過去の選句報告
2023年 第31回(1月)~第42回(12月)
2022年 第19回(1月)~第30回(12月)
2021年 第7回(1月)~第18回(12月)
2020年 第1回(7月)~第6回(12月)
特選コメントは、若竹会員に限らずほぼ全員、結社誌「若竹」に掲載されています。活字での句評も見られる毎月の購読をお勧めします。申し込みはホームページの購読案内をご覧ください。
〈初めて投句される方へ〉出句されるときは、五七五をわかち書きにせず、上から続けて書いて下さい。
第53回ウェブ句会(2024年11月募集)
★特選コメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
8点句 縁側で母の爪切る小春かな(荒 一葉)
特選 胸に沁みる句でした。兄と同居する母を月二回程度訪ねていましたがその時母の爪を切るのが私の仕事でした。かけがえのない時間を思い出しました。八千代
特選 ケン
入選 身だしなみですね。垣内孝雄
入選 光雲2・龍野ひろし・彰・みさゑ・雄一郎
7点句 番小屋の板戸一枚鮭颪(みさゑ)
入選 情景が伺える。垣内孝雄
入選 イメージとして東北の漁港。シーズンオフで閉め切られた番小屋。荒涼とした景色が鮮やかに表現されていると思いました。八千代
入選 鮭漁の番屋の戸板を仲秋の野分が叩く、間もなく産卵の鮭の遡上が見られるだろう。梦月
入選 鮭颪とは鮭が産卵のため、川をさかのぼる時期に冷たく厳しい風が、山から海から吹く風とのこと。番小屋の古びた板戸が軋んで哭いている景が胸に伝わりました。佳楓
入選 荒 一葉・龍野ひろし・ケン
6点句 ロシア語の絵馬滲ませて夕時雨(神島六男)
特選 ウクライナとロシアのあの悲惨な戦を、早く終わらせて欲しいと願う絵馬も、夕時雨に濡れて泣いております。世界中から、戦を無くしたいものですね。この星がいつか、燃えないうちに。佳楓
入選 日本語であっても寂寥感のある光景なのに、ロシア語とは。戦勝祈願とか書いてあるとしたら悲しいなぁ。横井あらか
入選 夕時雨の寂しさが絵馬滲ませてにかんじられる。みな子
入選 ロシア語で書かれた願いはんだったのでしょうね。八千代
入選 すーちゃん・帰心
5点句 呼び止めるごとく匂ふや金木犀(八千代)
特選 「我が意を得たり」です。加藤春海
入選 金木犀の香りにハッとする様子がよく現れていると思います。神島六男
入選 すーちゃん・彰・雄一郎
5点句 おはじきの色の跳ねたる小春かな(龍野ひろし)
特選 小春日の暖かな日差しにおはじきがきらきら光っているところが目に浮かびます。神島六男
特選 季語の使い方が上手い。大変勉強になりました。燕太
特選 荒 一葉
入選 小春の感じがする。明るさがある。みな子
入選 ケン
4点句 音も無く剥がるる記憶木の葉髪(佳楓)
特選 自身の記憶力の低下に最近驚いていたところだったので、この句に深く共感しました。帰心
入選 光雲2・荒 一葉・みさゑ
4点句 毒舌も肝斑(しみ)も勲章ちゃんちゃんこ(佳楓)
入選 ちゃんちゃんこを着て好々爺然としているが、若い時はなかなかどうして…。燕太
入選 蒼鳩 薫・龍野ひろし・ケン
4点句 生姜派も鰹節派も新豆腐(荒 一葉)
特選 新豆腐どんな薬味でも旨い。龍野ひろし
入選 是が非でも両方掛けて食べたい。横井あらか
入選 光雲2・かめしち
3点句 公園のスワンボートを漕ぐ小春(垣内孝雄)
特選 親子連れか恋人同士が仲良く休日を過ごす穏やかな光景に胸が温かくなりました。横井あらか
入選 気持ち良さが伝わってきました。八千代
入選 順一
3点句 侘助に招かれて入る比丘尼庵(百代)
入選 龍野ひろし・八千代・みさゑ
3点句 迷ひなく碌山館の蔦枯るる(みさゑ)
入選 碌山館は緑が、結構多かったと思う。蔦もあった。迷いなくがよい。潔さを感じる。みな子
入選 燕太・順一
3点句 紅葉かつ散る引き際を過(あやま)たず(八千代)
特選 みさゑ
入選 何事も引き際が大事ですが、それがなかなか難しく、失敗を重ねた人生だったかも知れませんです。佳楓
入選 光雲2
3点句 林業科のドローン講習文化祭(すーちゃん)
入選 面白い題材を見つけました。燕太
入選 ふだん知る機会が少ない専門科の活動が見られる文化祭の面白さですね。百代
入選 荒 一葉
3点句 山里に無人直売柿日和(彰)
入選 蒼鳩 薫・雄一郎・かめしち
3点句 セーターのきりんは長きまつげ伏せ(すーちゃん)
特選 セーターのキリンは可愛いく伏し目になっている。まつ毛が長く見えている。大胆な絵柄のセーターが明るい感じだ。みな子
入選 きりんの柄のセーターでしょうか。きりんの優しい目が思い浮かびます。神島六男
入選 帰心
2点句 秋雲に言えないことを抛りあげ(彰)
特選 共感・共鳴。垣内孝雄
入選 雰囲気のある一句。燕太
2点句 小石蹴りまた小石蹴り小春の日(横井あらか)
特選 「小石、蹴り、小春」語頭で子音k揃え、「小石、蹴り、の日」語尾で母音i揃え。愛が無ければあ行はうえおなんて。彰
入選 帰心
2点句 秋寂し酒場に友を探しをり(北村おさむ)
特選 かめしち
入選 ひとり酒はちと辛いのかな。垣内孝雄
2点句 泣き言も弱音も吐かず枇杷の花(荒 一葉)
特選 五弁で目立たないが芳香のある初冬の花に、自らをなぞらえて詠んでいる。梦月
入選 かめしち
2点句 落物に魔女の左手ハロウィーン(梦月)
入選 すーちゃん・荒 一葉
2点句 暁光の空を一閃燕去ぬ(みさゑ)
特選 光雲2
入選 去り際も鮮やかに。百代
2点句 七輪の温もり牡蠣を二つ焼く(雄一郎)
入選 すーちゃん・ケン
2点句 乗客のどつと下車して秋の風(帰心)
入選 秋の風の爽やかさを共感しました。北村おさむ
入選 蒼鳩 薫
2点句 赤押せば熱い湯の出る文化の日(燕太)
入選 取り合わせが面白いですね。北村おさむ
入選 蒼鳩 薫
2点句 秋の蚊の喰いついたまま逃げもせず(北村おさむ)
入選 帰心・かめしち
2点句 防犯のビデオカメラに柿落葉(雄一郎)
特選 思いがけない一瞬の秋ですね。百代
入選 日常生活と花鳥風月との二律背反におかしみを覚えました。横井あらか
2点句 柿赤し子規の一期は三十四(燕太)
特選 子規の好物は柿。早世ではあっても、子規の充実した人生が柿の赤く熟した様子に託されている。切れが効いている。すーちゃん
入選 子規が早世だった事は、俳人ならば知っていることですが、「柿赤し子規の一期は三十四」と一気に詠まれたことと、季語の「柿赤し」が胸に迫りました。佳楓
2点句 手拍子に家内安全酉の市(かめしち)
入選 酉の市の三本締めは「繁盛、繁盛、繁盛!」だが、「家内安全パパパン パパパン パパパン パン」ありがとうございました。梦月
入選 賑やかで明るい感じにほっこりしました。北村おさむ
1点句 荒海や潮けちらして能登の鷹(ケン)
入選 あの荒荒しい北斎の波の爪のごとき能登の荒波を鷹が蹴散らす様が、想像できます。佳楓
1点句 レギンスはかつてステテコラクダ色(門司侑里)
入選 レギンスなんてお洒落な言い方してるけど、らくだ色のステテコが落ち着きますよね、やっぱり。神島六男
1点句 律の風どれ地元でも攻めようか(神島六男)
入選 秋らしい風吹いた。地元のものでも買おうか、でかけようか。
という気分。みな子
1点句 磨崖仏川を境に帰り花(百代)
入選 初冬の宇陀川の流れと室生大野寺の磨崖仏を思い出しました。梦月
1点句 紙漉き女黙する技に頬照りて(一徳斎)
特選 冷たい水に紙を漉く女性職人の技、沈黙、労働の汗の対比がいいなと思いました。蒼鳩 薫
1点句 切りたての髪の匂ひや草の秋(八千代)
入選 髪カット後の爽やかな匂いを季語「秋草」に重ねた。季語は「秋の草」で良い。梦月
1点句 老い二人冬の日向をゆきにけり(一徳斎)
入選 「二人・冬・日向」、「老い・二人・ゆき・けり」の語感が素敵。歩み来た昭和・平成の日差し。彰
1点句 冬茜風とくぐりぬ丹の鳥居(垣内孝雄)
入選 墨絵のような景色にふた色の赤が冴えて美しい。百代
1点句 洗顔の水に躊躇(ためらひ)鵙の鳴く(蒼鳩 薫)
入選 気になる鵙の声をうまく詠んでいると思います。北村おさむ
1点句 ノーアウト満塁のまま秋陽落つ(梦月)
特選 緊張感と弛緩した感じ。或いは散文調と美文調の対比でしょうか。コントラストに魅力を感じました。順一
1点句 遠く離れて月を近くする(すーちゃん)
入選 能動的な自由律にインパクトを感じました。百代
1点句 はしごせし上野の森の美術展(龍野ひろし)
入選 秋の風情が出ていますね。垣内孝雄
1点句 ころあひを見て逝く日迄日記買ふ(佳楓)
特選 自分の余命が大体判る人の気持ちを良く詠まれていると思います。雄一郎
1点句 小春日の機影ゆきたる博多湾(一徳斎)
入選 順一
1点句 自販機やいろはす買へば白き風(帰心)
入選 順一
1点句 お隣の声に窓辺の月見かな(加藤春海)
入選 彰
〈俳句気まぐれエッセイ㊹ つなぐ〉 今泉 かの子
以前よく行っていた喫茶店が、閉店することになったという。その前に一度お茶でもと、刈谷在住の句友からお誘いがあった。
現役時代、仕事を終えた夕つ方、ここに寄ってから句会へ臨むのが、私たちのコースになっていた。月に一度とはいえ、約二十年。いつも注文するのは、焼きそばと珈琲と決まっていた。焼きそばは、キャベツと豚肉が程よく入り、熱々の鉄板に乗って出てくるので、その上の目玉焼きはそこで混ぜたり、そっと半熟状態にしたり、好き好きにやっていた。句会がコロナで途絶えて、私はそれきり行くこともなくなっていた。
夫婦二人の喫茶店は、地元の常連さんや音量の絞られたテレビの相撲中継等、昭和の名残の穏やかさで包まれていた。いつも同じ時間帯なので、ある親子連れともよく一緒になった。その子は、大きな声で同じ言葉を何度も繰り返す。その度にお店の奥さんが何度も返事をしていた。きっとなんらかの障がいをもっていたのだと思う。別段大きく気にする人もいなかった。今にして思えば、母親にとってそこは、ひとときの安息の場だったのかもしれない。
カウンター越しに目高の安否聞く かの子
どんな話のいきさつで私の手元にきたのか忘れたが、店のお客さんの一人から頂いた、大事なものがある。それは、「立藩百五十年!重原藩」(令和元年作成)のパンフレット。発行は知立市歴史民俗資料館。戊辰戦争で負けた板倉家一族はじめ藩士たちは、三河の重原領へ国替え。つまり、福島から転封してできた藩が重原藩である。以下引用。〈重原から遠い奥三河支配のため、明治三年四月、設楽郡田口町村に出張所がもうけられました。出張所は窪田作内、紺野亨が勤務し、窪田作内は廃藩後、この地で教師となっています。〉私の旧姓は窪田。この窪田作内は我が高祖父の名前。きちんと?活字になっていたとは。名前も知らない方だが、ここで出会わなければ、この冊子にも気づかないまま過ぎていたと思う。お店のご夫婦のおかげか、人と人とを気さくに繋ぐ場にもなっていた。
久々に訪れた店内は、全体が低い重心で、座り心地のよいソファも健在だった。お水をまだあるか確認しに来てくれた奥さんの笑顔も健在だった。
ところで、「チャオ」はイタリア語で「おはよう」「こんにちは」「さようなら」を表す挨拶語だそうだ。親しい間柄で交わされるこの一語は万能だ。今さらながら良い名前のお店だと思う。
子へつなぐこの地にチャオや去年今年 かの子
第52回ウェブ句会(2024年10月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
7点句 ふる郷や記憶を歩く秋日和(八千代)
入選 私くらいの歳になると、子供時代の故郷は跡形も無いくらい変容していて、たまに訪れると何か昔のものが残っていないか、つい探してしまいます。神島六男
入選 「記憶を歩く」という表現にびっくりです。気持ちの良い秋日和のひと日、何故か遠い故郷を偲ぶこの頃です。特選の次の「秀逸」に推すお句です。佳楓
入選 「記憶を歩く」という措辞が印象的でした。横井あらか
入選 私のふる郷はホソバと呼ぶ生け垣の間の小径を抜け、小さな踏切に立つと昼の海が輝いていた。彰
入選 北村おさむ・かめしち・ケン
6点句 よく通る少年の声鯊日和(荒 一葉)
特選 釣りをしている中に少年がいるのだろうか。その声がよく通る声だという。鯊日和の明るさが良い。みな子
入選 「釣れた〜」の声が聞こえるようです。百代
入選 気持ちいい句だと思いました。家族と来ているのか友達同士か、競い合う姿が目に浮かびます。抜けるような青空、眩しくひかる水なんかが鯊日和と言う季語で伝わりました。八千代
入選 梦月・蒼鳩 薫・かめしち
5点句 稲架かけて棚田の風を入れ替ふる(佳楓)
特選 からくわ(コメントなし)
入選 稲架も棚田も減ってゆく風景、「風を入れ替ふる」でリアリティーが出た。荒 一葉
入選 はざかけをして、棚田の風が変わった。みな子
入選 みさゑ・梦月
5点句 あつあつに卵ぶつかけ今年米(荒 一葉)
特選 食べ物を詠むなら美味しそうにと言いますが、私も卵かけご飯食べてみたくなりました。八千代
特選 勢いがあって美味しそう。米騒動のあった今年は新米の喜びもひとしおでしょう。横井あらか
入選 新米の旨さが伝わってくるよう。燕太
入選 蒼鳩 薫・かめしち
4点句 病む膝の初めの一歩秋に入る(加藤春海)
特選 私も足腰の痛みが実感できる歳になってしまいました。歩き出す時が一番つらいですね。私の気持ちを代弁してくれてるような句です。雄一郎
入選 彰・からくわ・ケン
4点句 朝顔は屋根まで咲いて十月来(みな子)
入選 猛暑を耐えての果て?瞳人
入選 昔から朝顔は夏の花だとばかり思っていました。秋の季語だと知って驚いたものでしたが、言われて見ればちょうど今頃満開で塀を越えて咲いている様子を見かけます。綺麗な句ですね。八千代
入選 帰心・すーちゃん
4点句 長き夜の灯を低くして針仕事(みさゑ)
特選 皆が寝静まった時間、針仕事に勤しむ母親の家族を思いやる姿が「灯を低くして」にある。梦月
特選 屋根に落ちる木の実がひとつなんてね。ちくちく縫っている人たちに感謝。彰
入選 秋の灯を手元に引き寄せての針仕事、長い夜になりそう。荒 一葉
入選 「灯を低くして」の表現に、今は亡き母を思いだしました。佳楓
4点句 鉄塔の空師色なき風を這ふ(ケン)
特選 空師の仕事の緊張感が「色なき風を這ふ」で的確にとらえられている。荒 一葉
特選 「空師」と言う職業も最近知りました。「色なき風を這ふ」という表現が、如実に空師の危険であるけれど、澄んだ秋天での作業の気持ち良さを詠まれたと思いました。「這う」も怖さ半分で、いいですねぇ。佳楓
