音            泥舟
(すーちゃん特選)浜に置いてあるラジオから波の音が聞こえてくる、確かにありそう、でも取り合わされて感じる意外性。本物の音が聞こえる場に機器を通しての音が聞こえ、楽しい。季語が大きな景を生んで、おおらかな感じがまたグッド!

1点 春夕焼三本脚の猫囲む              純子
入選 すーちゃん

1点 ひとひらのさくらダビデの礫かな      すーちゃん
入選 みな子
(みな子入選)花びらが礫となるイメージが良い。花びらが飛んでいくのが。

1点 千年の楠目を見張る芽吹きかな          冬青
入選 こう子

1点 鳥来たりそこのみはらり桜散り          康子
入選 百代

1点 老ふうふ容姿似かよふ花の昼           康子
入選 百代

1点 清明や抹茶茶碗にうしほの句           帰心
入選 佳楓

1点 錠剤の三粒手にあり夕燕            こう子
入選 けい香

1点 轟(どめき)駅の一本桜花盛り         みな子
入選 帰心

1点 灰汁かすか水に残して独活白し          百代
入選 こう子

1点 色見本三枚届き水ぬるむ          すーちゃん
入選 純子

〈俳句気まぐれエッセイ① 藤の花〉      今泉 かの子
今年は藤も早かった。三月末には房がふくらんで、あちらこちらへ伸びていた。植物というより幼虫めいて。四月上旬にはまこと天晴れな咲きっぷり。然るに、クマ蜂の羽音が聞こえない。毎年うるさいほどなのに、小さな異変。花が乾き出した頃になってやって来た。食い違うタイミング。そして四月末、庭には花殻がびっしり。小さな虫の殻のように散り零れた。
藤棚をゆらゆらくぐる妻の影       秋順 
藤棚の下の暗さが、動きのゆれと相俟ってミステリアスな影にしているようで、愛妻家ですね、と申し上げたら、数年前に他界されたという。
藤棚の下には、植物とも動物とも違う、異世界の藤の精がいてもいいと思う。



第9回若竹ウェブ句会(2021年3月募集)

第八回ウェブ句会の談話室の一部ご紹介
今回は、夏雲システム利用の第八回「談話室」において、帰心さんと彰さんのやりとりの一部をご紹介し、確認されたことを報告します。
☆投句された全句の表示について
彰さんより
〈結果公開で点の入らなかった句もすべて表示すべきか、という件ですが、結果公開画面のメニューバーに「句一覧・得点順・談話室」があり、その右上の「エクスポート」をクリックして「印刷用清記表を表示:作者名あり」をクリックで全ての句が表示されます。私の場合ですが、点の入らなかった句が人目にさらされるのはちょっと…という感じを持ちます。逆にできの悪い子ほどかわいいという気持ちもないわけはありません。だから、ちょっと手間をかければ全句がわかるという現在の状態でいいのではないかと思います。〉
☆その他の機能について
帰心さんより
〈「エクスポート」を開くと、上の方に「会報」があり、これをクリックすると句会の結果をきれいにレイアウトした「会報」がPdfで見ることができますね。(ダウンロードも可)。この機能もなかなかのスグレモノですね。〉
☆談話室開設について
各回の句会が「結果公開中」になってから、その句会に付属の談話室が開設される。(「投句期間中」や「選句期間中」に談話室で会話が交わされると、投句者の推定等で選句の公平性に影響を与える恐れを配慮してのことと納得)


(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)

5点 春塵を払いひとつの迷い断つ         ビビサン
入選 けい香・みな子・帰心・こう子・康子

5点 草の名の遅れ出でけり老いの春         冬 青
(康子特選)名前が遅れて出てくるのは、よくわかります。でも、思い出した時のスッキリ感は、良いじゃありませんか。老いの春を、ゆったり楽しみましょう。心に響く句です。
(百代入選)この草はさて何という名前だったか。とっさに出てこなくても、後から思い出せて良かった。温かさが感じられる句です。
入選 けい香・彰・すーちゃん・百代

4点 満ち潮の力に乗せて浅蜊籠           こう子
(純子特選)浅蜊籠を潮の力で引き上げる漁師さんの様子が浮かびます。
入選 みな子・帰心・冬青

4点 表裏タグ確かむる苗木市            百 代
(こう子特選)木に付いているタグは、絶対表裏確かめますよね。自分自身の動作の記憶として、また苗木市での皆さんの行動として、その景色がはっきりと浮かび上がります。ほんの一瞬を切り取られていて共感いたしました。
(ビビサン特選)苗木に付けられているタグには 値段の他、育て方のアドバイスなども書かれているのでしょう。中7の作者の動作から市の様子が見えてきます。
入選 帰心・康子

4点 埋め尽くす寄せ書きの文字鳥雲に        帰 心
(けい香特選)送別の寄書きでしょうか、埋め尽くす文字にその方への情愛が感じられます。季語も的確で、元気でね、又会いましょうの気持ちが染々伝わってきます。
(すーちゃん特選)寄せ書きの言葉は、思い出や感謝、餞など人と確かに繋がっていた温もりを感じるもの。その文字は雲間に見える小さな鳥の影と重なり、やがて鳥はいつか見えなくなります。残された広い空と寂しさが漂う余韻の一句。
(彰特選)遠い昔の卒業の寄せ書きを思い出します。それぞれの志が雲間に飛んで行って、いろんな人生を歩んだことでしょう。
入選 ビビサン

3点 燥(はしゃ)ぐ娘(こ)のテニスラリーや初雲雀  泥 舟
入選 けい香・すーちゃん・康子

3点 かるた部のポニーテールやうららけし    すーちゃん
入選 帰心・こう子・彰

3点 たよりなき四肢で駆け出す春の駒       ビビサ
(百代特選)産まれたばかりで四肢もまだたよりない仔馬が、立ち上がりざまにもう駆け出そうとしている。走るために生まれてきた馬が目指す先に、開かれた希望が見えるようです。
入選 こう子・冬青

2点 背に気配紅き椿の落ちにけり          康 子
(みな子特選)自分の後ろに椿が落ちた一瞬をとらえた句。それも赤い椿だったという。大きな赤い椿がゆっくり落ちていくのを、振り返って見ている作者が見えてくる。
(百代入選)背に何かの気配がして振り向いた目の先に赤い椿の花が落ちていたという、感覚で捉えられた一瞬の情景が鮮やかに浮かびます。

