過去の選句報告
2022年 第19回(1月)~第30回(12月)
2021年 第7回(1月)~第18回(12月)
2020年 第1回(7月)~第6回(12月)
特選コメントは、若竹会員に限らず全員、結社誌「若竹」に掲載されています。活字での句評も見られる毎月の購読をお勧めします。申し込みはホームページの購読案内をご覧ください。
第39回ウェブ句会(2023年9月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
8点句 芒野や風が道草してをりぬ(西村青夏)
特選 芒の重く軽く、じゃれている様をまるで風が道草をしている様に詠まれた作者、素晴らしいですね~。すすき野の景が思い浮かびました。佳楓
特選 残暑の中で、こんな芒野を待ち遠しく思っています。彰
入選 中七の詩情。垣内孝雄
入選 風が道草という表現現がユニーク。燕太
入選 薄野を吹く風が遊んでいるようなのかな。みな子
入選 光雲2・荒 一葉・順一
4点句 涼しさや木槌で叩く酢屋の樽(帰心)
特選 情感のある詩的でいい句だなと思いました。木槌の乾いた音が聞こえるようです。蒼鳩 薫
特選 木槌で叩くところが具体的燕太
特選 トントンと叩いて樽の中の酢の分量を測る。少なければ高い音、満杯ならば低い音 叩いている職人さんの動作まで見えてきそうな句だと思います。こう子
入選 荒 一葉
4点句 一応は叩いて選ぶ西瓜かな(加藤春海)
入選 西瓜が置いてあれば、どういうわけか一応はたたいてみますね。ボンボンと低い音がすれば熟れて食べごろですね。蒼鳩 薫
入選 私も、そうですね。買う気など無いのに、ちょっとだけ叩く、主婦の拙い勘を試すのでしょうかね。佳楓
入選 すーちゃん・帰心
4点句 後ろ手にしばし佇む秋夕焼(垣内孝雄)
特選 洋画を見る感じ。西村青夏
特選 光雲2(コメントなし)
入選 帰心・かめしち
3点句 朝顔に私服の宮司水遣りぬ(燕太)
入選 なにげなさのなかにある貴重なひととき。はなこ
入選 帰心・順一
3点句 残暑なお焼肉ランチ食べに行く(みな子)
入選 暑いときの焼肉、消夏法。西村青夏
入選 残暑厳しい中、焼き肉ランチを食べに行く体力、気力に敬意。燕太
入選 すーちゃん
3点句 草虱つけ放題に子ら帰る(西村青夏)
入選 燕太・こう子・順一
3点句 半時の老いの散歩や秋の蝉(加藤春海)
特選 安らぎと安堵を覚える。垣内孝雄
入選 かめしち・ケン
3点句 チェンソーを止める空師や鳥渡る(ケン)
特選 百代(コメントなし)
入選 高い木の上で、作業する危険を伴う仕事。ふと空を遠見ますと、鳥の渡って来るのが目に入る、慌ててチェンソーを止めた空師さん。いいですね~空師の後継者が居なくて大変とのこと。佳楓
入選 すーちゃん
3点句 さつと来てわつと飛び立つ稲雀(荒 一葉)
特選 順一(コメントなし)
入選 稲雀の写生が良く効いているなと思いました。蒼鳩 薫
入選 光雲2
3点句 芋を煮て生涯抜けぬ国訛り(燕太)
特選 かめしち(コメントなし)
入選 帰心・こう子
3点句 秋高し上棟式の槌の音(はなこ)
特選 槌音が秋空に響き渡って晴れ晴れとした気持ち。荒 一葉
入選 「景」が浮かびます。垣内孝雄
入選 百代
3点句 父に酒母にお団子秋彼岸(荒 一葉)
特選 ご両親の好物を持ってお尋ねするのか、それともご仏壇のお供えにするのか、親を思う気持ちが感じられます。加藤春海
入選 お酒とお団子がお好きだったのですね。垣内孝雄
入選 お供えでなく、お酒やお団子をいっしょに楽しみたいです。過ぎた月日を飛び越えて、おしゃべりができたらいいな。はなこ
3点句 菓子つつむ紙の手ざはり秋のこゑ(垣内孝雄)
入選 空気が乾いて来て、紙の音がサラサラとします。これも秋の声ととらえたところがいいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 こう子・順一
2点句 星月夜幾何の宿題苦戦中(帰心)
入選 宿題の幾何の問題に苦戦している子の家の上には美しい星月夜が広がっている。みな子
入選 すーちゃん
2点句 野分去り出を待つ爺じいの四手網(百代)
入選 四手網懐かしいです。今の子供は知らないでしょうね。こう子
入選 彰
2点句 孫と死の話などして敬老日(こう子)
入選 話が出来るお年のお孫さん。垣内孝雄
入選 彰
2点句 信濃いま赤蕎麦の花あかり(佳楓)
入選 信濃のくには今赤蕎麦の花が明るく咲いている。みな子
入選 光雲2
2点句 はらわたを劈く鵙の高音かな(ケン)
入選 老いの腸をつんざく鵙の高い鳴き声を聞いてみたいものです。佳楓
入選 荒 一葉
2点句 明日から空家となる家(や)に張る守宮(やもり)(百代)
入選 設定が面白い。燕太
入選 ケン
2点句 夏の果トランペットの音かすれ(帰心)
特選 夏の果てに聞こえてくるのは、はりのあるべきトランペットのかすれた音だ。夏の果てを感じる。みな子
入選 百代
2点句 虫しぐれ雨戸繰る手を休めけり(加藤春海)
入選 百代・荒 一葉
1点句 朝顔の蒼にはじまるひと日かな(荒 一葉)
入選 光雲2
1点句 念力の箍締めなほす鬼城の忌(佳楓)
特選 ケン(コメントなし)
1点句 今日の空西天に去り秋夕焼(彰)
入選 かめしち
1点句 紙パンツ穿いて元気に敬老の日(かめしち)
特選 下五の字余りが、かえって、お年寄りの元気あふれる様子を伝えていて心地よいです。帰心
1点句 蜩や机かわりのリンゴ箱(ケン)
入選 彰
1点句 実柘榴や上手にほどく媼居て(こう子)
特選 その微笑みは、石榴色の宝石のようです。はなこ
1点句 古里の唄が聴こえる秋の海(かめしち)
入選 聞こえる歌が「故郷(ふるさと)」なのかな。私のふるさともさざ波寄す光る海であります。彰
1点句 静謐を求めし画家の「星月夜」(はなこ)
入選 画家はゴッホか?みな子
1点句 台風の来る土曜日は恐ろしい(彰)
入選 不思議と週末に来る。西村青夏
1点句 朝顔の種採る父の太き指(こう子)
入選 百代
1点句 口喧嘩するも楽しや秋涼し(西村青夏)
入選 ケン
1点句 人を待つ花野の風の生臭く(佳楓)
入選 ケン
1点句 老いてゆく火影寂しや曼殊沙華(光雲2)
入選 曼殊沙華の季語の本意は、このことかなと思いました。蒼鳩 薫
1点句 寝たふりに泣きまね覚え天高し(すーちゃん)
入選 幼児の成長ぶりに、微笑みましたが、大人にも、あるあることでしょうね~。佳楓
〈俳句気まぐれエッセイ㉚ 続ける> 今泉 かの子
この九月で再放送の朝ドラ「あまちゃん」が終わるという。クドカンこと、宮藤官九郎原作、脚本。その時代のエッセンスを掬いとるセンスやユーモアを交えたテンポの良さ、伏線が見事に回収されるすっきり感等々、二度目でも充分楽しめた。それ以上に、一回目では見過ごしていたのか、胸にぐっとくるところがあり、二回見ることもいいもんだわぁと、気づかされた。
その一つが、主人公の少女天野アキが、大女優鈴鹿ひろ美に自分のこれからを尋ねるシーン。
「で、どうですか?女優どして、天野アキは」
「…ダメね、やっぱり向いてない」
「…そうですか」
「ごめん、嘘ついても仕方ないから」
という、やりとりの後、しかし大女優はこう明言する。
「(略)向いてないけど続けなさい、向いてないのに続けるっていうのも、才能よ」
どうも、ありがとうございます。と、この言葉にひれ伏したい。というか、自分仕様の台詞に勝手に変換して大きく頷いてしまった。(…俳句は好きだけれど、私には向いてないような気がする。では、何が向いているのか、と言えば何もない。としたら、才はなくても続けられるというのも、また良しか)と。やっぱり好きだし。
書く文字に書く人の癖すいつちよん
ここで、はたと。そうそう、大事なことがあった。身近な家族、声をかけてくれる句友、先頭を歩いていく主宰、周りには多くの人々がいてくれる。いなかったら、ここまで三十年以上、続けられなかったかもしれない。
右脳と左脳二つで一人虫集く
最近、初めて知った衝撃的な言葉「反出生主義」。これは、人が生まれることや人をこの世に生み出すことを否定する、という考え方。一般的に、妊娠は「おめでた」といわれる、お祝いごと。今ある生や誕生を否定したら、絶望的な未来しか思い描けないように思うが、共感や積極的に支持する声もあると知った。生まれてきたこと自体が罪、と子どもが考えたとしたら、母はつらい。
話題を呼んだデイビット・ベネター氏の哲学書『生まれてこないほうが良かった』を邦訳された小島和男学習院大教授によれば、「始める価値と続ける価値は違う」のだそうだ。生まれてきたのは自分の意思ではなくても、「大抵の場合は続ける価値はある人生を生きている」。この主義を理解するには、はるか及ばないが、そうなのだ。続けることが大切なのだ、と短絡的にそう思ってしまった。今ある生も含めて「続ける」ことが難しいからこそ、続けることが大事なのだ、と思う。
さびしさは誰にも同じ吾亦紅
第38回ウェブ句会(2023年8月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
7点句 新涼や素足になじむ青畳(荒 一葉)
特選 新涼、素足、青畳全てに爽やかな感じです。加藤春海
特選 いかにも涼し気、青畳がよく効いている。西村青夏
入選 暑さがやわらぎますね。垣内孝雄
入選 季重なりの疑いがあるものの、新涼の清々しさを買う。燕太
入選 青畳の匂いがしてきそう。みな子
入選 本当にそうですね。日本古来の青い畳のあの匂いと、手触り足ざわりは、本当に気持ちのよいものです。「新涼」ならではの感触と同感させて頂きました。佳楓
入選 帰心
7点句 ひと駅をふたりで歩く星月夜(垣内孝雄)
入選 二人の仲の良さと星空の美しさ。みな子
入選 百代・荒 一葉・彰・すーちゃん・帰心・こう子
5点句 あつぱれの棋士は七冠秋高し(荒 一葉)
特選 私は将棋は全くわかりませんが、藤井聡太君の大ファンです。対戦のある日の夕方のニュースに一喜一憂しています。いえ一喜の方が多いですね。ほんとにあっぱれです。秋の空のように高く成長してほしいですね。こう子
入選 今だから詠める句。垣内孝雄
入選 私は、将棋の事は全く分かりませんが、とにかく凄い方ですね~。独特の雰囲気を持ち、将棋の世界をどんでん返しされ、凄いお方です「秋高し」の季語で正にそれを証明されました。佳楓
入選 光雲2・西村青夏
4点句 油照り靴の小石の憎きこと(神島六男)