入選 空師という言葉を調べてしまいました。みな子
入選 すーちゃん
3点句 幌挙ぐるバギーに双子赤とんぼ(垣内孝雄)
特選 光雲2(コメントなし)
入選 バギーの双子ちゃんて可愛いですよね。色々取り合わせできそうですが、今の季節なら赤とんぼですよね。神島六男
入選 燕太
3点句 障子貼り兎のごときビル暮らし(佳楓)
入選 風刺を込めた句。垣内孝雄
入選 彰・ケン
3点句 大甕に秋草生けて記念館(みな子)
特選 入館者への「おもてなし」、良いですね。垣内孝雄
特選 記念館は数多あると思いますが、私は杉原千畝記念館を想像しました。蒼鳩 薫
入選 おもてなしの心を感じますね。百代
3点句 ひと日ごと八入(やしお)の雨に染まる秋(光雲2)
特選 言葉の重複感が気になりましたが、八入の雨の斡旋に共感。みさゑ
入選 「八入の雨」ひと雨ふた雨度重なる雨、と解釈しました。その雨に秋が深まり、紅葉も促されるのですねぇ。なんと詩的な情緒のあるお句ですこと。佳楓
入選 すーちゃん
3点句 出し抜けに死んだはずよと曼殊沙華(蒼鳩 薫)
入選 生きていたとは、びっくりさせるじゃあ、ねえか。瞳人
入選 芸能人か昔の知り合いか、この前段には◯◯さんてどうしてたっけ、みたいなやり取りがあったはずで、急に結果だけ言われてもびっくりですよね。神島六男
入選 北村おさむ
2点句 起ちざまに牛が尿(しと)する秋の昼(燕太)
入選 牛も元気です。垣内孝雄
入選 素材が面白いと思いました。身の回りで牛を見かけることはないので、どんな風景、暮らしなんだろうと色々想像しました。牛の気持ち良さそうな顔まで浮かんでほっこりしました。八千代
2点句 栗むきながら遠き日の小さきこと(彰)
特選 後半の十音が郷愁を誘う秀句。帰心
入選 みさゑ
2点句 衛星のカメラで覘く山の秋(雄一郎)
特選 カメラを通して見る景色、対比がいいですね。百代
入選 思いもよらぬ視点で、びっくりしました。横井あらか
2点句 秋黴雨返さぬままのビニル傘(垣内孝雄)
入選 百代・蒼鳩 薫
2点句 子のえがく迷路にめまひ秋ともし(すーちゃん)
入選 帰心・ケン
2点句 あの頃は恋と気づかず鰯雲(燕太)
特選 シンプルですが、秋の空の鰯雲を取り合わせたことで、からっとした明るい思い出であることが伝わってきますね。神島六男
入選 かめしち
2点句 団らんの茶の間のぞくや秋の蝶(北村おさむ)
入選 百代・からくわ
2点句 秋茄子の売り場をひろく道の駅(梦月)
入選 「秋茄子」はよく売れますね。垣内孝雄
入選 みさゑ
2点句 電線に秋の燕の三、四羽(梦月)
入選 みんなみへ帰る燕、空は果てしなく広い。垣内孝雄
入選 北村おさむ
2点句 幼児等にでこぴん食ふ大西瓜(ケン)
入選 西瓜の宿命なのか。デコピンは。幼児にもされてしまう。みな子
入選 帰心
2点句 穭田や吾(あ)も稲作の民の裔(燕太)
入選 光雲2・荒 一葉
2点句 検診終う安堵の夕のとろろ汁(加藤春海)
入選 何事もない健診結果。とろろがさぞ旨かったことだろう。燕太
入選 大丈夫だと思っても検診は何となく気の重いもの。やれやれと言う雰囲気にとろろ汁が効いていると思いました。八千代
2点句 四十年ぶりの再会ましら酒(帰心)
入選 「ましら酒」空想的な季語とありました。猿が、木の実等を蓄えていた樹木の空洞や、岩の窪みに雨が溜まり自然発酵したものとか。本季語は「猿酒」とか。四十年ぶりの再会にピッタリの季語ですね。佳楓
入選 蒼鳩 薫
1点句 枝豆の塩の加減を買ひにけり(佳楓)
特選 ケン(コメントなし)
1点句 名月に見とれて妻を見うしなひ(北村おさむ)
入選 奥さんも「名月に見とれて夫を見うしなひ」と詠んでいらっしゃるに違いない。横井あらか
1点句 引きこもる庭に木犀月桂樹(雄一郎)
入選 すーちゃん
1点句 手の皮を魚に食わす残暑かな(横井あらか)
入選 帰心
1点句 秋祭りにらみ合ふたる男衆(北村おさむ)
特選 かめしち(コメントなし)
1点句 出日和の城の賑はひ菊花展(蒼鳩 薫)
入選 雄一郎
1点句 鶺鴒や鳴き交はしゆく川明かり(光雲2)
入選 鳴き交わすのは番でしょうね。川明かりに情緒がある。荒 一葉
1点句 今年米炊きてほんのり甘さかな(加藤春海)
入選 からくわ
1点句 ガザの子の見つめて祈る天の川(神島六男)
特選 ガザも日本も天の川を望むことは一緒だが…。燕太
1点句 笑ひつつ児ともろこしの皮を剥く(帰心)
入選 雄一郎
1点句 暮れなづむ畑に摘採る茗荷の子(梦月)
入選 光雲2
1点句 突堤に白波しぶく暮の秋(みさゑ)
入選 光雲2
1点句 林檎剥く歳の離れた恋女房(かめしち)
入選 彰
1点句 菩提子や落ちて転々古戦場(百代)
特選 「落ちて転々」の実景に古戦場で命を落としたもののふの影が重なり、また慰霊するようにも感じました。すーちゃん
1点句 鰯雲刺して飛行機一直線(百代)
入選 からくわ
1点句 秋茄子のミソは味噌だと父ぼそり(神島六男)
入選 なるほど、お父様は親父ギャグで味噌を付けた、と。横井あらか
1点句 登校の鈴は熊よけ露光る(すーちゃん)
入選 熊がよく現れる山の道を登下校で歩く子供達の熊避けの鈴は大切。露の光る朝の道でも。みな子
1点句 秋灯一つ明うして檜の湯(みさゑ)
入選 梦月
1点句 ほほずきのはみ出してゐる絵手紙来(八千代)
入選 あの狭さ、なかなかむつかしい。瞳人
1点句 値上がりや茶碗叩きて秋の暮(蒼鳩 薫)
入選 加藤春海
1点句 火渡りや無心の吾に出会ふ秋(光雲2)
特選 三流(コメントなし)
0点句 彼岸花咲く彼岸の墓へ一人(八千代)
作者コメント 今まで詠んだことのない句またがりに挑戦してみました。八千代
〈俳句気まぐれエッセイ㊸ 腰で読む〉 今泉 かの子
声は人それぞれ、生まれついてのものである。が、きれいな声はちょっと羨ましい。顔の美しさは、年齢と共にしわやシミ等、衰えは免れがたいが、声はそう変わらない。さらに少女のように澄んだ声は、加齢と共にどこか上品さを帯びて聞こえる、ような気がする。
声を仕事とする声優やナレーターの声色もまた、さまざま。清潔感を感じる声質もあれば、時には妙に鼻につく感じがする場合もあったりする。
朝ドラ「虎に翼」が放送されたとき、ナレーター(尾野真千子)の穏やかな低い声が朝から聞けてよかった、という声があった。また、主人公(伊藤沙莉)のハスキーがかった声が好き、という人もいた。たしかに。澄んだ声ではないが、味のある声だ。今は亡き大原麗子のお酒のCⅯ「少し愛して、なが~く愛して」の甘くハスキーがかった声。「テルマエ・ロマエ」のヤマザキマリの、説得力のある低いトーンの声。思えば、低い声の響きも随分魅力的だ。私が好きな声の一人は、元NHKアナウンサーの山根基世さんの声だ。落ち着いたトーンでスッと心に入ってくる感じがする。
「映像の世紀」コンサートが名古屋で開かれたのは、一昨年前。オーケストラの演奏と、大画面に映し出される歴史的瞬間の映像がコラボする。指揮は、主題曲「パリは燃えているか」を作曲された加古隆氏。そして、そこに山根アナウンサー。その夜、来名されていたのだ。TⅤ番組の中では、ナレーションを務められていたが、まさかの嬉しい驚きだった。舞台の袖に置かれた小さな灯りの下、その声は鮮明でありながら静かに訴えるものがあった。
今月(十月)の中日新聞に掲載された「映像の世紀」にまつわる山根さんの言葉。以下要約〈「何としても伝えたい」という思いが沸き上がってきて、体調が悪い中、気がつくと椅子から立ち上がるようにして読んでいた。なるほど声はこうやって出すものと「腰で読む」という感覚を体得した。〉「腰で読む」?その感覚には、正直びっくりした。が、ご自身の身をもって実感されてのこと。メッセージを届けるという揺るぎない使命感からのことだろう。まさに腰はからだの要。プロは腰から、体全体から声を出す。
腰で読む声のたしかさ秋灯し かの子
第51回ウェブ句会(2024年9月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
6点句 一応は叩いて選ぶ西瓜かな(加藤春海)
入選 たたいても、何が分かるというわけではないのですが、つい、たたいてみる、という可笑しさがあります。瞳人
入選 どちらにするか、どうしても叩いてみてしまいます。蒼鳩 薫
入選 面白い。燕太
入選 オリーブ・みさゑ・順一
5点句 志ん朝も馬生もゐない志ん生忌(瞳人)
入選 味のある噺、名人を偲ぶ一日の思い。荒 一葉
入選 志ん生は1973年9月21日83歳没。志ん朝(2001年10月1日63歳没)も馬生(1982年9月13日54歳没)も早過ぎました。百代
入選 時代を超えて伝わる古典芸能、知ってる人たちへの望郷の念が伝わります。八千代
入選 飲む打つ買うの三拍子そろった志ん生は長寿だったのに、息子二人は早世した。あたら名人を失った痛恨事。燕太
入選 みさゑ
5点句 逝く時は誰もが独り吾亦紅(光雲2)
特選 私もひとりで逝くのだろう。そうじゃない人も多くて、この句では言い切ってくれて吾亦紅がいい。彰
特選 かめしち(コメントなし)
入選 これは真理!季語の斡旋が良い。荒 一葉
入選 産まれる時も死ぬ時も誰でもひとり、だからこそ精いっぱい生き切りたい。吾亦紅のように最後まで凛としてと思いました。八千代
入選 取り合わせがいいなと思いました。蒼鳩 薫
5点句 一人では溺れてしまふ花野かな(佳楓)
特選 秋草の花が咲き乱れる野に一人いたら、溺れてしまいそうな気にも。百代
特選 寂しさに共感。みさゑ
入選 秋の花は美しいと同時に寂しくもありますからね。一人で受け止めるのはしんどいかも。神島六男
入選 ケン・順一
5点句 草むらに腰をおろせば秋の声(八千代)
特選 「秋の声」が活きている。垣内孝雄
特選 そう言う事はあるのかもしれません。順一
入選 耳を澄まして。想像が膨らみました。蒼鳩 薫
入選 ケン・三流
5点句 稲妻や送電線のシルエット(蒼鳩 薫)
特選 映像が鮮やかな句。帰心
入選 闇の中に時々浮かび上がる送電線の影。梦月
入選 北村おさむ・みさゑ・雄一郎
5点句 肩に来て元気だしなと赤とんぼ(荒 一葉)
特選 優しい句ですね。赤とんぼの励ます声が聞こえてきそうです。神島六男
特選 作者の思い入れだが、すんなり耳に入る。燕太
入選 とんぼの気持ちがわかる。最高ですね。山田渡海
入選 かめしち・雄一郎
4点句 小流れの底石白し水の秋(みさゑ)
特選 水の澄む秋を小流れの底石に捉えてうまく表現した。荒 一葉
特選 清冽な川底に光る真っ白な石。梦月
入選 川底の石が白いという。季語「水の秋」が、冷ややかに澄み切った水の流れと音までキレっキレっ!百代
入選 光雲2
4点句 杖つきて色無き風に蹴躓く(佳楓)
特選 光雲2(コメントなし)
特選 ケン(コメントなし)
入選 かめしち・すーちゃん
4点句 悔ひなきと言ひ切れぬもの鰯雲(燕太)
特選 悔いのない人生が送れたら本当にいいですね。取り合わせがいいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 長く生きておりますと、次から次に、鱗雲の如くほっこりもっこりと、悔いが湧きあがって来ます。自分なりに精一杯生きたつもりですが、力不足でした。身に沁みるお句に一票です。佳楓
入選 本当はかなりの後悔なので、雨天や曇天ほどではないとはいえ、だいぶ青空が隠れる鰯雲と取り合わせているのだろう、と読みました。横井あらか
入選 荒 一葉
4点句 だうしても足のがたつく茄子の馬(燕太)
入選 上手に作って差し上げて下さい。垣内孝雄
入選 ですよね。バランスとるのは難しい。神島六男
入選 私も毎年苦労してます。雄一郎
入選 オリーブ
3点句 戦火遠くに聖火遠くに残暑(すーちゃん)
入選 平和の祭典のオリンピックと戦争の続く世界と。梦月
入選 今、日本のこの暑さを詠まずして、で選びました。形式的には十七音貫徹の七七三か?「遠くに」が地理的距離や歴史的時間にもとれて興味が尽きません。彰
入選 オリーブ
3点句 秋まひるビルを映せるビルの窓(すーちゃん)
特選 秋の澄んだ空気が感じられる。みな子
入選 ビルの窓にビルが映っている不思議な風景。梦月
入選 ビルの窓に空でなく隣のビルが映るような大都市で、窓の反射光が和らいだことから夏から秋へとの移り変わりを感じた、と読みました。横井あらか
3点句 電柱の影すら嬉し日の盛(みさゑ)
入選 木陰さえ無い夏の道、電柱の有ることだけでも嬉しい。梦月
入選 他の句で「送電線のシルエット」も面白いなと思いましたが、電柱の太さは日除けに足る確かな日陰を作っています。彰
入選 「分かる!」と叫びそうになりました。いっそ電線の影さえ嬉しいまである。横井あらか
3点句 村人と紛ふ野良着の案山子かな(荒 一葉)
特選 旅先の気安さで田圃の人影にこんにちはと明るく声を掛けたら案山子じゃん! という、ちょっと決まりの悪い場面を想像して笑いました。横井あらか
入選 彰・かめしち
3点句 靴裏のハハハと笑ふ運動会(神島六男)
特選 校庭で寝転んだ子らの靴裏が上を向いてハの字に並んでいるのでしょうか。運動会後、洗われた靴がハの字に並んで干されているのでしょうか。楽しい想像が膨らみました。オリーブ
入選 泣いたり笑ったりの運動会。残る靴跡のハハハがいいですね。百代
入選 運動会わくわく感を、靴裏の笑い声にたとえている点が衝撃的、かつ楽しいです。横井あらか
3点句 秋の夜のペットボトルは空になり(順一)
入選 まだまだ寝苦しい夜、枕元に置いたペットボトルが朝には空に。百代
入選 すーちゃん・帰心
3点句 vの字はまた会ふサイン雁の列(光雲2)
特選 また会ふサインが希望を持たせてくれる、嬉しくも大きな景のお句と思いました。佳楓
入選 荒 一葉・帰心
3点句 新走りなめろう誂へ滋酔郎忌(瞳人)
入選 滋酔郎忌(じすいろき)初めて知りました。随筆家、俳人で平成9年8月10日62歳没、(江國滋)ガンにて。なめろうも初めて知りました。新酒、なめろう、滋酔郎忌、この設定に唸るばかりです。佳楓
入選 酒豪で知られた江国滋への挨拶句。燕太
入選 ケン
3点句 職業に有と記して菊の酒(蒼鳩 薫)
特選 仕事を得た安堵感と季語の菊の酒が響き合って良いなと思いました。お酒が本当に美味しそうですね。八千代
入選 歳がいっても仕事があるのは元気な証拠。有りにチェックを入れる自分が誇らしい。そう読ませてもらいました。神島六男