2点 遥かなる祖先の声や春の海           けい香
入選 彰・ビビサン

2点 棟上げの木の香ふくいく立春大吉        冬 青
入選 康子・純子

2点 見つめ合うことなき日々や内裏雛       ビビサン
入選 すーちゃん・冬青

2点 海外へ送り状書く雛の市            こう子
入選 純子・ビビサン

2点 啓蟄のこゑ寅さんの啖呵売           帰 心
入選 こう子・純子

2点 JAF(ジャフ)呼びて仰ぎ見る枝木の芽張る   彰
(冬青特選)気持ちが動転して周りが見えなかったのに、JAF と連絡がとれ、ほっとした目に映った鮮やかな木の芽が、上手く表現されている。
入選 みな子

2点 春寒の眼科待ち合い三時間           みな子
入選 けい香・百代
(百代入選)春先の眼科はいつにも増して混雑する。待合室に3時間もいて外に出たら、ぶり返した寒さがさぞ身にしみたことでしょうね。

1点 初音かな奈良広陵町馬見北           百 代
入選 彰

1点 乙女椿や主菓子(おもがし)も其の色に     帰 心
入選 純子

1点 あたたかな雨の夕暮あいらぶゆ         けい香
入選 すーちゃん

1点 囀(さえず)りや子供素早くかくれんぼ     泥 舟
入選 みな子

1点 薄氷のえびせんべいの固さかな         康 子
(百代入選)入選薄氷に足を乗せたら、パリンと音を立てて氷が割れた。その氷はえびせんべいの固さだったというたとえに、子どもの頃の情景が懐かしく思い出されました。

1点 靴箱の靴出してをり道は春         すーちゃん
入選 ビビサン

1点 凄まじや嬰も泣き出す猫の恋          けい香
(帰心特選)特選赤ちゃんには、動物の声、まして恋猫の声への「免疫」など、まだありません。いろいろな声、音への免疫ができていくことを「成長」と呼ぶのですね。

1点 堀を気ままに潜って浮いて春の鴨        みな子
(冬青入選)見ている人も泳いでいる鴨ものびやかに春を楽しんでいる!

 



第8回若竹ウェブ句会(2021年2月募集)

ウェブ句会について二月末時点でのご報告。八回目を迎えたこれまでの登録人数は約二十人。新しく加わる人も毎月いる反面、うまく加われない人も出てしまいました。新しく導入した「夏雲システム」は、スマートフォンの操作に不慣れな人にとっては、ハードルが高いものになってしまったようです。投句がうまくできず、来月チャレンジ、と先送りされたり、また、投句はできても選句ができず、見送られたり。ここで改めて、ポイントを確認します。

★参加にあたっての必要な操作。詳細は個人設定をする方法(見本例)参照

  1. 夏雲システムに自分のメールアドレスを登録する。
  2. 自分のスマートフォンやタブレットで、夏雲システムから送信されるメールの受信を許可する。(メールの返信が来ない場合は、スマホ等の設定で受信拒否となっている場合があります。)

最初の立ち上がりは手間取るかもしれませんが、一度設定できれば、あとはスムーズに参加できます。また、談話室では意見交換もできます。多くの皆さんとともに育てていきたいと思っています(困ったら、今泉かの子までご連絡ください。)。


〈得点結果〉特選1点入選1点で集計。(@はすーちゃんのコメント)

6点 色増えてゆく如月の花時計          ビビサン
@花時計の針にしめされる時刻と、土台の花の開いていく経過時間と。時の流れの一点と帯のような時間枠。気、更に来るも自ずと重なる二月です。外気に冷たさはあるものの、少しずつまばゆさを増してゆく、二月の光の華やかさを感じます。

5点 太巻きを齧りて冬を締め括る         ビビサン
@今年の恵方は丙(ひのえ)。恵方へ体を向けて、巻き寿司を無言で食べると、縁起がよいとか。きっと作者も、南南東の方角を向き、福を巻き込む恵方巻きを召し上がったのでしょう。「締め括る」に、節分の日のけじめのような思いを感じます。

4点 子犬くる寒の憂いを蹴散らして         純 子
(彰特選)寒の憂いは作者、元気に走ってくる子犬がその憂いを蹴散らしてくれると理解しました。子犬の足の動きのかわいらしさが目に浮かびます。
(康子特選)重苦しい空気を、明るくしてくれる愛らしい子犬の様子が伝わってきます。「蹴散らして」が一気に変わる感じで良いですね。 

4点 段ボールの秘密基地とや春めいて        こう子
@集められた段ボールは、ただの段ボールにあらず。ここは、何かが始まる、何かが動き出す、子ども等の活動拠点。「とや」のおぼろげな言い回しと「春めいて」の春らしい気配になる感じが微妙に呼応しています。子どもの頃の懐かしい記憶が蘇りました。

3点 厚氷裏に動けるもののあり           こう子    
(オリーブ特選)単に情景が浮かぶだけでなく、何かの暗喩や象徴かなど想像力がかきたてられます。

3点 水餅の味のことなど母と午後          帰 心
(涼特選)ほのぼのとした空間を見事に捉えられた佳句ですね。

2点 冬日向ふたごふたくみ足八つ          康 子
(けい香特選)題材の面白さとリズムが良いと思います。季語の冬日向が句全体を温かく包んで幸福な気分になれる句ですね。
(すーちゃん特選)数詞の並ぶ楽しさ、リズムの良さを感じます。冬の陽射しの温もりと読んだ響きの柔らかさも呼応しているようです。赤ちゃんを日向ぼっこさせながら、その成長を確かめているような母親、家族の姿が浮かびました。

2点 日だまりを住みかに撰び花アロエ        けい香
(こう子特選)アロエの花の咲いている光景が浮かんできます。多年草のアロエはいつも同じ場所の日だまりに毎年咲くのでしょうね。

2点 うららけし外出阻む見えぬもの         冬 青

2点 立春を過ぎて陽射しの強気かな         こう子

2点 捨て鉢で自転車を漕ぐ春の闇         オリーブ   

2点 点滴の傷を数へて春愁ふ            ひさこ

2点 凍て雲よ手術近づきわななく手         ひさこ
(ビビサン特選)下五のわななく手 この表現に作者の心中がよく表れていると思います。凍て雲に向かいこれからの手術に心を寄せて、未来への期待と不安と・・・大丈夫だよ、励ます回りの声まで聞こえてきそうです。