特選 歩き辛かったのでしょう。「憎きこと」とは穏やかな言い方ですが、もう少し恨みは深かったのかもしれません。順一
入選 季語との取り合せが二物衝撃というのでしょうか、良く利いているなと思いました。蒼鳩 薫
入選 その気持ち、よくわかる。燕太
入選 ケン
4点句 大虹や庭に吾を呼ぶ夫の声(こう子)
入選 最近我が家にもこれと同じ事がありました。加藤春海
入選 二人で見る虹も乙なもの。垣内孝雄
入選 8月9日(水)午後6時過ぎ、私の家からも、素晴らしい虹が見えました。いい虹がでると、つい、近くの人に教えてあげたくなりますね。蒼鳩 薫
入選 彰
3点句 放課後に約束が待つ夏期講座(はなこ)
特選 この句を読んで、夏期補習の後、級友と寿がきやに行った半世紀も前の思い出が蘇ってきました。帰心
入選 講師か生徒か。授業中も、今日は放課後が気になります。百代
入選 こう子
3点句 ひぐらしの日がなかなかな敗戦忌(佳楓)
特選 ひぐらしの声は鎮魂の唄か?今日は敗戦忌。荒 一葉
入選 彰・かめしち
3点句 仏桑花碑はことごとく海に向く(燕太)
特選 海に囲まれた沖縄。垣内孝雄
入選 海に向く碑は鎮魂のものと思う。みな子
入選 百代
3点句 一葉の落つるなだりや古戦場(蒼鳩 薫)
特選 秋の風情が桐の一葉に託されている。「いちよう」と「こせんじょう」の響き合いや、古戦場の斜面という場面の切り取り方も巧み。すーちゃん
入選 戦場を思いやると桐の木に沸く感慨がいつもと違うと思いました。順一
入選 光雲2
3点句 空蝉になほ幹掴む力かな(燕太)
特選 幹や葉に空蝉がいつまでも残っているのを見ることがあります。まだ、幹を掴む力が残っているようだととらえたところが素晴らしいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 荒 一葉・光雲2
3点句 日向水よちよち歩きの武者ぶるい(百代)
特選 子どもが歩き始めた頃を思い出しました。そして高村光太郎『道程』の「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出來る」が思い浮かび、原文を読むとそこにも「武者ぶるひ」の語句があり、更に心が動かされました。はなこ
特選 可愛いいですね。「武者ぶるい」でその場の情景が目に浮かびました。きっと将来は戦の無い平和な世界を目指した青年に成長される事でしょう。このお句に、昔むかしの子育てを思いださせて頂きました。佳楓
入選 日向水を触って武者震いするよちよち歩きの子の頼もしさ。みな子
2点句 「めしあがれ」遊び上手な赤まんま(荒 一葉)
特選 おままごとで女の子は一つづつ成長するのですね。特にコミュニケーション能力は男の比ではない。燕太
入選 こう子
2点句 大花火満月よりも高く咲き(みな子)
特選 壮大な迫力と伸びやかさは臨場感に溢れて美しく、圧倒されます。百代
入選 帰心
2点句 蚊遣火をかいくぐり来る変異株(蒼鳩 薫)
入選 何時までも居すわるコロナ菌、その渋さと闘う人間も渋い。 佳楓
入選 すーちゃん
2点句 雲の峰崩れたかまる不整脈(光雲2)
入選 中七は心電図の「波形」かな。垣内孝雄
入選 かめしち
2点句 七夕やふたつ違ひの姉妹(垣内孝雄)
入選 幾つになっても、七夕は郷愁を誘い、姉妹は寄り添ってみえる。百代
入選 すーちゃん
2点句 咲き継ぎし日々どう了(しま)ふ百日紅(光雲2)
入選 荒 一葉・彰
2点句 老いてゆく火影寂しや曼殊沙華(光雲2)
入選 老いてゆくのはどうにもならない運命とわかっていますが、寂しいですね。曼殊沙華の季語がよく利いているなと思いました。蒼鳩 薫
入選 かめしち
2点句 沙羅の花庭の一隅静かなり(加藤春海)
入選 荒 一葉・帰心
2点句 ふるさとの友はいかにやつくつくし(佳楓)
特選 かめしち(コメントなし)
入選 ケン
2点句 御手洗の垂水に凄む山椒魚(はざこ)かな(ケン)
入選 山奥の社の御手洗でしょうか。小さな山椒魚と想像しました。神様に守られて生きているのでしょうね。蒼鳩 薫
入選 山椒魚の生態を美しく詠まれたと思いました。滝の如く流れ落ちる垂水に億年も住み着く山椒魚凄いですね。昔むかし、一度だけ山椒魚の容貌を見たことがあります。がなんとも、グロテスク、でした。佳楓
2点句 車道より歩道は広し秋来たる(すーちゃん)
入選 車で走り過ぎるより自分で歩みを進める方が、景色や想いの広がりが豊かになると思います。はなこ
入選 ああ、そんな道路もあるのかと思いました。ほんの一部なのかもしれませんが、そんな道路、そんなところがあってもいいではないかと思いました。座五の「秋来たる」の唐突感も俳味があっていいと思いました。順一
1点句 十薬の花の眞白や草の中(加藤春海)
入選 草叢の濃緑に十薬の白、光を放つようでした。はなこ
1点句 村は炎天火消し具を置く五差路(すーちゃん)
特選 炎天下の村に火事の備え、火消しの準備がしてある。みな子
1点句 一晩の開花ショーなる烏瓜(こう子)
入選 光雲2
1点句 熊蝉が落下するのは天の意思(順一)
入選 西村青夏
1点句 プランターのピーマン上出来パピプペポ(こう子)
特選 緑の艶やかなとれたてピーマン。彰
1点句 羽を引きよろめく蟻は難破船(はなこ)
特選 光雲2(コメントなし)
1点句 美濃の夏山看板に美顔水(すーちゃん)
入選 こう子
1点句 カンナ燃ゆファルダ蹴り上げ胸反らせ(蒼鳩 薫)
入選 すーちゃん
1点句 ビルの窓に夕焼け映る午後七時(みな子)
入選 かがよっていたのかもしれません。午後七時という事実の提示はいかようにも言えるでしょうが、この句では句内容に広がりを持たせてくれる積極的なものだと私は解釈しました。順一
1点句 象よりもあんパン欲しき敗戦忌(佳楓)
入選 ケン
1点句 今朝秋の白き花房揺れ続け(みな子)
入選 燕太
〈俳句気まぐれエッセイ㉙ 夏季俳句指導講座> 今泉 かの子
今年も夏季俳句指導講座(俳人協会主催)が七月、無事に終わった。この講座の裏方に関わって二十年以上経つ。元々は、俳句の裾野を全国に広げたいという、草間時彦氏らの熱い想いから開設されたと、加藤耕子先生より伺ったことがある。未来を担う子どもらへ俳句を身近なものに、との願いから教員向けに特化した講座である。
講座の流れは講演、授業の実践報告、句会の三本柱。講演は宗也主宰をはじめ愛知はもちろん、東京、関西からも講師として来て頂いている。かつて来名された鷹羽狩行氏は、「俳句をまだやってない人は、僕はきっかけ待ちの人だと思っている。」と話された。誰でもきっかけさえあれば、俳句に親しむことができる、との持論と承った。また有馬朗人氏は、今は懐かしい機器「OHP」を利用。氏はすでに鬼籍に入られたが、まことダンディであった。
爽やかに有馬氏去るやごきげんよう
句会も、今は兼題を出しているが、前は鶴舞公園や熱田神宮等を吟行。句作の手がかりを少しでも拾えるように、グループ毎にスタッフがつき、季語の紹介や説明をしながら散策した。当時はまだ、時間的に丁寧なことができるゆとりがあったのだと思う。
その後、年を追うごとに受講者数は減少した。教員の多忙化、ブラック化は年々拍車がかかり、夏休みにあっても出張どころか、研修も認められない学校もあった。この状況は愛知だけなのかもしれないが、そこで二日間の日程を一日に変え、参加しやすい土曜開催とした。今はないと思うが昔、管理職によっては俳句クラブでさえ、個人の趣味と混同するな、と厳しいお達しの現場もあったのだ。
恵まれぬこともままよとみみず鳴く
かつて本講座は高い志のもと、東京、愛知、関西だけでなく、東北でも開催されていたらしい。東京は俳句文学館という立派な建物があり、また関西も支部としての事務局がある。愛知はといえば、この十年以上拙宅が申し込み場所である。が、既に時代は住所など必要ないSNSの時代。この講座用にアカウントを取得し、メールでの申し込みも可能にしたところ、今年は十六名中、十二名が利用。鋭意努力はしているものの、毎年赤字続き。本部よりの補填で続いているが…。とりあえず今のところまだ、愛知の灯は消えていない。
アドレスは記号ローマ字秋灯し
第37回ウェブ句会(2023年7月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
6点句 本宮の階(かい)駆けくだる梅雨出水(百代)
入選 駆け上がる出水も怖いですが逆もまた。急勾配ですし。余花
入選 本宮の階段を勢いよく下る秋の出水がよくとらえられている。みな子
入選 おそらくは実体験にもとづいたのであろう。描写に迫力がある。燕太
入選 梅雨出水を「駆け下る」と詠んだところがいいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 今年は多雨の梅雨ですね。垣内孝雄
入選 光雲2
5点句 老猫のひだるき声や木下闇(ケン)
入選 「ひだるし」という言葉を初めて知りました。だるいのではなくひもじいのですね。余花
入選 「ひだるき」の措辞がいいなと思いました。取り合せが面白いなと思いました。蒼鳩 薫
入選 荒 一葉・光雲2・燕太
5点句 炎昼や赤き電車が橋渡る(西村青夏)
入選 炎昼にひた走る火の玉列車。名鉄の赤は絵になります。余花
入選 心象を感じる句。垣内孝雄
入選 百代・すーちゃん・ケン
4点句 相槌の団扇で聞いている話(荒 一葉)
特選 小道具の団扇の使い方が見事。大変勉強になった。燕太
特選 相槌の「うんうん、成る程、それから~」なる言葉を、団扇で聞いてそして応えて、会話が成り立っているのでしようか?情景が目に浮かびました。「団扇で聞く」が効果的でしたねぇ。佳楓
特選 場面が見えます。他愛もない話に、団扇で相槌をうつ、少しの可笑しみと夏の暑さまで感じられます。こう子
入選 はなこ
4点句 水撒いて大先生の休診日(燕太)
特選 「大」が付くからには頼りがいがあり、通りすがりの近所の方も気軽に一声かけて行かれる親しみやすい先生なのでしょう。白衣とステテコ(?)のギャップも楽しく。余花
入選 ほんのりとした光景ですね。田舎の古びた医院の庭に水を撒いておられる老先生、何時までもお元気で、いて下さいませね。佳楓
入選 すーちゃん・加藤春海
4点句 よれよれの甚平似合う八十路かな(かめしち)
特選 その雰囲気、若輩には出せません。「八十路」氏への眼差しも素敵です。はなこ
入選 西村青夏・こう子・ケン
4点句 夜の窓ヤモリの喉に波ひとつ(はなこ)
特選 観察眼が鋭いなと思いました。蒼鳩 薫