入選 北村おさむ
3点句 半時の老いの散歩や秋の空(加藤春海)
特選 かめしち(コメントなし)
入選 秋の散歩は楽しいですね。垣内孝雄
入選 言葉をもって言葉以上の世界を表現していると感じます。心に響きます。山田渡海
3点句 竹刀振る子らの気合いや秋高し(荒 一葉)
入選 光雲2・北村おさむ・三流
2点句 種あるかもと友手渡しぬ黒ぶだう(帰心)
入選 お裾分けする方が気を使っているところに可笑しみ。燕太
入選 オリーブ
2点句 玄関のセンサーライト薄紅葉(みさゑ)
入選 帰心・順一
2点句 残照のひかりの海へ去ぬ燕(光雲2)
入選 情景が美しくていいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 北村おさむ
2点句 秋晴に孫も疾走ドッグラン(雄一郎)
入選 犬に負けじと全力疾走のお孫さんの笑顔が目に見えるようで
す。八千代
入選 三流
2点句 風あれば秋と諾(うべな)ふ今宵かな(彰)
特選 このゆったり受け止める感じが、秋の宵に相応しい。すーちゃん
入選 かめしち
2点句 宮大工の村とや法師蝉すだく(帰心)
入選 光雲2・ケン
2点句 子育てをがんばる孫と星祭り(八千代)
入選 がんばれとエールを送りたい。燕太
入選 帰心
2点句 うんざりの天気のままに秋に入る(八千代)
特選 暑さに私もうんざりしてます。雄一郎
入選 ただただ同感です。山田渡海
1点句 朝風に揺れて芙蓉の花咲けり(梦月)
入選 すーちゃん
1点句 夏休みあくしゅとおじぎは覚えたて(オリーブ)
入選 握手とお辞儀が覚えられた夏休みは立派なものだと思う。みな子
1点句 ほろほろと亡友のこゑきく九月哉(瞳人)
入選 すーちゃん
1点句 自棄(やけ)のごと秋の噴水勢ひけり(燕太)
入選 秋の噴水が勢いよく噴き上がる。まるで自棄になっているかのような勢いだ。みな子
1点句 秋茄子や「炊いたん」って何だかいい(神島六男)
入選 茄子の炊いたんは柔らかな響きが美味しさを感じさせる。みな子
1点句 鳥辺野を訪ねてみたし吾亦紅(われもかう)(彰)
入選 秋の鳥辺野、良いですね。垣内孝雄
1点句 鰯雲だいだらぼっちの昼餉かな(神島六男)
入選 メルヘンを感じる。垣内孝雄
1点句 牙むいてアンコ(競り人)睨むや赤蝮(ケン)
入選 蝮を競りに賭けるなんて、ビックリしました。どんな光景なんでしょうか?作者の方、失礼ですが、気が向きましたら、状況説明お願いいたします。佳楓
1点句 轟雷やパソコン落ちし闇の部屋(横井あらか)
特選 いまの時代、こういう雷害? 増えました。これが素人には、最初、何が起きたのか、戸惑いました。瞳人
1点句 出来秋の段ボール箱が縁台に(順一)
入選 出来秋の季語が素晴らしく、段ボール箱を生かしていると思いました。段ボール箱の中身が凄く楽しみですね。佳楓
1点句 秋場所や天辺目指す上手投げ(かめしち)
入選 若い力士への期待が伝わってきます。結句の「上手投げ」が上手いと思いました。八千代
1点句 貝割菜背のみどりごは黒目がち(オリーブ)
入選 背負った嬰児の目が黒目がちなのは、可愛らしさが感じられる。貝割れ菜のような可愛さか。みな子
1点句 数珠玉やあの用水のあの辺り(百代)
入選 順一
1点句 底紅の街道行かば陶の里(百代)
入選 光雲2
1点句 虫の闇木に縛られし犬の視線(順一)
入選 彰
〈俳句気まぐれエッセイ㊷ 失せ物〉 今泉 かの子
我が結社「若竹」の恒例行事の一つが、上州吟行。今年は、まず鬼城記念館見学。たっぷり鬼城に浸るも時間が押しており、われら十数名一行は、急ぎバスで昼食会場へ。
昼食に出されたのは陶箱の三段重ね。中にはお刺身と揚げ物と煮物。この煮物を巡って、皆さま「豚の角煮」「牛」いえ、「鶏」「魚」と各人各様。こんなに意見が分かれることも珍しい。で結局、お店の人曰く「ビーフシチューです」と。三段重ねという和風を装っての、まさかの洋食とは。この意外なオチ。一同、驚きながらも笑いながらも「そう言われれば」と納得。昼のビールのほろ酔い加減もあって、賑やか且つ楽しいひとときとなった。
この流れで、榛名方面へと向かうバスの中は、くつろいだ雰囲気であったが、先ほどのレストランから電話が入った。指のサポーターの忘れ物があるという。なんと、それはわがものに相違なく、浮かれていて失くしたことすら気づいていない、体たらく。よくぞ電話して下さった。実は半年ほど前にも旅先で失くしており、電話を入れたのだが、出て来ずじまいだったのだ。それは、親指の付け根の痛みを保護する装具で、整形外科で装具士から処方されたもの。三年に一度しか入手できない大切な装具なのである。ほんにありがたい。しかも待機の時間を利用して、バスの運転手殿が取りに行って下さる運びとなった。まこと「かたじけなさに涙こぼるる」である。
実は去年の吟行でも、私は帽子を失くした。あちこち電話したが、ダメだった。相変わらずの粗忽ぶりだが、今回は期せずして戻ってきた。残暑の中、涼やかな一陣の風を頂いた。
参拝の句徒へ鬼城の金の風 かの子
第50回ウェブ句会(2024年8月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
9点句 子どもらの輪唱空へ広島忌(梦月)
特選 「輪唱空へ」がいいですね。垣内孝雄
特選 この子らの平和への歌声を守り抜かねば。荒 一葉
特選 平和への祈りを込めた子どもたちの歌声が聞こえてくるようです。帰心
入選 歌声が届いて世界中の子供が安心して暮らせるようになって欲しいです。八千代
入選 無垢な平和への祈り、天に届け。百代
入選 子供たちの綺麗な澄みきった歌声、何時迄も途切れること無く、続く世界であって欲しいと平和を願うお句。胸が熱くなりました。佳楓
入選 光雲2・みさゑ・燕太
作者コメント──梦月
7点句 木の箱に砂と実印敗戦忌(佳楓)
特選 国が敗れる実相、8月の句は戦さを詠み続けること、それが語り部になる。梦月
特選 自然物としての砂と現世の物としての実印。木の箱の中にある二つの存在に、亡き人への悼みと戦争の虚しさが象徴的に表されているように思いました。すーちゃん
特選 木の箱の中の砂は遺骨の代わり?おもわずそんな想像をしてしまいました。淡々とした語り口が沁みます。八千代
特選 ケン(コメントなし)
入選 瞳人・彰・順一
7点句 朝顔や江戸紫が見得を切り(百代)
特選 江戸紫の堂々とした姿が目に浮かびます。神島六男
入選 朝顔も鑑賞に値する花ですね。垣内孝雄
入選 いなせな朝顔の見得が見えてくる。荒 一葉
入選 朝顔の目の覚めるような間紫を歌舞伎役者のあの鉢巻きに見立て、見得をきる、とは良くぞ表現されました。他の彩を寄せ付けません。佳楓
入選 瞳人・山田渡海・ケン
6点句 片影を選びて杖を休めけり(加藤春海)
特選 ご自分を片影に休ませるのでは無く、杖を休ませる、と詠まれたところに作者の優しい気持ちが伺われました。佳楓
入選 御無理をなさらずに。垣内孝雄
入選 この暑さの中、休み休み生きてゆかねば。荒 一葉
入選 梦月・帰心・みさゑ
4点句 旅の宿手花火かこむ泊り客(垣内孝雄)
入選 一期一会のお仲間同士でしょうか。加藤春海
入選 一期一会の小さな花火大会。さぞかし和気藹々としているのでしょうね。横井あらか
入選 雄一郎・三流
4点句 苔の花増えて埋むる力石(梦月)
入選 力比べの石が、精の良い苔の花に押されているようにとらえられて俳味を感じます。百代
入選 みな子・すーちゃん・順一
作者コメント ──梦月
4点句 五十年この地に馴染み盆踊(燕太)
特選 来し方に様々な思いの感じられる、しみじみとしたいい句だなと思いました。蒼鳩 薫
特選 かめしち(コメントなし)
入選 五十年住んで踊りも板につく。荒 一葉
入選 私の街はまだ35年です。神島六男
4点句 道標の褪せたる文字や岩清水(みさゑ)
入選 山歩きでしょうか、岩清水には救われますね。蒼鳩 薫
入選 梦月・帰心・山田渡海
4点句 誘われて見やうみまねの踊の輪(垣内孝雄)
特選 瞳人(コメントなし)
入選 最初ははにかんでいた踊りもやがて楽しさが増す、情景が浮かびますね。蒼鳩 薫
入選 慣れない盆踊りを前の人を真似ながら照れくさそうに踊ってる姿が見えるようです。八千代
入選 かめしち
3点句 かなかなかな少し長生きしすぎたかな(佳楓)
特選 かなの連打にリズム感。とぼけた味わい。燕太
特選 かめしち(コメントなし)
入選 ケン
3点句 青林檎わかりあえない人のゐて(八千代)
入選 季語「青林檎」に納得。垣内孝雄
入選 蒼鳩 薫・燕太
3点句 夏休みふわりと君はワンピース(神島六男)
入選 「ふわりと」の修辞に惹かれる。垣内孝雄
入選 何時もの君と違う君にも新たな発見の夏休み。荒 一葉
入選 涼し気な一句です。「君」の同級生である男子生徒の目線だと考えると、胸がきゅんきゅんします。横井あらか
3点句 墓参いつもの茶屋の串団子(雄一郎)
入選 梦月・帰心・ケン
3点句 空睨にらむ向日葵ぐっと顎引いて(彰)
入選 ぐっとがグッド!神島六男
入選 瞳人・かめしち
3点句 ねこじやらし球探しする補欠の子(荒 一葉)
入選 野球は九人ではなくて縁の下の力持ちの支えがあってこそ闘えるもの。レギュラー目指して頑張れですよね。八千代
入選 補欠の子はきっと汗まみれで草を掻き分け掻き分けしているのでしょう。他人事ながら秋の季語でよかったです。これが夏だったら傍目にも暑すぎて救われません。横井あらか
入選 雄一郎
3点句 露座仏の俯きたまふ残暑かな(燕太)
入選 露座仏の俯き加減は、なるほど今夏の猛暑にはそんなふうにも見えます。百代
入選 光雲2・すーちゃん
3点句 くちゆくちゆと洗ふ耳たぶ辱暑の夜(すーちゃん)
入選 くちゆくちゆが良い。みな子
入選 「くちゅくちゅ」に実感がこもっています。百代
入選 帰心
3点句 サイン出す三原水原走馬灯 (瞳人)
特選 懐かしいです。西鉄と巨人の日本シリーズ、良い想い出です。雄一郎
入選 三原水原とはまた古い。それを知ってる私も古い。燕太
入選 順一
3点句 はまなすや娘と拾ふシーグラス(蒼鳩 薫)
特選 浜辺の光景としてしみじみと見てしまう。みな子
入選 ゆったりとした時の流れを感じました。母娘にとって忘れられない思い出になりそうですね。八千代
入選 三流
2点句 自動車の黙炎天の交差点(帰心)
入選 あまり暑いと黙っちゃいますよね。神島六男
入選 彰
2点句 向日葵や花壇を睥睨へいげするごとく(八千代)
入選 光雲2・順一
2点句 炎熱の日々深海魚浮上せず(光雲2)
特選 真夏の炎熱と深海魚の不在とを結び付ける二物衝撃に衝撃を受けました。横井あらか
入選 自らを守っているシーラカンス。はなこ
2点句 胡瓜魚きようは坊主や河童の忌(ケン)
特選 鳥獣戯画のような飄々とした景が浮かびます。百代
入選 今日は、河童忌だから河童の好きな、きゅうりの匂いのする、胡瓜魚をわざとにがしてやった、と私は解釈させて頂きましたが、よろしかったでしょうか?佳楓
2点句 海猫鳴くや三陸沖の潮境(みさゑ)
入選 蒼鳩 薫・かめしち
2点句 熊蝉の鳴く声止まず我起きず(山田渡海)
入選 暑さに降参です。はなこ
入選 「起きろw」と反射的にツッコミを入れてしまったので、選ばざるを得ませんw。横井あらか
2点句 岬鼻は光にあふれ夏の鷹(蒼鳩 薫)
入選 鷹が飛ぶことを学習し始めるのは、夏の初めの頃と最近、知りました。伊良湖岬の碧い海、蒼い空、そして芭蕉の一句が老いた脳を甦らせてくれました。佳楓
入選 すーちゃん
2点句 灯を分けてそれぞれにある夜長かな(荒 一葉)
特選 個別性の意識が一層夜長を充実したものにしているのかもしれません。順一
入選 みさゑ
2点句 音楽堂なれば一入蝉時雨(帰心)
特選 光雲2(コメントなし)
入選 みな子
2点句 聞き上手妣(はは)の思ひ出青葉木菟(光雲2)
入選 季語に青葉木菟を持ってきたセンスに脱帽。燕太
入選 梦月
1点句 獣めくシュガースポット朝バナナ(百代)
入選 獣めくが良い。みな子
1点句 盆踊り炭坑節を待つ爺よ(雄一郎)
入選 ケン
1点句 酒蔵の真上にかかる月涼し(みさゑ)
特選 残暑や喧噪を離れ、静かに透きとおってゆくお酒。はなこ
1点句 すつきりと了はらぬ事案螽斯(蒼鳩 薫)
特選 季語に共感。みさゑ
1点句 電柱の天辺目指す青き蔦(横井あらか)
入選 山田渡海
1点句 ゴッホ展「ひまわり」一閃立ちすくむ(はなこ)
入選 光雲2
1点句 夕立やほっかむりしたおやじ行け(神島六男)
入選 かめしち
1点句 曇天や車道かすめし夏燕(横井あらか)
入選 三流
1点句 硝子戸を這ふ蝸牛ねこの家(梦月)
入選 彰
1点句 駆け上がる外階段の夏の風(横井あらか)
入選 彰
1点句 百合の香の遠き故郷セピア色(かめしち)
入選 山田渡海
1点句 音も無く足裏に立つや今朝の秋(佳楓)
入選 瞳人
1点句 夏の夕風いちょうの白き実の下に(みな子)
入選 すーちゃん
1点句 あの旅に出たなら今は別の夏(はなこ)
特選 「あの旅」に出なかった、出られなかった。悔いを懐かしむことができる小さな幸せ。彰
〈俳句気まぐれエッセイ㊶ ジャズ③森山威男氏〉 今泉 かの子
森山威男(たけお)氏はジャズドラマー。日本を代表する名ドラマーである。ピアノの鍵盤を肘やげんこつで叩くなど衝撃的なジャズピアニスト山下洋輔トリオの一員として、かつて参加した欧州ツアーでも、その都度高い評価を得てきた。彼の名演奏ぶりもさることながら、ライブの合間のトークも絶妙だった。
山下洋輔トリオとして九州ツアーを行った際のこと、ライブに来ていた一人の若者?が運転手を買って出た。若干、得体の知れないところがあったが、彼の「絶対損はさせないから」という熱意に負けて、ツアー同行となった。高速道の出口で、料金所の係員(当時は対面式)となにやら話している、と突如、件の彼が大声でわめき始めた。何を言っているのかわからない。どこの国の言葉なのか、と思っているうち、車中に戻った彼は何事もなかったように、車を発進させ出口をそのまま通り過ぎた。かくして、その言葉通り、高速料金を支払わず通過したのだった。「いやー、居心地はよくなかったんだけどね。それは大したもんだった。」と笑いながらのトーク。そしてその青年こそ、森田一義、タモリその人だったというオチ。会場は大うけだった。最初の出会いは実はホテルだったという説もあるが、何より、話のテンポや洒脱な話しぶりには、人を惹きつけるものがあった。そしてこのエピソードには、社会が今より寛容であった頃の、時代の空気感もあったのだと、今にして感じる。