2点 老いてなお紅き唇冬薔薇            けい香

2点 語り部の住まひし小屋の雪庇かな         涼
(帰心特選)「語り部」「小屋」「雪庇」ーこれだけで何かドラマが生まれそう。優しいけれど芯のある声の細身の方、食事は、一汁二菜…. とかどんどん情景が浮かんできます。

2点 春耕や有機鋤き込み平らかに           彰
(純子特選)コメントがありませんでした。

1点 チョコレート携えひらり春ショール      オリーブ
(みな子特選)春らしい軽やかな句、チョコレートをバレンタインに用意している心の弾みが感じられる。ひらりも軽やかでいい。

1点 魚氷に上る指輪ケースにビーズの輪     すーちゃん

1点 ひらひらの転生蝶は生まれ来る        ビビサン

1点 雪降れり傘を斜めに歯科通ひ          康 子

1点 店頭の消毒ボトル春を待つ           ひさこ

1点 家の音家の匂いや春まぢか           けい香

1点 一二(いちにい)と鶺鴒発(た)つや春の空   泥 舟

1点 パンデミック人の世の事落葉かき        冬 青

1点 ぶらんこの揺れる一寸先は闇         オリーブ

 



第7回若竹ウェブ句会(2021年1月募集)

〈得点結果〉特選1点入選1点で集計。(@はすーちゃんのコメント)

6点 古手ぬぐい裂いて白菜結はへけり     こう子 
(純子特選)古手ぬぐいが良かったと思います。情景が見えるようです。

5点 冬の夜や句は鶴の機(はた)織るように   彰
(みな子特選)真面目な作句の姿勢がよく出ている。鶴が自分の羽根を織り込むように、自分の中の何かを生かしたいという。
(オリーブ特選)自分の思いや経験を一つずつ紡いで作る作句を、自分の羽を抜いて布を織る鶴の機織りになぞらえるセンスが素敵です。羽を抜く痛みも想起され、季語とマッチしていると思います。

4点 列島をまんまと抱え大寒波        こう子
(ひさこ特選)「まんまんと抱え」という表現方法が、とてもユニークで、いいと思います。今の季節にピッタリです。
(ビビサン特選)中七のまんまと抱え、この表現に魅力を感じ特選にしました。寒波に悲鳴を上げているのは人間の都合、冬将軍の笑い声が聞こえてくるような句だと思いました。

4点 初夢や会いたき猫は現れず        みな子
(彰特選)「会いたき猫」がいかなる猫か気になります。その後の夢で現れたでしょうか。

4点 一塊の土叩きつけ窯始         ビビサン
(涼特選)ダイナミックな表現ですね。

4点 居眠りも特技のひとつ暖炉燃ゆ     ビビサン
@リラックスした気分と適度な暖かさがまどろみを誘います。こんな風に穏やかに心を開放できるのは、やはり「特技のひとつ」。肯定的なとらえ方と赤々と燃える暖炉と。気持ちの良い空間に、時は緩やかに流れています。

4点 侘助や同じ話の繰り返し         康 子
@侘助は葉も花も小ぶりな椿の一品種。繰り返される同じ話。聞くたびに繰り返される同じ思い。全開しない咲き方が魅力の花ですが、その名前の響きのせいか、掲句からはさびしいような、何か心もとない印象も受けます。                                  

3点 何か買って帰るしかなし寒の街      みな子
(帰心特選)身も心も縮こまっている寒中の帰途。思考は停止状態。家には何も食べるものがなく、まさに「何か買って帰るしかなし」。さあ、何を買おうか?―とぼんやり歩いている。うーん、こんな日、確かにある!

3点 ささくれる心を癒す焚火かな        涼
@焚火の炎は生きもの。風にゆらめき、時に高く時に暗く。その移ろう様を見ていると、心もいつの間にかほぐれて…。

2点 春待つや聞き取りにくし母の声      容 子    
(こう子特選)コロナ禍の現在、ガラス越しだとか、仕切り板越しだとか、またマスクを皆付けている状態では、老人との会話は、聞き取りにくいことでしょう。早く元の会話が出来ることを春を待つに重ねている句と読みました。

2点 薔薇の芽や心躍りし頃のこと      オリーブ
(容子特選)この句を読んだ誰もが、心の中の「心躍りし頃」の引出しを久々に開けてみたのではないでしょうか。そんな読後の「ちょっと嬉しい余韻」に浸れる句。

2点 芹なずな七草の名ですきなのは       彰

2点 初詣客を誘ふいなり寿司         ひさこ

2点 入院の覚悟を決める冬の雨        容 子

1点 傷み激し任天堂の歌がるた       ビビサン
(康子特選)毎年、お正月に家族揃ってのかるた取りによる経年劣化か、または、競技用かるたの激しさ故か、はたまた、片付け物をしていて奥から古いかるたを見つけたのか…想像の膨らむ一句です。

1点 蝋梅の香も伝へたし絵手紙で       容 子

1点 からからと笑う女(ひと)いて蜜柑剥く  純 子

1点 ラデツキーの手拍子の無きニューイヤー  康 子

1点 初写真いつも真中(まなか)は孫二人   ひさこ

1点 コロナ禍の句会思案や冬ざるる      帰 心

1点 冴返る爪先立ちのアイライン      オリーブ

1点 ゴミ捨てに出て知る寒気の重さかな     彰

 



第6回若竹ウェブ句会(2020年12月募集)

〈メッセージ紹介〉 
投句について寄せられた声を紹介します。

  • 義士の日や鳥居利右衛門吉良の義士

「長篠の戦いで磔にされた鳥居強右衛門は、吉良の義士なのでしょうか」というご質問を頂きましたが、これは、「利」と「強」の取違いとすぐ判明しました。が、この利右衛門について、作者の彰さんより詳細なメールを頂きました。

鳥居利右衛門については「上野介の忠臣蔵」(清水義範著文芸春秋社刊)に拠ります。この本は主に清水一学(宮迫村の百姓)について書かれたもので、鳥居利右衛門は岡山村の士分のものの息子とあります。この小説によれば二人は華蔵寺の和尚に見こまれて同時期に吉良家江戸屋敷に出仕したようで歳の差は利右衛門が4歳くらい上とありますが、利右衛門が討入りでなくなった時、役職「用人」で熟年期だったようです。また「利」と「理」が混在していますが一般的に後者で、正しくは前者のようです。

