酒井英子 句集「緋の色」
序 加古宗也
跋 田口風子
緋の色を根より授かり染始
黒南風や天気図を貼る染工房
うっかりすると見落としてしまいそうな「染め」の勘どころをぴたりと押さえた句だ。教員・主婦・福祉の人、そして、染色家。さらに俳人とめまぐるしい日常を過ごしながら、社会問題にも関心を怠らない人、それが英子さんなのだ。
加古宗也(「序」より)
緋の色を根より授かり染始
黒南風や天気図を貼る染工房
染師には勘といふ技片時雨
てふてふの触るるを恐れ伸子張
きはちすや機音残る丹後径
冷まじやインカ帝国文字もたず
マチュピチュの巌頭に座し霧まみれ
ひめゆりの塔に菊抱く夫を見し
母の座にもどる教師や大根提げ
夜濯ぎや子のポケットに石一つ
加古宗也抄出