現在は岐阜の可児市にお住まいとか。かつては、文化センターの特別講座で講演されたこともあった。私がツーショットの写真やサイン入りのCⅮを手に入れたのも遠い日のこと。が、ドラマーとしての技量やその芸術性のすばらしさはもちろん、話術の巧みさも相まって、森山氏は本物のエンターテイナーであると今も思っている。
語り口やさしきジャズマン今朝の秋 かの子
第49回ウェブ句会(2024年7月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
6点句 朝練の竹刀の素振り夏燕(荒 一葉)
特選 剣道の朝練の素振りは、基本技術の上達と集中力の向上に効果ある修練である。無心に振る竹刀の先を夏燕が羽を翻す。一幅の絵になる景である。梦月
特選 清々しい朝の部活動でしょうね。夏燕の飛翔と相まって、若さや生命力が感じられていいなと思いました。蒼鳩 薫
特選 光雲2(コメントなし)
入選 季語「夏燕」が活きた句。垣内孝雄
入選 竹刀の音が聞こえてきそうです。八千代
入選 竹刀の切っ先が描く弧状の軌跡と飛燕が描く弧状の軌跡とが、朝の涼し気なイメージに重なります。横井あらか
5点句 波寄せてサンダルひとつ逃げた夏(はなこ)
特選 夏休みの幼い日を鮮やかに詠んでいる。「ひとつ逃げた」が生む余韻が美しい。雪待月田猫
入選 懐かしい景色がよみがえります。八千代
入選 私にはしょっぱい砂と共にある思い出ばかりですが、夏の終わりをさわやかに詠まれたと感じました。彰
入選 波打ち際でサンダルを取られたことのある実感。みな子
入選 三流
5点句 髪洗ひとるにたりない意地捨つる(佳楓)
特選 髪を洗いながら考え事をする、て私もよくあります。心に引っかかっていた小さなもやもやを振り払ったんでしょうか、髪の汚れと一緒に流して。神島六男
特選 心事に属する内容に、身近な髪洗ふという季語を持ってきた手練れの句。燕太
入選 涙も流れていますか?はなこ
入選 髪を洗うことによって気持ちを切り替える作者の心意気が感じられていいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 ケン
4点句 子ら来れば自慢も愚痴も手巻寿司(蒼鳩 薫)
特選 夏の帰省でしょうか。久しぶりに顔を合わせた家族の、賑やかで楽し気な食卓をイメージしました。横井あらか
入選 親元に子らが集えば何を言っても罪がなく、手も口も弾んで盛り上がることでしょう。百代
入選 子どもが全てのことに優先.燕太
入選 すーちゃん
4点句 路地裏の裸電球かき氷(梦月)
特選 かめしち(コメントなし)
入選 まさしく「昭和」ですね。垣内孝雄
入選 昭和の時代の懐かしい風景ですね。砂糖水をかけただけのかき氷一杯10円だったかな。こんな裏通り大好きでしたね。蒼鳩 薫
入選 映像が鮮やかに浮かぶ句。「裸電球」が昭和っぽい。雪待月田猫
4点句 別ればかり増ゆる余生や浮いてこい(佳楓)
入選 楽しかった時を再び。垣内孝雄
入選 余生の一面を面白い季語との取り合わせでまとめた。荒 一葉
入選 今日もまた友人知人の訃を聞く、その悲しみを独り湯船に浮人形に語りかける。梦月
入選 帰心
4点句 逆縁や小さきなすびの馬作り(加藤春海)
入選 新暦なんですね。燕太
入選 まだ、幼いお子様を亡くされたのですね、真実お辛いこととお察し申し上げます。「小さきなすびの馬作り」 に悲しみと愛しみが、ひしひしと込められていると思いました。佳楓
入選 難しい病気か、交通事故だろうか。「小さき」に亡くした幼い子への想いが込められている。雪待月田猫
入選 帰心
4点句 匙さすをためらふほどのかき氷(みさゑ)
入選 よほどうず高く盛られたかき氷なのでしょう。早く食べたいけれど、氷の山が崩れてこぼれてしまうのも困る、というジレンマが暑いです。横井あらか
入選 昨今のかき氷はフルーツが沢山添えられ豪華ですから。加藤春海
入選 かき氷って、どうやって食べたらいいのと思うくらい、てんこ盛りにされてますよね。結局いくらかはこぼしてしまいます。神島六男
入選 最近テレビで見られるSNS映えを兼ねたかき氷か。「ためらふほどの」サイズ感と個性的なデザイン。雪待月田猫
3点句 カルガモの雛の艦隊水脈曳いて(光雲2)
入選 「かもさんおとおり」という、微笑ましい絵本を思い出します。はなこ
入選 みさゑ・八千代
3点句 夕闇のせまる厩舎や黒揚羽(蒼鳩 薫)
入選 夕闇が迫る厩舎に黒揚羽が悠然と飛んでいる。みな子
入選 すーちゃん・光雲2
3点句 水暮れて白の際立つ花菖蒲(みさゑ)
入選 「水暮れて」の情景に想像が膨らみました。百代
入選 夕方の白菖蒲の花の白さが目に浮かぶ。みな子
入選 「水暮れて」の表現が秀逸だと思いました。夕暮れどきの菖蒲園の白さを巧みに詠まれましたね。佳楓
3点句 父の日や配膳ロボが運ぶ寿司(荒 一葉)
特選 中七に俳味がある。せめてお父さんには店員さんがお寿司を運んで欲しかったなぁ。帰心
入選 「配膳ロボ」 が父の日の景を嬉しくも寂しくもさせた、複雑な気持ちにさせられるお句でした。時代がどんどん変わって行きますね。佳楓
入選 三流
3点句 風鈴の音色南部の郷の音(かめしち)
特選 南部鉄の澄んだ音色が響いてくる。荒 一葉
特選 ケン(コメントなし)
入選 光雲2
2点句 庭で採る胡瓜そのまま朝御飯(雄一郎)
特選 かめしち(コメントなし)
入選 採りたての胡瓜がおいしそう。荒 一葉
2点句 駅行きのバスを見送る星迎(垣内孝雄)
特選 いつもの家路に向かうバスをやめて、ふと行き先を変えてみたくなる。季語の星迎と合わせてロマンですね。百代
入選 「星迎」という季語によって、このお句はいろいろに想像が膨らむのではないでしょうか。駅はどこの駅でしょうか?ひょっとしたら(天の川駅)かも?佳楓
2点句 甚平に炭鉱節の似合いたる(加藤春海)
入選 盆踊り唄の代表的な「炭坑節」は庶民の歌である。甚平を穿いた酔漢が踊りの輪に入ってきても誰も咎めない。梦月
入選 かめしち
2点句 ひまはりや今際に力ある言葉(帰心)
入選 すーちゃん・みさゑ
2点句 七月来駅に万灯飾られて(みな子)
入選 いよいよ地元の夏祭りが始まる、そんな気持ちでしょうか。コロナ禍ではできなかっただけに、嬉しさも一塩とか。神島六男
入選 すーちゃん
2点句 遠未来のぞむあしたや夏の雲(梦月)
入選 スケールの大きさに惹かれました。百代
入選 光雲2
2点句 狗尾草の臓器は小骨ばかりなり(八千代)
特選 猫じゃらしの形状やカサカサした感じを「小骨」と表現されたところが、言い得て妙でした。すーちゃん
入選 猫じゃらしの穂に対する「臓器」、「小骨」という着眼点にはっと胸を突かれました。横井あらか
2点句 部屋干しのタオルめがけて扇風機(八千代)
入選 梅雨の季節の扇風機のようすですね。中七が面白いなと思いました。蒼鳩 薫
入選 帰心
2点句 狙ひとは違ふ金魚を掬ひけり(燕太)
入選 金魚を取り逃がした悔しさと、別の金魚を運よく掬い得た驚きとがあって、きっと楽しい縁日の一幕なのでしょう。横井あらか
入選 みさゑ
2点句 脛這うは蛭かと払う田草取り(百代)
入選 大変さが伝わります。八千代
入選 ケン
2点句 山滴るアオバト美しき鳳来寺(すーちゃん)
入選 季語が生きてる。燕太
入選 光雲2
2点句 七夕や波に消さるる砂の文字(垣内孝雄)
特選 じきに波が消してくれるから、思い切ったことを書いてみましょう。彰
入選 砂に書いた願いの文字は何だったのでしょうね。荒 一葉
2点句 おほげさな言葉慎み半夏生(蒼鳩 薫)
特選 語るにしても綴るにしても、そういう言葉遣いができたらいいと思います。はなこ
入選 彰
2点句 一度だけ考の語りし虎烈刺船(ケン)
特選 幕末の事とは違うのですが、私も母からコレラにラムネが効くって言われ、炭酸水がもてはやされた話など聞いたことが懐かしくなりました。みさゑ
特選 「一度だけ語る」に作者のお父さんの辛い苦しい重い、が偲ばれます。何度も話せるものではありません。「一度だけ」がこの句を生かせたと思いました。佳楓
2点句 噴水の飛沫虹色待ち合わせ(はなこ)
特選 楽しい待ち合わせなのだと思う。みな子
入選 三流
1点句 地下道に風鈴の群鳴りに鳴り(横井あらか)
入選 帰心
1点句 短夜や明けて寝足らず片頭痛(彰)
入選 ケン
1点句 手塩ふる手塩にかけた初茄子に(ケン)
入選 「天塩」のリフレインが微笑ましい。愛情込めて一生懸命に育てた茄子を遂に食べる喜び。雪待月田猫
1点句 草々の勢(せい)の弥(いや)増す半夏生(彰)
入選 炎天下元気のいい夏草が羨ましいです。加藤春海
1点句 隙見せぬ松の木陰の鉄砲百合(ケン)
入選 時代劇のワンカットみたい。百代
1点句 微動だにせぬ風鈴をリストラす(横井あらか)
入選 かめしち
1点句 ひとまづはビール一杯イカキムチ(梦月)
入選 良いですね。仕事帰りの楽しみ。垣内孝雄
1点句 老いじまい意を急かせたる葭戸(よしど)かな(百代)
入選 ケン
1点句 首から前へ白鷺歩む青田中(みな子)
入選 詠まれてみれば納得。荒 一葉
1点句 天然の鮎と木札の老舗かな(加藤春海)
入選 かめしち
1点句 荒梅雨やゲート開放夜明けダム(光雲2)
特選 切迫感が伝わりました。八千代
1点句 一人また襖蹴とばす昼寝の子(荒 一葉)
入選 彰
1点句 断捨離の写真枕に三尺寝(百代)
入選 断捨離とはいえ懐かしい思い出がいっぱい詰まっていますね。切なくも、しみじみとしたいい句だなと思いました。蒼鳩 薫
1点句 一粒の塩の輝き人もまた(三流)
入選 彰
1点句 踝にほうたるの闇纏ひ付く(佳楓)
入選 蛍には闇がつきものなのだろう。踝にまといつくのがよい。みな子
1点句 団扇風昼寝の頬を撫でてゆく(はなこ)
特選 どなたに扇いでいただいたのかな。垣内孝雄
〈俳句気まぐれエッセイ㊵ ジャズ②Ⅿさん〉 今泉 かの子
自分でお金を稼げるようになって、ジャズのライブによく出かけた。半世紀近い昔である。新卒として同期に赴任したⅯさんとは不思議に馬が合った。彼女は「私は自分から線を引くタイプ」と宣わったが、その潔さは魅力にもなっていた。いつもライブ情報をこまめにチェックし、チケットをいち早く入手。プレイガイドまで出向くのは、けっこう面倒だったと思うが、「好きだから」と笑っていた。二人して「ラブリー」や「サテンドール」で週末の夜を楽しんだ。なかでも一番よく通ったのは、岡崎の「サムタイム」である。
今はどうかわからないが、かつてエンタメ界では、東京公演の次は大阪と、いわゆる「名古屋飛ばし」と云われる横行があった。が、岡崎に内田修医師あり。内田先生はジャズミュージシャン御用達の御典医?として、不摂生になりがちなジャズメンから大いに頼りにされている、と聞いていた。そのおかげで「名古屋飛ばし」はあっても「岡崎飛ばし」はなく、「サムタイム」では名プレイヤー等によるジャムセッションがときおり行われていた。
「サムタイム」は吉祥寺の店に劣らぬ、雰囲気のよいライブハウスだった。顔なじみになったせいもあろうか、それなりにちやほやされる若さはまだあったのか、私達は、ちょっとしたおつまみやサイン入りの色紙等、特別感のあるものを頂いた。ギタリスト渡辺香津美氏の流れるようなサイン。「天才は忘れた頃でも木にぶらさがっている」というシュールなコメントの入った坂田明氏の色紙等々。
彼女はジャズを通して知り合った方と結婚し、その後癌に冒された。最期は在宅療養となり、家族に看取られ息を引き取った。亡くなって十年以上経つが、山口小夜子のようなおかっぱ頭や、黒を基調とした印象的な装いは、今も記憶に鮮やかだ。彼女は田原の海辺育ち、私は三河の山家育ち。もうまもなく、八月が来る。
さみどりを翅にのこして蝉の果つ かの子
第48回ウェブ句会(2024年6月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
5点句 傷つくも癒すも言葉雨の薔薇(光雲2)
特選 言葉の持つ二面性と雨の薔薇の共鳴効果効いている。荒 一葉
特選 言葉というものは、ちょっとした一言で、相手を元気づけたり、傷つけたりしますね。ドキッとさせられました。佳楓
特選 ケン(コメント無し)
入選 河島八々十・三流
5点句 検診の大凡よしと心太(加藤春海)
特選 「大凡」と言うと大愚と称した良寛和尚を思い出すのですが、この句からは、達観した中にも心太を味わう心の余裕が感じられ好感を持てました。順一
入選 「大凡よし」に、嬉しさと安堵の気持ち、共感します。心太のひんやり感がいいですね。百代
入選 健診結果が気になります。若いころは健診などすっぽかしの常習犯でしたが。燕太
入選 帰心・みさゑ
5点句 納屋に吊るサンドバッグや青嵐(すーちゃん)
特選 納屋のサンドバッグを打つ(あるいは蹴る)のは誰か、どんな気持ちで打って(あるいは蹴って)いるのか。もしかしたら、その人はもうそこにはいないのかも。青嵐が想像を鮮やかに膨らませます。百代
特選 サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」が思い浮かびました。蒼鳩 薫
入選 サンドバッグを叩く若々しさに青嵐の季語が響き合う。荒 一葉
入選 納屋に吊るされているのがサンドバッグというのが、若々しい。みな子
入選 順一
4点句 面構へどいつも頑固牛蛙(荒 一葉)
特選 なるほど。しかし、外見で決めつけてはいかんようにも思いますが…。燕太
入選 牛蛙が田んぼにひしめいているのでしょうか。懸命に生きる彼らの、その面構えが頑固に見えてしまうのは、勝手に連れて来ておいて特定外来生物よと忌み嫌う、人間の無責任さゆえだと思いました。横井あらか
入選 光雲2・河島八々十
4点句 藍褪せてなほ捨て難し衣更(百代)
入選 藍色には48種類があるそうで、「藍白」と呼ばれるものはほとんど白。それでも藍は藍、一途な色で好きだと思います。はなこ
入選 光雲2・帰心・彰
4点句 白服を帆に自転車の登校子(百代)
特選 走り過ぎた風のさわやかさ。はなこ
特選 白服を帆のように膨らませて、自転車で急ぐ登校の男子を想像して涼しさを感じる。みな子
入選 白い夏服が帆に見えるほど風をはらんでいる。学校に向けて、学生さんは一生懸命に自転車を漕いでいるのでしょう。若々しい力を感じました。横井あらか