ということでした。作者は、吉良びいきということではないそうですが、鳥居理右衛門につながる家系だと信じる人と偶然知り合いになったことから作句に至ったとのことでした。

  • 気象士の棒の振幅寒波くる

「下五「寒波来る」→「寒波急」とした方が、臨場感や気象士の動きなど、読み手は想像しやすいのではないだろか。」というご意見が届きました。確かに「急」の漢字が句末にくることで生まれる緊張感も効果のひとつです。

この声に対して、「くる」としたのは「下五については漢字が続き、印象が固くなるのを避けたい」ということでした。作者なりの意図があり、選ばれた表現だったようです。ご意見をお寄せ頂き、ありがとうございました。

  • 悴む手悴む心によりそいて

解釈の仕方について「傷つき悴む心に寄り添う句、それとも実際に悴む子の手を擦り暖めている句なのだろうか」という声がありました。季語「悴む」は「寒さのために身も心もすべてのものが縮こまった状態」どちらにも解釈は可能でしょう。読み手によって、ひろがる幅をもった句なのでしょう。


(三句投句、五句選。内、一句特選でコメント記載@はすーちゃんのコメント)

〈得点結果〉特選1点入選1点で集計。

6点 気象士の棒の振幅寒波くる          涼
@気象予報士の持つ指示棒の動きと、波のように周期的に押し寄せる寒気団の動き。気圧配置図を指す棒のふり幅の視覚的な動きから、急激に襲う感覚的な寒さに連想が及ぶ。

5点 「またね」から続く話や藪柑子      けい香
(彰特選)電話でしょうか、顔を合わせてでしょうか。話が続けたくなる人と居ることは幸せですね。

5点 もしや母有袋類か日向ぼこ       オリーブ
(けい香特選)何度読んでもクスリと笑ってしまいました。アニメの世界のようで母君が有袋類に変化していく様子が見えるようです。日向ぼこで現実に戻れて良かったです!?
(はーちゃん特選)有袋類と発想されたのが楽しく笑ってしまいました。眼差しに暖かさを感じます。

4点 はらわたはこのような色鵙の贄     ビビサン
(晶子特選)観察力が鋭く、危うげなことを微妙に巧みに表現している。

4点 毛糸編む過ぎ去りし日々埋めるごと    か な
@毛糸を編みながら、蘇る遠い日々の記憶。編み棒(針)を動かす手から毛糸が形となっていくように、また思い出も暖かく作者の胸に紡がれていく。

3点 初鏡わたしのためのハイヒール     オリーブ
(ビビサン特選)自分をしっかりと持った女性の句だと思いました。自分の足に合った靴にはなかなか巡り合えないもの。このハイヒールはオーダーメイドかも。初鏡との取り合わせも効果を最大限に引き出しているように思えます。

3点 銀色の冬芽健やか通学路          晶子
(帰心特選)健やかに冬芽の育つ通学路には、同じように健やかに育つ児童たちが歩いていくのでしょう。希望溢れる一コマ。

3点 雑踏のマスクにマスク紛れ込む     ビビサン
@顔の下半分を隠すマスクは表情が見えにくく、感情がわかりにくいもの。マの韻が効果的に配置され、句の背後にマスクがもつ仮面の意味も感じられる。

3点 寒木瓜の朱さに負けぬ恋心        けい香
@花の少ない冬に、ひときわ目につく寒木瓜の花。白や絞りなど鮮やかな色が多いが、恋心の強さを表すのはやはり赤をもってして。冷たい風にも負けない恋心。

2点 短日や農夫スコップを畑に立て      泥 舟    
(涼特選)ミレーの風景画を想起致しました。とても素敵な句ですね。
(康子特選)もう少し畑仕事がしたいのに、もう日暮れ。農夫の嘆きとため息が聞こえてきそうです。

2点 悴む手悴む心によりそいて        けい香
(ひさこ特選)「悴む手」「悴む心」のリフレインの効果はいいと思う。全体的にリズミカルで寒い季節に合っていると思いました。

2点 夫好む煮くずれ大根ポンと出す      ひさこ
(容子特選)言葉は少なくとも「ポンと出す」ところに愛情と、長い年月を経た夫婦の関係性が見えて面白い。「煮崩れ大根」は私も好き。

2点 冬の空同調圧力てふ重み         帰 心
(オリーブ特選)日常生活で感じる様々な同調圧力に、寒々しく乾燥した冬の空が相俟って、共感を覚えます。

2点 湯タンポを陣取る猫の重重し     はーちゃん
(こう子特選)猫のふてぶてしい様子がよく詠まれていると思います。年をとった丸々と太った何にも動じない猫が見えてきます。

2点 寒暁を車内明るきバス走る        康 子

2点 石蕗咲や遺書を書いたと母の言ふ     容 子

2点 山茶花の散り乱れては地の色へ      康 子

2点 ひとりゐの身に入むハービーハンコック  帰 心

2点 しつけ切る形見のはさみ七五三      こう子

2点 稲妻やちゃんと口論させて欲し      帰 心

1点 小春日や試しバリカンまず父で      容 子
(みな子特選)暖かい冬の日に、バリカンを使い始めるのに、まず父の頭を使って試すというのどかな情景が浮かぶ。

1点 木の葉散る少し遅めの朝ごはん      こう子

1点 十一月尽満月大きくほんのりと      みな子

1点 箸持つも億劫となり冬籠        オリーブ

1点 鳴り止まぬサイレンは何処霜の朝     容 子

1点 また一人帰らぬ旅へ冬初め        康 子

1点 晩節てふ言葉の重み牡丹焚き       か な

1点 クリスマスはやぶさ2(ツー)の玉手箱  ひさこ

1点 わんぱくは落ち葉蹴散らし反抗す    ビビサン

1点 婆ひとり日めくりめくる冬座敷      ひさこ

 



第5回若竹ウェブ句会(2020年11月募集)

先月(十月)の〈別れなのさっと一刷毛秋の色〉涼さんの俳句の解釈について、さまざまな声をいただきました。

  1. 「別れなの」は「分れなんです」という女性が自分自身に言い聞かせている感じ、その気持ち。上五、中七、下五がそれぞれ独立したような三段切れになっている。
  2. 「別れなの」は第三者が「もう別れた方がいいよ」という意味の「別れな」に「の」がついている。
  3. 「別れしな」の意味の「し」が省略された形で、別れ際という意味。
  4. 「別れなのさ」で切れて、その気持ちの流れで「一刷毛(ひとはけ)」につながる。