特選 ケン(コメントなし)
入選 我が家の窓にもヤモリがよくいる。親しい生き物である。そのヤモリの喉の動きに注目したのがいい。みな子
入選 すーちゃん
3点句 「まあだだよ」子らちりぢりに夏木立(荒 一葉)
特選 「かくれんぼ」とあえて言わない良さ。垣内孝雄
入選 帰心・彰
3点句 ささにごる近江水郷葭青む(佳楓)
入選 「ささにごる」という措辞がいいなと思いました。客観写生に共感を持ちました。蒼鳩 薫
入選 すらっと読める繋がりの良い句。垣内孝雄
入選 ケン
3点句 空蝉のまなこに光るもののあり(西村青夏)
入選 身は殻を抜けようとも、眼はまだ生きております。この濁った世を透かすかのように、光っているのでしようか?佳楓
入選 荒 一葉・順一
3点句 夏草や繰り返すまじあの戦火(西村青夏)
入選 光雲2・彰・佳楓
2点句 メロン切るわたのジュースも平等に(百代)
特選 高級果実メロンのわたの汁まで詠んでくださったのがうれしい。小生、西瓜の皮を詠みたい。彰
入選 帰心
2点句 不破の関鎮めほたるの乱舞かな(佳楓)
特選 光雲2(コメントなし)
入選 順一
2点句 風入るる読まずじまひの哲学書(佳楓)
入選 帰心・荒 一葉
2点句 とまり木を探してゐたる白日傘(余花)
入選 枯木でも、とまり木になるでせうか。彰
入選 光雲2
2点句 雲の峰黄色帽子の子ら去りぬ(加藤春海)
特選 小学校児童の集団下校の様子でしょうか?帽子の黄色と入道雲の白のコントラストがとても印象的な句です。帰心
入選 百代
2点句 くちなはに小路の余白譲りけり(余花)
特選 「余白」に惹かれました。蛇に譲歩するとは白蛇みたいな神の使い的な蛇だったのかもしれません。順一
入選 荒 一葉
2点句 丸太ん棒四角く積まれ青葉道(すーちゃん)
入選 「丸」太ん棒が「四角」という発見。「青葉道」だと道を塞いでしまっている印象もあり、さらりと「青葉山」などいかがでしょう。余花
入選 百代
2点句 還らざる人待つ夜の吊り忍(光雲2)
入選 しみじみとした感じがいいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 彰
2点句 籐椅子やバッハを友のウヰスキー(蒼鳩 薫)
特選 音楽とお酒を堪能する至福の時間。荒 一葉
入選 順一
1点句 晒し女の桴の捌きや遠花火(ケン)
入選 佳楓
1点句 ピザバイク夏の落葉を踏み付ける(順一)
入選 帰心
1点句 明けの空かすかに解く蓮の花(光雲2)
入選 こう子
1点句 梅雨曇りヘリコプターの音のして(みな子)
入選 百代
1点句 川遊び冷やし胡瓜と永久歯(はなこ)
特選 百代(コメントなし)
1点句 鮎今際(いまは)尾びれに厚き化粧塩(百代)
入選 ケン
1点句 紫陽花や三ヶ根ロード一巡り(帰心)
入選 こう子
1点句 炎天や外出の妻のもどる頃(垣内孝雄)
入選 すーちゃん
1点句 彼逝つて吾永らへて明易し(燕太)
特選 親友だった彼が逝き自分はまだ生きている。よく眠れず早く目が覚めてしまう。西村青夏
1点句 煽りくるルームミラーのサングラス(ケン)
特選 煽り運転の怖さと共に、サングラスの、正体を隠すような黒色の無気味さが、迫力をもって伝わります。ミラーを通して、サングラスを通しての二重のフィルター。深読みすれば、現代社会の匿名性の闇まで感じます。すーちゃん
1点句 今日の月線香花火の玉のよう(こう子)
特選 線香花火の最後の玉にはつい引き寄せられてしまう。艶があって明るくて。そんな月だと言う。夏の良い月だと思う。みな子
1点句 裏小路に下見(したみ)板壁凌霄花(彰)
入選 三つの「もの」が醸し出す世界。垣内孝雄
1点句 二代目の釘はぴかぴか釣忍(かめしち)
入選 順一
1点句 あじさゐや大お庫裡さんの美しき笑み(帰心)
入選 こう子
1点句 のうぜんや白き館のアプローチ(垣内孝雄)
入選 ノウゼンカの華やかな色と館の白の対比が良い。みな子
1点句 父の日や妻経て届く子の主張(荒 一葉)
入選 父親の権威、いまだ健在。燕太
1点句 納屋一つ置きみちのくの木下闇(余花)
入選 はなこ
1点句 あじさゐや丸き帽子の似合ふ女(帰心)
入選 紫陽花の丸さと丸い帽子の女の丸さが合っている。みな子
1点句 四条より川床へいざなふ灯し頃(垣内孝雄)
入選 西村青夏
〈俳句気まぐれエッセイ㉘ ある日の夕刊に> 今泉 かの子
日永なり母まで滑る滑り台 堀尾采音
この句は今年の「俳句甲子園」刈谷大会第一会場での最優秀句。地方大会は全国大会進出を決める予選の場であるが、それとは別にこの場に提出された全句の中から、審査員五名で話し合って最優秀句を一句選ぶ。今回驚いたのは、審査員の誰も思わなかった意図で作られていたこと。私達は、「子どもだけでなく母までも滑る、日永の感じが出ている」と捉えていた。が、実際は「下にいる母のところまで滑る」というのが作者の弁。それは、試合のやりとりの中で判明した。そのところを中日新聞「中部の文芸」執筆担当の加藤かな文氏は、「俳句の読みを深め合う「俳句甲子園」ならではの醍醐味といえよう。」と記された。そう、ここは学びの場。作品は出された時点で作者の手を離れて、読み手に委ねられる。
同じ紙面、その欄の隣に「読解の水位の話」と題した書評が掲載されていた。執筆者の書評家豊崎由美氏は、村上春樹氏の六年ぶりの新作長編を酷評してしまう、こわいもの知らず。長くなるが一部引用する。「一本のビンを想像してみてください。小説にはそれぞれ『ここまで読めていなければならない』という読解の水位(レベル)があるんですね。わかりやすく書かれている小説は水位が高く、難解な小説は水位が低くなるわけです。水位によって、ビンのあいている空間が広かったり狭かったりするんですけど、その空間が自由な解釈が許される余地ということになります。(中略)読解の水位に達していなければ独自の解釈など噴飯ものである」この見解は、かつて実際に豊崎氏から聞いたことがある。仕事の関係で途中で止めてしまったが、私は氏の書評講座にしばらくの間、籍を置いていた。毎月出される課題本を読み、決まった字数の書評を書いて送信、その後届いた無記名の全員の書評を採点しまた送信。出席した時点で採点結果がわかる、というスリリングな場だった。それは句会同様、たのしくも辛い切磋琢磨の場だった。
短詩型の俳句はもともと全てを云わず、読み手の解釈をもって完成するような一面をもっている。言葉を頼りとしながら、言葉だけに頼らない。小説における正しい読解や解釈と同様でありながら、そこに留まらない一面もあるのではないかと思う。また、俳句甲子園は学びの場でもあるが、俳句を始めたばかりの若者を育てていく場。作者の真意に沿うなら「母へと滑る」或いは「母の元へと」とも詠めるだろうと、今になって思う。
転んでも泣かずに立つ子風青し かの子
第36回ウェブ句会(2023年6月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
6点句 人柄のままに涼しく語らるる(西村青夏)
入選 清廉潔癖に生きて来られた方のお話はまことに味わいがあり、涼やかですね。蒼鳩 薫
入選 人柄というものは、本当に恐いものですねぇ。姿、形もそうですが、話し方に最も表れますでしょうね。今からでは遅いでしょうが、少しでも心掛けることに。「涼しく語る」もう無理でしょうね~。佳楓
入選 すーちゃん・ビビサン・彰・かめしち
5点句 故郷いま空とひとつに植田澄む(荒 一葉)
特選 田植えを終えた故郷のみずみずしい光景が、中七の「空をひとつに」で上手く表現されたと思います。佳楓
特選 百代(コメントなし)
特選 かめしち(コメントなし)
入選 田植えの後の植え田と空の有り様がよくわかる。植え田には空が映って、一つになっている。みな子
入選 彰
5点句 肩力抜けば涼しき余生かな(佳楓)
入選 なるほど、そういうものですか。燕太
入選 なるほど、共感です。また、そうありたいと思います。「肩力」、字余りになりますが「肩の力」ではいかがでしょうか。蒼鳩 薫
入選 荒 一葉・彰・ケン
5点句 田植機の農夫朗々田植唄(百代)
特選 田植風景も昔とは様変わりだが、朗々と田植唄をうたう農夫に可笑しみがある。燕太
入選 田植機だから歌う余裕がある。西村青夏
入選 最近は手で植える田植見なくなりました。田植え唄もしかりです。農夫は昔覚えた田植え唄をなつかしみながら、田植え機で歌っている情景が浮かんできました。「朗々」がいいですね。蒼鳩 薫
入選 荒 一葉・かめしち
4点句 二人居に娘来る日の豆ごはん(垣内孝雄)
特選 二人暮らしにとって娘さんが来る日は、ささやかなハレの日。その嬉しさが、「豆ごはん」の季語に託されていて心がほっこりします。帰心
入選 すーちゃん・こう子・荒 一葉
4点句 青嵐鞄一つで駅を発つ(はなこ)
特選 背負いか肩掛けか、手提げか。何処へ行くのでしょう。単純明快で想像が広がります。彰
入選 あわただしさの読み。垣内孝雄
入選 すーちゃん・帰心
4点句 不揃ひの風の皸生む植田かな(佳楓)
特選 確かな写生で、植田を渡ってゆく風筋が目の前に見えるようです。青田となる前の早苗ならではの景が巧みに詠まれています。すーちゃん
特選 植え終えた稲苗に吹く風を皸生むと捉えたのが手柄。荒 一葉
特選 田植をしたばかりの水田は稲苗もまだ小さく、水面は風にさざ波が立ちます。それを「不揃いの風の皹」ととらえたところに客観写生の発見があると思いました。蒼鳩 薫
入選 ケン
4点句 どくだみに占領される消火栓(かめしち)
特選 どくだみの旺盛な繁殖力ですね。消火栓が風前の灯火の様な。ユーモラスなのですが、深刻でもあるような、難しい状況を含意しているのかもしれません。順一
入選 生命力には驚かされるばかり。燕太
入選 すーちゃん・ケン
4点句 雲の峰四番打者は女の子(荒 一葉)
特選 この頃の女の子はたくましい。西村青夏
入選 清々しい句、「雲の峰」が活きている。垣内孝雄
入選 こう子・ビビサン
3点句 折り畳み傘開く間の驟雨かな(こう子)
入選 あっというまの驟雨の感じがよくわかる。みな子
入選 帰心・百代
3点句 紙魚はしる観測隊の血判状(佳楓)
特選 紙魚はしる血判状、これだけで色々な時代の出来事が脳裏に浮かびますね。南極船とくれば乗組員のかたい決意やタロー、ジロー物語など胸が熱くなります。奥の深い素晴らしい俳句だと思います。ケン
入選 曝書で見つけられたのでしょうか、間宮林蔵の樺太探検などを想像しました。蒼鳩 薫