入選 すーちゃん
4点句 お揃いの大小中の夏帽子(かめしち)
入選 ご家族で被る夏帽子ですかね。垣内孝雄
入選 夏帽子の並んだ順が大小中なのかな?みな子
入選 すーちゃん・彰
3点句 夏兆す腕白子らの泥団子(荒 一葉)
特選 腕白でもなく泥団子に逃げ回った昭和の夏とどこか違う夏空。彰
入選 三流・雄一郎
3点句 どくだみの進軍ラッパ鳴り止まず(かめしち)
入選 山岡和範の詩「どくだみ」「忘れない記憶」「神の国に生まれたぼく」を読みました。私は戦争を知りませんが、どくだみは私にとって最も身近な草の一つで、心に刺さりました。百代
入選 すーちゃん・光雲2
3点句 緑蔭や鞄一つの草枕(蒼鳩 薫)
入選 学生さんか勤め人さんか。清々しく伸びやかな景が広がります。百代
入選 最低限の荷物を枕に、木陰で眠っているのか。至福の寝顔に心地よい風が吹く様子が浮かぶ。雪待月田猫
入選 彰
3点句 父の日のがつつり厚きハンバーグ(蒼鳩 薫)
特選 分厚いハンバーグを食べているお父さんーまだまだ元気だ。親の元気な姿を見ることほど、子供として嬉しいことはない。帰心
特選 「がつつり厚き」の措辞に、「お父さん、いつもありがとう」の気持ちを感じました。「ハンバーグ」の措辞に、そこはビフテキとかじゃないんだ、と笑いました。横井あらか
入選 がっつり厚いハンバーグ食べて、お父さんもうひと頑張りして下さい!お父さんお願いいたします。切なる願いをハンバーグの厚さに込めて。佳楓
3点句 フェンスに張り付く尺取沖縄忌(佳楓)
特選 光雲2(コメントなし)
入選 すーちゃん・ケン
3点句 ひまわりや三陸鉄道復興譚(帰心)
入選 季語が明るく、力強さを表しているようでいいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 かめしち・順一
3点句 片蔭や酸素ボンベと散歩する(雄一郎)
入選 呼吸器疾患を患っておられるのかボンベは大切ですね。垣内孝雄
入選 酸素ボンベを相棒にされて‥。季語の片影にぐっときました。百代
入選 秀作に推したいお句でした。酸素ボンベは命の綱であり、友でもあります。生きると言うことは大変な力がいります。「酸素ボンベと散歩する」なんて可笑しみの中に切なさを詠みとらせて頂きました。佳楓
3点句 この村に大師伝説栗の花(燕太)
特選 三度栗の伝説は各地にありますが、遠州七不思議の静岡にある村でしょうか。みさゑ
入選 山村まで巡った弘法大師の伝説が栗の花で生かされていていいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 大師様の伝説はきっと村のための大きな仕事なのだろうが、咲いているのは栗の花なんですね。みな子
3点句 二人ゐてこその余生や新茶汲む(佳楓)
入選 お健やかに。垣内孝雄
入選 情景が目に浮かびます。加藤春海
入選 偕老同穴、結構ですな。ところで余生とは何歳から始まるのですか。燕太
2点句 草笛や遅々と流るるちぎれ雲(みさゑ)
入選 整った句。垣内孝雄
入選 河島八々十
2点句 巣を見つめ空へいざなう親燕(はなこ)
入選 光雲2・三流
2点句 石庭のさざなみ動く梅雨の蝶(光雲2)
入選 写実的。一瞬の驚きと、蝶と分かり安堵する様子に共感した。動と静の対比も心地良い。雪待月田猫
入選 順一
2点句 五月尽ぶらんこ下の水溜まり(みな子)
入選 ひと頃の賑やかな子らの影を残す水溜まりに五月尽の季語が効いている。荒 一葉
入選 河島八々十
2点句 八十路すぎ後幾度の衣がえ(加藤春海)
特選 かめしち(コメントなし)
入選 雄一郎
2点句 円安の値上げラッシュや遠花火(ケン)
入選 取合せが諧謔味があって面白いなと思いました。蒼鳩 薫
入選 かめしち
2点句 明易し未読メールの点滅す(燕太)
入選 未読メールの点滅と季語の取り合わせが効果的。荒 一葉
入選 帰心
2点句 父の日のカセットテープの浪花節(かめしち)
特選 祖父も「浪花節」が好きでした。垣内孝雄
入選 みさゑ
2点句 ひとところ闇のからまる蛍沢(佳楓)
特選 蛍の飛ぶ沢の深い闇が「からまる」の措辞によって、立体的に立ち上がってきました。すーちゃん
入選 蛍が光るからこそ闇が一層深く絡まっている表現がいいなと思いました。蒼鳩 薫
2点句 しあわせはいつもふたあつさくらんぼ(荒 一葉)
入選 全て平仮名で書かれているせいか、「ふたつ」を「ふたあつ」と伸ばしているせいか、幸せそうな様子で2個1組のさくらんぼを食べようとしている幼児が連想されました。横井あらか
入選 かめしち
2点句 田水張る赤の電車の通り過ぐ(帰心)
特選 田んぼ小と言われた小学校からの帰り道、度々見た光景です。水に電車や汽車が映っていたりしました。懐かしさで特選とさせていただきました。雄一郎
入選 名鉄電車の赤でしょうか。育った稲の緑との対比も鮮やかだと思います。はなこ
2点句 花空木の坂の向こうのトトロの木(みな子)
入選 みさゑ・燕太
1点句 突然に海老が跳ねたる夏料理(燕太)
特選 突然に海老が跳ねたという驚きが直に伝わってくるように感じました。河島八々十
1点句 青梅が琥珀を夢む硝子瓶(はなこ)
特選 梅酒の待ち遠しさが伝わる。「琥珀を夢む」が詩的で、写実的でもあり秀逸。瑞々しい青梅が目に浮かぶ。雪待月田猫
1点句 大関の四股名変はりぬ雲の峰(みさゑ)
入選 帰心
1点句 伸びやかに枝を広げて杉五月(みな子)
特選 かめしち(コメントなし)
1点句 灯籠も瓦も織部青葉風(すーちゃん)
入選 深みのある暗緑色の織部焼が青葉風の中で清々しい。荒 一葉
1点句 ちらほらと家の灯りや螢川(垣内孝雄)
入選 ケン
1点句 百足の手欲しきレジかな十八時(雪待月田猫)
入選 ケン
1点句 蔦青くビートルズ流る喫茶店(百代)
入選 ビートルズですか。もう半世紀も前のことになりました。燕太
1点句 木の枝へやくわんを掛けてハンモック(すーちゃん)
入選 順一
1点句 休耕地ぽつんと青田休耕地(横井あらか)
入選 「休耕地」の繰り返しがリズムと対比、空間の広がりを生んでいるのが秀逸。青田との色彩の対比。失われてゆく寂しさと、希望や生命力との対比。雪待月田猫
1点句 省みるわたしのまちがひ青葉闇(はなこ)
入選 思春期か、青春時代に何かあったのか。青葉「闇」というのは黒歴史か――想像力をかき立てる。雪待月田猫
1点句 大輪の黄色い薔薇に吸い込まれ(雄一郎)
入選 吸い込まれるほどの大きさか黄色なのか。みな子
1点句 日焼止め歩きながらも塗つてをり(河島八々十)
入選 ケン
1点句 時の日やメトロノームをラルゴにす(帰心)
入選 暇なようで何となく忙しい日々、せめて「時の日」ぐらいは、のんびりと静かな音楽でも聴いて過ごしたいものですね。佳楓
1点句 栗花落香の泥リンピックや空青し(ケン)
入選 栗花落が解らないので、スマホで調べました。なんと、「つゆいり、つゆり」と読み、梅雨入りの季語でした。奈良時代の役人の悲話から生まれた言葉で、その一族が名乗った名字で、全国に70名、この季語に一票です。佳楓
1点句 若竹の天に向かいて皮は地に(彰)
入選 「若竹の天に向かいて」で視線がのびのびと空に向かい、「皮は地に」で途端に足元がクローズアップされる、そんな映像が脳裏に浮かびました。成長という希望、それとともに、過去への感傷もあるような。横井あらか
1点句 端居して過ぎにし日々を語りをり(加藤春海)
入選 彰
1点句 半夏生使はれぬ田を一周し(順一)
入選 かめしち
〈俳句気まぐれエッセイ㊴ジャズ①田中氏〉 今泉 かの子
五月、上京したその日は、ラッキーが重なり嬉しい日となった。吉祥寺のピアノホール「サムタイム」。身重の娘の体調もよく、当日昼の電話で、午後の席の予約が取れたのだ。一時間ほどの軽いジャズライブである。お目当ては、ジャズピアニスト田中信正氏。
田中氏のピアノと出合ったのは二十年ほど前、名古屋のジャズ・イン・ラブリーだったと思う。理性と狂気の境を揺れ動くような演奏に、その高い鼻梁と鋭い眼光に、私はひそかに「平成の芥川」と名づけていた。当時店では、いろいろなグッズを販売、私もCⅮ等を度々購入した。
ランチを済ませ、どきどきしながら吉祥寺へ。「サムタイム」は、煉瓦のアンティークな雰囲気のライブハウス。痩躯の青年は、痩躯のままスキンヘッドとなり、スピリチュアルな風貌となっていた。が、以前同様、その演奏には魅了された。パワフル且つ繊細。長い時を経て、再びライブに出合えたことに、母と娘は静かに狂喜していた。ライブ後、娘が、彼のソロアルバム『マミーズダンス』を何百回となく聴きましたと伝えると、田中氏は、ちょっと驚いたように「こんな人いるんだー」と照れながら返された。店を出て、娘に「マミーズダンスって、母のダンスで母の日にぴったりだね。」何気なく言ったら、「なに言ってるの。マミーはミイラだよ。」えっ、まさか『ミイラのダンス』だったとは。
ラッキーなこの日、お腹の児も、彼の演奏を聞いただろうか。数日後、娘は無事第二子を出産した。
煙管持つジャズマン泰山木の花 かの子
第47回ウェブ句会(2024年5月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
6点句 たかんなへ一筆添えて勝手口(加藤春海)
特選 さりげない友の気遣いに勝手口にも春が来ている。荒 一葉
入選 沢山掘れた時には「お裾分け」。垣内孝雄
入選 彰・みさゑ・すーちゃん・ケン
6点句 遠山の容(かたち)隠して緑雨かな(彰)
入選 静かな雨模様に、ほっとします。はなこ
入選 緑雨の美しさを感じる。見えないが確かに遠山の形をくっきりと感じる。みな子
入選 十七音に雄大な情景を映し込み、そして季語の緑雨が味わい深くていいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 百代・荒 一葉・みさゑ
5点句 草若葉なびかせ猫の歩み来る(みな子)
入選 草若葉をなびかせて歩み来る猫、その猫自身も毛をなびかせている光景が目に浮かびます。百代
入選 ・すーちゃん・河島八々十・彰・順一
5点句 沈丁の花にみじかき停車かな(河島八々十)
入選 沈丁花の芳香をもっと味わいたいのに、バスは待っててくれませんね。そんなことを想像しながら鑑賞させていただきました。蒼鳩 薫
入選 短い停車駅、もうすぐ廃線になる駅でしょうか、その短い停車時間に、甘く強い香りの沈丁花の香りを惜しむ情景が浮かびました。短き停車の表現が秀逸ですね。佳楓
入選 帰心・三流・すーちゃん
4点句 菓子パンと対の思い出溝(みぞ)浚(さら)へ(百代)
特選 菓子パンと溝浚えが対になっているのは、そのとき菓子パンがもらえたからかな?対が良かった。みな子
入選 共同作業で下されるパンと理解、溝浚えへの思いまでは詠みつくせないが具体的に知りたく思ふ。彰
入選 対の思い出の表現が、良かったと思います。佳楓
入選 順一
3点句 夏立ちて五類一年紅をさす(百代)
特選 五年前のコロナウイルスが、感染症法上の五類に移行され、8日で、一年になるとのこと。夏が来ました。さあ、自由に出かけます。紅さして、まだまだマスクして。誠に上手く表現されたと思いました。佳楓
入選 「新型コロナが五類になって一年たち、流行も落ち着いてきた。感染が怖くて引きこもっていたが、そろそろ化粧をして外出してみようか。」という句だと思いました。雄一郎
入選 荒 一葉
3点句 口下手は父の取柄ぞ笹粽(垣内孝雄)
入選 男は無口、口下手が良いかも。佳楓
入選 帰心・雄一郎
3点句 柏餅今は二人の午後三時(はなこ)
特選 お二人で暮らす老後の日々。垣内孝雄
入選 そうですね。遠い昔が懐かしい。何をするにも、何処に行くにも二人、どちらかがいづれ一人になる日迄、助け合って生きたいものですね。佳楓
入選 雄一郎
3点句 ネクタイはタータンチェック麦の秋(帰心)
特選 この句からは風さえ感じられると思いました。ネクタイや麦の秋から醸し出される雰囲気から風を想起させて頂きました。順一
入選 青春の思い出の一場面を切り取ったようで、懐かしさを憶えます。百代
入選 光雲2
3点句 水際の影を揺らして葭青む(佳楓)
入選 観察眼と俳句力がすごいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 河島八々十・ケン
3点句 身の丈に生きてけふあり菜飯炊く(荒 一葉)
特選 三流(コメントなし)
特選 ゆき(コメントなし)
入選 ケン
3点句 春深くやさしき声の車掌かな(河島八々十)
入選 「ホームにて」ではふるさと行き最終出発を駅長が告げる。今どきやさしい声ってのは沁みますね。彰
入選 良い車掌さんに出会えて幸運だと思う。なかなかやさしき声には出会えないから。みな子
入選 ゆき
3点句 ほほえみに隠す本心蛇苺(荒 一葉)
特選 蛇苺は無毒、隠す本心もそれほどのことでなく、良好な人間関係を保つ方法なのかも。みさゑ
入選 オーこわい。燕太
入選 順一
2点句 産声の受信うれしや樟若葉(光雲2)
特選 「産まれたよ」の報告とともに、赤ちゃんの動画がスマホに送られてきたのではないでしょうか。大きくなる樟が書かれているのは、大きく育ってほしいという意味が含まれているような気がします。雄一郎
入選 リアルタイムで嬉しい実況。燕太
2点句 遠き田の代掻き知らす濁(にごり)川(彰)
入選 穏やかな景色が浮かび、水の流れる音が聞こえてきます。はなこ
入選 昔、小川へ魚をとりに行くと、こういうことがよくありました。私にとっては懐かしい思い出です。蒼鳩 薫
2点句 江戸つ子になりし気分や初鰹(燕太)
入選 「初鰹」はなぜか食べたくなりますね。垣内孝雄
入選 ケン
2点句 薫風や神父は今日も愛を説き(西村青夏)
特選 薫風の瑞々しさと、神父の説く精神性の清らかさ。運ぶ、伝わる、伝播する、風と愛の永遠を思いました。すーちゃん
入選 「愛」は大切な教え。垣内孝雄
2点句 はぢらひの二の腕白き薄暑かな(荒 一葉)
入選 帰心・三流
2点句 抱卵のつばくろに会う朝の駅(はなこ)
特選 先日、スーパーで私も見かけました。一生懸命卵を抱き、巣を守っている親燕を見ると、共感しそして応援したくなります。蒼鳩 薫
入選 百代
2点句 鍋持って豆腐を買ひに昭和の日(佳楓)
入選 そうでした、そうでした。燕太
入選 みさゑ
2点句 芍薬のほのかに匂ふ泣き相撲(ケン)
特選 どこの神社か、子どもの健やかな成長を願う泣き相撲の会場に匂う芍薬。日本の各地に残る伝統行事が一幅の絵のようです。百代