といろいろなご意見があり、涼さんに確認したところ、作者の意図としては、1の意味で作句されたそうです。「秋の色」は秋景色、秋の風光を賞美する意で使われている季語。中七の「さっと一刷毛」は、実は掛け軸の滝の勢いからイメージされたそうです。皆さん、ご意見ありがとうございました。


今回(十一月)の選句も互選で行いました。
(三句投句、五句選。内、一句特選でコメント記載)
得点結果 特選1点入選1点で集計。
@は、すーちゃんのコメント。

9点 冬ざれや心に抜けぬ刃あり        けい香
(こう子特選)この刃をぬいたら最後…ということ人生の中にはままあると思います。そしてそれは抜かれぬまま心の奥にしまわれる。端的に心の内の一塊を詠まれた句だと思いました。また、この刃は刺さったままの抜くことの出来ない刃なのかと鑑賞いたしました。どちらにもとれますかね。

7点 蜜柑むく幼の爪の薄きこと        けい香
(涼特選)優しく鋭い観察眼になによりも惹かれました

6点 包丁のすぱりと切れる初冬かな        涼
(みな子特選)すぱりとという切れ味の良さが 初冬の緊張感とあっていると、思います。
(桜子特選)すぱりが効いていると思います。

6点 なにもかも無きことにせし焚火かな    ぶっち
(彰特選)日記や手紙を燃しているのか、炎に新たな決意を確かめているのか。

4点 神無月あさぎまだらを追う旅路    はーちゃん
(容子特選)時には海を越えて長旅をする「あさぎまだら」。見つけたらとてもラッキーで、その群れを追いかけたい気持ちも分かる。もしかしたら神様もあさぎまだらを追って出雲まで旅したのだろうか?季語「神無月」が、あさぎまだらをより神秘的にしている。
(オリーブ特選)ミステリアスで詩的な雰囲気が季語と響きあっていて美しいと思います。

3点 子を打ちし我の記憶に雪しまく      こう子
(はーちゃん特選)句で表現できる事が、沢山ある事を知りました。若かった頃を思い、胸に響きます。

3点 紋付で形(なり)は着流し尉鶲(じょうびたき)  彰
(ひさこ特選)「紋付で」からは、古風な着物を。「形は着流し」は、若侍かと想像してたら、「ジョウビタキ」という鳥だという事が分かりました。とても面白いと思いました。

3点 女子駅伝胸元薄し秋澄めり        晶 子
(ぶっち特選)スポーツの秋、さわやかな様子が目に浮かびます。

3点 寒いねとスマートフォンに囁けり       涼
@俵万智の〈「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ〉は今から三十年以上前の歌。今やスマートフォンに話しかければ「寒いですね。私もカバーを重ね着したいです。」なぞと答えてくれる時代。今を映す現代の一句。

3点 ひよが実をこぼして殖える小さき庭    けい香
@〈鵯のこぼし去りぬる実のあかき 蕪村〉〈鵯は実を人は煙草をこぼし去る 岩岡中正〉は、ひよどりが実をこぼした場面を詠んだ句。掲句はそのこぼした実から、さらに時間的経過を含んだ意味内容。うるさいほどの鵯の鳴き声と、「こぼして殖える」のにぎやかさとの重なりも背後に感じられる。

2点 秋蝶や石段駆ける若き足         康 子
(晶子特選)石段を舞台に下り行くものと上がり行く者を上手く表現している。

2点 あやすのは夜なきする猫虎落笛     オリーブ
@虎落笛は、冬の烈風が柵などに吹きつけてヒューヒューと発する笛のような音をいう。猫も人も同じ。この猫はまだ幼く、母を恋うているのだろう。母のいない子猫に寄り添う作者。冬の夜の厳しい風の音にいっそう切なさが募る。

2点 水散らし羽音の重き冬雀         康 子
@冬の明るい陽ざしの中、水浴びをしているのか、水飛沫は光に輝くも、その羽音に重さを感じた作者。繊細な感覚でとらえた一句。

2点 健診に抱く子の重み涼新た      はーちゃん
@いつも抱いている子の重みを明確な数字で確認する健診。子の成長を再確認し、実感するとともに、秋になって新たに感じる、しみじみとした涼しさ。

2点 俯いた誰そ彼時の冬帽子        オリーブ
@夕方の、人の顔を見分けがたくなってきた頃、下を向いた人影に冬帽子の輪郭が、はっきりと目に映ったのだろう。寒さを防ぐ冬帽子のシルエットが夕闇に浮かんでいる。

2点 じたばたと医者に行く道秋桜       容 子
@医者へ行く必要をみとめながら、避けていたという状況だったのだろうか。「じたばた」から、抵抗むなしく、医者へ行くことにし、あわてながら道を急ぐ、そんな様子が浮かぶ。秋桜も風にやや乱れ咲いているのだろう。

2点 暫くは風音しきり冬庵            涼
@風音に耳を傾けているしばらくの間、そして、今は静かな時が流れる冬の庵。風音を言いながら、静かさを詠んだ一作。

1点 我が庭のひととき萩の黄葉して      みな子
(康子特選)柔らかな秋の日差しの中に、萩の葉が黄色く映えて揺れる。まるでスポットライトが当たっているよう。心安らぐ素敵な一句です。

1点 家史に足す何事も無く冬初め         彰
(けい香特選)何事もないのが平穏というもの、作者さんもその幸福に満足していると思います。冬初めの季語に人生も感じられて、私も斯くありたいと思いました。

1点 秋日和ホームの庭に肉の香よ     はーちゃん
(帰心特選)コロナ禍で、ホームに入所している方々は家族の面会ができない。そうした方々にせめてバーベキューで楽しんでいただこうと、スタッフの方が肉を焼いている。洗濯物を届けに来た家族の方に、その肉の焼ける香りは届く。その香りを嗅ぎながら、入所しているおじいちゃんの笑顔を思い浮かべている―そんな光景が目に浮かんできました。