入選 こう子
2点句 不通なる寺の電話や梅雨出水(すーちゃん)
入選 こう子・ビビサン
2点句 信三郎鞄をぬらす走り梅雨(ビビサン)
特選 大切なかばんなのだとわかる。濡らしたくないとわかる。信三郎かばんは帆布なので、ひらがなの方が良いと思う。みな子
入選 商品名を出したのが効果的。燕太
2点句 時の日はでんぐり返る砂時計(かめしち)
入選 「でんぐり返る」が面白い。西村青夏
入選 ビビサン
2点句 鬼平の口調になつて鮎の飯(燕太)
入選 「こりゃうめえ」とでも。垣内孝雄
入選 鮎を噛み締める、旨さを噛み締めて。その様子を鬼平の口調になってと言っている。鬼平のドラマの中の美味しい場面が目にうかぶ。みな子
2点句 琴平駅の二番ホームの風涼し(みな子)
入選 四国で「乗り鉄」がしてみたい。はなこ
入選 涼風はいいですね。特に旅立ちの不安、出勤の懊悩などを抱えて居ると身に染みて涼しいのかもしれません。順一
2点句 夕づつや入所の母へ甘酒を(ケン)
特選 療養なさっているのかな。心温まる句。垣内孝雄
入選 冷え性のお母様なのでしょうね。作者の優しいお人柄が偲ばれました。「夕づつ」という季語が切ないですよね。私も昔、妣が入所していた頃を思い出されました。佳楓
2点句 若冲の百花の図書院涼気あり(みな子)
入選 百代・かめしち
2点句 今宵だけ円く大きく梅雨の月(彰)
特選 どんな思いで月を眺めておられたのでしょう。私は先日きれいな月を見ていた時、もし月が音楽を奏でたら清かに美しい音色だろうと考えていました。はなこ
入選 百代
1点句 おのおのに若き日のあり浮いてこい(垣内孝雄)
特選 誰にでも若き日はある。苦しかろうが楽しかろうが、日々はある。あとになって考えれば、あっという間だったとあの日に思いを馳せる作者。浮いてこいを眺めて、いろいろと思う。こんな時間も悪くない。ビビサン
1点句 境内の山雀の来るカフェテラス(みな子)
入選 コーヒーや紅茶を飲みながらバードウォッチング。俳句力も深まるような気がしました。順一
1点句 小品といへど玉堂夏座敷(燕太)
入選 目利きですね。垣内孝雄
1点句 村村に歌い継がれる田植え歌(かめしち)
入選 伝統は人の心を掻き立てます。作業のはかどる歌もあるのでしょう。風にそよぐ早苗を想像して涼味を味わえる句だと思いました。順一
1点句 浦波は小石転がし梅雨の浜(彰)
特選 誰でも見たことのある風景。波の音や動きが、小石の転がる様が目に浮かんできます。何気ない一瞬をとても上手く表現されていると思います。こう子
1点句 首塚の苔むす肌や夏のほか(ケン)
入選 特選に頂きたいお句でした。悩みました。「夏のほか」という季語を先日テレビの番組で初めて知りました。首塚を見ただけで、何となくうすら寒さを感じますよね。苔むした肌、となると何となく寒い。佳楓
1点句 お隣は解体となり蛇の衣(ビビサン)
入選 帰心
1点句 泰山木まづ木の頂に一つ咲く(帰心)
入選 荒 一葉
1点句 梅雨曇ラーメンチャーハンセットかな(順一)
入選 頼もしい食欲。ご本人でしょうか、それとも憧れでしょうか。はなこ
1点句 ポジティブになれぬ日々あり黴の家(ビビサン)
入選 帰心
1点句 AIの一人歩きや梅雨じめり(蒼鳩 薫)
入選 時代の先端を詠まれたお句、同感です。私個人的には、AI なるものあまり好きでは有りませんです。生きている人間は一体どうなるのでしょう?何となく恐い…。佳楓
1点句 蒲の穂の手触り母の胸に似て(こう子)
入選 蒲の穂の手触りの良さを母の胸のようと言っている。みな子
1点句 麦の秋岩瀬文庫に児童館(帰心)
入選 ケン
1点句 黒南風や町はずれの山雲隠れ(彰)
入選 観察して居ますね。梅雨時の南風。「町はずれの」に少し惹かれました。順一
1点句 前世で呑まれて以来蛇ぎらひ(燕太)
入選 ハハハ…前世の報いか。西村青夏
1点句 梅畑に採り残されし実梅の灯(百代)
入選 彰
1点句 ひな襲ふ烏斬り裂く飛燕かな(ケン)
入選 百代
〈俳句気まぐれエッセイ㉗ 好きなこと> 今泉 かの子
六月のある夜、一通のメールが入った。ずっと世話になっている生命保険会社からだった。このところ特段の用もなく過ごしてきたが、何かまたうっかりがあったかなと思いつつ、メールを開いた。そこには「ラノベ作家として六月下旬にデビューすることになりました」とあった。ラ、ラノベ作家って?デビューって?はてなが飛び交ったが、なんと担当のKさんが書いた小説が書籍化され、本屋に並ぶことになったらしい。晴れがましくもライトノベル作家誕生。そしてデビュー作が近日発売予定!なのである。
私は単なる顧客の一人で、Kさんのプライベートな部分は存じ上げないが、そんな気配があっただろうか。毎年届く年賀状は、ずっと山登りの写真だったし、契約更新等で待ち合わせするコメダ珈琲でも、俳句の話や雑談はしてもそんな話は一切、出なかった。
びっくりすると同時に、この作家デビューにいたる経緯に、俄然興味が湧いて、こちらから電話してみた。まず「自分でも、書いたものが、実際に本になるとは思ってもみなかった」と。ご本人にとっても驚きの展開だったようだ。コロナ禍でしばらく営業禁止となり、そのうえ体調も大きく崩された。そんな状況下、元々書くことが好きだったこともあり、ウェブ上の小説家サイトへ投稿。(この踏み出し方が今どき、当世流である。)そして投稿を続けていたところ、出版社から電話が入り、刊行に至ったという。聞いてみると、電子版から紙媒体になるには、「いいね!」のような獲得ポイントの多さが、裏付けにあるとのこと。そうか、ある程度の支持層の確認があって出版、という流れなのだ。
彼は五十代後半。コロナ禍の極端に制限された日常と体の不調は、元々好きだったこと、本当はやりたかったことに立ち返る、きっかけとなった。胸中に消えずにあった種火から確実に一歩を踏み出した。人生、百年時代。残り時間は悔いなく過ごしたい。今さらながらそう思う。
頁繰る福音の風わかば風 かの子
第35回ウェブ句会(2023年5月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
8点句 村中の水走りだす五月かな(燕太)
特選 村そのものが一つの生命体のように描かれていて、「水走りだす」の措辞に初夏のすがすがしさが感じられます。帰心
特選 田水を張って田植の準備、村の躍動感が伝わる。荒 一葉
特選 村中の田水の走る用水路が目に浮かぶ。みな子
特選 五月ともなれば、村では水を張ったり、田植をしたり村中の田んぼは生き生きして来ます。そんな田舎の風景に衰えて来るこの身も甦って来ます。「水走りだす」が効果的ですねぇ。佳楓
入選 田植の始まる頃でしょうか、水田に引く水が生き生きと流れる様子を想像しました。蒼鳩 薫
入選 彰・ビビサン・順一
7点句 更衣きのふと違ふ風を着る(荒 一葉)
特選 清々しい句ですね。垣内孝雄
特選 ケン(コメントなし)
入選 中高生の頃のことを思い出しました。心も清々しくなりました。蒼鳩 薫
入選 「きのふと違ふ風」の表現が涼しさを強調して、上手い!と思いました。佳楓
入選 百代・彰・順一
6点句 薫風や山に生まれて山が好き(西村青夏)
特選 爽やかな句、素朴で優しく心に沁みる句です。蒼鳩 薫
特選 かめしち(コメントなし)
入選 海辺に生まれても山が好きな私。風薫ればなお。彰
入選 帰心・こう子・荒 一葉
6点句 御馳走と言へばカレーや昭和の日(蒼鳩 薫)
特選 ホント そうだったなあと思います。お肉の入っているカレーは大御馳走で、だいたいは竹輪やはんぺんのカレーでした。それでも美味しかったし、うれしかった子供のころを思い出しました。こう子
入選 あの頃はカレーが御馳走だったんだよね。西村青夏
入選 一定の年齢以上の世代には圧倒的な共感。燕太
入選 荒 一葉・ビビサン・ケン
4点句 城の無き城山公園著莪の花(燕太)
入選 残るは城跡のみ。西村青夏
入選 すーちゃん・彰・ビビサン
3点句 寡婦ばかり集ひて藤の花見かな(百代)
入選 女性の方が長生きなさるとか。 垣内孝雄
入選 こう子・順一
3点句 足裏を突(つつ)く筍夜明け前(百代)
入選 土からほんの少し出た筍を掘るのですね。みな子
入選 こう子・ビビサン
3点句 起きてすぐ歌い出す子や夏の朝(すーちゃん)
入選 起きてすぐなのにこのテンションの高さはどうだ。後生おそるべし。燕太
入選 おおらかな子の歌声が聞こえてきそう。みな子
入選 帰心
3点句 日章旗見ることはまれ昭和の日(ビビサン)
入選 愛国心はどこへ?西村青夏
入選 かめしち・ケン
3点句 麦秋や戦(いくさ)の行方見透せず(彰)
特選 ウクライナいつまで続くんだろう。西村青夏
入選 今のウクライナ戦を彷彿とさせるお句で、麦秋の季語を上手く使われたと思いました。素晴らしい!佳楓
入選 ケン
2点句 むざんやな蛇の首刈る草刈機(ケン)
特選 残酷で露悪趣味すれすれだが、リアリズムの迫力の前に脱帽。燕太
入選 〈むざんやな甲の下のきりぎりす 芭蕉〉この句がぱっと脳裏をよぎりました。現場に居合わせないとなかなか、このような残酷な句は生まれないでしょうねぇ。「むざんやな」を誠に上手く使われました。佳楓
2点句 菖蒲湯や昭和の親父寡黙なる(ビビサン)
入選 自分も昭和生まれ、よく分る。西村青夏
入選 かめしち
2点句 鑁阿寺(ばんなじ)を巡って真鯉錦鯉(みな子)
特選 順一(コメントなし)
入選 すーちゃん
2点句 身に添はぬことはやるまじアッパッパ(佳楓)
特選 なんだかユーモアがありますね、口から先に生まれてきたような、中高年の姿が目に浮かびます。誰から何を言われても嫌なものは嫌、一句の中に多くの人生訓が含まれています。今日ひと日を笑って暮らしましょ。ビビサン
入選 帰心
2点句 ふる里の山は青青五月晴(かめしち)
入選 気持ちの良い句ですね。垣内孝雄
入選 慈雨に恵まれて久しぶりの快晴に濃い緑が目に沁みるようです。蒼鳩 薫
2点句 病棟のベンチ明るし花水木(蒼鳩 薫)
入選 「花水木」の存在感。垣内孝雄
入選 すーちゃん
2点句 伊勢海老の匂ひ後ひく番屋かな(ケン)
入選 伊勢海老漁の後の少し寂しい番屋を想像しました。感情が抑えられていていいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 こう子
2点句 八十路てふ庭師の手際牡丹園(こう子)
入選 八十過ぎの庭師の牡丹園の手入れの見事さを感じる。みな子
入選 荒 一葉