特選 お相撲さんと赤ちゃんはとてもお似合い。泣き声は健やかな自己主張のようで微笑ましいです。はなこ
2点句 行く春や木綿問屋の長屋門(燕太)
入選 歴史ある町を想う。垣内孝雄
入選 ゆき
2点句 ちぎり絵の花火のやうな額紫陽花(ケン)
入選 加藤春海・光雲2
1点句 牡丹散る昨日一片今日二片(西村青夏)
入選 荒 一葉
1点句 散る桜ぐんぐん距離を伸ばしけり(河島八々十)
入選 すーちゃん
1点句 海苔粗朶の並びうつくし春干潟(帰心)
入選 光雲2
1点句 いつの日かパリを訪ひたし薔薇香る(西村青夏)
入選 順一
1点句 ひらがなのいろはにほへと鉄線花(加藤春海)
入選 鉄線花にはひらがなが合うと思う。みな子
1点句 散々に試しては措くサングラス(百代)
特選 サングラスの試着をしている情景や作者の心理状態がこの句から鮮やかに見えてきて、微笑ましい気持ちになりました。帰心
1点句 佐保姫の招きやわれら猫バスへ(すーちゃん)
入選 春の女神の招きで、さあ猫バスに乗ろうとしている。こころはうきうき。みな子
1点句 板前の鉢巻いなせ初鰹(みさゑ)
特選 光雲2(コメントなし)
1点句 朱鷺の絵の切手を買って立夏来る(みな子)
入選 帰心
1点句 竹の秋紙垂のさ揺らぐ手児奈の井(みさゑ)
特選 万葉集に歌われる手児奈(てこな)さんの伝説、知り得ました。彰
1点句 雨上がる濡れて艶やか花菖蒲(光雲2)
入選 ゆき
1点句 初夏の鳥芽を啄むの止めなさい(順一)
入選 命令形なのが面白い。燕太
1点句 青田風棚田千枚ふきぬけり(光雲2)
特選 ケン(コメントなし)
1点句 エプロンを外し薄暑を脱ぎにけり(佳楓)
特選 実感がこもっていて、表現の巧みな句だと思いました。河島八々十
1点句 只管打坐雲水一人聖五月(加藤春海)
入選 光雲2
1点句 藁屋根や小風に聡き鯉のぼり(みさゑ)
入選 荒 一葉
1点句 払暁の牡丹開くやきはやかに(蒼鳩 薫)
入選 ゆき
〈俳句気まぐれエッセイ㊳ 猫の話⑧〉 今泉 かの子
山の家では、土曜はランチに行く日である。以前紹介した、赤字覚悟の町中華「ワーゲンハウス」。店の名のとおり、車好きバイク好きも遠方から顔を出す。時には食材がなくなり、早々と閉店の看板を出すこともある。ということで、早めに徒歩数分の距離をご近所さん等とぶらぶら歩く。いつも後を従いて来る飼い猫オリーブは、なぜかその日、途中で姿が見えなくなった。
ランチを終え、満足至極で帰宅。ふと冷蔵庫に目をやったとき、ちょっと混乱した。そこに見たのは、鳥の置き物。けっこう大きい。あそこに置き物なんてあったっけ?精緻な羽根の模様、しかも嘴が異様に長い。はて?そして目に入ったのは、離れたところに散乱する鳥の羽根。愛猫オリーブは何事もなかったかのように座っているが。これはいったい…本物の、生きている鳥だ。おののくと同時に絶叫!もう、こわくてこわくて。鳥が怖い。自分がここにいることが怖い。ネコは獲物をとらえ、なんとここに持ち込んだ。たとえ戯れ事であれ、生きものと生きもののあいだの、命に関わる攻防があったのだ。
薄暑光つくばふ鳥は鳥の息 かの子
その後、夫が羽根を片付けてくれ、鳥は隣家の山の師匠に手渡され、保護されることになった。師匠によると、この鳥はタシギ。シギは、三夕の歌の「鴫立つ沢の秋の夕暮れ」か、あのムーディーな映画音楽「いそしぎ」くらいで、言葉しか知らなかった。いきなり身近な存在になった鴫であるが、季語としては、秋の部に入っている。
タシギ捕る去勢の猫や青嵐 かの子
猫を愛する夫や近所の人らは「大したもんだ」とか「見直したよぉ」とか口々に言っていたが、私は複雑な思いだった。師匠はまた襲われないようにと柵で囲ってくれていたが、後日無事飛び立った、と聞いた。致命的な傷ではなかったことに安堵した。
万緑やつばさは空をひとは地を かの子
第46回ウェブ句会(2024年4月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
6点句 朝寝して不都合も無き自適かな(百代)
特選 我が意を得たりです。加藤春海
入選 悠々自適の極み。荒 一葉
入選 定年後の悠々自適を満喫。みさゑ
入選 悠々自適な朝寝うらやましい限りです。俳諧味があっていい句だなと思いました。蒼鳩 薫
入選 私は目覚めて、夢の中の失敗の責任を問われることなき身分を悟り、ホッとします。彰
入選 朝寝坊できる貴方様が羨ましい限りです。この春をリハビリ通いに使いきってしまった私には、朝寝が許されませんでした。 羨ましい限りです。リハビリ頑張ります。佳楓
6点句 鈍色に染まる琵琶湖や竹の秋(帰心)
入選 鈍色と緑との「景」。垣内孝雄
入選 鈍色を心にとどめたのは何故でしょうか。はなこ
入選 琵琶湖の湖面が鈍色なのは夕方なのか、寂しさを感じる。みな子
入選 すーちゃん・光雲2・ケン
5点句 岬へと続く街道菜の花忌(蒼鳩 薫)
特選 白髪に黒縁めがねの司馬遼太郎氏の面影と、岬から眺める、海の望洋たるさまが浮かんだ。多くの人の胸の中で、氏は今も街道を歩いているのではないか、と思う。すーちゃん
入選 「菜の花忌」に深みを覚える。垣内孝雄
入選 通勤時代に馴染んだ車窓から見た風景を思い出します。百代
入選 司馬遼ファンとしては素通り出来ない一句。燕太
入選 ケン
4点句 何気なき日々が一番いぬふぐり(荒 一葉)
特選 光雲2(コメントなし)
特選 かめしち(コメントなし)
入選 本当にそうありたいですね。が昨今の世界情勢、物価値上がり、年金の減額、迫りくる心身の衰え、カレンダーは、リハビリに内科に外科に耳鼻科にMRI、と真っ赤です。身に染みるお句有り難うございました。佳楓
入選 ケン
4点句 にぎはひのはづれに花の茶会かな(河島八々十)
特選 上五から続くかな文字に誘われてゆるやかに辿る茶会(野点か)への道。抒情豊かな映画のような趣に惹かれました。百代
入選 すーちゃん・彰・三流
4点句 さくらさくら余生にもある締め切り日(佳楓)
特選 予想しない展開に俳味に通じる面白さがある。燕太
特選 年をとっても締め切り日があるということの重大さが感じられる。みな子
特選 つぶやきのようで、それでいて深い句だと思いました。河島八々十
特選 かめしち(コメントなし)
4点句 百磴に並みゐる千のひひなかな(みさゑ)
入選 毎年ひな祭りの頃にニュースで見る「百段階段」に並ぶ千体の雛人形の映像が瞬時に目に浮かぶ。「並みゐる」がその迫力を感じさせます。百代
入選 石段を上り下りするたびに、たくさんの雛が飾られ、いいなと思いました。中七が素晴らしいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 荒 一葉・河島八々十
3点句 東京に大学多し桜咲く(垣内孝雄)
特選 遠方から上京し大学生活を始める生徒も多い東京。本人も、本人を送り出した家族も期待と不安を抱いていることだろう。桜が彼らを応援している。帰心
入選 言われてみれば、桜が咲いて気付かされることの一つだと思いました。百代
入選 すーちゃん
3点句 磯山に沖の小島にまた桜(彰)
入選 穏やかな日本の春、桜と美しい海山島の情景がいいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 見晴るかす小島に桜。遠近の桜を鑑賞できたのかもしれません。順一
入選 河島八々十
3点句 春筍や国の老父よ無理するな(蒼鳩 薫)
入選 労りですね。春筍を送って来たのかもしれません。筍作りで無理するなと、作らない分休んでくれと、そんな切なる希求が感じられました。その結果この句の中で季語が活き活きと感じられていいと思いました。順一
入選 帰心・彰
2点句 子ら去りてふらここなおも揺れ続く(西村青夏)
入選 光雲2・彰
2点句 傾斜鉄道(インクライン)散りゆく古都の夕桜(光雲2)
入選 亀山に続く鉄路の夕桜かな。垣内孝雄
入選 帰心
2点句 スタバにてスマトラコーヒー三鬼の忌(みな子)
特選 順一(コメントなし)
入選 スマトラコーヒーと三鬼の忌の組み合わせが良い。荒 一葉
2点句 蒼穹に再来告げる初燕(はなこ)
入選 「再来」とはいいですね。またやって来ましたと言う感じがいいと思いました。順一
入選 光雲2
2点句 蕎麦喰ふや雪解雫の合掌家(帰心)
入選 春浅い大内宿が浮かびました。みさゑ
入選 すーちゃん
2点句 一陣の風一斉に花吹雪(百代)
入選 光雲2・三流
2点句 眺め入る奥千本や花の茶屋(垣内孝雄)
特選 吉野の桜は素晴らしいです!みさゑ
入選 ケン
2点句 花月夜はらりひらりと散りかかる(みさゑ)
入選 花散ることの美しいこと。みな子
入選 三流
2点句 命かけ乳吸ふ稚児に花一片(ケン)
特選 力強さと可憐さが生命そのものだと感じます。三流
入選 乳呑み子の生命力には驚かされます。遠い昔の子育て時を思いだしました。「命」と「花」くっ付き過ぎかとは、思いましたが、
好きなお句です。佳楓
2点句 シャガールが四月の部屋の壁に舞う(はなこ)
特選 壁に舞っているのは「空飛ぶアトラージュ」でしょうか?旅立ちを暗示していますね。荒 一葉
入選 シャガールの絵と同様に不思議な味わいに魅かれる。燕太
2点句 八十歳(はちじゅう)を最後と花のクラス会(百代)
特選 私と同年代の作者とお見受けいたしました。八十歳を越えるという作者の心情が「花のクラス会」に、ありありと、おろおろと、込められていると八十一歳の私には詠みとれました。佳楓
入選 かめしち
2点句 散る花にひかり添ひゆく昼つ方(みさゑ)
特選 中七の修辞に惹かれる。垣内孝雄
特選 三好達治の詩を思い出しました。「あはれ花びらながれ をみなごに花びらながれ…」。はなこ
2点句 入学式歩む生徒の起こす風(はなこ)
入選 帰心・三流
2点句 花筏もんどり打ちて堰越ゆる(佳楓)
特選 もんどり打ちてがいいですね。ケン
入選 かめしち
1点句 花冷えや電池の切れし大時計(燕太)
入選 私もたまたま掛時計の電池が切れて、「花冷え」の季語が合うなと感じました。百代
1点句 地虫出づコスパタイパと姦しい(荒 一葉)
入選 コスパとタイパ・地虫出づが面白く効いているかと。みさゑ
1点句 飛び込まぬ蛙ちらほら語りをり(ケン)
入選 両生類の利点を楽しんでいるのかしら。はなこ
1点句 孤独だが孤立ではなし春の虹(荒 一葉)
入選 かめしち
1点句 茎立ちの葉牡丹の花晴れやかに(みな子)
特選 葉を重ねて観賞用の花擬きを演じ切り、いよいよ小さいながら本当の花です。彰
1点句 開山は高僧と聞く遠霞(すーちゃん)
入選 河島八々十
1点句 生涯の友との出会う入学児(かめしち)
入選 友にもなるが、宿敵にもなりそう。燕太
1点句 花びらの転がって来る道の上(みな子)
入選 かめしち
1点句 花桃を妻と娘と見てゐたり(帰心)
入選 河島八々十
1点句 試し書くペンのカラフル春休み(すーちゃん)
入選 春休みののんびりした時間、ペンのカラフルさに春休みらしさを感じる。みな子
1点句 地震あとの千の棚田を打ち返す(佳楓)
入選 「打ち返す」に復興への「力」を思う。垣内孝雄
1点句 ノーマスクを機械が叱る万愚節(燕太)
入選 帰心
1点句 春潮に屈かがめば近し水平線(彰)
特選 光にあふれた春潮に、手を浸しておられるのでしょうか。観察と体験の写生句としていい句だなと思いました。中七が素晴らしいなと思いました。蒼鳩 薫
1点句 万愚節おならを映すレントゲン(すーちゃん)
入選 屁だとて、あだやおろそかにはできない。燕太
1点句 地震あとの花の名所や蘖ゆる(ケン)
入選 この度の能登の大地震は、忘れることの出来ない悲劇でした。その惨事の能登の何処の花の名所の、一本の桜の木のひこばえを作者は見つけられた。一日も速い復興を願う作者の願いが、込められているお句。佳楓
1点句 咲き進むより散りしきる花よけれ(西村青夏)
入選 なるほどと思いました。散りしきる桜に華やかさも哀しさもあり、感慨深い句でいいなと思いました。蒼鳩 薫
1点句 わが猫は四月十日の誕生日(かめしち)
入選 猫さんのお誕生日、おめでとうございます。明るい四月です。みな子
1点句 四月馬鹿されど馬鹿にはなり切れず(西村青夏)
特選 自省が感じられました。「されど」に説明臭があるのかもしれませんが、私には自己を高めようとする切なる希求が感じられました。四月馬鹿と言う季語を上手く生かした句であるかと思います。順一
1点句 花散らす風に一喝仁王像(光雲2)
入選 仁王の眼力が花を散らす風に一喝!俳諧味が良い。荒 一葉
〈俳句気まぐれエッセイ㊲ 猫の話⑦〉 今泉 かの子
数年前、山の家の隣家に犬ほどもある大きな狐が現れた。外飼いの猫、数匹はたちどころに逃げたが、その中の一匹ふわちゃんだけが、ひるまず対峙していたらしい。ふわちゃんはその名のとおり、ふわふわの長毛で、一寸見ゴージャスなメス猫。その話に、私ら近所の者は驚嘆し、頼もしいとすら思っていた。
そのふわちゃんがやられた。長い毛におおわれた体の骨が見えるほど、足のつけ根の肉がえぐられた。しかもその辺りを二度も。それは明らかに猫同士のけんかのレベルを超えていた。
その頃、この界隈に、何かわからない獣が出没し、近所でも被害が出ていた。我が家の飼い猫オリーブも、傷を負ったらしく、さわると痛むようで、触れられるのを嫌がった。巻き込まれたのか、たまたま居合わせたのか、どこで何があったかはわからない。外に置いていた猫の餌が呼び寄せたのか。ハクビシンか、タヌキか、キツネか?あれこれ憶測を呼んだが、正体はわからないままだった。
そこでいよいよ隣家では、定点カメラを設置してみることになった。設置して二、三日後、映っていたのは、隣家のご主人と設置して去ろうとする夫の姿、のみ。初回は苦笑いで終わった。その後、設置箇所を変えてみるなどいろいろ試してはみたものの、いつも映像は猫と鹿の常連だけ。正体は神のみぞ知る、と相成った。そして、そのまま被害もおさまっていったのだった。
愛猫オリーブは数日で回復したが、ふわちゃんはビニルハウスのお気に入りの場所で、じっとしている日が長く続いた。一度目の傷は、タイマンを張って挑んでできた傷。二度目は、その傷のせいで逃げ遅れてできた傷。と見なされた。辛うじて繋がっているだけで、ぶらーんとしたままの足。蠱惑的な眼をもつメス猫は、身の程知らずだったのか。いや、その気概こそがふわちゃんなのだ、と思う。
行く春を足三本でひよいと乗る かの子