1点 端布(はぎれ)だけマスク手作り母に似て ひさこ
(すいは特選)受け継ぐという温かさを感じました。

1点 枯れ色の蟷螂に寄る兄弟         香 苗

1点 ワイファイの迅さ心に秋のこゑ      帰 心

1点 秋の宵娘はウクレレを聞かせけり     帰 心

1点 仙台のトンネル抜けて薄道        みな子

1点 ブルームーン月には魔女の影のあり    晶 子

1点 寝酒から誘われ烏賊焼く午前2時    オリーブ

1点 便利さの存在遠し秋の暮         康 子

1点 藤落ち葉混じり園児の砂あそび      こう子

1点 はさみ研ぐ術後の庭師鳥渡る       ひさこ

1点 冬日浴ぶジーパンの裾あげ水辺      香 苗

 



第4回若竹ウェブ句会(2020年10月募集)

オリーブさんより、下記のようなメッセージを頂きました。
★メッセージ紹介
互選の試みは、他の参加者の意見を知ることができて面白かったです。質問ですが、投句する句は時節にあった季語を用いたものに限定すべきでしょうか。
☆ご質問に対して
できるだけその季節に合った季語の方が良いと思います。当季雑詠(その季節の事物、事象について自由に詠む)が基本ですが、唯、季節の移ろいにより、季語も前後して、またがる時節はありますね。


今回(10月)の選句も互選で行いました。
(三句投句、五句選。内、一句特選でコメント記載)
得点結果 特選1点入選1点で集計。@は、すーのコメント。
(配点について、一般的に特選も入選も1点というご意見を頂き、今回はそのように集計しました。また、何かご意見がありましたら、声をお寄せください。)

7点 夜干し衣や月の光を吸ふて白      こう子
(涼特選)「月」が三秋に渉る季語であることを知りました。
「吸ふて白」が絶妙ですね。

5点 紐解くは最期の言葉秋惜しむ      オリーブ
(はーちゃん特選)意味を調べている内に思い出す人がいました。秋惜しむが紐解く、最後の言葉にかかっていいなと思いました。

5点 夜なべして見つめる無数の謀      オリーブ
@如何なる状況か。書類の束を前に、或いは古文書解読か。深謀遠慮のたくらみ事に作者の夜なべ仕事は長くなりそうだ。

5点 掌の骨壺小さし秋あかね        桜 子
@掌に乗せられるほどの小ささが、命のはかなさのようで、哀切さが滲む。秋あかねの小さくも素朴なイメージと共鳴。

4点 天高し棒をくわえて戻る犬       由美子
(こう子特選)秋の高い空から、走り回り作者の元へ戻ってくる犬へ照準を合わせ、次にその口に銜えた棒にズームされていく動きが、とても面白いと思いました。

3点 雀にも剛の者あり秋の朝        康 子
(オリーブ特選)人間から見るとか弱く小さい雀でも、雀社会の中では強者弱者があり、どんな生き物にも生き抜く逞しさがあることを感じられました。

3点 味噌汁の香り深まり秋黴入       こう子
(すいは特選)さりげない日常にみる季節の移ろい。思わず鼻呼吸。
@秋黴入は、あきついりと読む「秋黴雨」だろうか。

3点 魔女帽子こわごわ載せるハロウィン   由美子
@明るい楽しさの裏にある魔女への恐れをユーモラスに詠む。

3点 老蝶の茶色き翅に光受け        桜 子
@冬へと向かう秋蝶の行く末と、光を受けている命の輝き。

2点 自転車の母待つ姉妹夕月夜       こう子
(けい香特選)月の出る頃まで母を待つ幼き姉妹がいとおしく、秋の哀愁も感じられて好きな句です。
(桜子特選)情感も情景描写も素敵です!

2点 別れなのさっと一刷毛秋の色      涼
(彰特選)潔くて爽やかで、とても気に入りました。「一刷毛」は「一刷き」かとも。でも、これがいいのだと思います。

2点 半袖に木犀の香の痛みかな       彰
@半袖の身に木犀の芳香を「痛み」ととらえる独自の感性。

2点 秋涼や忘れたことは書いてあり     涼
@失念を補ってくれたのは自らの手控えか、秋涼の心地よさ。

2点 敬老日されどエプロン店支度      すいは
@敬老日とはいえ、身ごしらえして店を切り盛りする活力。

2点 高齢の集ひて唱歌乱れ萩        康 子
@高齢者の歌う様子を巧みにとらえた。季語の斡旋が見事。

1点 天高く父を超えたる靴サイズ      はーちゃん
(由美子特選)子どもは、親を追い越していく。成長と親の願いとが絡み合っている。天高くの季語を上手く生かした句になっている。

1点 穴惑ひズームの操作手こずれり     帰 心
(晶子特選)スマートホンに苦戦している様と季語が上手く合わされている。

1点 園庭や缶ぽっくりの運動会       康 子
(帰心特選)園児の運動会、本当にかわいいですよね。「ぽっくり」という語の、のどかな響きが「園庭」とマッチしていて、ほのぼのとした気持ちで、わが子を眺めている親御さんの眼差しまでも浮かんできます。

1点 尾花道ふと口ずさむ童唄        けい香
(康子特選)ススキが生い茂る細道をずっと歩くと、いつの
間にか♪この道はいつか来た道♪なんて口ずさんでいたり
して…。

1点 追われても何も終わらず休暇明け    オリーブ
@夏期休暇中にも仕事をしていたのか、山積の課題に徒労感。

1点 プロペラの音懐かしき秋の蒼      涼
@かつての記憶を思い出させるプロペラの音。「蒼」は秋空の蒼か。

1点 木の実降るトトロの森を夢に見し    けい香
@トトロの木の実は一夜で巨木になって…不思議の森の物語。

1点 秋夕焼五時のチャイムで帰る子ら    けい香
@黄昏時の子らの上に広がる、短くも美しい秋の夕焼け空。

1点 娘の作る月見団子に抹茶味       帰 心
@お茶処、西尾ならではの月見団子、団らんのひととき。

1点 別子山岩肌撫でるコカマキリ      すいは
@固い岩肌を撫でるような子かまきりの、いたいけな様子。

★すいはさんよりのメッセージ
別子山は新居浜市にある住友銅山の跡で、かつては大変多くの労働者が行き交いました。
@メッセージ有難うございました。愛媛県宇摩郡の別子山村は、今はもう新居浜市に合併されているのですね。
☆お詫び
今回、すいはさんの句「別子山」を「別所山」と間違えていました。大変失礼いたしました。送られてきた俳句は、コピー&ペーストして一覧表にするのが基本ですが、本句は打鍵し、誤ったまま送信してしまいました。心よりお詫びいたします。申し訳ありませんでした。以後気をつけたいと思います。また、皆さんにお願いですが、今後誤りに気づかれたときには、教えて頂けると助かります。