2点句 夏めくや古民家カフェのカレーの香(荒 一葉)
入選 古民家のカフェのカレーの匂いに夏めくものを感じる。みな子
入選 順一
2点句 藤波や馬籠陣屋の夜明け前(蒼鳩 薫)
特選 百代(コメントなし)
入選 すーちゃん
1点句 茎先の小さき雨粒杉菜生ふ(帰心)
入選 荒 一葉
1点句 妻と毒字面似てをる目借時(燕太)
特選 確かに似ていると共感しつつ、ギクッ。二字の近さを寝ぼけまなこのせいとした着地点も、心憎いところ。ドキッとしつつも、妻の部首は女、毒の部首は毋(なかれ)と、断じて違うことを付け加えたい。(悪妻)すーちゃん
1点句 御代りは一度限りよ豆ごはん(垣内孝雄)
入選 メタボとか血糖値がどうとか、奥さんの気持ちも分らんではないが、そこをなんとか。燕太
1点句 無人駅誰の仕業か鯉のぼり(かめしち)
入選 おつな試行ですね。中七に違和感?垣内孝雄
1点句 庄川に響く喚鐘春の朝(帰心)
入選 百代
1点句 白シャツの裾三角に出て発車(すーちゃん)
入選 百代
1点句 鑁阿寺の丸ニの御紋若葉風(みな子)
入選 百代
1点句 早苗田にすでに命の起伏かな(佳楓)
入選 ケン
1点句 野豌豆吹けるばあばはヒーローよ(こう子)
入選 可愛いらしく微笑ましいお句ですねぇ。昔子供の頃、道端の豌豆をぴーぴー?と吹いて遊んだことを思い出しました。今の子供さん達は、そんな遊びはしないし、吹けないのかも。「ヒーローよ」が効きました。ね!佳楓
1点句 薫風やボレーシュートを決める脚(荒 一葉)
入選 帰心
1点句 葉桜や友を見送る交差点(垣内孝雄)
特選 もう滅多に会えない別れか、明日にはまた会える別れか。華やかではないが葉桜が清しい。彰
〈俳句気まぐれエッセイ㉖ 至上主義> 今泉 かの子
現在放映中のNHKの朝ドラ「らんまん」の主人公は、牧野富太郎博士。毎回最後に草花の写真と絵が出てくる。「あー、知ってる」とか「へー」とか思いながら見ている。
先だって友達とランチしたとき、その話が出て一人が「でも、実家にお金があったからで、本当は地に足がついてないよね」と宣った。それはそうだけど…と思いながら、ふとそのとき、昔訪れたノイシュバインシュタイン城のことが思い出された。それは権力をもった一人の人間の、一種「狂気」がつくった城だ。圧倒されつつ、逆に尋常の精神では造りえなかったかもしれない、と思ったのだった。要塞でも宮殿でもない、騎士道を至上とした王のロマンが具現化された建築。時の淘汰を越えられるのは、このような至上の想いなのだと、あのときの感慨が蘇った。
ゆっくりと泳ぐ恋愛至上主義 みな子
こんな至上主義はすてきだ。自分の息に合わせて、ゆっくりと水に四肢を解き放つ。水の中は何物にもとらわれない世界だ。自分の大切なものを守る、そのための呼吸、そのための手足。が、水の中の開放感は、鰓呼吸ではない人類にとって、一旦間違えれば、命を落としかねない危険な世界にもなる。「ゆっくりと」した自分のペースがあって、主義を貫くことができるのだろう。
みな子さんは、私を俳句に誘ってくれた三十数年来の友。この句も三十年以上昔の句だ。俳句は、時を越えていつまでも生き生きとした若々しい世界を開いてくれる。
薔薇抱いて芸術至上主義捨てず 駿吉
作者、馬場駿吉氏は云わずと知れた、名古屋の名士のお一人である。医師であり美術評論家であり、無論俳句もお好き。かつて名古屋ボストン美術館の館長も務められた。
この句には、しびれた。凛とした一句の立ち姿。気品ある薔薇の矜持にふさわしい、芸術至上主義。そして句末に断定される、揺るがぬ信念。この薔薇はいつまでも色褪せることなく、芳香を秘めていつもその胸にあるのだろう。深い見識と審美眼をもつ馬場氏にふさわしい、永遠の命をもつ薔薇だ。
そういえば以前、拙句集「背なでて」を出した際〈打ち水やしばらく人の通らざり かの子〉に寄せて、「この句集の清廉な言葉の打ち水の上を通る一人とさせていただいたことを深く感謝申し上げます」とのご厚意あふれる言葉を頂いた。末座に連なる者へ、その句を踏まえるご高配、そこにも大いに感動、励まされた。
「至上主義」を今の私があえて言うなら、健康至上主義?なんだかちょっとつまらない。至上主義の境地は難しい。いつか私も…と考えたが、うーむ、無理をしない至上主義。それってありかしら。
第34回若竹ウェブ句会(2023年4月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
7点句 約束のない身のさびし遠霞 (すーちゃん)
特選 約束がなくってもいいじゃないですか。自然は、季節は少々違えても、屹度来てくれます。彰
入選 伴侶とか友人を亡くされたのでしょうか。一人で生きることの寂しさのようなものを想像しました。季語遠霞がよく効いていると思いました。蒼鳩 薫
入選 何となく我が身に照らし合わさるお句で、身にしみました。 コロナ禍や歳を重ねますと友人も遠ざかり、また旅立たれたりで、約束をする事も減ってしまいましたです。遠霞の季語が生かされて秀作と思いました。佳楓
入選 帰心・冬青・こう子・ビビサン
7点句 蝶を追う靴小さくてよく跳ねて (こう子)
特選 幼子のかわいらしい姿だけでなく、その様子を目を細めて眺めている作者の眼差しまで見えてきます。帰心
入選 子供の動きが靴に集約されている。垣内孝雄
入選 蝶を追う幼い子の様子が靴を通してうまく詠まれたと思いました。蒼鳩 薫
入選 蝶を追う子の小さくてよく跳ねる靴が目に浮かぶ。みな子
入選 百代・冬青・ビビサン
5点句 水張つて棚田の風を一枚に (佳楓)
特選 田水を張り棚田が整った景を「風を一枚に」捉えた手柄。荒 一葉
特選 「風を一枚に」の修辞に注目。垣内孝雄
特選 百代 ケン
入選 すーちゃん
5点句 「僕」がいつか「俺」に変わつて卒業す (荒 一葉)
特選 中学生時代の成長は目覚ましく、1年生で入学した時は色白でほほはバラ色で、自分の事を僕と言っていたのに、3年間で身体も心も大きく成長し、いつのまにか自分の事を俺と言うようになる様が上手く表現されている。冬青
特選 少年の成長を「僕」と「俺」で表現し、また卒業まで持っていく。すごく分かりやすく、またその間の出来事など想像させられます。こう子
特選 こんなふうに、大人になっていくのでしょうね。些細なことから子の成長を感じ取り、一句に仕立てられた、作者の素直さに共感しました。切り取りが見事です。ビビサン
入選 男の子はそうなんです。パパが親父に変わるように。燕太
入選 西村青夏
5点句 膝小僧の穴あきデニム風光る (荒 一葉)
入選 取り合わせの妙。垣内孝雄
入選 風光るの季語だから、穴あきデニムの膝小僧が生きると思う。みな子
入選 季語と措辞との相性の良さを思いました。デニムまで光って居る感じがいいです。順一
入選 冬青・ビビサン
5点句 ジャイアンものび太もをりぬ葱坊主 (燕太)
特選 葱坊主の花には、ジャイアンのような元気で大きなのや、のび太のようなひょろひょろの、ちいさなのがあるんだ。みな子
入選 ネギ坊主をアニメを題材にユーモラスに詠まれたと思いました。蒼鳩 薫
入選 荒 一葉・冬青・こう子
4点句 菜の花の黄色は絵の具の黃より黃 (亮)
特選 菜の花の黄色はどんなに頑張っても絵具では出せない。西村青夏
入選 きな色(こちら弁)は明るく純粋な色。杉本画伯選定と言われる地下鉄東山線初期の車体色。彰
入選 すーちゃん・ビビサン
3点句 縄電車脱線ばかり山笑ふ (西村青夏)
特選 愉快な感じがいいと思いました。山笑ふとの連動性、大人も子供も楽しんで居る。順一
入選 縄電車で遊ぶ子のあどけなさ。垣内孝雄
入選 百代
3点句 二人居に飾る雛の古びかな (垣内孝雄)
入選 荒 一葉・彰・こう子
3点句 亀鳴くや昭和の白い洗濯機 (亮)
入選 昭和の高度経済成長期に入った、三種の神器と言われたころの洗濯機を想像しました。盥に湯を入れ洗濯板で手洗いしていた母を思い出しました。蒼鳩 薫
入選 レトロな感じと亀鳴く。昭和の匂いが漂って来るようでした。順一
入選 荒 一葉
2点句 春霞む浜の猫らの大あくび (彰)
入選 春は不要と思うが、音数の都合かな?浜の猫らは、本当に、よく欠伸をしている。大欠伸を。猫番組でよく見る。みな子
入選 百代
2点句 飛躍なき我が発想やはこべらめ (冬青)
入選 飛躍なきと仰っていますが、はこべらめを取り合わせたあたり、結構発想が飛んでいるように思いますが。燕太
入選 まさに、私の事です。有りふれた句を詠み、その辺をうろちょろしています。(はこべらめ)の(め)が我が身に刺さります。佳楓
2点句 石鹼玉ひとつひとつに込めし夢 (西村青夏)
入選 石鹸玉とて手を抜かない。ティーネージャーや大人の苦みが混ざって居るのかもしれません。順一
入選 彰
2点句 君と会ふいつもの小道花水木 (垣内孝雄)
入選 帰心・百代
2点句 満開の花下忽然と膝笑ふ (佳楓)
入選 ちょっとした悲劇でした。笑顔で乗り切ったのかもしれません。順一
入選 ケン
2点句 花を見に日本の裏よりやって来る (ビビサン)
入選 日本の裏とは何処なんだろうか。なにやらミステリアスな雰囲気。燕太
入選 日本の桜は本当に世界一ですねぇ。日本の裏から、わざわざ見に来て下さるとは嬉しい限りです。「日本の裏より」が良かったです。佳楓
1点句 猫八のウグイスめでた四月馬鹿 (百代)
特選 物まねの鶯では季語にならんぞとクレームを入れようとしたら、四月馬鹿と落とされた。絶妙な間合いでオチを入れた名人芸に脱帽。燕太
1点句 花筏校歌の河にとどまりぬ (ビビサン)
入選 校歌には不思議とその地の山や川や野原の名前が入れてありますねぇ。花筏が切なく美しいです。佳楓
1点句 四阿(あづまや)をおとなふ女人春の雨 (蒼鳩 薫)
入選 「四阿」「女人」「春の雨」の醸し出す世界。垣内孝雄
1点句 花水木エナジードリンク黄金色 (順一)
入選 帰心
1点句 吾輩は猫の子そちは何の子ぞ (西村青夏)
入選 猫の子は何を見てつぶやいているのかな?みな子
1点句 記憶から草の名たぐり春の土手 (冬青)
入選 彰
1点句 決勝へ神のお告げのサヨナラ打 (ケン)
特選 まさかまさか、「神のお告げ」が季語とは知りませんでした。今年の3/8から3/21迄のWBCの、あの劇的な村上様のサヨナラヒットを思い出しました。普段野球を見ない私も興奮しきり。珍しい季語に特選です。佳楓
1点句 少年のニキビ盛りや猫の恋 (こう子)
入選 ケン
1点句 春爛漫カラオケマイク渡されし (帰心)
入選 こう子