第45回ウェブ句会(2024年3月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
5点句 食ふぐらいなんとかなるさ菜の花黄(燕太)
特選 食うことに精一杯な暮らしでも菜の花の黄に見つけている希望──荒 一葉
入選 小さい頃、黄色は「きないろ」と言っていた。なんだか元気になれる色です。──彰
入選 菜の花の黄色が眩しい。──みな子
入選 帰心・ケン
5点句 幸せはいつも普段着芋を植う(荒 一葉)
特選 平凡な日常の中に幸せを感じる作者に拍手。──燕太
特選 何処までが幸せなのか不幸なのか、長く生きていて、解りません。このお句の中身には、考えさせられました。 幸せは普通で良いのでしょうが、その、普通が解らない老婆です。──佳楓
特選 普段着は丈夫で長持ち。健やかに芋の育つように。──彰
幸せは身近なものですね。──垣内孝雄
入選 かめしち
4点句 ふるさとは遠のくばかり花大根(佳楓)
特選 故郷の親しい人々も代替わりして、少しずつ足が遠のきます。寂しげな薄紫の大根の花が気持ちを代弁しているかのように。いい句だなと思いました。──蒼鳩 薫
特選 かめしち(コメントなし)
入選 彰・ケン
4点句 ほつほつと灯る漁火沖おぼろ(みさゑ)
特選 旅情を思う。──垣内孝雄
特選 光雲2(コメントなし)
入選 百代・すーちゃん
4点句 天駆ける空の涯より初燕(蒼鳩 薫)
入選 去年初めて、燕の営巣から巣立ちまでを見ました。今年も来てくれると嬉しいです。──はなこ
入選 光雲2・みさゑ・三流
4点句 今年また飾る娘の古雛(垣内孝雄)
特選 百代(コメントなし)
入選 お雛様も春の眺めに心躍ることでしょう。──はなこ
入選 光雲2・彰
3点句 地虫出づそろそろ娑婆は安らけし(光雲2)
入選 色々な地虫が様子を伺いながら出て来る様子がユーモラスに詠まれて面白いなと思いました。私も河原で小さな砂の塔みたいなものを見つけました。──蒼鳩 薫
入選 季語と中七下五の対比が面白い──荒 一葉
入選 ケン
3点句 ひと雨にまた色を足す芽吹山(荒 一葉)
特選 また色を足す、がいい。──西村青夏
入選 みさゑ・佳楓
3点句 犬ふぐり時折膝を曲げて見る(順一)
入選 小さな花にも雄蕊や雌蕊があり、小さいなりに美しく咲いています。膝を曲げて近くから見て慈しんでいるところがいいなと思いました。──蒼鳩 薫
入選 帰心・すーちゃん
3点句 薄氷の上薄氷の走りゆく(燕太)
特選 リフレインが薄氷の疾走感を見事に描き出している。──河島八々十
入選 西村青夏・みさゑ
3点句 傘寿とは老の入り口黄水仙(西村青夏)
入選 かつては80歳は腰の曲がった隠居。いざ、自分がその齢になってみると、、。──燕太
入選 かめしち・ケン
3点句 図書館に友の句集や暖かし(帰心)
入選 嬉しいものですね。──垣内孝雄
入選 句友の句集が思いがけず図書館にあった。懐かしいような、嬉しいような。旧友の温もり。──燕太
入選 河島八々十
3点句 雨上り木の芽ことごと光り立つ(彰)
入選 光雲2・百代・三流
2点句 ひとカップごとのサイフォン春うらら(帰心)
入選 さどかし美味しいコーヒーでしょう。──垣内孝雄
入選 河島八々十
2点句 鍵つ子の二人の影や春夕焼(ケン)
入選 お母さんの戻る頃かな。──垣内孝雄
入選 帰心
2点句 水温む水の豊かな星に住み(西村青夏)
入選 かめしち・三流
2点句 鶴首の壺に納まる玉椿(垣内孝雄)
入選 形の整った句。──みな子
入選 すーちゃん
2点句 水草生ふ休耕田の取水口(百代)
特選 すーちゃん(コメントなし)
特選 みさゑ(コメントなし)
2点句 縁側の猫ながながと春の昼(蒼鳩 薫)
特選 「猫ながながと」と「春の昼」がよくあっていると思いました。──加藤春海
入選 春の夜の縁側の伸び切った猫の気持ち良さが感じられる。──みな子
2点句 春雷や現場百遍の革靴(ケン)
入選 刑事ドラマの見過ぎなのかもしれませんが、吟行的なニュアンスなのかもしれません。初雷に驚いたのかもしれません。まさに「現場百遍」の極意で俳句が上達するのかもしれません。──順一
入選 河島八々十
2点句 石(いわ)ばしる水のひかりや谿は春(彰)
入選 春になって光のあふれる渓流にはアマゴや小魚がはね、小鳥たちが舞い降りて賑やかになってくる様子が目に浮かぶようです。枕詞が効いているなと思いました。──蒼鳩 薫
入選 佳楓
2点句 がき大将勲章いっぱい春の泥(百代)
入選 泥まみれのがき大将が見える──荒 一葉
入選 西村青夏
2点句 言い訳は嘘ばかりです山笑ふ(荒 一葉)
入選 私もつられて笑ってしまいました。口語と文語がうまく混ざっていてユーモラスで面白いなと思いました。──蒼鳩 薫
入選 軽味の秀逸句と思いました。普段のちょっとした事を一句に仕立てられるように成りたいと思いました。言い訳と言うものは本当に難しいですね。有り難うございました──佳楓
2点句 三月の風チョーク画の花誘ふ(すーちゃん)
入選 春風がチョーク画の花を誘うように吹く。──みな子
入選 帰心
2点句 始発待つ残る寒さや屋根真白(加藤春海)
入選 寒明け後の余寒に春待つ暮しの景──荒 一葉
入選 春の雪なのかもと思ったのですが、常識的に考えれば、珍しい真っ白な屋根だったのかもしれません。結構な低温が伝わって来て、「始発待つ」現場性が伝わって来ました。──順一
2点句 返還の目途たたぬ島遠霞(西村青夏)
入選 そこに見えている北方領土。霞がかかって遠のくばかりだ。──燕太
入選 霞の向こうには返らぬ島影が歯痒い──荒 一葉
1点句 窓掛けを母に開けられなほ朝寝(河島八々十)
入選 三流
1点句 ミモザ咲く馴染みのナンバーかかる店(すーちゃん)
特選 馴染みのナンバーに安心できるのでしょう。ミモザが咲き冬との決別が進む中馴染みのナンバーにもう少しポジティヴな意味もあったのかもしれません。──順一
1点句 中空の春満月の底光り(みさゑ)
入選 「底光り」に惹かれました。春の観月会もあるのかもしれません。──順一
1点句 ぷんと来てぴんと飛び去る春の蠅(蒼鳩 薫)
入選 河島八々十
1点句 まだ赤よ児等に叱るる青蛙(ケン)
入選 信号無視してピョンピョン跳ねて行く蛙が児童達に叱られている様子、それを見ている作者。微笑ましい光景ですね。信号の赤と蛙の青の対比がその場を明るい色彩に仕立てたのではないでしょうか。──佳楓
1点句 ボート部の惨事いくとせ春の湖(帰心)
入選 彰
1点句 朝霞光るうろくづ金鱗湖(光雲2)
入選 すーちゃん
1点句 三月は黙とう多きあの場所に(かめしち)
特選 祷りの力を信じて、私も。──はなこ
1点句 白蓮のかはたれ時の花あかり(佳楓)
特選 春の夕暮れの白蓮の美しさが灯のようだ。──みな子
1点句 街灯の光を包む朧月(寂様)
入選 朧月の大きさがあったのかもしれません。月の包容力の高さに春灯の存在感も浮かび上がったのかもしれません。──順一
1点句 冴え返る螺旋階段にある温み(みな子)
入選 光雲2
1点句 暖よりも眩しさ避けて障子引く(三流)
特選 ケン(コメントなし)
1点句 啓蟄や出口わからぬユニモール(燕太)
特選 「啓蟄」と「ユニモール」の取り合わせに思わず笑ってしまいました。本当に地下街の出口は分かりにくいですね。俳味あふれる句。──帰心
1点句 春一番シルバーカーをよろめかす(加藤春海)
入選 百代
1点句 卒業の朝詰襟の背に翼(はなこ)
入選 百代
1点句 新若芽三陸復元が香る味(寂様)
入選 かめしち
〈俳句気まぐれエッセイ㊱ 歌舞伎の周辺〉 今泉 かの子
先月書いたのは、田峯歌舞伎。その後「ナニコレ珍百景」でも取り上げられ、子どもを支える地域の力があってこそ、と感じ入った。最後の演目は、五人の子にふさわしい「白波五人男(通称)」。それが、戦隊もの「ゴレンジャー」につながっている(石ノ森氏がアイディアを得た)という伊集院氏の弁も興味をひくものだった。
カラフルなおひねり次々春興ず かの子
今月は「中村」にまつわる二本を観劇した。まずは御園座。藤原達也演ずる「中村仲蔵(なかぞう)」。江戸期に実在した人物である。梨園になんの縁故もない仲蔵が妬みや策謀、「楽屋なぶり」を経て、芸ひとすじ、看板役者に上りつめる、下剋上ともいえる物語だ。
足の泥厭はず高く紙風船 かの子
藤原達也は、蜷川幸雄演出の「身毒丸」の舞台以来。清浄且つ朗々たるかつての少年の声の響きに加えて、べらんめえ調の切れも鮮やか。舞台に置かれたドラムスの効果音、スローモーションで見せる踊りの斬新等々。画期的な演出に、圧巻の舞台に、拍手、拍手で、ついにスタンディングオベーションとなった。私も不慣れながら皆さまと同様、立ち上がって精一杯、拍手。そしてカーテンコール。舞台初日、役者の熱情は客席へ伝播、会場は興奮に包まれた。
蛇穴を出づ少年に変声期 かの子
この仲蔵、ドラマでは中村勘九郎が、熱血演じて芸術祭大賞を受賞している。その勘九郎らの「平成中村座」がこの三月、名古屋同朋高校で開幕。「白波五人男」の弁天小僧は、クールビューティ&ドスのきいた七之助が演じた。五人勢揃いしての「連ね」も見事。
花道の傘に「志ら波」花見月 かの子
芝居小屋となった体育館の席は、座布団一枚。隣とは、本当に腕が触れるくらい近い。たまたま言葉を交わした、広島在住という隣席の女性二人はなんと、泊まりがけで昨夜の舞台から参戦。しかも小倉公演へも足を運んだという追っかけぶり。「仲蔵」の話も出て幕間には、次から次へと話は尽きず、無条件にたのしかった。が、文字通り姦しいことでもあったか。(反省)その流れで帰りには、予約のタクシーに、私も同乗させてもらうことになった。
しびれたる足へ幸運うららけし かの子
名古屋駅でそのまま別れるのも心残りなような気がして、でもそこは大人の分別、名前も住所もお互い聞かないまま、「またいつかどこかの芝居小屋で」と写真一枚を撮って記念とした。まさに、袖振り合うも多生の縁。
そう、縁は異なもの、味なもの。名古屋市中村区は初代中村勘三郎の生誕地とされる。その縁で同区での上演となった。えにしに呼ばれ、えにしが繋がる。
春風や初代の像の指の反り かの子
第44回ウェブ句会(2024年2月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
9点句 春めくや小さき旅の切符買ふ(西村青夏)
特選 小さき旅の切符がとっても良かったですねぇ。佳楓
特選 小さき旅が春めくとよく調和している。燕太
入選 健やかな句。垣内孝雄
入選 電車やバス、どこへ行くにも交通系ICカードで済むこの時代。春の気配に(小さい)切符を買い「小さい旅」に出る情景がおとぎ話のようです。百代
入選 私も行ってきます。はなこ
入選 「Go toトラベル」でなく、過ぎし日の「遠くへ行きたい」。彰
入選 光雲2・帰心・ケン
5点句 良き知らせ届きし朝の初音かな(加藤春海)
特選 届いた良き知らせとは?初音の祝福が新鮮。荒 一葉
特選 西村青夏(コメントなし)
入選 タイミングの良い鴬に感じ入ったのですね。順一
入選 みさゑ・かめしち
4点句 稜線の膨らむ山や日脚伸ぶ(蒼鳩 薫)
特選 中七の「言葉」の選びの良さ。垣内孝雄
特選 みさゑ(コメントなし)
入選 春の山のなだらかでぼうとした感じがよくわかる。みな子
入選 すーちゃん
4点句 春寒し片付けなければならぬもの(順一)
特選 手元にある色々なものたち、あとどれくらい一緒にいられるのかしら。はなこ
特選 終わりの始末と理解しましたが、なかなか腰が上がりません。少しづつ…。彰
入選 帰心・佳楓
4点句 背を押され延ばす歩数や春の風(荒 一葉)
特選 かめしち(コメントなし)
入選 春風の強さ優しさが感じられる。みな子
入選 光雲2・ケン
4点句 ふらここを漕ぐや子らみな風になる(荒 一葉)
入選 「子らみな風になる」みずみずしく、優しさに包まれたいい句だなと思いました。蒼鳩 薫
入選 佳楓・西村青夏・ケン
4点句 あしかびや淡海は風の湧くところ(佳楓)
入選 淡海は風の湧くところと断定したが、説得力のある断定。燕太
入選 河島八々十・彰・すーちゃん
4点句 春来たりゆうべの豆に二羽の鳩(はなこ)
特選 小さな豆粒を啄みに、二羽の鳩が来ている朝、そこに感じる春の到来。すーちゃん
入選 豆に鳩。情景が目に浮かぶと同時に、おかしさに思わず笑みがこぼれます。百代
入選 ケン・順一
3点句 恋猫の谷中千駄木寺の町(かめしち)
入選 場所の選定が活きている。垣内孝雄
入選 河島八々十・光雲2
3点句 薄氷をほどく風音ふくらみ来(みさゑ)
入選 中七「ほどく風音」下五「ふくらみ来」独創的な表現でいいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 光雲2・帰心
3点句 梅固し肌さす風もまた固し(西村青夏)
入選 「固し」のリフレインが効いていていいなと思いました。
「梅固し」はまだ咲いていないことと理解すればよいでしょうか。「探梅」のことなのかな。「梅東風」のことなのかな。教えていただければ幸いです。蒼鳩 薫
入選 帰心・みさゑ
3点句 春の雪授業楽しく脱線す(燕太)
特選 「楽しく」の措辞から、このクラスの児童と教師の柔らかな関係が見えてくる。ほのぼのとした句。帰心
特選 ケン(コメントなし)
入選 雪が積もれば屋外の授業と脱線しますね。楽しいです。加藤春海
2点句 ひたぶるに改札口に待つ寒夜(垣内孝雄)
特選 改札の前でなかなか来ない人をずっと、ひたすらに待っている。気がつけば、夜も更けて寒さに身は凍える。それでも来ることを信じて待つのは、家族?恋人?それとも長年の友人だろうか。想像の膨らむ句です。河島八々十
入選 誰を待っているのか。寒夜の雰囲気がよく出ている。燕太
2点句 青鷺のぬき足さし足春に入る(燕太)
入選 青鷺の春の初めの感じがわかる。春に入るが良い。みな子
入選 佳楓
2点句 寒雀丸くまあるく真ん丸く(かめしち)
入選 「まるく」の表現が「真ん丸く」で言い切れている。垣内孝雄
入選 寒雀の丸さがわかる。繰り返しが、生きている。みな子
2点句 友二の忌大石に置く鳥の餌(順一)
入選 「友二の忌」との取り合わせに惹かれる。垣内孝雄
入選 すーちゃん
2点句 流木は白竜のごと春疾風(すーちゃん)
入選 加工された木だったのかもしれません。順一
入選 荒 一葉
2点句 一輪の梅の開花や謝恩会(加藤春海)