第三回若竹ウェブ句会(2020年9月募集)

今回(九月)の選句は互選で行いました。
(三句投句、三句選。内、一句特選でコメントはあってもなくても自由)

得点結果 今回は特選2点入選1点で集計しました。は、すーちゃんのコメント

8点 単線の車輌傾き曼珠沙華       こう子

(康子特選)列車がカーブに差し掛かり車窓から、線路沿いに咲く真っ赤な曼珠沙華が、目に浮かびます。
(みな子特選)単線の電車がカーブに差し掛かり、傾いて通っていく、そこに曼珠沙華が咲いている情景が見えてくる。
(晶子特選)(由美子特選)

4点 街灯りずっと離れて月明かり      由美子

(ぶっち特選)地上と天空、人工と自然、二つの対比した世界。お互いに自らの持ち場で、各々明るい光を放っている。

3点 蜉蝣や彼方見通すみどりの瞳             オリーブ

(桜子特選)短い命の蜉蝣のはかなさと、遠くを見つめている「みどりの瞳」の透明感、そのひとすじの眼差し。

3点 脳膜に焼き付く景や夜光虫       こう子

(ゆり特選)「脳膜に」の詠い出しの強さから伝わる刺激的な光景。命の不思議、光の幻想性。この大いなる自然。

 3点 ロッカーを開けてちりんと墓参り   桜 子

(こう子特選最後まで読んで驚く、種明かしのような構成である。今どきの墓参りの様子を効果的に伝える一句だ。

 3点 下校児の道草誘う犬子草          こう子

(彰特選)人に犬派、猫派があるように、同じ草を犬子草とも、猫じゃらしとも呼ぶ。共に遊んでほしいかのように揺れる狗尾草。

3点 父とこの同じ眼差しかぶと虫     晶 子

「こ」は「子」か。かぶと虫の魅力に父子ともに虜となっている。強い角、輝かしいボディ、逞しくも美しい虫なのだ。

2点 在りし父白シャツに替え押印す     ゆ り

(帰心特選)お父様の生真面目さ、誠実さが伝わってきます。

2点 昼も夜もおやつにも食ぶちらし鮓    ゆ り

(オリーブ特選)晴れの日限定の特別な食べ物のはずが、まさかおやつにまで⁈という驚きで笑ってしまいました。大好物なのか、食べ切れない程の量だったのか、大人数で食べる予定が変更になってしまったのか、色々と想像が広がります。

2点 猫の手を借りて夫に触れる秋     オリーブ

猫の手が単にかわいいだけでなく、切なさも秘める。

2点 秋の雨ぱっと開かぬ手の痛み     康 子

秋雨の冷えた空気感を最初に感じる手指。実感の一句。

 2点 オーボエは誰に聴かすや夏木立    由美子

柔らかな音色が青々とした木立を渡っていく心地よさ。

2点 産み月の白ワンピース風揺るる    ゆ り

季語は白ワンピース。命を宿した臨月の身に白さが際立つ。

1点 稲妻の妻になりたる稲穂美し      

稲は雷の発光と交わって実を孕むという言い伝えの一句。

 1点 朝な朝なひいふうみいと牽牛花    康 子

朝ごとに咲く朝顔を一つ一つ数えあげる、やわらかな響き。

 1点 稲妻に泣いて負われて宮の森      

幼少の頃の記憶か、童謡の聞こえてくるような郷愁が漂う。

 1点 青瓢ぼんきゅっぼんとぶら下がり   桜 子

リズムのよい中七の擬態語が瓢箪の見事さを表し、愉快。

 1点 二学期の正門検温の関所       帰 心

二学期が季語。コロナ禍の教育現場の朝の景を言い得て妙。
〈帰心さまよりのメッセージ〉
私の勤務校では、コロナ禍の中、対面授業が解禁となったのは、8月末でした。正門を入る学生たちは、立哨の先生によって検温を受けたのち、教室に入ります。先日は、雨の中傘を差しながら同僚が立哨をしていました。心の中で手を合わせました。



第二回若竹ウェブ句会(2020年8月募集)

特選句

放物線の生き物めいてその噴水      みな子

自由に形を変えることができる水に、命があるかのような動き、姿を見たのでしょう。空中へ噴出された水が、下の水面に着くまでの限られたわずかな時間。噴水にある美しさや涼しさをこえた「生き物めいて」の措辞が秀逸です。「その噴水」と取り立てて指し示す感じに、驚きと若干のおそれのようなものも感じます。命の無いものに命の動き、輝きを見てとった佳句です。

◇  ◇ ◇

初盆で悲しみ新た無二の友        尚 枝

今年は大切な友の初盆。不在を再確認させられる悲しみ。かけがえのない友への追悼の一句です。そのつらさはあるものの、その友との思い出は作者の胸に確とあるのでしょう。「で」は「なので」という因果を思わせるので、「の」や「に」などの違う助詞を考えてみるのもよいかもしれませんね。

蜂の巣を知らぬ仏の立ち話        尚 枝

恐ろしい蜂の巣に気づかずに立ち話をしているのは、人とも、人のような仏像とも。慣用句「知らぬが仏」は、「当人だけが知らずに平気でいるさまをあわれみ、あざけっていう語」と広辞苑にありますが、きっとそんな意味合いでつかわれたのではないでしょう。作者ご自身のかつての一場面なのかもしれません。蜂の巣があると気づかないうちは仏のように?穏やかに立ち話をしていたのに、近くにあるとわかった途端、あわてふためいているのかもしれません。また、本当の仏像ととれば、蜂の巣など知らぬ存ぜぬの立ち話。立ち話をしているように並ばれた仏さまの力には、蜂も太刀打ちできないのかもしれませんね。

草刈りで見つけし百合の咲くを待つ    尚 枝

草刈りをしていたら百合を発見。見つけた百合の開花を待つ気持ちが一句に込められています。大きさや色合いなどどんな様子の百合だったのか、知りたくなりました。

血縁の見知らぬ人と水喧嘩       オリーブ

水利をめぐっての諍いが今もまだ続いているのです。「水喧嘩」は、耕作放棄地が増えている昨今の現状から、あまり使われなくなった季語のように思っていました。権利を主張し合うのも、それが血縁関係となれば、更にややこしくなってしまうのでしょう。農耕民族といわれる日本人の、今に続く水喧嘩の一句。