1点句 ぽつぽつりぽとりぽとりと春の雨 (垣内孝雄)
入選 西村青夏
1点句 花の池昔一日写生会 (みな子)
入選 すーちゃん
1点句 来る来ない花に罪なき四月馬鹿 (百代)
入選 ケン
1点句 春は疾(と)し木々の芽今や葉の容(かたち) (彰)
特選 動詞を使わず、春の移ろい芽から葉への変容からとらえたところがいいなと思いました。蒼鳩 薫
1点句 飛燕反転ISUZUトラックゲート出づ (亮)
特選 上五の撥音の跳ねる感じと下五の完了のきっぱりとした感じが響き合って、シャープな韻律の作品と思いました。すーちゃん
1点句 春の夜の髪舞い上げてドライヤー (すーちゃん)
入選 帰心
1点句 草餅を搗くや指およびの蓬の香 (蒼鳩 薫)
入選 荒 一葉
〈俳句気まぐれエッセイ㉕ 富山の思い出> 今泉 かの子
四月のある日、幼なじみTちゃんと二人、富山へ出かけた。名古屋から高速バスで往復七時間、滞在時間四時間の短い旅。富山に住んでいる高校時代の友人夫婦を尋ねた。ご夫君Kクンは、同郷で中学のとき転校したが、高校で再会。TちゃんとKクンは、ともに「いける口」で酒飲み友達である。春になったら、コロナが収まったら、で四人の再会が実現した。
Kクン行きつけの総曲輪(そうがわ)のすし屋の二階。まず登場のホタルイカは、まこと絶品。堪能いたしました。富山では「辻の身」(メバルの仲間)と呼ばれる刺身なども初めて食した。ビールやらワインやら、思い出話も次から次へと出てきた。
小学校時代の恩師、都祁子先生の思い出は、各人各様。Tちゃんは繰り返し♪「パン屋さんの歌」を歌って熱弁してくれたが、それは全然知らない。K君は先生のいつものせりふが、最後は「手はおひざ」だったと主張。手ぶりを交えて再現してくれたが、全然記憶にない。一人一人のもつ記憶の断片は強烈でありながら、こんなにも違っていた。また、バスガイドになった友だちが子どもの頃の話をしたとき、乗客の中から「それは私です。」と手を挙げられた人がおり、なんと都祁子先生その人だったという。それも聞いてびっくりの話だった。新卒の若い先生は、山奥の子らに年を経ても残る、色褪せないプレゼントを贈ってくれていたのだと、今になって思う。そして現在、地元田原の広報紙に、ご夫妻での写真が掲載される等、先生は昔と変わらずご健在である。
また途中、今だから話せる話も出た。転校後Kクンは旧友の一人にラブレターを書いたらしい。が、あっさりことわりの手紙が来て、そのあとしばらくは、帰郷しても恥ずかしくて顔を見られないようにしていた、と話した。そのとき驚きのことが判明した。Tちゃんがいきなり「その返事代筆したの、わたし。」と言い放ったのだ。なんとなんと、半世紀経て知る、この真実。新たに判明した事実は、時の経過で、とんだ笑い話となった。
翌日、心地よい疲労感とともに開いた新聞には、今年はホタルイカの獲れ高が減っていると、報じられていた。
つやめきはそのまま胸にほたるいか かの子
第33回若竹ウェブ句会(2023年3月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★作者名は( )内に記述
5点句 あたたかやちやりんこならぶベーカリー(垣内孝雄)
特選 全て「かな」表示で春の詩情があふれている。「あたたか」が効いている。西村青夏
特選 評判のパン屋なのだろう。チャリンコと季語の「あたたかや」がよい味を出している。燕太
入選 人気のベーカリーか、出来立てのパンの匂いがする荒 一葉
入選 美味しいパン屋だと思います。亮
入選 すーちゃん
5点句 喧嘩凧糸斬る風の匂ひかな(ケン)
特選 順一(コメント無し)
入選 糸につけたガラスの粉末などの摩擦の匂いが実際にするのでしょうね。蒼鳩 薫
入選 「風の匂ひ」に惹かれる。垣内孝雄
入選 糸を斬るを匂いとして捉えたのが手柄。荒 一葉
入選 浜松の春の喧嘩凧と思われます。絡まった糸が、斬れる折の凄さ、それに伴う風の音と匂いが、上手く表現されていると思いました。私は、テレビで見ただけですけれど迫力が有りました。佳楓
4点句 啓蟄の土手に地団駄踏む子かな(佳楓)
入選 「啓蟄の土手」とあらば、子どもにとって魅力いっぱいでしょう。ありんこを見つけたり、蛙を見つけたり、わくわくだらけ。家へ帰るのを渋る様子が伝わります。康子
入選 帰心・こう子・ケン
4点句 千の田の風入れ替はる鳥曇(佳楓)
特選 渡り鳥が羽音高らかに北へ帰り、そして田は春耕、田植の始まるのでしょうね。曇り空の一抹の寂しさの中で。季節の移り変わりを詩情豊かに詠まれたと思いました。蒼鳩 薫
特選 百代(コメント無し)
入選 荒 一葉・ケン
4点句 撒き散らす春の音符や揚雲雀(荒 一葉)
特選 一読でのどかな春の野原の真ん中にいるように感じられる素敵で伸びやかな句です。楽しげに翔び交う揚雲雀を音符に例えたのも巧みで、おしゃれな技ですね。冬青
入選 雲雀の囀をうまく表現した。西村青夏
入選 正にヒバリの鳴く声は春の音符だな~と発想が素晴らしいと思いました。「撒き散らす」もいいですね。蒼鳩 薫
入選 春の音符を撒き散らす、この表現の上手さ、素晴らしいですねぇ。春の空の朗らかさが伝わって来ました。佳楓
4点句 目の前の土筆が摘めぬ車椅子(佳楓)
入選 「もどかしさ」が心に響きます。垣内孝雄
入選 こう子・冬青・ 彰
4点句 湯気ほのと白湯の甘さよ春暁よ(すーちゃん)
特選 白湯を飲みながらゆったりとした気持ちで春暁を愛でる、こんな心のゆとり、憧れます。帰心
入選 春暁の中でゆっくりと味わう白湯の感じがいいなと思いました。蒼鳩 薫
入選 こう子・ 彰
3点句 薔薇の芽や出窓に犬のぬいぐるみ(垣内孝雄)
入選 明るい出窓、従順な犬のぬいぐるみ、庭には、これから咲こうとする薔薇の生命感が漲っている。平和な光景が浮かびます。康子
入選 すーちゃん・冬青
3点句 枯芝に物の芽の先ひかりけり(冬青)
特選 物の芽の先に光を見つけたのは観察眼の手柄。荒 一葉
入選 百代・帰心
3点句 淡雪や人ぶつ癖の媼(おうな)逝く(ケン)
特選 面白いです。亮
入選 話の合間に肩とか腕を軽くたたく癖の人いますね。季語「淡雪」に命のはかなさを感じます。康子
入選 彰
3点句 春昼やふわとろ玉子のオムライス(荒 一葉)
入選 ふわとろ玉子のオムライス。春爛漫ですなあ。燕太
入選 「ふわとろ」に注目。垣内孝雄
入選 ふわっとしていて、とろっとした、玉子のオムライスは、なかなかに難しく、私は、苦手なんです。長閑な春のランチにはたまらなく美味しいことでしょうね。中七の表現でオムライスの美味しさを詠まれました。佳楓
3点句 献体の卒塔婆の高し紅椿(亮)
入選 献体をされた方の供養追善の為に、墓に立てる上部を搭形にした細長い板を、出来るだけ高くして、御霊を弔はれたのですね。紅椿の赤が美しくも悲しく映ります。秀逸句と思いました。佳楓
入選 こう子・順一
2点句 引き出しの奥のあの日やさくら貝(荒 一葉)
特選 深い引き出しをお持ちで幸せですね。「あの日」のこと、あれこれ思ってしまいます。彰
入選 帰心
2点句 雉鳩の交すパドドゥ春の風(蒼鳩 薫)
特選 男女2人が組んで踊るバレエのパドドゥが、雉鳩2羽の動きのようにも、また鳴き交わす声のようにも受け取れる。春の風の、軽く明るい感じが伝わる。すーちゃん
入選 あの「デデッポーポー」という低い鳴き声を、「パドドゥ」と軽やかで楽しげな声として表現する感性は、素晴らしいと思います。康子
2点句 三月や初来日の孫二歳(こう子)
特選 海外でお暮しのお孫さん。句意の新しさに感動。垣内孝雄
入選 孫俳句だが初来日に免じてとらせてもらいました。燕太
2点句 横向きの足の屈伸暖かし(順一)
入選 横向きがいいです。亮
入選 冬青
2点句 アンデスの谷へうへうと蝶が行く(燕太)
特選 アンデスと言えば、あの広い大空を悠々と飛ぶコンドルを想像しますが、何と蝶々が、へうへうと行くとは。雄大な中に一抹の静かさを読みとりました。私は「コンドルは飛んで行く」が大好きです。佳楓
入選 順一
2点句 犬ふぐり小さきながら共和国(燕太)
入選 百代・順一
2点句 三月の空の話やシャンプー台(すーちゃん)
特選 三月の空とシャンプー台。いいですねぇ!とても気持ちの良くなる俳句だと思います。何も爽やかなことは言ってないのに、すごく爽やかさが感じられます。こう子
入選 シャンプー台と三日月の取り合わせが面白い。亮
2点句 春暁のうとうと眠る時が好き(康子)
入選 幸せを感じるひととき。西村青夏
入選 ケン
1点句 伊吹山(いぶき)越え最長不倒の黄砂かな(百代)
入選 ケン
1点句 ブランコで詩を書く金具の音がする(順一)
入選 すーちゃん
1点句 春潮や光の紡ぐアルペジオ(蒼鳩 薫)
入選 「光の紡ぐアルペジオ」が言い得て妙。荒 一葉
1点句 神領のラジオ体操花いまだ(百代)
入選 体が資本ですね。亮
1点句 春陰や三角錐の車止め(亮)
入選 順一
1点句 小間物屋へ入れば目の合ひ軸の雛(帰心)
入選 すーちゃん
1点句 緩き坂の上旨き店ふきのとう(冬青)
入選 蕗の薹が食べられるのか、店の名か不明ですが行ってみたくなります。彰
1点句 拉致家族逢へる日はいつ鳥雲に(西村青夏)
特選 ケン(コメント無し)
1点句 暖かや八十路の集うクラス会(西村青夏)
入選 帰心
1点句 すみっこの漱石ほどなすみれ草(彰)
入選 本歌取りが巧みだ。「漱石なほど」が心憎い。燕太
1点句 おたふくの一人に親し官女雛(すーちゃん)
入選 百代
1点句 巣作りの烏はジャンクアーティスト(亮)
特選 烏の巣をジャンクアートと捉えるのは、斬新だと思います。私もピンク色のハンガーが刺さった巣を見たことがあります。康子
1点句 春三日月夜陰に鳥の白さかな(康子)
入選 何の鳥かなと思いましたが、情緒とドラマとが感じられていいなと思いました。切れがあって、この春三日月はくっきりとした三日月を想像しました。蒼鳩 薫
1点句 啓蟄に道路工事のそこかしこ(百代)
入選 「啓蟄」と「道路工事」の程よき距離観。垣内孝雄
1点句 卒業写真届く溢るるパワー受く(康子)
入選 冬青
〈俳句気まぐれエッセイ㉔ 猫の話⑥> 今泉 かの子
今まで三十年近く、猫が身近にいる暮らしであったが、猫を買ったことは一度もない。家人が拾ってきてしまったか、貰った猫ばかりである。買った猫といえば、アメリカ人の婿が米国のペットショップで買ったという猫、パンチ一匹である。