入選 みさゑ・彰
2点句 横着を一喝したる春の雷(みさゑ)
特選 虫出しの雷や、初雷、啓蟄などが思い浮かびました。横着を春の雷が一括する図、日本人にも神の観念、特に一神教の観念があるのかもしれません。八百万の神を思い浮かべれば、ちょっとユーモラスな感じもするのですが。順一
入選 春雷に気を取り戻し重い腰を上げました。加藤春海
2点句 春潮や磯の藻草(もぐさ)の揺蕩(たゆた)ひて(彰)
特選 「春潮」いいですね。きらめきがあり、薄緑の海藻が揺れている。春磯波音、情景が鮮やかに浮かんできました。蒼鳩 薫
入選 春の磯の長閑さがよい。荒 一葉
2点句 出不精の八十路を誘う春の風(かめしち)
入選 荒 一葉・西村青夏
1点句 切干や伊吹おろしを袋詰め(百代)
入選 そうすると、昆布の袋にはどこかの浜の潮騒が…。はなこ
1点句 能登を向き目瞑り齧る恵方巻(寂様)
入選 能登の大きな地震にはいつまでも、胸が痛みます。どんなにか辛く悲しい事でしょう。佳楓
1点句 雨上がる冬芽の零す陽の欠片(光雲2)
入選 彰
1点句 立春の家路を急ぐ尾灯かな(彰)
入選 行き交う車にその行き先を想像することは有りますが、「尾灯」にグッときました。百代
1点句 如月の光あふるる波しぶき(蒼鳩 薫)
特選 二月の明るい日の感じがよくわかる。みな子
1点句 字余りに指折り返す夜半の冬(荒 一葉)
入選 まさにそのとおりだなと共感です。「夜半の冬」がいいですね。苦心しながらも静かな時間が流れていくいい句だなと思いました。蒼鳩 薫
1点句 積雪の深みに潜む海の青(はなこ)
入選 かめしち
1点句 針収め古びし妣の鯨尺(加藤春海)
入選 針収めに妣への供養が重なる。荒 一葉
1点句 雪解水吹きあぐ能登の棚田かな(ケン)
入選 すーちゃん
1点句 手加減のあるは世の常大石忌(佳楓)
入選 順一
1点句 縄跳びの声も弾むや春立ちぬ(西村青夏)
入選 かめしち
1点句 山息吹く節分草の六合目(彰)
入選 下五の「六合目」に、眼前の視界やそこまでの道のりなど想像が広がります。百代
1点句 けたたまし天突く觜や鶴の舞(ケン)
特選 光雲2(コメントなし)
1点句 石專掻く目視雲量三の空(佳楓)
特選 「石專」は「石蓴(あおさ)」と理解し、「あおさ掻く」という収穫法を知りました。空を気象用語の数値で表されたことに、海の作業の厳しさを思いました。百代
1点句 特養や母やはらかく豆を打つ(帰心)
入選 母やはらかくが行き届いた。燕太
〈俳句気まぐれエッセイ㉟ 田峯歌舞伎〉 今泉 かの子
奥三河、設楽町の田峯小学校が今年四月、統合されることになった。全校児童は五人、百五十年の歴史に幕を閉じる。
この地区には一つの霊験伝説が伝わっている。江戸時代、焼失した寺を再建するため、天領と知らず村人が木を伐採。それが発覚し、旧暦六月、代官が検分にやってくることになった。その咎をおそれた村人は「お助け頂ければ、家が三軒になるまで歌舞伎を奉納します」と願をかけた。すると、検分当日、大雪が降って代官らは御用林に入れず、結局罪人を出さずに済んだ、という。
以来、約束を守り、毎年田峰観音の大祭には歌舞伎を奉納するようになった。住民たちが自ら演じて、四百年近い歴史がある。また、子ども歌舞伎も学校行事として取り組まれ、海外公演も行ってきた。
私事で恐縮だが、法曹の道に進んだ娘は一年間、米国イリノイ大学で研究生活を送った。今から七、八年前のことである。同大学には、日本的佇まいのジャパンハウス(日本館)があり、日本文化の発信を積極的に行っている。訪米の折には実際に、浴衣を着た碧い目の学生らが、茶道のお点前やしずしずとお運びをする姿を目にした。また、書道のパフォーマンスや津軽三味線、盆栽実演など、技が光る「やまと心」が記憶に残っている。
イリノイにむすぶ二重の春の虹 かの子
一人、慣れない土地で娘がお世話になったのは、米国人と結婚されイリノイ在住の日本人女性、サイコさん。同大学の技術者で、交流サークルで出会い、お宅に招いて頂くなど、親切にして貰ったようだ。
あるとき、そのサイコさんが以前、イベントで撮ったという写真を娘に見せ、できたら写真の本人に渡したい旨を話された。それは、歌舞伎上演の際のスナップ写真、十数枚。それがなんと、田峯歌舞伎御一行、面々の写真だったのだ。かくして、娘に手渡された。
この不思議とも思えるつながりに驚く。約三十年の時を隔てて、愛知の山奥の小さな集落と、米国イリノイ州の一点がつながった。「たまたま」観て、「たまたま」出会って、「たまたま」話して、「たまたま」つながった。おそれ多くも畏くも、この偶然。
その後帰国した娘から私の元へ。私の手を通じ、知り合いの方から、手渡してもらうことにした。
今年の二月の第二日曜は、例年になく暖かい日だった。小屋掛けまでしての上演は、四年ぶり。閉校に伴い、子ども歌舞伎は今年が最後の公演となった。カラフルなおひねりも景気よく飛んで、拍手喝采。今後は大人の舞台に子役として出演していくことになるという。 この奉納された日の夜更け、雪が降った。やさしい雪だった。
田峯歌舞伎奉納の夜や春の雪 かの子
第43回ウェブ句会(2024年1月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
8点句 父よりも母よりも生き年酒酌む(西村青夏)
特選 人生百年時代!お元気で頑張って下さい。みさゑ
入選 父母の享年を時として思う。垣内孝雄
入選 長生きをされていることにつつましやかな恥じらいも感じられていいなと思いました。誠におめでたいこととお慶び申し上げます。ますますのご健勝をお祈り申し上げます。蒼鳩 薫
入選 光雲2・帰心・こう子・佳楓・かめしち
7点句 やはらかき土のにほひや若菜摘(蒼鳩 薫)
入選 早春の土手の景がありあり。荒 一葉
入選 「土のにほひ」に魅かれる。燕太
入選 百代・彰・佳楓・ケン・かめしち
5点句 数減っていよよ尊き年賀状(百代)
特選 加齢にともない賀状も少なくなります。数少ない賀状が嬉しいもんです。加藤春海
入選 ほんとにそうですね。こう子
入選 帰心・佳楓・かめしち
4点句 負け独楽の笑って止まる最後かな(佳楓)
特選 中七の「笑って止まる」がまことに秀逸。燕太
入選 「笑って止まる」の措辞が的確。荒 一葉
入選 すーちゃん・ケン
4点句 手水舎の青竹に射す初日かな(加藤春海)
入選 気持の良い句。みさゑ
入選 百代・荒 一葉・三乗
3点句 おみくじを引かぬと決めて初詣(寂様)
入選 これもまた良し。垣内孝雄
入選 彰・こう子
3点句 朝焼けの光ゆがめて軒氷柱(三乗)
特選 光雲2(コメントなし)
入選 「光ゆがめて」が観察と写生が効いていていいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 百代
3点句 日の方へ微かに歩む冬の蝶(蒼鳩 薫)
特選 「微かに」の措辞が秀逸。「冬の蝶」を自分の身に置き換え、元気をいただいた。帰心
入選 荒 一葉・みな子
2点句 年玉にみかん頂く喫茶店(みな子)
入選 すーちゃん・帰心
2点句 身に叶ふ生き方通し古女噛む(佳楓)
特選 清廉潔白に生きて来られたのでしょう。十七音に凝縮した人生観が感じられていい句だなと思いました。蒼鳩 薫
特選 私も「身の丈を知る」という言葉が好きです。季語がいいですね。こう子
2点句 寂庵の一穢なき庭風花す(みさゑ)
入選 きれいな一句、風花との取り合わせがよい。燕太
入選 寂庵の清らかさが、わかる。みな子
2点句 銘柄を問うて一献女正月(加藤春海)
入選 お酒にこだわるお方ですね。垣内孝雄
入選 こう子
2点句 この町に住み五十年明の春(西村青夏)
特選 気に入られた町なのですね。垣内孝雄
特選 かめしち(コメントなし)
2点句 上り番(あがりばん)の背中に申す御慶かな(燕太)
特選 職場での正月の生活感が伝わる。荒 一葉
入選 「背中」に思い入れがあると思いました。人の背中が自分が言った事に反応していたのかもしれません。順一
2点句 初茜除々に明らむ絵馬の数(加藤春海)
特選 初日がさして広がっていく様子が、明るくなっていく絵馬の数に表され、めでたさがより具体化、視覚化された。すーちゃん
入選 茜に染まる日の出とともに、境内が明るさを増し、数多の絵馬が色鮮やかに浮かび上がっていく情景がいいなと思いました。蒼鳩 薫
2点句 鳥の眼を避けて寒鮒群れてをり(帰心)
入選 寒鮒の有り様がよくわかる。みな子
入選 百代
2点句 戦場のバンクシイの絵風光る(ケン)
特選 春の季語ですが内容と季語が合っているような気がしました。順一
入選 光雲2
2点句 一人芝居女演者の声冴ゆる(こう子)
特選 女演者の声の寒く感じるほどと思う。みな子
入選 光雲2
2点句 子育てを悩む娘やみかん剥く(こう子)
入選 聞き役に徹する母親の心情。燕太
入選 彰
2点句 渚にて風拾ひゆく千鳥かな(光雲2)
入選 「風拾ひゆく」に発見と独創的な俳諧味があり、いいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 三乗
2点句 生ゴミを土に還かえせば除夜の鐘(百代)
入選 コンポストと言うのか、肥料転換を願っていたのかもしれません。除夜の鐘で108の煩悩が自分の身から削ぎ落とせたのかもしれません。順一
入選 ケン
2点句 受験票空にシリウス手にココア(はなこ)
入選 昔の自分みたいな鬱屈が無く、うらやましい。明るい受験生励みなされ。彰
入選 三乗
1点句 マフラーの幼かけよるコロッケ屋(垣内孝雄)
入選 帰心
1点句 冬ぬくし爪切り上手な介護仕さん(佳楓)
入選 ユーモラスですね。「介護士さん」と言う座五に感心しました。順一
1点句 四温晴庭木の手入れでもするか(西村青夏)
特選 ほっと暖かい気持ちになりました。はなこ
1点句 無人駅ホームにぽつり雪だるま(垣内孝雄)
入選 殺風景な無人駅に心温まる雪だるま。みさゑ
1点句 寒月や凛と紅ひく京女(ケン)
入選 光雲2
1点句 七草のさみどりの香の朝餉かな(荒 一葉)
入選 三乗
1点句 人日の煙や畑にものを焼く(すーちゃん)
入選 佳楓
1点句 神島も伊良湖も見ゆる初景色(燕太)
入選 すーちゃん
1点句 朝靄の低く立ち込む飛騨は冬(こう子)
入選 すーちゃん
1点句 八十路故慣れぬスマホの初電話(かめしち)
入選 微笑ましい。燕太
1点句 聞いてやるだけの励まし蜜柑剥く(荒 一葉)
特選 佳楓(コメントなし)
1点句 人の日に目覚めよ我の前頭葉(帰心)
入選 ケン(コメントなし)
1点句 凍星や涙はいつも新しい(すーちゃん)
特選 中七から座五にかけての口語表現が効いている。上五の切れ字とよく響き合っていると思います。三乗
1点句 依代の千年杉の淑気かな(みさゑ)
特選 新年の身の引き締まる感じが、伝わります。百代
1点句 うなさかを離る初日の膨れやう(みさゑ)
入選 初日の膨れたような様子がわかる。みな子
1点句 後ろから肩叩かるる年の暮(すーちゃん)
入選 「お疲れ様」のご挨拶。垣内孝雄
1点句 水仙の土手にあふるる日影かな(蒼鳩 薫)
特選 とにかく冬は日差しがうれしい。そこに水仙あればなおさら。彰
1点句 初乗りはスマホのマップと総武線(かめしち)
入選 スマホでよく確認して、首尾よく目的地に着いたのかもしれません。順一
1点句 そつとおく夜食のおでん丸ばかり(ケン)
入選 頑張りが報われることを祈って。はなこ
1点句 年明けて手術に備え年賀観る(寂様)
特選 ケン(コメントなし)
1点句 子ら帰りそそくさと去るお正月(荒 一葉)
入選 独立は喜ばしいことだけれど…。はなこ
1点句 湯湯婆の湯沸く間にもスクワット(燕太)
入選 隙間時間でも積もり積もれば立派な運動ですもの。みさゑ
〈俳句気まぐれエッセイ㉞ 大会前日〉 今泉 かの子
去る一月二十日は、「若竹」創刊千百号の記念大会の前日。この日、私は来賓の先生方を西尾駅で出迎える係になった。予定されていた方の都合が悪くなり、たまたま私にその役が回ってきたのだった。
到着時刻は十二時十一分。西尾着の時刻に合わせ、鳴海駅より乗車した。重責の一端を担うつもりで。四両車両のどこかに、岸本尚毅先生と黒岩徳将先生が乗っているはずと、一両ずつ見て行った。それらしき年恰好の方はいるのだが、どうも違う。やはり御姿は見えず。二十五分間、不安とはてな?が飛び交ったまま、下車。
西尾駅改札口では、K氏が待っていて下さり、そこで初めて既にお二方とも早くに到着されていることを知った。そして車でお越しの来賓の方も合流され宗也主宰と共に、昼食場所へ向かっているとのこと。ああ、こんなことならもっと早く、家を出ればよかった。充分出られたのに。
そして、改札を出ようとしたときになって、自分の携帯がないことに気がついた。携帯のカバーにマナカのカードが差し入れてあるのだ。ポケットにもかばんの中にも、ない。何度見ても、ない。そして、ようやくこの事態を理解した。電車の中に置き忘れたのだ。私は、自分自身に深く絶望した。終わった。粗忽ものではあるけれど、ここまでだったのか。やんぬるかな。
大寒の電車に残るスマートフォン かの子
とりあえず、西尾駅の駅員さんに車中にスマホを忘れたと話し、その電車に置き忘れていないか、確認してもらうことになった。その間、K氏は慌てず騒がず、改札の柵越しに共に待っていてくださった。ホント、ありがたや。結局、スマホは無事に見つかり、吉良吉田駅保管となり、落着した。
失意のまま、K氏の車で昼食のお店へ向かうべく、駐車してあるビルの四階へ向かった。この辺に停めたはず、とK氏は言うのだが、車は見当たらない。階を間違えたのでは?との疑念から、五階へ。私もいっしょに赤い色を頼りにうろうろ駐車場内をまわったが、ここにも見当たらず。もしかして、というか、やっぱりとの思いで再度、四階へ。思っていた所とは違う、遠い所にK氏の愛車発見。
あるはずの影そこになく寒かはる かの子
そして、やっとのことで昼食場所へ。大遅刻に平身低頭したが、岸本先生は、あの穏やかな笑顔で「逆にありがたみがわかりますねぇ。」黒岩先生はびっくりされつつも、「いやぁ、あって本当に良かった。」と親身に。また、宗也主宰も「事故じゃなくてよかったよ。」といつもの鷹揚さで。さらに、誠実さを誇る中村雅樹先生は「駐車場、僕もやりましたよ。」とこれまた、お優しい言葉で。
ああ、思えば、出迎えるとは駅にいることで成立するのだ。わが失態はそこからだった。
簡単に初心忘れて初写真 かの子