濁水のうわべを浚う会話かな      オリーブ

「溝浚え」の季語を元に作句されたのか、それとも無季の句でしょうか。いずれにしろ、実質の伴わない会話、不毛なやりとりの場面のようです。本音と建前の社会の一端を見る思いがします。

地につかぬ赤子の裸足突いてみる    オリーブ

突いてみたのは裸足の足のどの部分でしょうか?「地につかぬ」から、まだ歩いたことのない赤子の足の裏でしょうか?遊び心なのか、そこには裸足である無防備の怖さも感じます。

七月の豹紋蝶に出会う道         みな子

七月のある日、道端に出会った豹柄のような蝶。豹紋蝶の出現で歩いているその道も、作者にとって印象に残る道になったでしょう。出会ったときの新鮮な驚きが伝わります。

飲んで食べ尿して糞(ふん)しはつあき来 みな子

まさにそのとおりです。循環器である生体は、それを繰り返し、また新しい秋がやってきました。

梅雨明けや朝日を浴びてシャンプーす   ぶっち

一読、長梅雨からやっと開放された気分の良さが伝わります。朝の爽快感と共に、朝日にシャンプーの水しぶきが光っています。「浴びて」が朝日にもシャンプーの飛沫にも。今年は特に長梅雨だったこともあり、梅雨明け実感の一句。

結社誌の曝書ベランダの壮観       帰 心

八音、九音の構成による句またがりの対句表現。曝書と壮観の漢語も一句の調べを引き締めています。ベランダも夏の季語ですが、ここでは、曝書が主の季語となるのでしょう。

蝉しぐれ体操の腕空に上ぐ        帰 心

懸命に鳴く蝉声の空へ腕を上げ、こちらも元気よく体操です。蝉しぐれの中へ近づくように腕を伸ばします。

日傘差す女子高生の景にも慣れ      帰 心

おしゃれに敏感な女子高生ですが、熱中症で死者が出る現代、日傘もおしゃれだけではなくなりました。コロナ禍の近頃は、ソーシャルディスタンスのために使われることもあるようです。


先月(七月)の〈念珠へと育て御寺(みてら)の青胡桃〉について作者の帰心さんよりメッセージを頂きました。
★メッセージの紹介
西尾市吉良町に蓮で有名な教蓮寺がある。この寺のご住職は植物の事がとてもお詳しいので、何度も足を運び、いろいろな話を聞かせていただいている。ひとつば、風蘭、菩提樹と見て回ったのち、青胡桃が目に留まった。「この胡桃から毎年念珠を作っています」というご住職のお話に、植物と宗教が一本につながった。たわわに実った胡桃を見て、すてきな念珠ができるのだろうと思った。(「育て」は、他動詞連用形の意味で詠みました)
とのことです。この「育て」のあとには、軽い切れがあって、「いつか念珠となるべく育てていて」のように受け取ることができますね。
丁寧なコメント、ありがとうございました。



第一回若竹ウェブ句会(2020年7月募集)

特選句三句

はつなつのアリウムの花くっきりと        みな子

「はつなつ」の清々しい響きが鮮明な花の姿を呼び起こしてくるようです。アリウムはネギ科、丸いボンボンのようなかわいい花。

 

シタールの音や菩提樹の花弁より          帰心

シタールは金属製の爪ではじいて鳴らす北インドの弦楽器。菩提樹は中国原産。五弁花で芳香をもちます。一句全体に異国の響きや情緒が漂います。

 

梅雨曇りどうにもならぬことがある       オリーブ

暗い梅雨どきの曇り空、加えてコロナの厄災、また人生の一つの局面に、こんなつぶやきが出たのでしょう。共感とともに季語のもつ鬱とした雰囲気、状況に即して詠まれた一句。

◇  ◇  ◇  ◇

切実にアイスクリームねだる猫         オリーブ

猫もアイスクリームの美味しさに目覚めてしまったのでしょうか。猫もほしがるアイスの魅力。切実にねだる様子を映像化してみると、詠み手に伝わりやすくなります。

 

若竹のような四つ足駆け回る          オリーブ

上へと伸びる竹の垂直方向に対して水平方向の元気な動き。若竹は季語なので比喩としてではなく、若竹の青々とした元気の良さ、清新さを主眼とした作句に挑戦してみては。

 

半夏雨半月ぶりに猫撫でる            ぶっち

半夏雨(はんげあめ)は時候の季語「半夏生」の七月二日頃に降る雨。物忌みや、この日に降ると大雨が続くとの謂れなど含みをもった季語。中七から伝わる猫との微妙な距離感。

 

夕立の西日が照らす水溜まり      はらぺこあおむし

夕立から西日が差すまでの長い時間枠を俳句に詠むのは、なかなか難しい。夕立も西日も夏の季語なので、主従をはっきりさせるとより良くなりそう。水溜まりへの着眼点はグッド。

 

紫の薔薇の二輪を卓上に             みな子

「薔薇の二輪を」と「二輪の薔薇を」との差異。作者は前者を選択。紫の薔薇の色が鮮明です。どちらが良いというのではなく、繰り返し読んでしっくりくる、気に入るという、自分なりの言葉に対する感覚を確認してみるのもよいかも。

 

アカシアの花のちらほら小公園          みな子

のんびりと散策でもしているような中七。アカシアはハリエンジュともいわれ、白い蝶の集まりのような花房です。花の咲き加減と小さめの公園。辺りには芳しい香りも漂って。

 

念珠へと育て御寺の青胡桃             帰心

「育て」の受け止め方。人によって、育っていけと受け取る場合と、現在育てていてと受け取る場合と。自動詞「育つ」の命令形か、他動詞「育てる」の連用形か。読み手によって様々な解釈を呼ぶ句です。青胡桃の中に秘められた核に思いを託しているのでしょうか。

 

風を聴く心風蘭仰ぎ見る              帰心

風蘭は白い花だけでなく葉や根まで様々な楽しみ方ができ、乾燥にも強い蘭。「風を聴く心」は実は作者の父上との絆を表す特別な言葉。「仰ぎ見る」から風蘭の位置が上にあるだけでなく、そこに敬愛の感情も。粛然とした精神世界を感じます。

 

皆さま、ご投句ありがとうございました!

次回も是非お待ちしております。

(今回のウェブ句会選担当:すーちゃん)