私から見れば当初このパンチは、およそ買った猫とは思われない容貌であった。いわゆるさび猫で、好みもあるが美しいとは簡単にいえぬ、まだらの色合い。初めて見たときは、猫というより人間に近い顔つきや大きな体に、おっかないような感じがした。さらに、機嫌よく撫でられていたかと思うと、いきなり嚙みついたりする。十数年一緒に過ごしてきた飼い主にさえ、そうなのである。
ある夏、帰省する娘一家とともにパンチも山の家にやってくることになった。こちらには地域猫と馴染み始めたオリーブがいる。二匹とも、今まで一頭だけの唯我独尊の暮らししか知らない。
約一週間の間に二匹はうまくやれるようになるだろうか。十数年アメリカと東京で暮らしてきたマダム、パンチ。片や奥三河と名古屋を行き来する若造、オリーブ。オスメス、まるで逆のネーミング。初めのうちは威嚇や喧嘩もあるだろうが、最後には程よい距離感を保てるようになってほしい。人間の安易な願望である。
いよいよ二匹、ご対面となった。しばし構え合っての膠着状態。やがてパンチがにじり寄りつつ一瞬、ぐっと睨んでいきなりタッタッタと接近。突然走り寄ってきた威圧感に押されたのか、あっという間に逃げ出すオリーブ。元々居た先人ならぬ先猫は、新参猫の脅かす間合いのうまさに呑まれたのだ。あっけないほどの幕引き。
オリーブはそれからも、ちょくちょく通用口から家に入ってはくるものの、直ぐに退散。若くて俊敏なオスではなく、老いたりといえど威厳のメスに軍配が上がった。とりあえず、敗者?に逃げ道があってよかった。結局のところ二匹がお互いを相容れるには、少し時間が足らなかったようだ。
それから、一年ほどの間に堂々たる風格だったパンチは、目が見えなくなり、東京の部屋の中でゆっくり時を過ごした。三月三日の夜、眠るように息を引き取ったという。十六才のクイーン死す。
錆び猫は幸運を運ぶ、といわれることは後から知った。寝るときは、必ず枕辺に来るようなかわいいところもあったそうだ。イリノイから一人、遠く離れた日本にやってきた飼い主の傍らで、セラピー猫としてのお役も果たしていたのだと、今さらながら思っている。
かなしくもめでたき天寿雛の夜 かの子
第32回若竹ウェブ句会(2023年2月募集)
★特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由。
★先月より、作者名は( )内に記述
7点句 五箇山や氷柱鋭き流刑小屋(帰心)
特選 流刑小屋の荒涼とした様が「氷柱鋭き」でよく分かる。燕太
特選 景が見えてくる。荒 一葉
特選 五箇山に流刑小屋が有るのですねぇ。氷柱鋭きが流刑小屋の何とも暗い、刺さるような寒さをより強く表現されたと思いました。流刑者には、春の水音が待ち遠しいですねぇ。佳楓
入選 「流刑小屋」と鋭き氷柱、極寒の世界が醸し出される。垣内孝雄
入選 五箇山に流刑小屋があると初めて知りましたが、氷柱が厳しい生活をよく表しているように思いました。蒼鳩 薫
入選 ケン・順一
6点句 まだ風に尖りありけり梅三分(荒 一葉)
入選 まだまだ寒い日が続く。まだ風に尖りありけりという上五、中七が巧い。燕太
入選 梅の三分咲き、早く見たくて出掛けますがまだまだ風は冷たい日が多いですね。蒼鳩 薫
入選 梅がほころび始める頃の寒さ、「中七」の表現に納得です。康子
入選 梅の花は、桜より桃の花より速く咲くので「花の兄」とも言はれるそうです。まだまだ雪解けの風が刺さるような頃から蕾を付けていますね。風に尖りありけり、春遅き山里が脳裏に浮かびました。佳楓
入選 帰心・こう子
5点句 餅よりも苺大きく春隣(燕太)
特選 エッ!苺の方が大きい?苺大福ではないの?でも、やっぱり大きな苺入りの大福ですよね。おいしそうです。間近な春のうれしさです。康子
入選 苺大福の大きな苺、美味しそう。垣内孝雄
入選 面白い句です。苺大福でしょうか?食べてみたいです。亮
入選 すーちゃん・順一
5点句 自転車を漕ぐ無精髭春驟雨(亮)
特選 髭の先に雨粒が光る。風邪ひかないやう。彰
入選 急な雨に自転車を漕ぐも、濡れてだんだんペダルが重くなる様子が、画数の多い「髭」「驟」で伝わります。康子
入選 すーちゃん・帰心・順一
4点句 道草の多き散歩や蕗の薹(荒 一葉)
特選 春ともなると散歩にも「道草」が。垣内孝雄
入選 特に行先を決めぬ散歩。思いがけず蕗の薹を見つけた。春は間違いなく来ている実感。燕太
入選 早春のひかりが新しい生命を照らす。散歩には発見もあり。彰
入選 早春の散歩の道に見つけた蕗の薹。いくつかを摘み、つい道草してしまいますね。春の散歩はいいですね。蒼鳩 薫
4点句 芽吹かむとする枝切るも山仕事(冬青)
特選 山を守り、山と共に生活をしている人たちは、自然を愛で鑑賞するだけの者とは違う自然との向き合い方をしていることに気づかされる句です。帰心
特選 (コメントなし)百代
入選 山仕事の厳しさを感じる。みな子
入選 今まさに、これから生きようとしている枝を伐り落とさなくては、いけない山師の優しさ、厳しさが、一句の中に読みとれました。今、日本の山もいろいろと問題が多いそうです。佳楓
4点句 紅梅や村に一軒なんでも屋(荒 一葉)
特選(コメントなし)順一
入選 彰・こう子・ケン
3点句 よく笑ふヤクルトおばさん日脚伸ぶ(燕太)
入選 ヤクルトおばさんも寒い日は大変ですね。垣内孝雄
入選 すーちゃん・帰心
3点句 五箇山は水音の里春きざす(帰心)
入選 「水音の里」、水車小屋もあるのかな。垣内孝雄
入選 水音の里が良い。──みな子
入選 すーちゃん
3点句 背筋シャキッ百一歳の義父(ちち)の誇負(こふ)(康子)
入選 まことに凛とした義父の長寿を言祝ぐ句だが、季語はどれだろう。燕太
入選 お元気で何より荒 一葉
入選 ケン
3点句 陣取りの雉のほろろのけたたまし(ケン)
入選 雉の荒々しい叫び声が聞こえてくるような、臨場感溢れる句で好きです。亮
入選 「雉のほろろ」で季語とは初めて知りました。ケーンケーン と鋭く鳴くことを(ほろろ打つ)と言うとの事。雉の縄張り合戦の厳しさが読みとれました。昭和22年に国鳥に定められたとの事です。佳楓
入選 こう子
3点句 歩くだけの営業仕事風二月(ビビサン)
特選 上は六音、中七はぶっきら棒ともとれる漢字四字。そのごつごつした感じが句意とも合致。身を切るような風の冷たさに、徒労感が加わり、心情的には辛くもあるが、実感を詠んだ強さがある。すーちゃん
特選 仕事の苦しい状況が、身に迫るいい句だと思いました。亮
入選 雨ニモマケズ風ニモマケズ雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ…宮沢賢治の詩を思い出させて頂きました。春とは言えど風まだ痛く、今日も又営業マンは、笑顔で成績を求めてひたすら歩くのです。失礼しました。佳楓
3点句 ポニーテール縛り直して寒マラソン(こう子)
入選 気合が伝わる荒 一葉
入選 ポニーテールの人の凛々しさが感じられる。みな子
入選 彰
3点句 人伝てに知る友のこと梅二月(垣内孝雄)
特選 さて 「友のこと」とは朗報でしょうか?または凶報でしょうか?読み手に含みを持たせたこの句に興味がわきました。「人伝てに」とあるので、友達との距離感も感じとれます。こう子
入選 ビビサン・順一
2点句 巡礼の親娘(おやこ)を包む春の雪(佳楓)
特選 早々と早春の巡礼の旅に出た母と娘。小説の一場面のような抒情性があっていいなと思いました。蒼鳩 薫
特選 (コメントなし)ケン
2点句 立春の空へ鍔迫り合いの音(亮)
特選 具体的に何の鍔迫り合いなのか、書かれていないところがいいと思いました。読む側に想像させる幅が広いと思い、また奥深さもあります。立春の空は特別な思いがあります。きっと特別な色なのでしょう。ビビサン
入選 帰心
2点句 春雨や小間に大きな水墨画(垣内孝雄)
入選 茶室を思わせる狭い部屋にある大きい水墨画。圧倒され、その幽玄な世界へ引き込まれそうです。しとしとと降る春雨との取り合わせが、しっくりきます。康子
入選 ビビサン
1点句 木の橋に竹の手すりや梅二月(すーちゃん)
入選 実直な写生句で好感を持ちました。亮
1点句 朝方の遠の鶏鳴春を待つ(垣内孝雄)
入選 どこかの農家の鶏でしょうか。春よ来ーい、はよ来ーいと叫んでいるようにも聞こえますね。蒼鳩 薫
1点句 乳を欲す稚児の大泣き風光る(蒼鳩 薫)
入選 彰
1点句 細枝に友を残して椿落つ(ケン)
入選 擬人法が生きている。みな子
1点句 咲きてみな銘木に見ゆ畑の梅(百代)
入選 こう子
1点句 これからがほんまの余生芋植うる(佳楓)
入選 自分らしさの追求へ。荒 一葉
1点句 あと数頁謎は解けるか朧月(康子)
入選 ビビサン
1点句 薄氷に脛を噛まるるハシビロコウ(ケン)
特選 じっとしているハシビロコウは薄氷に閉じ込められている。まるで噛まれているようにじっとしている。みな子
1点句 魚氷に上り鴨は円陣を組む(佳楓)
入選 ケン
1点句 蝋梅や丸き電池を買ひ忘れ(順一)
入選 花を愛で芳香に浸っている時、その花の形状から、ふとボタン電池を思い出す。そして日常に戻される滑稽味を感じます。康子
1点句 水車屋の米搗く音や福寿草(蒼鳩 薫)
入選 のどかな風景。荒 一葉
1点句 粉雪のちらつく中のキックオフ(燕太)
入選 ビビサン
1点句 豆撒きの果て無造作に鬼の面(こう子)
入選 百代
1点句 冴ゆる空あずきなしの実散り残る(彰)
入選 上手に詠めていると思いました。亮
〈俳句気まぐれエッセイ㉓ 猫の話⑤> 今泉 かの子
本日二月二十二日は、猫の鳴き声「にゃんにゃんにゃん」の語呂合せから、日本では猫の日になっている。
山の家周辺の地域猫は、避妊前に産まれた猫も合わせて今は七匹。
大きくなるにつれて、それぞれ個性が発揮されるようになった。おっとり系、びくびく系、中には自分の産んだ子猫をぴしゃっと抑えて先に餌を食べる母猫、逆に自分の子でもないのに子猫の世話をするオス猫等、個性は千差万別。この猫は、あの猫はと、まるで近所の子を評しつつ、共同で見守っているような感覚である。
我が家の猫オリーブも、地域猫たちの顔ぶれにも慣れ、警戒心もなくなってきたようだった。特にその中でも、九番目に産まれたというオスの九ちゃんは、オスであるオリーブに体を妙にすり寄せたり、ついて歩き回ったり。よほど相性がいいというか、ちょっと親しすぎるような。昨今の人間界同様、猫もまた多様性の時代、とりあえず平和な世界であった。
そんなこんなで、オリーブが地域の猫社会の端っこに仲間として加わった頃のこと。ある日帰宅してみると、家の中に猫がいた。九ちゃんがソファーにすわっていたのだ。まるで自分の家のようにゆったりと。驚いたって、それは驚いた。誰もいない家に、よその猫が鎮座ましましていたのだ。猫もびっくりしたのだろう。逃げ回る九ちゃんを捕まえようと、家じゅうを追いかけまわしての、てんやわんや。それにしても、どうやって家に入っていたのか。それは、オリーブの後をついて歩いているうちに、猫の通用口から入ることを覚えてしまった、ということらしい。そういえば、以前にも部屋の中の物が変に散らばっていたことがあった。荒らされるという風でもないのだが、何か変な感じがしたのだった。侵入者はいったいどの猫なのか。判明しないが、このままでは、次々と猫らが入り込み、我が家は猫の無法地帯になってしまう。
さて、どうする我が家。今さらオリーブを家の中に閉じ込めておくわけにもいかない。さりとて通用口をこのままにしていたら、来るもの拒まず状態。どうしたものか困惑していたところ、有力な情報が入った。その名もキャットメイト。磁石が扉の開閉のセンサーとなって、その磁石を首輪につけた猫が近づけば開くという仕組みだ。早速取り寄せ、すぐさま取り付けたところ、一発で解決。オリーブが通るときだけ、扉が開き、他の猫には反応しない。めでたし、めでたし。今のところ、うまくいっている。
どこの世界でもそうだが、「平和」こそ。小さな平和ではあるが、続いてほしい。
春の猫爪先立ちに用を足す かの子
第31回若竹ウェブ句会(2023年1月募集)
(特選のコメントは百字以内で必須、入選コメントは自由)
6点句 ほころびの一つや二つちゃんちゃんこ(佳楓)
特選 ちゃんちゃんこはひらがなで文字を見ただけで元気になれそう。ほころびもまたアクセサリーー彰
特選 おおらかですね。穴が空いてたって誰も見てやしない。そんな瑣末なことは気にしない気にしない。良いなぁと思います。(康子)
入選 冬青・ビビサン・山田渡海・ケン
5点句 新年の匂いを持ちて客が来る(ビビサン)
入選 「新年の匂ひ」に惹かれる。―垣内孝雄
入選 「新年の匂い」という措辞が新鮮─燕太
入選 いつもの顔ぶれでも、新年となれば引き締まった雰囲気、まさに淑気を感じます。─康子
入選 新年の匂いという表現に惹かれました。お客様も、迎える家も何となく嬉しく、清々しい気持ちになって来ますよねぇ。─佳楓
入選 こう子
5点句 海風の丘の水仙十重二十重(とえはたえ)(蒼鳩 薫)
入選 越前海岸でしょうか。水仙の咲き満ちている様子が伝わります。─康子
入選 すーちゃん・荒 一葉・こう子・山田渡海
4点句 やりくりの年玉無邪気にあっけなく(百代)
入選 帰心・彰・・冬青・山田渡海
4点句 散髪の椅子にこくりと冬ぬくし(荒 一葉)
特選 あるある感、満載です。私も、美容院で(特に冬)こくりとなります。─こう子
入選 気持ちがよく分かるあるある感ですね。─蒼鳩 薫
入選 百代・ケン
4点句 復興の風を手繰りていかのぼり(ケン)
特選 強風に狂う凧それはまさに、今も続くウクライナ戦、形を変えて居座るコロナ、福島原発の後遺症等、等に怒り狂う風をグイグイと引き寄せている作者の強い復興への願いを読み取りました。─佳楓
入選 すーちゃん・冬青・山田渡海
4点句 初読みは趣味の園芸一月号(燕太)
入選 すんなりと読み取れる句。─垣内孝雄
入選 語調が淀みなく、すっきりした句だと思います。たくさん花が咲きますように。─康子
入選 帰心・ビビサン
3点句 叢雲を翔け出いで来たり寒の月(彰)
入選 くっきりとした寒の月はいかにも叢雲から翔け出してくるような感じですね。─蒼鳩 薫
入選 「月に叢雲花に風」を思い出させて頂きました。 除夜の鐘が鳴り終わってすぐに、ベランダに出て今年の月🌔を見ました。それはそれは神々しくて、まさに、この作者のお句に似ていたのではと、読ませて頂きました。─佳楓
入選 荒 一葉
3点句 血族の墓守り抜く寒の飯匙倩(ハブ)(佳楓)
入選 荒 一葉・彰・ケン
3点句 すれ違ふ人みな初春(はる)の笑顔かな(荒 一葉)
特選 初詣では老若男女様々なグループに出会いましたが、不機嫌な人には全く出会いませんでした。今年も良き年になりますように! ─冬青
特選 コメントなしー百代
入選 こう子
3点句 せこせことせこ蟹喰らふ余生かな(ケン)
特選 「せこ」の嫌みのない繰り返し。─垣内孝雄
入選 せこ蟹とはどんな蟹か知らないが、俗にいう渡り蟹のことか。蟹を食べる時は老人も青年もみんな無口になって蟹に集中する。せこせこと擬態語が効果的。─燕太
入選 せこ蟹とは何か調べました。松葉蟹の雌で、小さいながら身詰まりの良い濃厚なカニ味噌や卵、朱色の肉とプチプチとした食感あり。無言で蟹をせせっている様と余生が哀しくも可笑しくもあり秀逸句と思いました。─佳楓
3点句 刈り敷きし千萱(ちがや)の藁に霜の色(彰)
特選 「霜の色」がいいなと思いました。霜の白でなく、「色」に脱帽です。格調高いですね。─蒼鳩 薫
入選 帰心・荒 一葉
2点句 一人より二人の寂し虎落笛(康子)
特選 何かわけがありそうな一句とお見受けいたしました。やっぱり二人でいても、払拭できない寂しさ、孤独を感じてしまうとそこから抜け出すことの難しさ、虎落笛だけが胸中に響きます。人生にはこんな日もあります。─ビビサン
入選 「虎落笛」との取り合わせが新鮮。─垣内孝雄
2点句 筆圧の強き友より寒見舞(こう子)
特選 「筆圧の強き」の措辞から、友の誠実さや心の温かさが感じられ、とても心地よい句です。─帰心
特選 友人から寒見舞が来た。相変わらずの筆圧の強い字体に友の健在を確認する。─燕太
2点句 豪商の闇知り尽くす竈猫(佳楓)
特選 悪徳商人を見抜く奉行所の金さんのような俳句ですね。時代劇のストーリーみたいで私は大好きです。バッチリ特選の句だと思います。─ケン
入選 すーちゃん
2点句 枝の揺れまで写しをり白障子(こう子)
入選 冬青・ビビサン
2点句 葉牡丹や刺繍のやうな渦並ぶ(帰心)
特選 中七の比喩が的確─荒 一葉
入選 ビビサン
1点句 日に二秒進む時計や暮早し(燕太)
入選 正にその通りですね。いつの間にか日暮れが迫ってきます。進む時計が追い打ちをかけますね。─蒼鳩 薫
1点句 有りったけの重ね着のままこなす家事(康子)
入選 けっして野暮とか無粋ではなく、自然に謙虚な生活態度に共感します。─彰
1点句 癖強き文字の賀状やあいつだな(荒 一葉)
入選 座五に「あいつだな」と置くとは大胆な─燕太
1点句 初詣で桧皮ぶき屋根美し寺(冬青)
入選 百代
1点句 青海堀は空堀枯れ葉溜めに溜め(みな子)
特選 お堀に溜められた枯葉に城の歴史を託して詠まれている。岡崎城の清海堀と思われるが、堀底から石垣まで7m程あり、最近の調査で更に下に2m堆積があったと判明。深い空堀にまた枯葉の嵩も堆い。─すーちゃん
1点句 重ねたる蒲団の重き熱の夜(蒼鳩 薫)
入選 帰心
1点句 双六のふり出し下駄の飛んでをり(すーちゃん)
入選 ふり出しの絵は下駄ですか。子どもの頃の双六は、どんな絵が描かれていたのか思い出せません。懐かしい遊びですね。─康子
1点句 馬鹿なふりして大袈裟な初笑(ビビサン)
入選 彰
1点句 淑気満つ玉三郎に七之助(帰心)
入選 歌舞伎がお好きな方ですね。─垣内孝雄
1点句 白猫の音立てて飲む初湯の湯(すーちゃん)
入選 私は、猫を飼ったことが有りませんが、命を頂く初湯を白い猫が美味しそうに、音を立てて飲んでいる様子は、まさに生命力溢れた美しく、力強いお句と思いました。──佳楓
1点句 冬空やフィンガーチョコのごと機影(康子)
入選 すーちゃん
1点句 背景にホテルの門松借りにけり(百代)
入選 こう子
1点句 春場所や橋をわたらふ触れ太鼓(垣内孝雄)
入選 特選にいただこうかと迷いました。春場所の浮き立つ期待感と触れ太鼓がいいなと思いました。─蒼鳩 薫
〈俳句気まぐれエッセイ㉒ 猫の話④> 今泉 かの子
この冬は、名古屋でもホワイトクリスマスとなり、年明けには、十年に一度という大寒波が日本中を覆った。尋常ならざる寒さであるが、山の地域猫たちは皆、ふくふくの冬毛となってまるまるしている。が、撫でてみるとそれは柔らかい毛ではなく、硬いしっかりとした毛だ。それが密になって体全体を覆い、外の厳しい寒さをしのいでくれるのだろう。柔らかい毛の甘っちょろい我が家の猫とは、鍛え方が違うのだ。
実は我が家の猫も同じ山の生まれなのだが、東京に暮らす娘から預かった猫。ペット可のアパートで子猫時代をしばらく過ごした。二階の部屋だったので外との接触はなく、ごく平和に過ごしていたが、名古屋では、庭をご近所の猫が通る。時には呼ぶように声をかける。するとその度に窓辺を走り回ったり、猫タワーを駆け上ったり、一挙に落ち着かなくなってしまう。初めは母猫を早くに失くしたので、母が恋しいのかと思っていたが、どうも外の鳴き声に応えるように声を上げる。何かを訴えるようにあまりに鳴くので、家人が猫語翻訳のアプリで調べてみた。するとその鳴き声は、「わたしはここよ。わたしを愛して。」という日本語となった。オス猫であるが、家の中で飼う身にとっては、やはりちょっと切ないものがある。しかし、事故を思うと、どうしても外へは出せない。出してやれない。
そんな思いを抱きつつ、夫に仕事のない週末は、猫ともども山の家へ出かけていた。が、山の家にいた夏、なんと猫は勝手に外に出ていた。自分で網戸を開けたのだ。外で見かけた夫は、「よく似た猫がいるなあ」と思っていたらしい。のん気なことである。そこで今度は、外へ出るときにはサッシの戸も閉めるようにしたが、それもすぐ開けてしまった。重いサッシに体を横にして両手をかけ、全身の力を使って開けるという、知能犯ともいえる技でクリアしたのだ。外にいる猫をガラス越しに見て、自由を渇望したのだろう。猫は外出の権利を自らの手でゲットした。しかし、困るのは閉めていかないこと。ということで結局、山の家の猫通用口は復活となった。
山では、好きな時に外へ出かけ、好きな時に帰って来られる。名古屋にくらべれば、交通事故の心配も少なく、自然の中で遊べる快適な猫ライフと、勝手に思っている。かつては、足に水がつくと足先を震わせて水分を払う繊細なところも見せていたが、今はどこに落ちたのか、下半身をずぶ濡れにして平気で帰ってきたりする。ときには、素早い身のこなしで庭の木に駆け上ったりする。まだ外の猫には及ばないが、わが猫も野性という美を取り戻しつつある。
枯葉敷きつむ中に二匹の枯葉色 かの子